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第08斬 "はじまりのクエスト"


何にでも始まりという物はある。


これは、【疾風怒涛】にとって新たな何かをもたらす物語なのかもしれない……








「"ユーリヒ・トーリヒテル"ねぇ……聞いたことないな」


オーソンウェルから聞かされた保護対象の名前に、テンペストは聞き覚えが無かった。


「そうでしょうね。おそらくは偽名でしょうし、本名だとしたても今回の騒ぎ以外は大きな事は起こしてないみたいですし……」


苦笑しながら返すオーソンウェルに、


「んで、報酬は?」


提示された金額は、【デモイン教会から禁呪使いをかっさらう】という裏よりの仕事と考えても悪くない物だった。


「ついでに聞いておきたいんだが、他のパーティーにこの話を持ち掛けたか?」


いくら非公開クエストとはいえ、オーソンウェルとてまさか候補が1パーティーの狙い撃ちは無いだろう。


自分達のパーティー以外にどれ程の人数がクエストを知ってるかを把握するのは、情報漏洩のリスクを予測するのに必須だ。


「いえ、このクエストをお話しするのはテンペストさんが最初です。テンペストさんに断られたらリザーブに回そうと思ってましたし」


オーソンウェルの言葉に嘘は無いと判断したテンペストは、


「どうして【疾風怒涛】なんだ?」


テンペストの口調は疑ってるというより興味という意味の方が強そうだ。


「単純に小さなパーティーといい、人数の割には高い戦闘力といい、スピードと隠密性が要求される今回のクエストにぴったりだと思ったからですが?」


オーソンウェルは、わりとストレートに素早く秘密裏に対象を奪取し、場合によっては派手な戦闘も有り得ると告げていた。




☆☆☆




「良いだろう。そのクエスト、引き受けよう」


僅かな思巡の後、きっぱりとテンペストが言い切ると、


「交渉成立ですね♪」


ニコリと笑ってオーソンウェルが手を差し出した。


「ああ」


テンペストはしっかりとしたグリップで手を握り返し、


「期限は?」


「1週間後、デモイン教会本部で非公開処刑が行われる予定です」


デモイン教会があるのは、レパント・シティから標準馬車で3日程の距離……


「あまりノンビリ準備はしてられないな……」


異端者として処刑されるなら、予定が早まる事はあっても遅くなることは、ほぼ無いと考えた方がいい。



「すいません。お詫びと言ってはなんですが、馬車は此方で用意します」


「それはありがたいな。盗賊から頂いた馬車は始末したばかりだ」


逆に言えば、前もってそのような準備が必要なくらいの難易度のクエストなのだろう。










**********




テンペストはパーティー【疾風怒涛(シュトゥルム・ウント・アングリフ)】が拠点にしてる格安の階層居住区(低層マンションのような物)の部屋に戻り、手早く装備を整えた。


ちなみに、レパント・シティでもあまり治安が宜しくない地区にある建物で、一階が娼舘になっていて、そのせいで家賃が安かった。


本来なら、愛顧にしてる馴染みの武器屋に寄り、装備のメンテを頼みたいところだが、今回は緊急を要するクエストの為にそうも言ってられないようだ。


「タ〜ネ付け♪ タ〜ネ付け♪」


妖しい呪文じみたリクエストをしながら服を部屋に入るなり装備解除し、わざわざ"あはと"と刻まれたメタルタグと鎖のついた首輪を装着して迫ってくるアハトがいたりするのはご愛敬。


ちなみに鎖はテンペストのベッドに繋がれていて、同じく近場の床に"あはと"と書かれた砂箱(おそらくトイレ用)と餌皿があるあたり、完全に確信犯だ。


「わかったわかった」


「♪」


まあこの、演出過剰気味な"嫁兼性的愛玩動物"をこよなく愛してる時点で、テンペストも好んでアハトの術中に好んでハマってるのだろう。




「ほんじゃ、一気に……」


前技も何もなく、ひょいっとアハトの軽くてちみっこい肢体(からだ)を持ち上げ……


"ぼごっ!"


「ぴぎぃ!!」


部屋に入ったときから縦スジがドロリ濃厚ピーチ味♪(笑)だったせいか、思ったよりも抵抗なく"串刺し&腹ボコッになるアハト……


「かはぁっ!」


過呼吸で酸欠の金魚のように口をパクパクさせながら、


"ぷしゃあぁぁぁ"


圧力に負けて飛び散る飛沫が、弧を描き砂箱とその周辺に降り注ぐ。




基本的に"手荒い扱い"が大好物なアハトは、あとでテンペストに頭を踏みつけられながら砂箱から零れたアンモニア臭い液体を舌で掃除させられる自分を想像しただけで、狭くてキツイ胎内を更に潤せた……




『もう一匹くらい入れないと、腐れドワーフ娘の暴発と暴走は止められそうもありませんね……』


かくて見た目はともかくいい歳して躾のなってないドワーフ娘と、結局は溺愛&だだ甘の主人に溜め息をつく人工知性結晶体というシュールな図式が完成したのだった。











**********




翌日、午後には急ぎ支度を整え、オーソンウェルから馬車を受け取り、レパント・シティへと出発するテンペストと【疾風怒涛】の一行……


馬車と馬車馬は、スピードを重視した中々の代物で、ご丁寧に馬車には必要な食料や水が既に積み込んであった。


この調子なら、夕刻遅くなら最初の宿場街に着けそうだった。









次回へと続く……と思う。多分。







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


さてさて、今回のエピソードから新しいクエストの始まりです♪


果たして、ユーリヒ・トーリヒテルとは何者なのか?


それは次回くらいに明らかになる予定です(^^;




それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)




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