悪魔の襲撃 5
放った炎は見事に伸びていた手を断ち切った。
霧が密集して出来上がった手は粉砕し、拘束されていた紫苑は、少年から遠い位置まで投げ飛ばされた。
紫苑は呼吸が乱れていて血の気を失った状態になっていた。
「紫苑!! 大丈夫!?」
虹子奈の近くにいた澄桃は、その場にペタンと座り込んでいる紫苑に駆け寄る。
「う、うん…大丈夫…回復もしなくても大丈夫だから…」
「何いってんの、回復しなきゃダメに決まってるじゃん! 顔真っ白だよ?」
そう言われ、紫苑は自分の顔に手を当てた。ひんやりと雪のように冷たい感覚があり、びくっと体を震わせた。
「…回復お願いします…」
渋々紫苑は肩をすくめ、言うことを聞かなくなっていた足を何とか動かし立ち上がった。
「了解!」
澄桃は紫苑のひんやりとした額に手を当て、呪文を唱え始めた。
「メディシナヒール!!」
澄桃の手から桜色の光が放たれ、その光は紫苑の中に入っていくように額に流れ込んでくる。
雪のように白く、冷たくなっていた紫苑の顔はみるみる生気の色を取り戻し、澄桃の手には人の正常な体温が伝わってきていた。
「よし、おっけーだね!」
「ありがとうございます」
紫苑は顔をほころばせ、ニコッと笑った。
「いえいえ! これが私の仕事だからね!」
澄桃はパチっとウインクをし、再び虹子奈の元へと向かった。
「何なのコイツ…今までの悪魔と比べものにならない…!」
少年から放たれる異常なまでの量のオーラに美碧は眩しそうに顔を歪めた。
「言ったじゃん。僕を馬鹿にしないでね、って」
悪魔の少年は周りを凍りつかせるような笑みを浮かべ、美碧を見捕らえる。
その冷ややかな視線に、美碧は背中に寒気が走った。
それと同時に少年は自分の足元の地面を蹴り、美碧に一気に迫った。
「ーーなっ…⁉︎」
声をあげた時には、もう既に肩口から血が出ていた。
少年は0コンマ5秒のうちに、2mほど離れている美碧に近づき、肩に気流弾を撃っていたのだ。
美碧は1mほど飛ばされ、地面に転がった。
「くっ…!」
あいにく急所は外れていたため対した傷ではないが、血が止まらない状態でいた。




