第09斬 "デウス・エクス・マキナ"
デウス・エクス・マキナ、"ご都合主義の神"は、物語では最強の存在かもしれない。
何故なら、運命や因果率に干渉できる存在なのだから……
さてさて、テンペスト率いる【疾風怒涛】の面々がレパント・シティより旅立ち二日目の朝、ちょうど【デモイン教会】本部への道程の半分くらいにある森へと差し掛かった頃……
"ガサッ!"
突然、道の横にある茂みが物音を立てる!
(モンスター・エンカウントかっ!?)
馭者席にいたテンペストが左腰に差した雷属性の妖刀"ライキリ"の柄に手をかけ、アハトは荷台に置いていた巨大戦斧"インダラ・バトラックス"にを握る。
そして、現れたのは……
「そこの馬車、ストップすとぉ〜ぷ!!」
出てきたのは漆黒のコート(?)に武骨な銀のショルダーと一体化したブレスアーマー、背中に身長程もある両手持ちの柄に宝珠(オーブ:魔法発動体)を仕込んだバスターソードを背負った、細身長身の男だった。
顔立ちは整ってる方だろう。
ややタレ目だが、なんとなく色っぽく、自覚ない女たらしに見えなくもない。
「悪いんだけどさ、その馬車に乗せてくんない?」
悪人には見えないが、どことなく胡散臭い雰囲気の青年……おそらく、テンペストとはそう歳は離れてないように見える男の申し出に、
「ヲイヲイ、いきなりだな?」
「まあ、ちょいとオイラも急いでるもんでね♪」
だが、テンペストが言葉を返す前に、
"ガサササッ!!"
更に茂みから飛び出してくる人影!
「ついに追いついたぞ"異端者"!!」
「おとなしく縛につくならそれもよし……」
「さもなくば……その首を頂く!!」
☆☆☆
(山賊や賞金稼ぎにしちゃあ、妙な連中だな……)
黒コートの男を取り囲む9名は、野盗や賞金稼ぎにしては装備の統一性がとれすぎていた。
インナーはともかく、少々成金趣味の鎧はお揃い。
しかも……
(杖槍? また珍しいな……)
杖槍は、僧侶等が使う錫杖に尖った穂先を組み合わせ、槍としての機能を持たせた武器だ。
かなり珍しい部類の武器で、使い手としては主に僧兵が挙げられる。
☆☆☆
「チッ! もう追いついてきたのかよ……」
黒づくめはバスターソードの柄に手を伸ばし……
「チェストォッ!!」
"ドシュッ!!"
「ぐはっ!?」
特にこれと言った口上もなく抜き打ちの要領で放ったバスターソードの一撃は、重量剣とは思えない程の素早やさで一人を武器ごと斬り倒したっ!!
「ちょ、ちょっとまてっ!? なんでクレリック(聖職者)が刃物を持ってんだよっ!? しかもバスターソードだとぉっ!?」
「フン……」
黒づくめは、大して面白くもなさそうに鼻を鳴らして両刃両手持ちのバスターソードを構え直し、
「コイツはバスターソードじゃない……【ちょっと平べったくて幅の広いワンドの柄の左右を削って先端を尖らせたらバスターソードっぽくなっちゃったけど、でもワンドだよ?】だっ!!」
何故かドヤ顔の黒づくめに、
「「「なんじゃそりゃあ〜〜〜っ!?」」」
成金鎧達のツッコミは当然であろう。
☆☆☆
(中々やるじゃん……)
その重さと鋭さを持つバスターソードの太刀筋に、思わず感心するテンペストだ。
どういう訳か酷く"重量剣"で叩き斬ることに慣れたような黒づくめを見ながら、
「"破戒僧"って奴かな?」
途端に黒づくめはいかにも心外という顔で、
「誰が破戒僧だ! 誰が!? 俺はただの無茶苦茶な異端諮問会に吊し上げられかけた、ただのいたいけな生け贄羊だっちゅ〜の!!」
☆☆☆
(異端諮問会……?)
何か最近、聞き覚えのある単語に、
「お前さんってもしかして、"ユーリヒ・トーリヒテル"か?」
「よくご存知で♪」
隙を見せないままニカッと笑う黒づくめに、
「って事はお前を囲んでるそいつらは、"デモイン教会の僧兵"って事か……」
「またまた正解だ♪ んで、逆に聞きたいんだが……お前さんは?」
"ハァ……"
テンペストは溜め息を突きながら、
「【デウス・エクス・マキナ(ご都合主義の神)】に誉れあれ……ってか!」
"シュッ!"
そのまま馭者席から飛び降り、
"斬っ!"
着地と同時に放ったライキリの居合で、一人の首を斬り跳ばす!
「俺はテンペスト・ホーカーシドレー。パーティー【疾風怒涛】のリーダーで……」
切っ先を新たな獲物に向けながら……
「とりあえず今は、ユーリヒ・トーリヒテル……お前さんの味方らしいぞ?」
そうニヤリッと笑うのだった。
次回へと続くという期待値は無いわけじゃない……
皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m
ようやくバスターソードを持ったプリースト(笑)、"ユーリヒ・トーリヒテル(偽名?)"が登場と相成りましたが、如何だったでしょうか?(^^;
基本的に悪党だけど冗談を言わないテンペストに対して、実は愉快なお兄ちゃんなキャラ設定にしてみましたf^_^;
次回は多分、再びチャンバラかな?
それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)