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木曜日、ラブホ街で彼女を見た

作者: 155

 先週の木曜日、それが綾乃のことを俺が見た最後の日だった。

 ――こういう言い方をすると綾乃が死んじゃったみたいに聞こえるけど、そうじゃない。

 ただ単に、俺と綾乃がまったく会わなくなったというだけ。


 綾乃とは数ヶ月ほど前から付き合うようになって、来月には近場の温泉宿まで一泊で旅行に行く約束までしていた。


「それなのに、なんなんだよっ!」




 その日の夜、俺はバイトが早上がりになったので、今度行く旅行先のガイドブックでも買っておこうかと駅前の書店に向かっていた。

 俺のバイト先から本屋のある駅前までの間には、ちょっといかがわしいスポットがあるのだけど、そのせいで遠回りするのも馬鹿らしいので、そのいかがわしいスポット(ラブホテル街)を突っ切ることにしたんだ。


「そのうち綾乃ともこういうところに来るようになるのかな……」


 なんて欲望を思い浮かべていたら、眼の前を一組のカップルが通り過ぎて、ラブホの一つに入っていくところだった。


「ちくしょう、うらやましい」


 しかし、そんな考えは一瞬で消える。カップルの片方、女の方は綾乃だった。男の方は知らないやつ。高身長でいかにもイケメンって雰囲気がだだ漏れしている、嫌な感じの種馬野郎。


 二人は仲睦まじそうにベタベタとくっつきながら、薄暗いエントランスホールに消えていった。


「え? いや……今の、綾乃だよな……」


 見間違いの可能性も考えて、メッセージアプリで綾乃に連絡を入れてみるも全くの無反応。既読すらつかない。


「あいつ、今日はバイトもない日だったから、絶対に暇してるはずなのに……」



 俺はその場から動くこともできず、周りから不審なものを見るような目を向けられていても、じっとその場に身を潜めていた。

 そして、きっかり2時間後、件のカップルがホテルから出てきた。入っていったときよりも更にいちゃつきぶりが増しているような気がして、更にイラつく。

 ムカムカしながらも証拠として、綾乃とその男の顔がしっかりわかるようにスマホで撮影して、メッセージアプリに添付し、すぐさま綾乃に送りつけてやる。

 しかし、その後既読はついたが、返信は梨の礫。こっちの意図を理解していないのかと思って再度メッセージを送ってみるも、今度はまた何も反応がない。


「まさか、ブロックされたとか?」


 なんの反論もなくブロックとかないでしょ、と思いながらも、ネットに書かれていたブロックされた時の確認方法というのを試してみる。


「これは……ブロックされてんな。つっかNTRれたのか、俺……まじかよ」




 綾乃と俺とは違う大学に通っているので、普段は大学構内で会うことなどあり得ない。

 道ですれ違うなんて、それこそ天文学的確率になってしまうことだろう。


「ということで、綾乃とは二度と会わない。つーか、別れたんだと思う」


 確認のしようがないので、あくまでも想像でしかないが、状況的に間違いはないだろうと思っている。


「いくらなんでも酷すぎじゃない? それじゃ、藤本くんが可哀想すぎるよ」

「うん、まぁ……。可哀想って言われるのも癪に障るけどね。あんな女とは別れて正解だと思うし、ショックはショックだけど、良かったとも思っているところもあるにはあるんだ」

「ごめんなさい。藤本くんの受けた屈辱のことまで考えが及ばなかった。そもそも私が悪いんだもんね、本当にごめんなさい」

「いやいや。疋田(ひきた)はまぁァァァァァったく悪くないから謝らないでよ。ほんと、謝られると俺も困っちまう」


 俺のそういった言葉にさえ眉尻を下げて、ものすごく申し訳なさそうな表情をする疋田。彼女の言う『そもそも』とは、綾乃と俺が知り合うきっかけがこの疋田だったから。




「疋田のやつ、他に友達の女の子も連れてくるって言ってたけど、なんでわざわざ他のやつなんて呼ぶんだろ。俺、若干人見知りするから困るんだよなぁ」


 疋田と俺は同じバイト先のバイト仲間。同じ大学生で年齢も同じってことで、徐々に仲良くなってきたところ。通う大学は違うけど、初めてできた異性の友人に少しだけ浮かれていたのは否めない。

 そんな疋田が、彼女のお兄さんの誕生日プレゼントを買うのにアドバイスがほしいって言うんで、ショッピングモールまで買い物しに行く約束をしたんだ。


「つっても俺、やつの兄さんのことなんてまったく知らないんだけど、いいんだろうか?」


 そんなことを考えながら待ち合わせの銅像の前で待っていると、向こうから疋田ともう一人の女の子がやってくるのが見えた。


「はじめまして!」

「はじめまして。俺、えっと、藤本大知(だいち)っていいます。常司大学の2年っす。よろしくお願いします」

「なに緊張してるの、藤本くん。こっちはね、私の友人の――」


 やっぱり少し緊張はしてしまうが、それを感じ取ってくれた疋田が間を取り持ってくれようとしたのだけど。


御影みかげ、御影綾乃(あやの)です! 大知くんっ、よろしくお願いします! あっ、大知くんって呼んでいいよね? 私のことも綾乃って呼んでね」

「お、おう。よろしくな、み、綾乃さん」


 いきなり疋田と俺の間に割って入っては、手を掴んで名前呼びしてくるなんていうコミュ力つよつよな感じにあてられて、俺の人見知りも発動する前に引っ込んでしまう。


「もうっ、綾乃。ちょっとは控えてよね。この子、考えるより行動ってタイプだから驚いたでしょ? 私と同じ明神大学の友だちなんだよ」

「うん、少し驚いたけど大丈夫。疋田は気にしなくても平気だから」



 それから3人でショッピングモールの中を歩いて、疋田のお兄さんの誕生日プレゼントを選んでいたんだけど、もうほとんど綾乃が俺に喋りかけてきていて、プレゼント選びのほうが二の次みたいになってしまった。


 それでもなんとかプレゼントは見つけられて、本日のミッションはコンプリートできたけど、疋田はなんだか終始つまらなそうだったな。



 この日はこれで終わったんだけど、翌日からは綾乃からのメッセージがもう大量に届くようになった。綾乃とはこっそりとメッセージアプリのIDを交換していたんだけど、まさかこんなにも早くメッセが来るとは思ってもみなかった。

 そして1週間もしないうちに『大知のこと好きになっちゃった。私と付き合って!』というメッセージが……。

 出会ってから間もないし、顔を見て話したのだって初日のあれだけだっていうのに、好きになったって言われても正直言って困ってしまう。


『じゃあ今から会おうよ!』


 と言われ、素直に会ってしまったのが運の尽きだったのか。顔を見て好きと言われてしまうと、俺も断れなくなってしまったのだ。

 何しろ俺は、生まれてこの方、女性とお付き合いなどしたことが皆無だったからな。免疫が無さすぎたんだよな、今思えば……。


 こうして疋田に巡り合わされた俺たちは交際することになったのだが、わずか数ヶ月後にあんなことになると知っていたなら、何が何でも断り続けたんだけど。後悔先に立たずとは、先人もよく言ったものだよ。




「でもごめん。私がもっと早くあの女の正体をわかっていれば、絶対に藤本くんには会わせなかったし、正体を知った後でも改心したのかもなんて考えないですぐに別れろって言えばよかったのに……」

「それは仕方ない。俺もあれにのめり込んでいたし、その時に疋田に何言われても聞かなかったと思う。だからこれはしょうがないよ」


 あの女、綾乃の正体は端的に言うとヤリ◯ん。しかも、彼女のいる男を誑かしては食い散らかし捨てていくと言った、かなりの性悪。あいつによって別れさせられたカップルが何組もいるとか。

 しかし、そんな女の誘惑に乗ってしまうような男なら、どのみち近いうちに浮気で別れることになりそうだから、女の子の方も良かったのではないかとも思ってしまう。


 お前が言うなって? はい、その通りです。申し訳ない。


 とりあえず俺がNTRされたわけじゃないのだけはわかったがなんともスッキリしない。


「でもさ、御影に言い寄られたときって、彼女なんて俺にはいなかったけどな。なんで誑かしてきたんだろう?」


 これは本当に理由がわからん。俺をわざわざ攻略するなんて、意味ないことこの上ないと思えるのだが。彼女のいる男を落とすのがあいつの趣味なんじゃないのか?


「えーっと、あの女にもそれなりに何かあるんじゃないかな? よ、よくわからないけど……」


 確かに、まともな考えの持ち主には見えないからな。通り魔的なやつに出会ったみたいなもんか。それはそれで、ものすごく不快だけど。


「それにさ、そもそも俺の初彼女が御影みたいなやつだったのがすごく悔しい。しかも、さっきの話だとヤリ◯んだっていうのに、結局俺、あいつと1回もやってないんだけど?」


 やっていないどころか、キスさえしたことがない。雰囲気がどうのこうのって言われて煙に巻かれていたような気がする。俺は彼女のこと、奥ゆかしいんだと勘違いしていたけど。


「え? そうなの? やってないんだ」

「こらこら、可愛い女の子がやっただのやられてだの言っちゃだめだろ? 間違いなく俺はあいつとやってないけどな」


 綾乃も見た目だけは可愛かったのは確かだけど、疋田だって負けないくらいに可愛いのだから、あんまり(シモ)のほうのことは言わないほうがいいと思う。


「本当の本当に?」

「本当の本当でキスさえしていないさ。俺のファーストキスは未だ大事にリボン付きの小箱に仕舞われたままだぞ」


 それはそれで悲しいけどね。せめて十代のうちにキスぐらいは済ませておきたかったと思うよ。俺の誕生日は12月25日なので、あと3ヶ月しかないからもう無理だよね……。サンタさんでもこれだけは一度もプレゼントしてくれたことないもんな。


「なら、いいや。不幸中の幸いだね」

「よくねぇし。やんなかったっていうことは、俺のこと男とは思わずに財布くらいにしか考えてなかったってことだろ? なんかムカつくわぁ」


 あんなやつ相手でも、健全な青少年的にはムラムラすることは多々あったからな。残念と思う気持ちがないというと嘘になる。



 それで綾乃のやつは、夏休み明けからも普通に大学へは来ているらしい。らしいっていうのは、疋田の方も綾乃とは縁を切っているから。あんな女だからな、当然だと思うよ。


「さて、報告はこれでおしまい。二十歳過ぎてりゃ酒でも飲んでパーッとやるところなんだろうけどな。悲しいかな、19歳はお酒が飲めましぇーん」

「ふっ、思っていたよりも藤本くんが元気そうで良かったよ。少し安心したなぁ」

「そう? だってあんなのに騙された挙げ句、何日も落ち込まされていたら堪ったもんじゃないだろ? んなの忘れるに限るよ」

「じゃあさ、今度バイト上がりにご飯でも一緒にどう? 奢るよ」


 まだ気にしているのか? 一緒に飯を食うのはいいけど、奢りはナシだな。


「そうだな、久しぶりに二人で飯にするか。でも奢りはナシな。元気もらったのは俺の方だし、どっちかってーと俺が奢るのが筋ってもんじゃね?」

「えー、意味わかんない。じゃ、間とって割り勘でいいね。そいじゃ張り切って今日もバイトに励もうじゃないか! おー!!」


 なんだかよくわからないけど、疋田の元気が話し始めより良くなっているので、よかったのかもしれん。やっぱり持つべきものは友だよな。もう当面、恋なんてしなくていいや。





 9月も下旬だけど気温は高めで、給料日前でお財布の密度は普段よりも低め。スカスカなのは、夏休み中に無駄遣いさせられたからな、どこかのクソ女にね!


 そういうことでやってきたのは、僕らの味方のイタリアンなファミレス店。


「ごめん、この前は俺が奢るとか言ってたのに、こんな店で申し訳ないし、恥ずかしすぎるよな」

「え? 別にいいと思うけどな。私のお財布だって藤本くんと大差変わりないもん」


 そう言っていただけると有り難い。今度給料入ったらケーキバイキングでも連れて行ってやろう。疋田のやつ、甘いもの好きだって言っていたもんな。


「疋田は夏休み中、何やってたんだ?」

「ん〜、半分はバイトで半分は実家でゴロゴロしていたかな」

「ふーん。俺と似たようなもんか。そういや、よくバイトでも俺と被ってたもんな」

「そうだよ。2ヶ月も夏休みあるのに、なんだか無駄に過ごした気がして、もったいないことしちゃったと思うなぁ」

「無駄にしたと言ったら、俺のほうが余計な無駄が多いよ……。って、また嫌なこと思い出しちまったよ……」

「もうっ、忘れるんじゃなかったの?」


 笑いながらの疋田に叱られる。そうだった。あんなもんは過ぎたことだし、もうどうでもいいんだ。


「そうだ。疋田は来週暇ある?」

「突然にどーした?」

「いや、暇ならどっかに遊びに行かないかなーって思ってさ」

「あれ? 私、藤本くんにデートに誘われているのかしら。振られて傷心中なくせに、思いの外切り替えが早いわよね」

「傷心中じゃねーし! じゃぁいいよ。俺一人で遊んでくるからっ」

「もう、拗ねないでよ。ちゃんと暇だし、藤本くんの誘いを喜んでお受けするよ!」


 なんだよ、ちゃんと暇って。でも、まぁ、良かった。




「わぁ、藤本くんって車持ってたの?」

「違うよ、レンタカー。さすがに家賃並みの駐車場代は俺には賄いきれないよ」

「だよねー。でも今日のために車を用意してくれただけでも嬉しいなっ」

「そ、そっか。そりゃ良かった」


 車って言ってもいわゆるコンパクトカーってやつで、そんなに豪勢じゃないんだけどね。軽自動車でないのだけは見栄だけどさ。

 御影はこんなとき、車で迎えに来るのは当たり前で、コンパクトカーなんかで来ると機嫌を損ねることもあったから、喜んでくれている疋田はそれだけで俺も有り難いと思う。

 どうせ遊ぶなら楽しいほうがいいに決まっているからな。


「ねぇ、それで今日はどこに連れて行ってくれるの?」

「疋田も今年は海に行ってないって言ってただろ。時期は外れたけど、まだ海もいいかなって思ってさ。さすがに泳ぐってわけにはいかないけど、水際で遊ぶくらいならできるだろうって」

「ええっ、ほんとに!? 海行きたかったのー!! やったぁ」

「そこまで喜んでもらうと、計画した甲斐があるな」


 御影と比べるのは疋田に申し訳ないけど、こういうところもまったく違う。俺はなんであんな女と付き合ってしまったんだろう。ほんと、人生一の大失敗かもしれん。



 時期を外したおかげか、道路もまったく渋滞なくスイスイと海まで流れていく。2時間かからない程度で、キラキラと光る水面が見えてきた。


「やったー、海だねー!」

「海を見ただけで喜びすぎだってーの。まずは昼だし、腹ごしらえが先だな。漁港のところに新鮮な海の幸を食わしてくれる食堂があるんだけど、疋田は魚介とか平気か?」


 海を目の前にしてから聞くことじゃないかもしれないけど、忘れていたんだから仕方ないだろ?


「お魚も貝類も大好きだよ。焼く煮る蒸すに生、なんでもおっけー」

「そりゃ良かった。連れてきた甲斐があるなっ」


 御影は生臭いのが嫌だの、お肉のほうがいいだの、食に関しても我儘だったよな。なんで俺はあれに気づかなかったんだろう。恋は盲目とは、よく言ったものだ。



 俺は漁港まで行くと車を回して、端のほうにある一軒の食堂の前に車を停める。

 都内のレストランなどに比べるとやや、いや、かなり古ぼけているし、佇まいもオサレ感はゼロに等しい。ただし、料理だけは絶品なので間違いはない。


「なんか美味しそうなもの出してきそうな雰囲気あるねっ」

「おっ、疋田はわかってるな。絶対オススメだから、何でも食っていいぞ」


 ガラガラと少しきしむ引き戸を開けて店内に入る。客は釣り人っぽい人たちが数人と、年かさの御夫婦らしき人たちだけ。平日だしね、ちょうどいいっちゃちょうどよかった。


「藤本くんは何を頼むの?」

「んっとな。まずはカサゴの唐揚げと海鮮丼……は止めて、刺し身は盛り合わせを二人前頼もう。そうだな、焼き魚定食にしようかな。家じゃなかなか魚を焼くことないしさ」

「じゃあ私は煮魚の定食にしようかな。カサゴ、ちょっとちょうだいね」




「食った、食った。まさか二人前であんなに山盛りだとは思わなかったな」

「藤本くん、あのお店来たことあるんでしょ?」

「ああ、ずっと前にあるけど、刺し身はそのとき頼まなかったんだよな。サービス良すぎだよ」

「ほんと、お腹いっぱい! ちょっと腹ごなしに海辺でも散歩しない?」



 漁港から車を5分ほど走らせたところに、ちょっとした砂浜と小ぢんまりした磯がある。浜辺の秋も半ばな時期なので誰もいない貸切状態に、俺も疋田もテンションが上がる。


「裸足になってもいいかな?」

「大丈夫だろ? つーか、俺は既にサンダルを履いているけどな!」

「あっ、ズルい。私も脱いじゃおーっと」


 真夏に比べると水温も低いんだろうけど、足がちょっと浸かるくらいではなんてことはない。念の為にタオルも余分に持ってきたし、水道が使えなかった場合に備えて、ポリタンクに水も用意してきた。


「磯に入るときはサンダルを履くんだぞ」

「もうっ。私は子供じゃないんだから、それくらいは分かってますよーだ!」


 頬を膨らませ、足元の水をぴちゃぴちゃと掛けてくる疋田。その楽しそうな笑顔を見ているだけで、今日ここまで来て良かったと思える。


「転ぶなよ。さすがに着替えまでは持ってきてないからな」

「大丈夫だよー。毎日歩いて足腰鍛えてるんだから、これくらいの波なんて……うわっ」


 砂に足を取られた瞬間に、悪い具合に少し大きな波が来てしまい、疋田はバランスを崩してしまう。


「あっ、危ない!」


 俺はとっさに疋田の傍に近づき、彼女の腰を取って身体を支えた。疋田が足腰鍛えているというのは本当なようで倒れるまではなかったけど、彼女の身体はすっぽりと俺の腕の中に収まってしまう。


「大丈夫か?」

「う、うん。平気。ありがとうね」


 腕の中の疋田はあまりにも小さくて、それにとてもいい香りがしたので、庇護欲とかいろんなもんが顔を出してきそうになり、ぐっと気持ちを抑え込むのに苦労する。

 誰もいない浜辺で抱き合っているといったシチュエーションなのに気づくと、突然なんとも言えない恥ずかしさに襲われた。


「え、えっと。もうちょっと波際から離れたほうがいいかな」

「う、うん。そうするね……でもまた転ぶといけないから……えと……手を繋いじゃ駄目かな?」


 上目遣いでそんな事を言われてしまうと、この藤本大知、NOなどと言う言葉が辞書から消失してしまうのだ。


「お、おう。そうだな……転ぶのはマズいからな。手は繋いでおこう」

「うんっ!」



 貝殻やシーグラスなどを見つけながら、ゆっくりとゆーっくりと浜を歩いて行った。正直、波際からすでに離れているので水に濡れる心配はないし、手を繋いだままでは貝殻も拾いにくい。


「わー、見て! これもきれい」

「じゃあ、それもこれに入れておけよ」


 ポケットに(何故か)入っていたビニール袋には、さっきから拾っていた貝殻やシーグラスに小さい流木など、よくわからないものがたくさん入っている。

 疋田は拾ったそれを俺の持つビニール袋に入れると、嬉しそうに繋いでいる手の方をブンブンと振る。


「どーしよっ、すごく楽しい!」

「そっか。そりゃ良かった。連れてきた甲斐があるってもんだぞ」

「ほんと、ありがとうね……ふじ……だいちっ」

「おっふ。いきなり名前呼びとかどーした!?」


 不意を突かれて驚いたなんてことは、おくびにも出さないよ。恥ずかしいだろ?


「えへへ。いーじゃん。もうだいちとは長い仲だし、良くなくない? それとも……いや?」

「そんなわけねぇだろ。じゃあ、疋田も名前で呼ばないとな……。疋田ってなんて名前だっけ?」


 ぶんっと音が出るんじゃないかと思うくらいに、思いっきり腕を振り回して繋いでいた手を外される。


「ひどいっ、だいちなんてもう知らない!」


 そう言うと一人で浜を走っていってしまう。で、転ぶ。


「おい、大丈夫か?」

「ペッペッペッ。ああもうやだ。口の中に砂が入ったぁ〜、全部だいちの所為だー」

「えー!? 俺が悪いの。だって、走っていって一人で転んだのは疋田じゃん」

「あきなっ」

「?」

「私の名前だよ。あきな! 疋田明菜、もう忘れないでよねっ」




 くたくたになるまで、即席のプライベートビーチで遊び尽くした。疋田……もとい、明菜も満足そうな顔をしている。


「さて、帰るとしましょうか?」

「え〜、もう帰るの?」

「残念ながらレンタカーには返却期限というものがありましてね……すまないな、明菜」

「ううん。ぜんぜん! 帰りも2時間位かかるんだもんね。運転ありがとう」


 そういうのがすっと出てくるところが素晴らしいと思うね。誰かさんとは本当に大違いすぎて、女の子に対する俺の認識を覆してきてくれる。





 初冬の声が聞こえてきた。あんなにも酷かった暑さも気づけばすっかり消え去って、街路樹の葉っぱもすっかり赤や黄色に色づいている。短い秋ももう終わり。


 明菜とは相変わらず仲良くやっている。バイトのシフトもわざわざ合わせるようにして、できるだけ顔を合わせられるようにしているんだ。

 やっぱり彼女といっしょだと楽しいし、気分も乗るって感じなんだよな。こんなに身近なところにこういう女性がいるなんて気づかない俺は、ほんと馬鹿だと思う。

 もう恋なんて暫くいいや、なんて豪語していたのに、なんなんだよとは自分でも思うが、今の俺はすっかり明菜に惹かれている。男ってやつがバカなのか、単純に俺がバカなだけなのか。


 さて、今日はバイトがないので、明菜とデートだ。と言っても大したことはしないし、特に明菜からも希望もないので、実は上京して一度も行ったことがないスカイツリーに行ってみようと思っている。

 夕方ちょっと前に展望台に上がって、夜の帳が降りるまでゆっくり景色を楽しめたらな、と考えているんだ。地元の明菜からしたらつまらないかも知れないけど。


「そんなことないよ。意外と地元の名所なんて行かないもんだよ。スカイツリーは昼間に一回だけだし、東京タワーも小中の遠足で行った二度だけだよ。他にも展望台とかあるビルはあるけど、実際行ったことがないもん」

「よかった。お上りさん的なやつでバカにされるかとヒヤヒヤしちゃったよ」

「私は、だいちのことをバカになんか絶対にしないですぅ」

「そうだったな。申し訳ない」




 オレンジ色の夕日が山の向こうに消えていって、街に火が灯り、空に幾つかだけだけど星が瞬くまで、二人寄り添って景色を眺めていた。明菜とはいくら話をしていても話題が尽きることはない。

 混雑を理由に、今度もまた手も繋いだ。たったそれだけでドキドキするんだから、ハタチ近いっていうのに高校生みたいで小っ恥ずかしいったらありゃしない。でも、まあ嬉しかったのも事実だし……。


「お腹すいてないか?」

「そうだね。そろそろ降りてご飯にしようか」

「実は今日、予約している店があって……。あ、でも洒落たところじゃないんだけどね」

「そういうのは大丈夫だよ。そういうことなら早く行こうか」


 明菜を連れてきたのは、大学の先輩に教えてもらった穴場のメキシコ料理店。中南米系のご飯が美味しいらしい。


「明菜は辛いのとか大丈夫な方?」

「まったくもって平気。というか好きだよ」

「良かった。そういうのは先に気にしなきゃいけないのに……。やっぱ抜けてるなぁ」

「そんなことないって。だいちの駄目なところは、そう言って自分を卑下するところだと思うよ」


 すぐさまちょうどいいフォローをしてくれるのも、明菜のいいところ。これのお陰で助けられたことも何度もある。卑下癖は早く直さないとな。


「ねぇ、だいち。来月のクリスマスの日って何か予定ある?」

「クリスマス? 冬休みだし何にも。あるとしたら、バイトか実家に帰る程度かな。一応25日は俺の誕生日だけど、これと言って何もないし」

「じゃあ、その日。私が予約していいかな?」

「予約って。分かった。その日はバイトも入れないようにしておくな。二人して休んだら店長は困るだろうけど、いつも無茶振り聞いてやってんだから、その日くらいいいよな」

「じゃぁ、クリスマスと誕生日祝を盛大にやろうよ」


 明菜は俺の誕生日をもともと知っている。そんな話がバイトの休憩中に以前あったから。ちなみに彼女の誕生日は7月10日で、絶賛バカ女と付き合っていた最中なので、お祝いは最低限しかやってあげられなかった。


 それにしても、クリスマスと誕生日か。

 本当なら俺の方から誘いたかったけど、なんか自分の誕生日を祝ってくれと言っているような気がして気が引けていたんだよな。で、グズグズしていたら先に明菜から誘われてしまったという次第。うーん、情けない。


 せっかくだし、クリスマスは明菜にいっぱい楽しんで貰えるように目いっぱい計画を立ててやろうと思う。あいつがびっくりして感動しているところで告白をしようとも考えている。もうただの友だちのままでいるのは嫌なんだ。


 まじで俺は馬鹿だと思う。こんなにも近くに素敵な女性がいたにも関わらず、ちゃんと目を向けるでもなく、とんでもないあばずれにまんまと引っかかってしまった。悔やんでもあの時間は帰ってこないが、これからの時間は最大限に有意義に使うつもりだ。

 そのためにもまずは明菜を俺の彼女にしないといけない。多分だけど、明菜も俺のことは悪しからず思ってくれていると思う。自信はないけれど……。

 ただ、だからといって尻込みしていては何も始まらないし、またバカをやるだけになってしまう。明菜のことは俺が絶対に幸せにする、その心意気でいくつもり。




 大学の友人達とは早めの忘年会とやらで、12月に入った途端、何度も飲み会を行っている。俺はまだ飲めないので烏龍茶で腹がタポタポ。あまりに忘年しすぎて、今年のことはすっかり忘れそうだ。まあ、忘れたい過去もありますけどね。


 バイトの方も年末商戦とやらに巻き込まれて、ただのバイトだというのに、シフトを嫌ってほどねじ込まれている。多分、クリスマスに俺と明菜で休むので店長が嫌がらせをしているんだろうな。忙しすぎて被害妄想爆裂中。



 忙しいながらも楽しい日々を過ごしていると、あっという間に12月24日が来てしまった。


 イブの今日は、店長がお子さんたちと過ごせないストレスから暴走気味だったけれど、なんとか閉店を無事に迎えられた。急いで帰れば間に合うって、締め作業は俺らに任せて店長はさっさと帰っていったよ。ほんと、自分だけ勝手なやつだけど、おこちゃまのことを考えると致し方ないとも思う。


 今日、明菜にはお昼に会ったけど、シフトに入っていないので彼女は休みだ。明日の誕生日に向けて何か用意をしてくれているのだと思う。俺とその他メンバーで締めの作業を店長に代わってしっかり行って、忙しない一日が終わった。


「さて、帰りましょうか」


 あまり慣れていない締め作業を行ったので、いつもよりも帰りは遅くなってしまう。クリスマスイブということで街は賑やかだし、カップルもあちらこちらでイチャイチャと五月蝿いが、今日の俺はそんなものにはイライラしない。


 だって、明日には明菜に俺の誕生日を祝ってもらえるのだから。子供の頃はクリスマスと誕生日がいっしょくたになって残念な気持ちになっていたけど、今回は一緒に居てくれるヒトのお陰で、何倍も嬉しく感じるから不思議なもんだよ。



 帰りの電車に乗った時間で23時を回ってしまったので、急いで帰らないと明日にひびきそうで怖い。朝には弱い方なので、もし明菜が朝からうちに来るってなったら困るもんね。


「明日のスケジュールは全部内緒って言われたけど、どうなんだろう……。楽しみすぎて今夜は眠れないかもな」


 ピロン♪

 メッセージアプリの着信音が鳴る。こんな時間に誰だろう?


『今日は何時に帰宅の予定?』


 明菜からだった。いつもなら23時過ぎには寝てしまうって言っていたのに、今日はちょっと夜更かしだな。


「えっと、『いま電車に乗ったところ。あと30分ちょっとくらいで帰るかな。いや、その前にコンビニで買物あるから40〜50分後くらいかな』っと。送信」

『了解! 待ってるね』

「待ってるね? 何を待つんだ?」




 今日は明菜と11時に待ち合わせして、お昼ごはんを一緒に食べた。明日は俺の誕生日メインになるので、せっかくのクリスマスイブだから、ちょっと雰囲気だけ味わってみたんだ。

 世間一般的に何故かクリスマスイブのほうが盛り上がるからね。ちょっとだけ便乗してみた。


「十代最後の日だけど、どんな感じ? やり残したこととかない?」

「えー、普通だよ。特に何かって言われても思い浮かばないなぁ。ああ、初キスくらいは十代のうちに経験しておきたかったかも。冗談だけどね」

「それはちょっと……」


 あのバカ女と別れた直後に思ったことを思い出したので、軽口のつもりで言ってみたが、明菜にはちょっと引かれたようだ。しくじった……。


「あ、明菜こそ十代最後の日はどうだったんだよ?」


 明菜のほうが5ヶ月も前にハタチになっている。ちょっとだけお姉さんだけど、実際はあどけないので年下に思えるんだよな。


「特に何も。だいちはあの女にお熱だったから、一人さみしく誕生日を迎えただけだし」

「それはもう、失礼しました。ごめんよ」


 余計なことを聞くんじゃなかった。さっきのキスの行の仕返しかもな……。

 なんて楽しく話をしていたら、あっという間にバイトの時間になってしまったので、後ろ髪引かれる思いで別れることになる。明菜は特に用事もないってことで、そのまま自宅に帰ると言っていた。




 ちょうど乗換駅に着いてしまったので、返信が遅れてしまった間に理由を聞くことができなくなった。メッセージを送ったけど既読が付かなかったんだよね。多分、明菜は寝ちゃったんだろうと思う。



 自宅に一番近いコンビニで買い物。明日の朝食が何もなかったので、パンとコーヒー牛乳を買っておく。甘い飲み物は得意じゃないけど、コーヒー牛乳だけは別物なんだよな。


 あとは、明日明菜がうちに来て、告白も上手くいって、雰囲気が何気に良くなったら必要になるかもしれないブツも、念の為用意しておくことにする。まずそんなことにはならないかもだけど、用心に越したことはないと理由をつける。


 他に必要なものはないかと店内をふらついたあとに精算をして店を出る。やけに今日は寒いと思ったら、白いものがちらついてきていた。


「積もらないといいな。天気予報じゃ、ちらつく程度と言っていたような気もするし、大丈夫だろう」


 明菜が雪のせいで来れなくなったら嫌だもんな。彼女が来れないようなら、俺の方から彼女の自宅に向かえばいいだけだけど、明菜の自宅は実家だし、ご両親とかに会うのは彼女と付き合う前なので気が引ける。


 余計なことを考えていたせいなのか、後ろに近づいてくる人影にまったく気づかなかった。


「うわっっちゅ!」


 いきなり両目を覆われて、思わず変な声が出た。


「だーれだ?」

「ちょっ、明菜かよ……。まじでびっくりしたんだけど」

「なんだ、すぐ分かっちゃったの、つまんない」

「え? つーか、なんでいるの?」


 グレーのニットコートに赤系のミニスカート。黒のタイツにショートブーツ姿の明菜がそこにいる。昼間とは違う服装なので、わざわざ着替えてきたのだろうか。


「なんでいる、っていうのはひどくない?」

「いや、普通に居ないと思っているヒトがいると驚かないか?」

「ま、そうだよね。いいじゃん。ほれ、寒いから早くだいちのウチ行こうよ?」


 ……これから俺んち来るの? まじで? 明菜は俺の返事も聞かずにとことこ歩き始めてしまい、俺は慌ててあとをついていく。


「こんな時間まで待っててくれたのか?」

「勝手にしてたことだから気にしないでよ。ほら、あっちの通りにファミレスあるでしょ? あそこに居たから寒くなかったし」

「でも、なんで?」

「ん、誰よりも一番におめでとうって言いたいなって思ったからかな。おっ、着いたね。早く部屋を温めてちょうだいよ〜」


 今の時刻は12月24日の23時37分。俺の誕生日までは残り23分ほどで、日付が変わる前には部屋も温まるだろう。それにしても一番に、か。カワイイこと言ってくれるよな。


 紅茶でも淹れようかとお湯を沸かしていると、明菜がすぐさまこっちに来てくれと呼んでくる。


「どした? Gでも出たか?」

「そんなの出ないよ。そうじゃなくて、えっと……。じ、時間がもうないから、えっと……」

「どうしたんだ? 時間がないって日付変わるまでのことか?」


 時計をみたら、いつの間にか23時50分を回っていた。俺の永遠の十代もあと僅か。ぜんぜん永遠じゃないんだな。


「あのね……。だいち、もうちょっとこっちに近づいて。まだ遠いって、早く来てよ!」

「?」


 何を慌てているのかさっぱりわからないけど、近づけというので、人一人分くらい間を空けるくらいまで近づいてみた。


「ああもう!」

「えっ……!?」


 明菜に両の肩を掴まれて、ぐいっと引き寄せられた。そのまま、明菜は俺の唇にその唇を重ねてくる。


 まず初めに柔らかな感触があって、後からはなんともいえない幸せな気持ちが湧いてきた。


 チュッという小さな音とともに唇が離れ、俺は茫然自失状態で棒立ちになるしかなく……。


「じゅ、順番があってないけど、私、だいちのことが好き! だいちも私のこと好きだよね? 勘違いしてないよね? してないよね? してたら私……。どうしよう。暴走しちゃった……」


「あ、え、う……。っと。明菜……えっと、俺も明菜のことが好きで、明日、告白しようと思っていたんだけど……えと? 明菜も俺のことが好き?」


「……うん。大好き。ずっと好きだった」


「ごめん。嬉しいんだけど、めちゃ混乱していて上手く状況が把握できないんだ。えっと、あの、キス、はどういう意図で?」


「ファーストキスは十代のうちにしたかったっていうから……。ほら、もう2分前だよ?」


「あぁ、なるほど。じゃ、もう一回しておく?」


「ん」


 俺の十代最後の数分でキスもできたし、素晴らしい彼女もできた。真冬なのに体中がかっかと熱くて暖房じゃなくて冷房に切り替えようかなって考えるほどまだ冷静になれていなけどね。

 俺の二十歳の誕生日は、今までになく最高の日になりそうな予感がする。






 後日、なんであのアホ女が俺に言い寄ったのかわかった。明菜はずっと俺のことが好きだったそうで、そのことが御影に漏れて、あいつは明菜が告る前に俺を奪ってやろうと画策したのが真相らしい。

 そんなことを全くわかっていない俺は、まんまと御影に騙されて、あいつの恋人になってしまったという流れだったぽい。ただ、既存の恋人関係を破壊して奪うよりも、フリーの俺を横取りするだけでは面白みに欠けていたようで、俺には塩対応になっていたという感じなのだろう。想い人を奪われた明菜の反応が思いの外大人しかったのも原因かもしれないが。

 実際の明菜は相当悔やんだらしいけど、俺の選択がそうならば仕方ないという諦めもあったとか。ただ、御影があんな女だと知ったあとはだいぶ焦ったらしい。

 とはいうものの、紆余曲折ありながらも俺たちはこうして恋人同士になれたので、嫌な思い出はとっとと忘れるに限る。


 ちなみにだが、御影綾乃は俺との関係がなくなった後も相変わらずNTRムーブをかましていたらしいのだが、とあるヤバい系統の人にちょっかいを掛けてしまったらしく、現在大学を休学してまで行方をくらましているようだ。


 俺等にとっちゃざまぁな笑い話だけど、本人にしてみりゃ災難なんだろうな。言っても因果応報なんだから、諦めて報いを受けるがいいと思う。


 代わりに俺たちが幸せになってやるからさ。





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