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第07斬 "教会と秘術……そして禁呪"


社会には必要な機関がある。


【かおてぃっく†わーるど】においては、教会がそれに当たる。


そして、"秘術"と"禁呪"……それがいかに教会に纏わるかの一例が、今回のエピソードで明らかになる!








「救出?」


ここはレパント・シティの表と裏の社会の境界線にある酒場【ブラウンウォーター・ネイビー】。


さて、一仕事終えてホームグラウンドに帰ってきたテンペストとパーティー【疾風怒涛】の面々。


しかし、その時に仕事を依頼しにきたのは、このブラウンウォーター・ネイビーの合法ショタの店主、ホビット(小人)族のオーソンウェルだった。


「ええ。テンペストさんは、"デモイン教会"ってご存知ですか?」


「ああ。豊穣と商売の神"ベンザイティン"を祭る教会だよな?」


基本的に、この【かおてぃっく†わーるど】は多神教世界であり、大小合わせて2万を越える教団が存在がある。


中には淫祠邪教だの殺人教団だのカルト系テロ教団だのと討伐対象になる危ない連中もいるが、まだまだ近代的な社会制度を持つ巨大国家が存在せず、弱者救済や福利厚生が整ってないこの世界にとって、各教団は概ね一定の社会的セフティネットとしての機能を維持していた。




☆☆☆




「基本的に金儲けは正義……法に触れなければどんな手段でもいいが、社会に適合できなければ金儲けする資格無しとして即破門。たしか、商人がよく崇めてる神だった気がするけど……」


追記するなら、他の商売の神同様に、自由交易都市の港街であり、経済と流通が売りのレパント・シティではメジャーな宗教だ。

"デモイン教会"というのは略称で、正式には【ベンザイティン教デモイン宗派教団】というのがオフィシャル。

金(お布施)次第で色々とクレリック(聖職者)達は、普通の教会ではやらないような色々な有償サービスを提供していた。


例えば、"ニュウドウ"と呼称されるお抱え僧兵(治安要員)の傭兵やら護衛目的でのレンタルやら、フリーマーケットの定期的広域展開。

更には、土地や建物の価値を引き上げる為の悪霊払い(エクソシスト)等々。


まあ、シスターやシスター見習いの貞操、金額によっては男性聖職者まで買えると評判だった。


「では、デモイン教会が魔法や術式の開発を積極的に行い、特に"秘術"に該当する代物を非公開競売で各教団にそれを販売している事は?」


「……そんな物まで売っていたのかよ」


総称で"白魔法"や"白魔術"と呼ばれる【各合法宗教団体の固有魔法】は、各教団の"奇跡"を演出する"最強級の看板"であり、場合によっては信奉する神より強い信者確保の道具になる。


基本的に"教団固有魔法"を習得できるのは信者だけで、特に"奇跡"のトリガーになりうる術式、つまり"秘術"は原則として門外不出……現代風に言うなら【教団最大の知的所有権財産】という定義が成り立つ。


故に、それに触れたり習得できるのは教団員の幹部やその候補者……最低でもプリースト(司祭:中級聖職者)、普通はビショップ(司教:高級聖職者)クラスと言われていた。




☆☆☆




「デモイン教会は、腕はあっても脛に傷があったり、後ろ暗かったりと色々曰くありげな魔導師達を金に物を言わせてかき集めて"司祭"待遇の幹部研究者、【マギステア・プリースト】にしてましたから……」


オーソンウェルの言葉に、テンペストは妙に納得し、


「つまり、かけた投資に対する利益回収って事か」


「そんなとこです。でも集めた魔導師は、プリーストとは名ばかりの一癖も二癖もある連中ばかり……厄介ごとを引き起こすのは必然なのでしょう?」


「……何があった?」


オーソンウェルは言葉を選ぶように、


「マギステア・プリーストの一人が、どうやら"禁呪(ヴァン・クトゥルフ)"に行き着いたようです」




"ヴァン・クトゥルフ(禁呪)"とは?

直訳すれば【禁じられた神々の物語】という古語となり、意味合い的には


"この世界に存在してはならぬ物"


となる。

つまり、秩序を乱しかねない魔法や魔術という事になる。

具体的に言えば、"秘術"に匹敵するが存在しては困る物が"禁呪"なのだった。




☆☆☆




「……そりゃまたエッライ事になったなぁ〜」


思わず呆れるテンペストである。


「偶然……呪文詠唱の初歩的なミスから、"禁呪"に行き着いた"彼"は不幸としか言い様がないですが、でも事実は事実。教会の長老会(ゲローン:最高幹部会)は直ちに異端諮問会議を招聘して"禁呪"と、そのマギステア・プリーストと異端認定しました」


つまり、禁呪の存在が外部に広まる前に、その開発者ごと都合の悪い事実を消し去り、無かった事にしようと言うことだ。


「事が"禁呪"絡みなら、破門(追放刑)でお茶を濁すって訳にはいかないだろうしな……」


まだ国際法どころか、国家の定めた広域法がない現状では、宗教団体の問題は、教団その物が害悪ににならない限り、内部での処断が不文律で黙認されてるのが社会通念とされているのが現状だ。


つまり"禁呪"とは、教団が外部の不特定多数の勢力から悪と言われかねない"危険な爆弾"の事なのだ。




☆☆☆




「ところで、何故に"境界線(ボーダーライン)ギルド"のお前さんが、そのクトゥルフ・プリースト(禁呪司祭)のサルベージを言い出すんだ?」


「僕の得た情報だと、その"禁呪"は禁呪と呼ぶには値しない……考えようによっては、毒以外にも薬として使えると思ったんですよ」


「それはオーソンウェル……お前さんの考えか?」


「いえ、僕の独断という訳ではありません」


オーソンウェルは首を横に振り、


「"市長閣下"のご意志でもあります」




オーソンウェルがショウダウンした"切札"に、テンペストは少し考え、


「保護対象の名は?」


「プリースト"ユーリヒ・トーリヒテル"」







次回に続く可能性はどれぐらいあるんだろうか……?







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


今回は教会や秘術や禁呪の概念が出てきましたが如何だったでしょうか?(;^_^A


そして、新キャラが名前だけ登場(笑)


活動報告を読んでいてくださった皆様にはお馴染みの"ダーク・プリースト"です(笑)




さてさて、次回はどうなる事やら(^^;


それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)




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