ゆめにっき~悪い子~
街の少し外れたところに、
大きな丸太を柵のように囲ませた
大きな大きなお屋敷があった。
わたしは興味本位で近づき、
外に貼ってある張り紙を見る。
「太一くんを呼んできてください」
太一・・・?
あ、わたしの弟だ。
いかにも時代劇に出てきそうな
ふすまいっぱいのお屋敷は
柵から数メートルないくらいに
めいいっぱい建てられている。
そのお屋敷に向かって
「わたしが連れてきてあげましょうかー?」
とわたしは叫んでみた。
「ありがとう、助かるわー!」
と、年のとったであろう女性の声が返って来た。
わたしは「人が住んでるんだ」
それだけで何故か期待に胸が膨らみ
「自分も入れるかも」と言う
冒険心が掻き立てられていた。
しばらくして弟を連れてきた。
「太一連れてきましたよー!」
そうお屋敷に叫んでみると
「ありがとう、太一くんだけ中へ入れてー!」
そう返って来た。
「なーんだ、わたしは入れないのか」
そう思いながら弟だけを中に入れる。
中には入り30分経過。
何も音が聞こえない。
何も変化もない。
弟も出てこない。
急に不安になったわたしは
本来いるはずもない兄と姉に相談した。
姉は「大丈夫だろうけど・・・。」
と、それでも不安そうに言った。
兄は「今すぐ乗り込むぞ」と
きっと家にあったであろう
日本刀を片手に持って柵を登り始めた。
3人でお屋敷に入った。
わたしは怖くて少し離れたところから
姉と兄についていった。
兄が勢いよくふすまをあけた。
わたしはその部屋には入らず、
遠くの柱の影から見ていた。
「おい!テメェ!なにやってんだよおおぉお!」
そう叫ぶ兄の声と、姉の奇声。
わたしはなんだか大変なことになってる、
それだけは理解できた。
少しだけ覗きに行くと
きらびやかな着物を着せられた弟が
両手で必死に顔を抑えて、叫び、のたうち回っている。
その横では、金、赤、橙などの
華美な色で作られた着物を身にまとい、
髪を頭上でだんごにし、
白いお面をつけた年のとった女に
兄が馬乗りになって襲いかかろうとしていた。
弟に何があったのか、
この女が何者なのか理解不能で、
ただただ怖くてわたしはそれを
遠くで見るしかできなかった。
ふすまがバーンッ!と壊れて
出てきた兄と女はお互いに日本刀を持っていた。
女は言った。
「あの時成績が悪かった三人兄弟の一番上は貴様だな!
そしてあの時何も出来ないでビービー泣いてた
三人兄弟真ん中はお前だな、
そして今、バカみたいにうるさい、わがまま
一番下の太一!
悪い子なんだよお前ら全員!当たり前の報いなんだよ!
だから死ねよ!死ねって!悪い子に生きる価値はない!」
その会話を耳にして自分が入ってないことに気づいた。
「三人兄弟・・・?わたしは?」
兄が女に襲いかかる、
女は叫びながらそれを交わす
避けきれずに血が出る。
姉もなにか持っていた。
わたしはよろよろと近くにあった
アイロンを手にする。
兄と姉と女は相変わらずもめている。
もめているなんてもんじゃない。
死闘だ。
弟も相変わらず向こうの部屋で
のたうちまわっている。
とりあえず・・・。
わたしはアイロンを振り上げ
女に走り向かった。
気付いたわたしの周りには
もう誰もいなかった。
ただアイロンだけが転がっていて
ただ赤いものだけが
広がっていた。
悪い子