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第04斬 "血塗れの朱色団(ブラッディ・クリムゾン)"


名は存在を表す。


だが、世の中にはいくつもの名を持つ存在がある。


例えば、自分で名乗る名……


そして、自分以外の誰かが付けた名……


果たして、真実の姿をより的確に表しているのは、どちらだろう……?








「先ずは一殺……」


"ヒュバン!"


「続いて二殺」


淡々と、強いていうならそのような雰囲気で二剣二刀のソーディアン(刀剣士)、"テンペスト・ホーカーシドレー"は無造作に瞬きしてる間に二人目の喉笛を、焼けたナイフをバターに押し当てたように抵抗なく切り裂いた。




しかし、不思議な事に彼の抜いた左腰に差していた風系雷属性の妖刀"ライキリ"は、一切刀身に血糊は附着させてはいなかった。


それもその筈である。

"ライキリ"とは、この刀が鍛えられた古代……大洋で今もなお漂流していると言われている伝説の【マホロバ】という国の文字では、


"雷斬り(サンダー・リッパー)"


と書き、純然たる雷撃剣ではなく"雷を斬る"、ないし"雷で斬る"刀という意味だ。



☆☆☆




その正体は、刀身表面に強力な対電撃エネルギー・シールド、つまり"指向性電磁シールド・バリアフィールド"を展開する刀なのである。


つまり、刃に局所的な指向性を持った"電磁力場"を発生させ、電撃のみならず力場の反発で物理攻撃を弾くのだ。

実は盾が使える片手剣の使い手にも関わらずテンペストが盾を持たないのは、まだ抜かない"右腰の刀"と合わせて、"盾としても使える刀"を所持しているからに他ならない。




ライキリのタチが悪い所は、使い手の意思のままに力場に指向性を持たせられる為に、防護だけでなく刀身に纏う"不可視の刃"として機能させる事ができる点だ。


ライキリが妖刀と呼ばれたのは、呪いではなくこの防ぎ斬る強靭な"見えない刃"のせいだろう。


更に殺傷力を上げる手がない訳ではないが、少なくとも今のテンペストはそれを必要とはしていないようだ。









**********




「せ〜の……どぉ〜ん♪」


"ドゴォォォン!!"


可愛らしい声と同時に背丈の倍はありそうなこちらも雷属性の両手持ち巨大斧鎗"インダラ・バトラックス(雷神の戦斧)"を、アハトは盗賊に叩き付けた。


普通の人間には扱えない超重量武器らしく、盗賊の持っていた槍ごと木っ端微塵にした後、勢い余って地面に個人携行武器が残したとは思えない大きなクレーターを残す。


またまるで重砲の榴弾のように爆心地(?)から石礫が対人地雷のような勢いで飛散し、周囲の盗賊達に少なくないダメージを与えていた。




☆☆☆




アハト=アハト・シュレークの武器、"インダラ・バトラックス"は、かなり捻った機能のライキリに比べると、正統派に近い雷属性武器だ。


一見すると単純な電撃付与武器だが、それでもそこに一手間が加わっている。


本体に電撃発動体を組み込むと同時に、周囲の大気中静電気を吸着する術式をオリエンタル・ルーン(梵字)で刻みブースト、合成高電圧状態でチャージすると同時にインパクトの瞬間、コンデンサのように一気に放出するようにセッティングされていた。


この対人武器としては明らかにオーバーキルの威力は、このようなシステムで発動していたのだ。




☆☆☆




書き忘れていたが、今のアハトの格好は流石に素っ裸ではない(露出プレイは寧ろ望むとこだが)。


先端以外は膨らみ皆無の胸は黒のチューブトップで、これに簡易レザーアーマーの機能を持たせた丈の短いレザーベストとミニ・スカート、色は当然のようにテンペストとお揃いの朱色だ。


足元をショートブーツで固め、ちんまい肢体にはかなり目立つ大柄な籠手(ガントレット)を装着していた。


見るからに厳ついデザインのそれは、テンペストの籠手同様に何かとギミックが仕込んでありそうだ。









**********




『シュート』


『きゅる〜っ!』




更に二体、人工知性結晶体の"レイ"と、ドラゴン幼生体の"ニーズヘッグ"が上空から行なっているのは、支援射撃攻撃だ。


レイは、周囲の光粒子を吸引、それを波動変換して位相を揃えながら振幅共鳴増幅して亜光速で射出する"フォトニック・メーザー・カノン"で正確無比な射撃を行い、ニーズヘッグは周囲の熱をエントロピーの増大法則(熱力学第二法則)に則り吸引、自らの"火炎放射(ドラゴン・ブレス)"を放射し纏めて盗賊を火だるまにしていた。




近接オンリーに近いテンペストとアハトが前衛に、後衛にレイとニーズヘッグがつき支援攻撃……


二人と二体しかいないとはいえ、このパーティー【疾風怒涛(シュトゥルム・ウント・アングリフ)】は、適度な回復役さえいれば、今の手持ち装備でさえいつでも中ボス程度のダンジョンなら攻略できる戦闘力と実力を備えていた。


はっきり言って、雑魚モンスター程度の戦闘力しかない盗賊(シーフ)が束になっても敵う相手じゃなかった。


そう、この街道荒らしはあまりに運が、そして何より情報が無かった。

少しは名の知れた盗賊なら知っていた筈なのだ。

【疾風怒涛】が、レパント・シティの裏社会に名付けられた"もう一つの名"を……

そう、


【血塗れの朱色団(ブラッディ・クリムゾン)


という彼らにとり、敵に回す事自体がタブーとされた名を……




☆☆☆




あまりに一方的な殺戮劇は、僅か数分で唐突に幕を閉じた。


20名以上いた筈の盗賊は、片っ端から斬られ砕かれ貫かれ焼かれ、瞬く間に数を減らし、今や一名を除いて全て物言わぬ肉塊や肉片へと強制的にクラス・チェンジさせられていた。


その一名とて両足の腱を斬られ、"わざと生かされて"いたのだ。


「ゴミ掃除は大体終わったか……」


チャキンとライキリを鞘に収めるテンペスト。


すると、ブーツに取り付けていた禍々しいデザインの波刃のダガーを抜き、生き残りに近づくと……


"グサッ"


「ガッ!?」


盗賊の右上腕部に雑に突き刺した。


「お、俺をなぶり殺す気か……!?」


明らかに怯えた表情の盗賊に、テンペストは路傍の石でも見るようなつまらなそうな視線で、


「何故、俺がそんな面倒な真似をしないとならない?」


ダガーを弄びながら、


「ただ、お前らのアジトに案内して貰おうと思ってな」


「へ……へっ! だ、誰がそんな事を……!!」


精一杯の虚勢を張る盗賊だったが、


「お前に突き刺したダガーは、ポイズン・ブレードと言ってな。名前の通り、毒属性の短剣だ」


テンペストはさして面白くもなさそうに、


「解毒法はもう一度この短剣を突き刺すこと。さもなくば……」


"ニヤリッ"


「お前は苦しみぬき、激痛に苛まれて苦悶の表情で死ぬ」




「さて、どうする?」


断言しよう。

テンペストの笑みは、パーティーを襲った盗賊より遥かに悪党らしかったと……









次回があると信じて……







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


相手は雑魚ですが、とりあえず戦闘パートを書いてみましたが、如何だったでしょうか?(^^;


実際に動かしてみて、対人戦闘力なら意外にバランスがいいパーティーだった罠(笑)


レパント・シティまでまだイベントはありそうですが……




それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)





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