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第01斬 "はたまけの魔王"


"この世界"は極めて不真面目な要素で出来ている……


支配するはニートな魔王……


主人公は変人刀剣士や知性結晶体……


だが……


ジャンルがファンタジーなのは、お約束……






『さあ、行こう……!!』


多くの試練……仲間の死すら乗り越え、勇者と一行は進む。


それが、聖剣"エグマ=ボグマ"の受け継ぐ者の宿命と信じればこそ……


この地が絶望に満ちた"滅び"に飲み込まれるまで、あと僅かな時しか残されてはいないのだから……


『さあ、俺達の戦いはここからだ!!』




【完】





"ヴァルハラ†クエスト"の永きに渡るご愛読ありがとうございました(__)


作者の次回作をご期待ください。












**********




「打ち切りエンドか……」


パタンと"彼"は雑誌を閉じる。

彼と言うが、見た目通りの年齢なら、少年と青年の丁度中間くらいだろうか?


顔立ちは全体としては整い、やや童顔気味だが後ろで縛った肩胛骨くらいまで届くクセのない黒髪と対照的な切れ長の"真っ赤な(ガーネットアイ)"は、あくまで眼光鋭く、彼がただ者ではない事を無言で告げていた……




身長はさほど高くはなく全体的にほっそりとしているが、華奢というより引き締まったという印象を与える体つき……それに朱色のコートを羽織っている。


局所的な筋力による強力な一撃より、全身のバネを上手く連動させて連撃を武器にするスピード・ファイター型ではないだろうか?


例えばそれは、どうやら最低ランクの軽甲冑程度の防御力しかなさそうなコートと、セットらしい同じく朱色のレザーロングパンツ(軽いコートに軽甲冑程度の防御力があること自体、上等な装備の証だが……)以外の防具は、明らかに隠し機能がありそうなゴツい銀のガントレット(籠手)とブーツと一体になったレガース(脚甲)だけだ。


上半身は、黒いTシャツと大粒のラピスラズリが嵌め込まれ、辺境の神の姿が刻まれた大きなヘッドの銀のチョーカーだけで、チェーンメイル(鎖帷子)すら装着してないあたり、軽量装備の拘りを感じる。

それとも、自分の腕に対する絶対の自信の表れだろうか?




また、彼をスピード・ファイターと断定する要素としては、彼の武器がある。


両腰に一振りずつ、背中に交差するように背負った二振りの刀剣……"二剣二刀"の装備こそが、彼が速度と技術を持ち味とする


【ソーディアン(刀剣士)】


である事を物語っていた……




☆☆☆




「二次元の魔王は良いよな……真面目に世界に仇なす気があって」


"ぽいっ"


彼が読んでいた"週間15連マガジン"をゴミ箱にトスすると、


"ピキュン!"


"じゅっ!"


突如、彼の肩の辺りでゆっくりと回転していた【手の平サイズの正八面体/半透明のクリスタル(?)】から熱を伴った可視光線が放たれ、雑誌を空中で燃えカスすら残さず焼却した。


『マスター、雑誌とゴミ箱のサイズが合ってません』


某ヴォーカロイドっぽい人工臭バリバリな女性型音声が響き、その発音の度にアメジスト色の半透明ボディの中で、砂金のように輝く粒子帯が不規則に揺らめいた。


「知ってる。几帳面な"レイ"なら始末すると思ったし、狙いを外すとも思えないしな」


『そういう判断なら納得します』


どうやらこの"レイ"と名付けられてるクリスタルは、人工精霊(ファクトリアル・フェアリオン)だか、人工使い(ファクトリアル・アガシオン)の一種らしく、ソーディアンの彼と主従関係にあるようだ。


それにしても、知性結晶体(インテリジェント・クリスタル)型とはかなり珍しい。

しかも、光線技(レイガン・スキル)持ちとなれば尚更だ。


もしかして、【遺失科学文明(ロスト・サイエンティカ)】の産物か何かだろうか?




☆☆☆




『マスターは発言から察すると、"この世界"の魔王がお気に召さないようですね?』


「まあね」


腕を頭の後ろで組みながら、気の無い返事をするソーディアン。


それにしても……

高くも安くない極めて標準的な宿屋で、コーヒーの香りに包まれながら朝からクリスタルと雑談に興じる刀剣士というのも、何だかシュールである。


「何しろこう……やる気とか覇気というのが微塵も感じないのさ」


『結構な事じゃないですか? 魔王が無茶して世界の危機に陥るよりは』


「それも程度問題だろ? あそこまでだらけられると、違う意味で世界の危機を感じるぞ……」


『そうですか?』


「レイ……座右の銘が"働いたら負け"って魔王は、実際どうなんだ?」











**********




魔王【ワロス】


既に名前からして駄目っぽいが、これが"この世界"の魔王の名だ。

実はウルトラ・チート臭い魔王で、


【平行世界魔王ランキング】


ではベスト10に入る程の実力者。

【三次元生世界で絶対なる者】を意味する"十次元存在"どころか、パワーコントロールは【宇宙の成立/終焉やに干渉でき、因果律を制御】できる"十五次元"にまで及ぶ程らしい。


つまり、真面目にコツコツと実績を重ねれば、魔王どころか"魔神"に推挙されるクラスなのだが……


どうにも本人がやる気ない(汗)




☆☆☆




ワロスが初めて"この世界"に出現した時だが、まあお約束だが全世界の【知性を持つ者】全ての主要都市/コミュニティに、巨大立体映像が現れた。


これまたお約束の漆黒のマントに漆黒の甲冑、ついでに禍々しい冠……


だけど、永い闇色の髪はともかく、ハーフフレームの眼鏡と、如何にも人の良さそうな青年顔は、色んな意味で"魔王"という名詞を台無しにしていた。




『あーあー、テステステス。只今、マイクのテスト中』


それが魔王様の第一声であった(汗)


『"ノン"、もうマイク入ってんの?』


その巨大な立体映像が横を向きながら尋ねると、


『ま、魔王様!? とっくに放送は始まってますっ!!』


どこからか飛び込む女性……というか、ややハスキーだが明らかに若い少女の声が聞こえてくる。

PA(音響)でもやってるのだろうか?


『あ、そう。あー全世界の知性ある生けとし生きる者に告げる。我はついさっき"この世界"に赴任してきた魔王のワロスだ』


『魔王さまぁーーーっ!? そこは"赴任"ではなく"復活"です!! いきなり正体ばらしてどうするんですかっ!? せめて台本通りに読んでくださいぃ〜〜〜っ!!』


あまりのgdgdっぷりに半泣きなのがモロバレな少女の声。


だが、その自称"魔王"のワロスという青年は、さして気にした様子もなく……


『大して違わないだろ? "上"も適当でいいって雰囲気だったし』


『根性なしの中間管理職的な発言は、危険ですのでお止めくださいってば!!』


『俺の立場は似たようなもんさ。ん〜、まあ俺から言いたいのは、【試練となり立ちはだかり、人類の更なる進化の糧になる】ことや【世界の衰退を促進させる】なんてありきたりな魔王の仕事はしない。つーか、ぶっちゃけメンドい』


ぶっちゃけ過ぎだった……


『俺の座右の銘は、【働いたら負け】だ。いいか? 【働いたら負け】だ。大事な事だから二度言ったぞ』


『俺が真面目に働いたら世界は滅ぶんだから、お前さんらにとっても都合の悪い話じゃねーべ?』


『あうあうあうぅ〜〜〜っ!』


なんかオンラインで声が拾われてる少女の声は泣いていた。


『って訳で、俺は城でニートやってるから、くれぐれも討伐とかに来んなよ? 特に勇者とその一行とかはお断りだ』


『魔王様ぁぁぁ〜〜〜っ!!!?』


ハスキー少女(Sound Only)の絶叫が哀愁を誘う。


『ところでノン、そういや"○ルパン"のイベント受付って今日からだっけ?』


『知・り・ま・せ・ん!!』




その言葉を最後に唐突に立体映像は消えたのだった。




☆☆☆




あんまりと言えばあんまりな内容に唖然とする世界……


というか、誰もがリアクションに困った(当たり前だ……)


そんな困惑するこの世界の住人を他所に、無人の荒地に突如として荒々しく禍々しい巨大な城がズド〜ンと立った。

ご丁寧な事に、


【勇者とその一行お断り】


という達筆で書かれた垂れ幕が、正門の上に下げられていた。




世界は確かに魔王の出現を信じたが、どう対処していいか迷ったまま現在に至る。




とりあえず、これが"この世界"……"はたまけ(働いたら負け)"な魔王が住む


【かおてぃっく†わーるど】


だった……










次回へ繋がる事を、今は信じたい……







皆様、ご愛読ありがとうございましたm(__)m


暮灘初のファンタジー・ジャンル作品は如何だったでしょうか?(^^;


えっ?

ファンタジーじゃなくてコメディーじゃん?(汗)


いや、まあその通りですが、それは言わないお約束って事で(笑)




実は今まで書いてた作品で、ちょいとスランプになってしまい、ならば今までにない作品やジャンルを書いてみようと始めたこのシリーズ、執筆ペースも含めてダラダラgdgdが持ち味になりそうですが、ご贔屓願えれば幸いです♪




それでは、また次回があることを祈りつつ(__)





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