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第11斬 "ソードマスター・クラス"


世間には様々な物差しがある。


長さの単位を示すのはは勿論だが、社会における自分の立ち位置を知る上でも、"尺度"は必要になるからだ。




「セイッ!」


"ボワンッ!"


並べた九つの遺体にテンペスト・ホーカーシドレーは背中に交差させて背負う"対の二剣"のうち、右の一振り……波刃を持つ火属性の長剣(魔剣)


【メギド・フランベルジュ】


の一太刀を浴びせる。

途端に斬られた遺体の脂に引火し、あっという間に全身を炎に包み、炭化させた……


「大した殺傷力じゃないの♪ そいつは生きてる人間にも有効なのかい?」


何となく愉快そうに言うのは、今回の確保対象の"ユーリヒ・トーリヒテル"。

バスターソードのようなワンドを使う、元デモイン教会の似非プリーストだ。




「ああ。コイツは血と肉を糧に炎を生成する【人喰いの炎精霊"イフリート"】の力と加護を封じ込めた魔剣だからな。血と肉を持ってさえいれば、生きていようが死んでいようが引火する」


「お〜お、おっかないね〜。流石は【血塗れの朱色団(ブラッディ・クリムゾン)】の鬼畜リーダーがエモノってか?」


「……その名を出すな。安っぽい殺人ギルドじゃあるまいし。ウチは【疾風怒涛(シュトゥルム・ウント・アングリフ)】が正式だ」


ちょっとムッとしたようなテンペストだったが、


「【血塗れの朱色団】で良くね? 明らかにそっちのが通りが良いだろ?」


「それでもだ。エモノって言うなら、お前のバスターソードも大概なもんだぞ?」


「だ〜らバスターソードじゃねぇってぇ〜の。基本的にはワンドだ。ただ、特注の平べったくて幅広の柄の左右を削って先端尖らせたら、心持ちバスターソードっぽくなっただけで、でも機能的にはワンドなのさね♪」




☆☆☆




思わず『ホントかよ?』とツッコミたくなるテンペストだが、大人の対応で流す事にしたようだ。

代わりに……


「そいつにかけてるのは重力操作、もしくは質量操作系の魔法か?」


「ご名答♪」


軽く答えるユーリヒは、


「質量の9割を"重力子(グラビトン)"に変換して魔法発動体のオーブにチャージしてるのさ。んで、インパクトの瞬間に1/100秒だけ指向性質量解放をするって寸法だじぇ♪ 言うならば質量操作と重力操作の合わせ技ってとっかな?」


どうやら元々はワンドというのは、あながち嘘ではないらしい。


「それにしても、よくわかったもんだ」


感心するようなユーリヒに、


「お前さんの体格や筋力から考えて、振り方がバスターソード……じゃなくて、それの類似武器のそれじゃなかったからな」


「流石は、"大剣志(シュペルター)"クラスの剣士♪」


「いや、俺は別に"剣志位"持ってねーし」



☆☆☆




少し解説が必要だろう。


剣志位(ソードマスター・クラス)というのは、元々は


『己が剣にて大志を貫く者』


という意味で、"この世界"に古くからある


剣士(ソーディアン)の身分の貴賤に関わらない、純粋な技量を示す相対的な物差し】


の一つで、最も一般的に使われている物だ。


その基準というのは、世界各地にある時代時代の剣豪や剣聖と言われた人々の門下生直系の著名/名門剣士ギルドの話し合いで定められ、今のところ半世紀に一度改訂されていた。

基本的に


"剣志(セイビアン)"


"大剣志(シュペルター)"


"超剣志(イペルター)"


"極剣志(エトーレ・トレス)"


の四階級が定められている。

実際には一番下の"剣志"ですらも簡単にはなれず、各流派の師範クラスで実戦経験者がようやくなれるかどうかの厳しさだ。

故にどんな剣志位とて持っていれば弟子をとれる"剣の師匠"に相応しいという意味で剣志位は"ソードマスター・クラス"と呼ばれるのだった。




現実に名門と呼ばれる騎士団でも剣志位持ちは少なく、"大剣志"なら人間相手ならどんな戦場でも無双でき、大抵のモンスターには単独で戦えるクラスで、"超剣志"ともなれば戦の勝敗を単独でひっくり返せる戦略級の剣士と考えていい。


そして、更に上の"極剣志"ともなれば、独力でドラゴンの成体すら倒し、歴代の剣豪/剣聖に比肩しうる"歴史に残る剣士"という事になっていた。




☆☆☆




「俺は剣志位持ちどころか、剣士ギルドにすら加盟した事すらねーよ」


「へぇ〜。風の噂じゃ"二剣二刀流の使い手"は、"大剣志"に匹敵するってもっばらの評判みたいだぞ?」


「風と噂話なんかすんなよ。寂しい奴だな」


するとユーリヒはいかにも心外という素振りで、


「失礼な! こう見えても人付き合いは良い方だぞ。多分」


テンペストは少し考えてから、


「だろうな。お前さんがここにいるって事は、それなりに内部の手引きがあったって事だろうし」


考えてみれば当然の話で、宗教裁判にかけられそうな囚人が、脱走……それも完全装備でとなれば、単独での行動とは考えにくい。


ほぼ内通者がいなければ不可能だ。


「それにお前の救出を依頼した大元は、どうやらレパント・シティの市長らしいしな」




「ああ、"ゼローシュの旦那"ね」


なに食わぬ顔で納得するユーリヒに、


「親しいのか?」


とテンペストが問うと、


「親しいと言えば、親しいかな?」


ユーリヒは苦笑しながら、


「親戚なんだな〜、これが」


どうやら、意外と言えば意外な……予想の斜め下に単純な繋がりだったらしい。








次回へと続く希望を胸に……







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


地味にテンペストの二剣二刀の一つ"メギド・フランベルジュ"が出てきましたが、如何だったでしょうか?(^^;


ソードマスター・クラスの話とかも出てきましたが、実はわりとこの先に出てくるキャラも持ってたりします♪




さて、次回は思いの外に早く終わったクエストの帰り道ですが……果たして、トラブルなくレパント・シティに帰りつけるのか?


それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)





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