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〇〇五:小覇王、酔いて銷金帳に入り 花和尚、大いに桃花村に暴れる

挿絵(By みてみん)

へえ、お立ち合い!これぞまさしく、花和尚魯智深、一世一代のドタバタ劇!

「小覇王」周通が浮かれて開けた閨の帳、覗けばそこにゃべっぴんさん…と思いきや、出てきたのは丸坊主の刺青だらけ、赤い嫁衣装をひん剥いた恐ろしきお坊さん!

「誰が嫁じゃい!」とばかりに、周通を投げ飛ばしゃあ、宴席はめちゃくちゃ、花道どころか大惨事。

めでたいはずの婚礼の夜が、あーら不思議、破戒坊主の大暴れ!これぞ痛快、水滸伝の一幕でございます!


【しおの】

 五臺山の智真長老は、静かに、しかし抗いようのない口調でこう告げました。

「智深よ、お前はもう、この山に留まることはできぬ。私には、東京(開封)の大相國寺で住持を務める智清禅師という弟弟子がおる。この手紙を持っていき、職事僧としての席を求めるがよい。昨夜、お前のために四句のを授けた。これからの人生の指針として、決して忘れるでないぞ」

 魯智深は膝をつき、恭しく頭を下げました。

「この魯智深、謹んでお言葉を拝聴いたします」

 長老は朗々と説き聞かせました。

『林に遭いて起き、山に遭いて富み、水に遭いて興り、江に遭いて止まる』

 智深はこの四句を深く胸に刻み、長老に九度の礼を捧げました。荷物を背負い、預かった手紙を懐に深くしまい込むと、師や僧たちに別れを告げ、五臺山を後にしました。まずは麓の鍛冶屋の隣にある宿に入り、あつらえていた禅杖と戒刀の仕上がりを待ってから旅立つ手筈です。

 智深が去ったと知るや、寺の僧たちは皆、厄介払いができたとばかりに手を取り合って喜びました。長老は火工道人に命じ、無惨に壊された金剛像の堂を片付けさせました。それから数日後、趙員外が修繕のための資金を携えて現れ、半山の亭は元の姿を取り戻したのです。

 禅の林を辞してまた、別の禅の道へと入る。

 志を同じくする友に出会えば、その絆は金をも断つほどに固い。

 その威風は賊の肝を冷やし、悟りの真理は密かに禅心を喜ばせる。

 あだ名は古くから「花和尚」と呼ばれ、道号は「魯智深」と授かった。

 俗世の因縁を断ち切る時、ついに真の悟りを開くだろうが、

 今、この目の前に、自分を理解してくれる者がいないのが口惜しい。

 魯智深は宿に数日滞在し、ようやく打ち上がった禅杖と戒刀を受け取りました。戒刀は鞘に収め、禅杖には重厚な漆を塗らせます。鉄工にたっぷりと代銀を支払うと、彼は荷を背負い、巨大な禅杖を手に取って歩き出しました。道行く人々はその異様な風体に目を見張り、「なんと凄まじい和尚だ」と囁き合いました。その姿を形容するならば、まさにこうです。

 黒い直裰じきとつを肩にかけ、青い帯を腰に巻く。

 鞘の中の戒刀は、三尺の氷のごとき鋭さを秘め、

 肩に担いだ禅杖は、まるで一本の鉄の蛇が横たわっているかのよう。

 鷺の脚のように細く締まった脚絆を巻き、蜘蛛の腹のように膨らんだ衣鉢を背負う。

 顎には針金のような髭が猛々しく茂り、はだけた胸元からは剛毛が覗く。

 酒を飲み肉を食らうその面構えは、およそ経を読む仏僧のそれではない。

 智深は東京を目指し、半月あまりの旅を続けました。格式ばった寺には目もくれず、宿屋に泊まっては酒を煽り肉を食らい、白昼堂々と街道を進みました。ある日のこと、辺りの美しい山水に見惚れているうちに、いつしか日は西に傾いていきました。

 山の影は深く沈み、えんじゅの梢の光も消えゆく。

 郊外の柳には鳥が帰り、村の杏の木陰には牛や羊が群れる。

 落日は霧を連れて沈み、ちぎれ雲は水面に赤い光を散らす。

 釣り人は舟を岸に寄せ、村の童は牛の背に揺られて家路を急ぐ。

 宿場まで辿り着けそうにないと悟った智深が、さらに十キロほど進んで板橋を渡ると、林に囲まれた一軒の立派な屋敷が見えてきました。「今夜はあそこで一夜を借りよう」と駆け寄ると、屋敷の中では数十人の小作人たちが、慌ただしく荷物を運び出しています。智深が禅杖を立てて挨拶をしても、彼らは不愛想に返すだけでした。

「和尚、こんな夜更けに何のご用だ」

「旅の者だが、宿に遅れてしまった。一晩泊めてはくれぬか」

「今夜は家中ひっくり返るような騒ぎなのだ。他へ行ってくれ」

「一晩ぐらいいいではないか。慈悲の心を持て」

「しつこいぞ、早く行け! 死にたいのか!」

 智深はカッと目を見開きました。

「この田舎者め、無礼千万な。一晩宿を借りるのが、なぜ死ぬことに繋がるのだ!」

 小作人たちが罵り、智深が禅杖を振り上げようとしたその時、奥から六十歳ほどの老人が杖をついて現れました。この地の主、桃花庄の劉太公です。

「私は五臺山から東京へ向かっている魯智深という者だ。一夜の宿を求めただけなのに、この者たちが私を縛り上げると脅すのだ」

 太公は非礼を詫び、智深を正堂へと招き入れました。

「師父、どうかお許しくだされ。実は今夜、我が家で避けられぬ一大事がありまして……。ところで師父、酒や肉は召し上がりますかな?」

「俺は酒も肉も忌まぬ。牛肉でも犬肉でも、あるだけ持ってきてくれ」

 運ばれてきた牛肉と酒を、智深はあっという間に平らげてしまいました。太公はその豪快な食べっぷりに、ただ呆気に取られるばかりです。

 太公が深い溜息をついたので、智深は尋ねました。

「なぜそう悲しげな顔をする。俺が長居するのが迷惑か?」

「いえ、そうではございません。実は今夜、娘を嫁に出すのです。しかし、それが到底納得のいく縁談ではなくて……」

 太公の話によれば、近くの桃花山に「小覇王」周通と名乗る賊が数百人の子分を引き連れて居座っており、力ずくで娘を妻にしようと、今夜まさに婿入りにやって来るのだというのです。

 それを聞いた智深は、腹を抱えて笑い飛ばしました。

「なるほど、そういうことか。俺は五臺山の長老から『因縁』を説いて聞かせる術を学んでいる。俺が娘さんの代わりに部屋で待ち、その大王とやらを説得して、悪心を改めさせてやろうではないか」

 太公は半信半疑でしたが、他に策もなく、智深を娘の寝室へと案内しました。

 智深は服を脱ぎ捨て、真っ裸で豪華なとばりの垂れるベッドへと潜り込みました。

 やがて夜も更け、午後八時を回る頃。銅鑼や太鼓の音が響き渡り、数十人の手下が松明を掲げて屋敷に乗り込んできました。首領の周通は、赤や緑の錦を身に纏い、ひどく酒に酔った様子で現れました。

 太公の案内で、周通は薄暗い寝室へと足を踏み入れます。

「ねえちゃん、なぜ迎えに来てくれないのだ。恥ずかしがることはない、明日からは山の大王の夫人なのだぞ」

 暗闇の中で手探りし、帳の中へ手を入れた周通が触れたのは、うら若き娘の肌ではなく、魯智深の毛むくじゃらの腹でした。

「何だ、これは……?」

 智深はその隙を逃さず、周通の襟首を掴んで床に叩き伏せました。

「この悪党め!」

 智深の鉄拳が周通の耳元で炸裂しました。「なぜ夫を打つんだ!」と悲鳴を上げる周通に、智深は怒号を浴びせます。

「お前の女房だ、よく拝みやがれ!」

 拳と蹴りの雨を降らせる中、驚いた太公たちが灯火を持って駆け込むと、そこには真っ裸の巨漢が、大王を馬乗りになって殴り飛ばしているという、世にも奇妙な光景がありました。

 子分たちが槍を手に飛び込んできましたが、智深は禅杖をひっ掴んで暴れ回ります。その圧倒的な武威に、賊たちは命からがら逃げ出しました。周通は馬の綱を解く余裕すらなく、柳の枝で馬を叩いて逃げ去りながら、「劉の老いぼれめ、覚えておけよ!」と捨て台詞を吐いて山へ逃げ帰りました。

 太公は頭を抱えて嘆きました。「これでは、一家皆殺しにされてしまいます」

 しかし智深は、平然と服を着ながら笑いました。

「心配はいらぬ。俺は元・延安府の経略相公に仕えた魯達提轄だ。たとえ千の軍勢が押し寄せようと、この禅杖ですべて叩き伏せてやる」

 一方、桃花山では、もう一人の頭領である李忠が、無惨な姿で逃げ帰ってきた周通を見て驚愕しました。

「兄貴、仇を討ってくれ!」

 激昂した李忠は、すぐさま馬を飛ばして桃花村へと向かいました。

 智深は屋敷の門前でどっしりと構えていました。李忠が「そこの禿和尚、姓名を名乗れ!」と叫ぶと、智深は堂々と答えました。

「俺は魯達だ。今は五臺山の魯智深と名乗っている!」

 その名を聞いた瞬間、李忠は驚きのあまり馬から飛び降り、その場に跪きました。

「兄貴、お久しぶりです! 周通を打ち据えたのは、まさか貴方だったとは」

 なんと、李忠はかつて渭州の酒楼で智深と酒を酌み交わしたことのある、薬売りの教頭だったのです。

 智深、李忠、そして太公の三人は、屋敷の奥で語り合いました。智深がことの経緯を話し、「太公にはこの娘一人しかいないのだ。この強引な縁談は、今すぐ白紙に戻せ」と李忠に迫りました。李忠は二つ返事で承諾し、周通を呼び出しました。周通もまた、相手があの「鄭屠を三拳で撲殺した魯提轄」だと知るや、恐怖に震えて平伏し、二度と娘に手を出さないことを誓いました。

 数日間、智深は桃花山に滞在しましたが、李忠と周通のどこか小市民的でケチな性格が肌に合いませんでした。ついに山を下りる決意を固めた智深に、二人は「明日、麓を通る者から路銀を奪い、それを餞別にしよう」と持ちかけました。

 智深は呆れ果てました。

「他人の物を奪って俺に贈るとは、どこまで腐った根性だ。よし、こいつらを少し驚かせてやろう」

 翌日、二人が強盗(打劫)に出かけた隙を見計らい、智深は残っていた子分たちを叩きのめしました。そして、並べられていた金銀の酒器を足で踏みつぶして平らにし、荷物に詰め込むと、山の裏側の崖から荷物ごと転がり落ち、そのまま東京を目指して風のように去って行きました。

 獲物もなく戻ってきた李忠と周通は、荒らされた山寨を見て言葉を失いました。

「あの禿和尚め、やってくれたな!」

 憤慨する周通でしたが、智深の底知れぬ武勇を思い出し、追いかける勇気など誰にもありませんでした。

 さて、桃花山を離れた魯智深。二十キロほどの道のりを歩き、空腹を抱えて野原を進んでいると、遠くの風に乗って、微かに鈴の音が聞こえてきました。

「ほう、寺か、それとも道観か。まずはあそこを目指してみよう」

 この魯智深の足跡が、この後、十数人の命を散らし、名刹を火の海に変える凄惨な事件へと繋がることを、この時の彼はまだ知る由もありませんでした。

 果たして、智深が辿り着いた先には何が待ち受けているのでしょうか。

【Vol.005】花和尚・智深の「お前、誰だよ!?」結婚式ブチギレ乱入事件


1. 五臺山、強制退学(笑)

最強の脳筋和尚・魯智深ろちしん、あまりの酒癖の悪さと暴れっぷりに、ついに寺をクビになります。師匠の長老から「お前、もう東京トンキンの別の寺に行け。あと、この不思議な予言(四句の偈)を覚えとけよ」って言われて、渋々山を下りることに。


2. 旅の途中で「桃花村」にチェックイン

東京への道のり、腹減りモードで立ち寄ったデカい屋敷。そこの主人の劉じいさんがガチ凹みしてるわけ。「どうしたん?」って聞いたら、「近くの山の山賊リーダー(自称・小覇王)が、『お前の娘を嫁にくれなきゃ村ごと消すぞ』って脅してきて、今夜無理やり結婚式なんだわ……」と。


3. 智深の「サプライズ・花嫁」作戦エグい

ここで智深が「おっしゃ、俺がなんとかしてやる」と立候補。どうしたかって? 娘のフリをして、真っ暗な寝室のベッドに全裸で潜り込んだ。(いや、絵面がキツすぎるだろ!)


4. 悲劇!山賊の「ドキドキ♡初夜」が地獄へ

ルンルン気分で部屋に入ってきた山賊・周通。「ねえちゃーん、待たせたなw」とか言いながら暗闇で布団に手を入れたら、触ったのはスベスベの肌……じゃなくて、智深のバキバキに毛深い腹。

次の瞬間、暗闇から「このクソ野郎がぁぁ!」と智深の鉄拳が炸裂。周通、何が起きたか分からずフルボッコ。まさに「地獄のハネムーン」状態。


5. まさかの「旧友」登場でカオス展開

逃げ帰った周通が、もう一人のボスを連れてリベンジに来るんだけど、そのボス(李忠)を見て智深が「あれ? お前、このあいだ一緒に飲んだ薬売りの兄ちゃんじゃん!」と。まさかのジム仲間(教頭)だった。

「智深ニキ、まじすか!? すみませんでした!」ってなって、強制結婚は中止。智深の圧倒的パワーで一件落着。


6. ケチな奴らは即切り!強奪バイバイ

しばらく山賊の砦に招待されるんだけど、この山賊コンビがとにかくケチ。「餞別をやるから、その辺の旅人からカツアゲしてくるまで待ってて」とか言い出す始末。

智深は「他人の金で恩を売るんじゃねえよ! ダサすぎ!」とブチギレ。隙を見て、山賊たちのシルバー食器(酒器)をベコベコに踏みつぶしてリュックに詰め、崖から転がり落ちるスタイルでバックレ。 そのまま東京へ爆走。


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主要人物図鑑(登場順)


再登場:打虎将だこしょう李忠:元祖・盛りすぎインフルエンサー

【スペック:中の下 / 属性:コスパ重視・営業マン】

ぶっちゃけどんな奴?

「虎を打つ将軍」なんてイカつい名前だけど、実際に虎を倒した実績はゼロ。 街角でサプリ(怪しい薬)を売りながら、棒術のパフォーマンスで投げ銭をもらってた、いわば「ストリート系実演販売士」です。

ここが「痛い」!

とにかくケチ(超コスパ主義)。第3回で魯智深ニキと再会した時、ニキが「パーッと飲もうぜ!」って誘ってるのに、「いや、商売の途中だから……」と渋り、ようやく出した金も少なすぎてニキに「少なっ!男らしくねーな!」とブチ切れられて突き返される始末。

今の言葉で言うと……

「プロフ盛りまくってるけど、中身は意外と小市民な節約家の中堅Youtuber」。

実力はそこそこあるけど、トップ層(ガチ勢)には一生勝てないタイプ。でも、山賊のリーダーとして周通を従えてるあたり、世渡り上手な中間管理職っぽさがあります。


009:小覇王しょうはおう周通★梁山泊一〇八将★

名前負け界のレジェンド

【スペック:下の上 / 属性:非モテの暴走・ヘタレ】

ぶっちゃけどんな奴?

「小覇王」っていうのは、中国史上最強クラスの英雄・項羽のあだ名。それをパクるという超絶イキりネームで登場。なのに、やってることは「村の娘を力ずくで嫁にする」という、ただの迷惑系。

初登場の黒歴史

「今夜は初夜だぜw」ってテンション爆上げで寝室に突っ込んだら、ベッドにいたのは全裸のムキムキおっさん(魯智深)。

暗闇で腹を触った瞬間にボコボコにされ、「パパ(劉太公)助けて!嫁が俺を殴るんだ!」と叫ぶ情けなさは、水滸伝の中でもトップクラスのダサさ。まさに「ビジュと名前だけは一丁前」な典型例です。

今の言葉で言うと……

「有名ブランドのロゴドンTシャツ着てるけど、中身は即レスで謝るヘタレな地雷男」。

李忠(先輩)が来たらすぐ泣きつくし、魯智深の正体を知った瞬間に速攻で土下座する切り替えの早さは、ある意味「現代のコミュ力」かもしれません。


【この二人の「生平(生き様)」】

この二人は、後に108人の梁山泊メンバーに入りますが、席次は「86位(李忠)」と「87位(周通)」。

まさに「どんぐりの背比べコンビ」です。

李忠は、地道に商売してコツコツ貯めるタイプだけど、器が小さくてニキ(魯智深)みたいな豪傑には一生理解されない。

周通は、強い奴には媚びて、弱い奴にはオラつく典型的な小物だけど、なぜか憎めない愛嬌(と情けなさ)がある。

この「桃花山コンビ」は、超人ばかりの水滸伝の中で「一番、俺ら一般人に近い(性格的にダメな意味で)」親しみやすさを持ったキャラクターなんです。周通の「暗闇で間違えてニキの腹をなでなでするシーン」は、今なら絶対SNSで切り抜き動画にされてバズる確定の「神回」ですね。

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