第13斬 "チャンバラ・ファイト"
人にはそれぞれ領分がある。
人斬りには人斬りの領分がある。
今回は、その領分にスポットが当たったエピソードなのかもしれない……
状況は、むしろテンペストが説明を求めたい位だった。
レパント・シティの行政区分に入る直前に街道を封鎖していたのは、おそらくはデモイン教会の僧兵が約30名。
まあ、それはいい。
いや、良くはないけどそれでも対応のしようはある。
しかし……
「ニャハハハハハ!! ニャハハハハハハハハ!!! ニャハッ……ケホッケホッ!」
なんか巨大な戦鎚を構えた虎縞の猫耳&尻尾娘が高笑いの上げすぎで咳き込んでいた。
☆☆☆
(どう判断したらいいんだ? こりゃ……)
問答無用に斬り捨てたら、なんか色んなとこから怒られそうだ……なんて無体な事をテンペストに思わせる程の破壊力を、ぬこ系獣人の少女だか幼女だかは持っていた。
獣人というのも人間を基準にすれば、一概に年齢と外観が一致しないのが常であるのだが……。
その者、身の丈/体格ともアハトとどっこい。
いわゆる、
【つる〜ん/ぺた〜ん/すと〜ん】
のちみっこい肢体に頭の天辺に虎縞のぬこ耳を、平たいお尻に同じく虎縞の尻尾を生やしている。
方にかかる緑の髪にネームプレートと鈴が付いた首輪、それにブラの親戚みたいなおへそ丸出しの短い毛皮のタンクトップに、これ見よがしにスイッチブレード型三連鉤爪が付いた手甲という上半身。
下半身は爪先爪付の毛皮のショートブーツ。
オマケに動きやすさ優先なのか酷く短い同じく毛皮のミニスカートときてる。
そして、手に持つのは『これぞ鈍器!』と言いたくなる巨大で武骨な身長より大きな戦鎚と中々に趣味に走った派手な装備だ。
☆☆☆
「……微妙にキャラかぶってる……」
とはアハトの弁である。
まあ、露出の激しい合法ロリで、間合いの長い超重量武器がエモノと確かにかぶってた。
「アレは敵……ボクの存在を脅かす敵……」
ユラリと手に巨大さでは負けてない戦斧"インダラ・バトラックス"を手に馭者席から降りようとするアハト……
目からハイライトが消えていた(汗)
「アハト、ちょい待て」
"かぷっ"
「ひゃん!」
耳をテンペストに甘噛みされアハトは、一発で正気に戻ったようだ。
テンペストはトーリオを見ると、
「フン……どうやら教会もとびっきりの"追跡猟犬"を放ったようだな……」
何やら酷く中二病……もとい。芝居がかった調子で呟いていた。
「……犬じゃなくて、ヌコだろ? どう見ても」
すかさずツッコミを入れるテンペスト。
何も速いのは、斬撃だけじゃなさそうだ。
「いや、そうじゃなくてさぁ〜。というか会った時から思ってたけど、"テン"って結構ノリが良いよな?」
バスターワンド(仮称)を手に馬車より降り立つトーリオだった。
「テンとはまた豪快に略したな……まあいい。ところでトーリオ、あのバーサーカーなヌコ娘はお前の管轄でいいんだろ?」
「まあね〜。それなりに"因縁"があるのさ」
相変わらず軽く言うトーリオに、テンペストは小さく溜め息を突いて、
「わぁーたわぁーた」
"シュラン……!"
テンペストは左腰の"ライキリ"をこちらも変わらず一振りのみ抜き放ち、
「じゃあ、雑魚はコッチで引き受けるわ。アハト、行くぞ」
「ふにゃ?……う、うん♪」
肢体の隅々まで開発済みのアハトは耳噛みに夢心地になっていたが、テンペストの一声で戦闘モードに移行。
「"レイ"、支援射撃は任せる。"ニーズヘッグ"、思う存分バーベキューにしてやれ」
『イエス、マスター』
『きゅっくるぅ〜♪』
(相手は少しは腕が立ちそうな30名……)
テンペストは高揚感を感じながら……
「久しぶりにチャンバラを楽しめるか……?」
笑顔と呼ぶには獰猛過ぎる表情を浮かべた。
**********
「来いよ」
真っ先にテンペストに突っ込んで来たのは杖槍使いの僧兵だった。
しかし、チンピラ相手なら手痛い一撃になりそうな鋭さはあったが……
"ひょい"
上半身を僅かに捻ってかわし、
"スパン!"
同時に穂先下30cmくらいを切り落とす。
だが、杖槍使いは武器破壊されたエモノを手放し、ショートソードにスイッチしようとした。
しかし……
「遅い」
文字通り返す刀……"ライキリ"の刀表電磁力場刃で首を斬り放した……
「なろうっ!」
また別の一人が左後方より斬りかかるが、
「セヤッ!」
"ドシュッ"
そのまま体を旋風のように半回転させて胴を横凪ぎ一閃に切り伏せた!
「ごのおっ!!」
今度は後ろから両手持ちの大型メイスを大上段に振りかぶりテンペストを押し潰そうとするが、
「悪くない」
間合いを取るどころか、逆にテンペストは素早いバックステップで脇の下に刀身を挟むように後ろへ……刃を上向きにして突き出し、
"ドスッ!"
「ごはっ!?」
背中から体当たりするように深々と巨漢の鳩尾辺りに刃を突き立て、同時に柄に下へと体重をかけて刀身を体内でテコのように動かし内臓を破壊した。
「今だ! 動きが止まった!」
いきり立つようにレイピア使いが突撃してくるが……
「フン……」
"ヒュン!"
テンペストはノーモーションで右足を蹴りあげ、爪先をレイピアに当てる!
脚甲と一体化したブーツの爪先には、それ自体が殺傷力が高い鈍器と呼んで差し支えない尖鉄が合わされていて、
"ペキン!"
蹴力と応力の掛け方によっては、細身の剣ぐらいだったらへし折る事ができた。
「ハッ!」
そして、テンペストは一方踏み込むと同時に巨漢の体で鞘走りさせるように、ライキリの刀身を引き抜き……
"ドヒュ!"
そのまま折れたレイピアの持ち主の首を跳ね跳ばす!!
☆☆☆
まさに一瞬であった。
僅か数秒の間に……
「先ずは四殺……」
自然と口の端が、僅かに引き上がる……
「次はどいつだ?」
殺戮の宴は、まだ始まったばかりだった。
次回へと続く……かもしれない。
皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m
今回は前半はミーコの真骨頂(笑)、後半はテンペストの領分でお送りしましたが如何だったでしょうか?(^^;
次回はチャンバラの顛末と、レパント・シティに入れるかな?
それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)




