第14斬 "疾風怒涛な戦い方"
パーティーリーダーもリーダーならメンバーもメンバー……というシチュエーションは意外とよくある。
結局、似た者同士が集まってしまったり、あるいは残ったりするのもパーティープレイの醍醐味だ。
では、破天荒なテンペストのパーティーは、戦い方すらも……
「なぁ!? 俺の盾を踏み台にっ!?」
ジェット・ストリーム・シールドアタックの先頭の盾を踏み台にテンペストはジャンプする。
「直列のトレイン・アタックは、一番先頭の人間に視界が塞がれるのが難点だな……」
先頭がタンク(防護役)も出来そうな重甲冑の盾持ちの片手メイス使い、二番目は同じ盾持ちだがやや軽甲冑の片手短槍使い、三番目は防護は二の次っぽい鎧の両手持ちの長槍使い……
先頭の一人目で相手を崩すか防御させて行動を押さえ込み、二人目が左右から回り込むんで突き刺すかジャンプして上から槍の投擲で相手にダメージを与え、三人目が二人の盾持ちの間を通すように安全距離から長槍が文字通りトドメを刺す……
悪くないタクティカル・コンビネーションだが、
「読まれてしまえば意味はない……!」
相対的な意味で自分の下……飛び上がろうとした矢先に先頭の盾を踏み台に跳躍したテンペストに制空権を握られ、唖然とする二人目……鎖を付けた短槍を投擲ポジションに構えていた為に、当然のように直ぐに上空の敵には対応できない。
"ザグッ!"
一瞬遅れたシールド防御の隙を見逃さす、二人目の見開かれた二つの目の間に"ライキリ"の切っ先を突き立てる!!
☆☆☆
「こなくそっ!!」
重量に逆らわず地面に降りるテンペストに着地点の真正面にいた三人目が長槍を突き出すが……
「甘いよ」
"ビュン"
"ザキンッ!"
切っ先を二番目頭から引き抜いた勢いのまま長槍に当てて跳ね上げる。
単純な筋力の一撃じゃない……その何かに弾かれたような跳ね方から見て、恐らくはライキリの電磁力場を"反発"に使った臭い。
もっとも、それを片手で支えきるテンペストの"一太刀の重さ"も大概な物だが……
長物系の武器は、一度崩されると慣性が大きく、持ち直して再攻撃までの隙が大きい上に懐に入られたら手段がない。
「くっ!」
テンペストは膝の屈伸を最大限に生かして加速!
「ハッ!」
"ドスッ!"
槍が再び構えられる前に放ったのは片手平突き……
それは見事に長槍使いの喉笛を指し貫いた。
既にお気付きかも知れないが、テンペストは意外なほど"突き"を多様する。
モーションが最低限で済んで技の出が速く、更に射程が長いからだ。
ただし、斬撃が"線"で捉えるのに対して突きは"点"であり、どうしても殺傷力が低く、高い致命的な命中は酷くシビアになるのだが……
☆☆☆
「まだ、俺がいるっ!!」
背中から襲いかかってくるのは、メイス使いだが、
「そうだったな」
廃物利用とばかりに持ち主のいなくなった長槍を逆手に持ち、背中越しに突き出す。
敵を見ずに大雑把な狙いで放った槍撃は速いが正確さや鋭さに欠け、カウンターとはいえ
「見え透いた手を!!」
"ギィン!"
盾に阻まれ、メイス使いに届く事はない。
(だが、それでいい……)
テンペストとて、それで倒せるとは思ってなかった。
しかし、顔の前に槍の穂先が突きだされれば人は避けるか、盾を持っていれば反射的に防ぐ。
(そして、その瞬間に視界は塞がれる……!)
テンペストが盾を持たない最大の理由はこれだ。
あらゆる意味での"速さ"を武器にするテンペストは盾は速さをスポイルするウェイト……という意味のみにあらず、彼の生き残り要素である"視界の広さ"や動体視力を含む"目の良さ"を一瞬でも殺してしまうのだ。
と言っても代わりに、刀剣を使ったガードスキルや様々な機能を盛り込んだ籠手や脚甲で十分過ぎるほど補われてるのだが……
生憎、今のところそれが積極的に使われる機会はなく、体術や剣技は攻撃一辺倒で良い状況のようであるが……
("縮地"……!!)
全身の筋力と関節駆動を全て連動させた"超加速"で、テンペストは自らの盾で視界を塞いだメイス使いの後ろへと回り込み、
「セイッ!」
無防備な兜と鎧の間の僅かな生身部分に横凪ぎの一閃を叩き込む!
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重装兵を倒すには、剥き出しの生身の部分を狙うか、あるいは……
「どっかぁぁぁ〜〜〜んっ♪」
"ズドォォォウン!!"
酷く重い音を立てて雷属性の巨大戦斧"インダラ・バトラックス"がハンマー投げのような横旋回で叩きつけられ、三人が持っていた盾ごと肉体を破壊されて飛び散った!
そう、非防御部分を狙うのでなければ、敵の防御力を上回る破壊力を叩き付ければいい。
インダラ・バトラックスは雷属性、しかも溜め込んだ電気をインパクトの瞬間に一気に吐き出す設定だ。
普通、完全絶縁体の対雷属性の防具なんてもってる訳もない……というかなまじ装備のいい僧兵は武器や防具はほとんどが金属製、電導率は【悪くない〜かなり良い】に集中してる。
簡単に言えば、軽くてもスタン(全身が痺れる)か下手をすれば感電死だ。
こんな状態の敵が盾を装備していても、効果的な防御などとれる筈もない。
でなければ、いくらアハトが馬鹿力でもこうもあっさり纏めて吹き飛ばすとかは出来ないだろう。
☆☆☆
さて、30名もいれば当然のように魔法で間接攻撃、あるいは支援する者だっている。
しかし、そのような敵に対して【疾風怒涛】は、他のパーティーでは有り得ない方法で対処していた。
『そこです』
酷く冷静な声と同時に放たれたフォトン・メーザー(一種のレーザー光線)は、的確に今まさに呪文を唱え魔法を発動させようとしていた口を"ピンポイントで焼いた"のだった。
「ぐふっ!」
正確無比の熱線照射で瞬間に……比喩でなく高出力レーザー・メスを押し付けられたように舌ごと口内を焼かれた術者は、その痛みにのたうち回った。
人工知性結晶体、あるいは結晶体型使い魔の"レイ"は、実は割と多彩な射撃/砲撃魔法(?)を蓄積しているが、特に光の粒子性を利用して集束し、波動性を利用して位相共振幅(メーザー増幅)して照射する低燃費の割には威力のあるレーザーガンを愛していた。
ただし、このような対人戦の場合は威力は抑えて速射性を重視する傾向がある。
しかもその攻撃ルーチンは、自分達と同じく比較的中〜遠距離からの攻撃を可能とする魔導師を優先攻撃目標としていた。
実はレイの中には今まで手段を問わず蓄積した魔術/魔法の魔力波形パターンが記録されていて、呪文や魔導師から発散される魔力波形から攻撃を予想、自己学習型のアルゴリズム(単純な威力だけでなく発動時間や効果も全て加味される)で脅威度を判定し優先度を設定、順次攻撃するという、何気に芸の細かい事をやっていたのだ。
そして意外とえげつない……いやいやレイにしてみれば殺害よりも無力化という"スマートさ"を好む事に加え、より多くの魔導師を無力化する為に、ショック死以外の即死はない程度の熱線で魔法や魔術その物を封じる事を選択していた。
平たく言えば、一撃で人を真っ二つに出来るエネルギーを、小分けにして術者の口やら魔法発動体やらに当ててるのだ。
かくも無慈悲なまでに効率的な戦いこそが【疾風怒涛】の"真骨頂"であった……
次回へと続く……多分だけど。
皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m
テンペストのジェット・ストリーム・アタック崩しに加え、アハトのノンストップ・パワープレイ(笑)とレイのピンポイント・レーザーショット(?)をフューチュリングしてみましたが如何だったでしょうか?(^^;
次回はちょこっとちび竜のバーベキューパーティーと、曰くありげな二人のバトルが中心になると思います♪
それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)




