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第10斬 "特注の幅広くて平べったい柄の左右を削って先端を尖らせたらバスターソードっぽくなっちゃったけど、でもワンドだよ?"


奇天烈な武器は、この世に多くある。


このエピソードのタイトルも、そのようなサンプルの一つだ。


そして、その武器の主もまた、負けず劣らずユニークだったりするのだが……








「へぇ〜。オイラの味方ねぇ……そりゃまた物好きな♪」


「安心しろ。別に伊達や酔狂じゃなく、あくまでビジネスって意味合いだ」


馬車でデモイン教会本部へと急いでいたテンペストと【疾風怒涛】の面々が道中にエンカウントしたのは確保対象の"ユーリヒ・トーリヒテル"だった。


しかもどうやら追手として放たれたらしい、デモイン教会の僧兵までオマケに付いてきている。




「き、貴様!!」


「お、お前はデモイン教会全てを敵に回すつもりかっ!?」


ユーリヒに一人、テンペストに一人が斬り捨てられた為に残り七人になってしまったデモイン教会の(おそらくは)お抱え僧兵達は口々に焦燥と困惑と恐怖にまみれた台詞を口にするが、


「組織の名前出したら何とかなると思ってるあたり、絵に書いたような三下っぷりだな?」


と嘆息気味のテンペストに、


「おいお〜い。傭兵崩れの雇われ僧兵に、どんな高度な芸風を期待してんのさ?」


相変わらずお気楽な口調のユーリヒである。


「ああ、成る程……部隊単位でのコンビネーションがなっちゃいないと思ったら、俺と同じくチンピラor破落戸(ごろつき)あがりって訳か。納得いった」


「普通、チンピラとか自分で言っちゃうかね〜」


両手握りのバスターソード……もとい。"バスターソードに見えるけど実はワンドらしき物"を油断なく構え、間合いを測りながらユーリヒは苦笑いし、


「訂正だ。"なんちゃって僧兵"より、多少はマシな"悪党"ってとこにしておこう」


とさして面白く無さそうにしてるテンペスト。

構えるは右手に持つ使い勝手のいい妖刀"ライキリ"のみで、どうやら背中に交差した二振りの魔剣どころか、右腰に差すもう一振りの妖刀も抜く気は無いらしい。




「さて、お喋りも飽きた……そろそろ殺りあうとしよう。付き合うか?」


「付き合うも何も、元々はオイラの客だぜ? それに空飛ぶ船が出てくるお伽噺の主人公じゃあるまいし、こちとらお姫様体質じゃないもんで……」


ユーリヒはタレ目に楽しそうに光を宿らせ、


「Now It's Show Time! ってね♪」









**********




"ビュッ!"


刹那の時と言うのは、まさにこの状況を言うのだろう。


テンペストは攻撃対象の瞬きが始まると同時に踏み込み、完全に目蓋が閉じる瞬間には一刀の間合いに入り込み、目蓋が開き始める時には必殺の斬撃が放たれた!


"ザンッ!"


「ぐはっ!?」


結果として、この"速さ"を生かしたテンペストが得意とする斬撃……

瞬きのタイミングを読み刹那の人間の視覚不可時間を利用し、先の先を取り"気付かれる前に切る斬撃"の、


【不可視の斬撃(ファントム・エッジ:幽玄刃)】


だった。




☆☆☆




「おうりゃ〜っ!!」


どこか気の抜けたような気合いと同時に放たれた一撃は……


"ゴズッ!!"


「おごおっ!?」


【特注の平べったく幅広の柄の左右を削って先端を尖らせたら何となくバスターソードっぽくなっちゃったけど、でもワンドだよ?】……何やら書くたびに正式名称(?)が変わるような気がするが、長いんでとりあえず"バスターワンド(仮称)"とでもしておこう。


とにかく、身長程もある両刃両手持ちのいわゆる長物重剣を、比較的長身ではあるが見るからに細身の体躯からは信じられないような速さで、重く鋭い一撃を放っていた。


まるで、その様子は細剣でも振るってるかのようだが……




「よいしょ♪」


"どっごぉぉぉ〜〜〜ん!!"


元々、超重量の巨大戦斧"インダラ・バトラックス"を、ちみっこくて平たい肢体に冗談みたいな馬鹿力を宿らせたドワーフっ娘のアハトとは何かが違ってみえる。


さっきから柄底(あくまでワンドと言い張るなら杖先)に仕込まれた、テニスボール大の紫水晶色の宝珠(オーブ)がうっすらと輝いているが……



おそらくはこの、


"グリフ○スのような痩身の優男が、ガッ○が持つような大剣を軽々と振り回す"


珍妙な構図と無関係ではあるまい。




考えてみればこのユーリヒ・トーリヒテルと名乗る青年、いくら破戒僧だとしても、あまりに"人斬り"に慣れすぎてるというのも、妙に引っ掛かる点ではある。


確かにデモイン教会では魔法や魔術開発目的に、魔導師としての腕が確かなら出所や出自が怪しい者でも、司祭(プリースト)待遇で雇用していたのだが……


そうだとしても、やはりユーリヒの存在は、不自然だ。


彼の戦闘スタイルは魔導師というより、むしろ魔法騎士(ソーサル・ナイト)に近い気もするが……









**********




テンペストとユーリヒ、そしていつの間にか参戦していたアハトに、レイの結晶体集束フォトン・メーザー光波とニーズヘッグの火焔系ドラゴンブレスの支援砲撃も加わるとなれば、いつぞやの場末の盗賊に比べればいくらか腕が立つとはいえ、所詮は残存7名。

そこいらの戦士/騎士クラスより遥かに腕が立ちそうな三人に、文字通り人外の援護射撃まで加われば、流石にカップラーメンができるまでも持たなかったようだ。




「花は山梔子(くちなし)、死人に口無し……"証拠隠滅"完了♪ってか?」


ビュンとバスターワンド(仮称)を振るって血を払うユーリヒに、


「ここはシンプルに"掃除"終了程度でいいさ」


チャキンと刀を鞘に収めるテンペスト……


ニカッと笑顔でサムズ・アップするユーリヒに、テンペストは静かに同じく親指を立てた。









次回へと続く……のは胡蝶の夢か?






皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


わりとガチな戦闘シーンは如何だったでしょうか?(^^;


何やら気がつくと、【かおてぃっく†わーるど!】も二桁に突入です♪


いや、まさか何となく書き続けてたので、あんまり実感無かったりしますが(^。^;)


次回は、ユーリヒ(偽名)のイベントかな?


それでは皆様、また次回にてお会いできる事を祈りつつ(__)




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