〇四参:偽の李逵が山道に仇をなし 黒旋風は沂嶺にて四頭の虎を葬ること
BLACK WHIRLWIND - Mother's Revenge
Yo… 月が冷たく笑ってる夜
沂嶺の闇に、母ちゃんの血がまだ乾かねえ
黒い旋風、俺は李逵
今夜、四匹の畜生を地獄に送る… let's go
山肌に積もる墨みたいな闇
老松が龍みたいにのたうち回る
足元に転がる子虎の死骸
血の滲み、母ちゃんの最期の叫びみたい
俺の髭、逆立って赤く染まる
眼光、渇筆で切り裂く月光
朴刀握り、刃先だけ白く光る
一瞬の静寂… 次は爆発だ
母ちゃんの仇! (仇!)
虎の牙! (牙!)
俺の怒り、黒旋風吹き荒れ!
四匹まとめて屠る!
血の雨降らせて、月を赤く染め!
復讐の調べ、永遠に響け!
一匹目、白額大虎が風を裂いて飛びかかる
吊り目ギラつき、爪が岩を砕く
俺は転がり、尾っ掴んで背中に乗る
拳で肋骨へし折り、頭蓋骨ぶち抜く!
二匹目、三匹目、子分みてぇに群がる
俺の斧、風を従えて雲を割る
肉裂く音、骨砕く音、血の匂い
母ちゃんの温もり、俺の腕に蘇る
神仏さえ黙るこの山中
人間と獣の境界線
俺は泣かねえ、涙は血に変わった
虚無の闇に、ただ一人立つ黒い巨漢
でもよ… それでいい
これが俺の義理、これが俺の道
母ちゃんの仇! (仇!)
虎の牙! (牙!)
黒旋風、永遠に吹き荒れ!
四匹の首、月下に転がす!
悲しい夜、でも最高にクールだろ?
李逵、生き様はこれだぜ…
Black Whirlwind… forever.
【しおの】
さて、物語は再び梁山泊へと戻る。
黒旋風こと李逵は、目を爛々と輝かせて兄貴分の宋江に詰め寄った。
「兄貴、その三つの約束ってのは一体何なんだ?」
宋江は、その荒々しくも純粋な弟分を諭すように静かに語りかけた。
「お前が故郷の沂州沂水県へ母親を迎えに行くというのなら、これだけは守ってもらわねばならん。第一に、寄り道をせずまっすぐ帰ってくること。道中、決して酒を口にしてはならない。第二に、お前はあまりに短気だ。誰かを同行させれば必ず諍いが起きる。だから、一人でこっそりと向かい、誰にも知られずに母親を連れて戻ってくるのだ。そして第三に、お前の代名詞とも言えるあの二丁の板斧を持って行ってはならん。道中は細心の注意を払い、一日も早く戻ってくるのだぞ」
李逵は大きく頷いた。
「それっぽっちの条件、守れないわけがねぇ。兄貴、安心してくれ。思い立ったが吉日だ、今すぐ出発するぜ。じっとしてなんかいられねぇからな」
李逵はすぐさま身支度を整えた。腰には一振りの腰刀を差し、手には朴刀を携え、懐には大銀一錠と小銀数枚を忍ばせる。勢いよく酒を数杯あおって景気づけをすると、「行ってきやす!」と地鳴りのような声で挨拶を残し、金沙灘の渡しを渡って颯爽と山を下りていった。
首領の晁蓋、そして宋江ら頭領たちは、その背中を見送った後、大寨の聚義庁へと戻った。しかし、宋江の心には暗雲が立ち込めていた。
「あの李逵のことだ。一人で行かせれば、必ずや何かしらの騒動を起こすに違いない。誰か、あいつと同郷の者はいないか。後を追わせ、様子を探らせたいのだが」
すると、杜遷が進み出て言った。
「朱貴だけが沂州沂水県の出身でございます。彼なら土地勘もあり、適任でしょう」
宋江は膝を打った。
「そうだった。以前、白龍廟で集まった際、李逵自らが朱貴を同郷だと言っていたな」
すぐさま使いが走らされ、麓の店から朱貴が呼び寄せられた。宋江は彼に切々と語った。
「実は今、李逵が母親を迎えに故郷へ発ったのだ。あいつの酒癖と短気を案じて一人の旅にさせたのだが、やはり心配でならない。賢弟、悪いが後を追い、あいつの様子を見守ってくれないか」
朱貴は恭しく答えた。
「承知いたしました。私は確かに沂水県の出身です。西門の外には弟の朱富が酒屋を営んでおります。李逵は確か、百丈村の董という店主のもとに身を寄せていたはず。兄の李達は今も他家で作男をしていると聞いています。李逵は幼少より乱暴者で、人を殺めて逃亡して以来、音信不通でしたが……。私が様子を見に行くのは造作もないことですが、店を空けるのが気がかりです。久々の帰郷ゆえ、弟の顔も見たいのですが」
宋江は微笑んで言った。
「店番なら心配いらぬ。侯健と石勇に代わらせよう」
朱貴は承諾し、頭領たちに別れを告げると、急ぎ旅の支度を整えて沂州へと旅立った。
その頃、山寨では宋江と晁蓋らが日々宴を催し、呉用と共に不思議な天書を読み解くなどして過ごしていたが、話は李逵の道中へと移る。
李逵は一人、梁山泊を離れて沂水県の境へと足を踏み入れた。驚くべきことに、彼は宋江との約束を頑なに守り、道中では一滴の酒も口にせず、それゆえに揉め事一つ起こさずに旅を続けていた。
県の西門まで辿り着くと、何やら人だかりができ、高札を覗き込んでいる。好奇心に駆られた李逵が背後から聞き耳を立てると、読み上げられる声が聞こえてきた。
「第一位の正犯、宋江、鄆城県の者。第二位の共犯、戴宗、江州の元牢役人。第三位の共犯、李逵、沂州沂水県の者――」
己の名が呼ばれた瞬間、李逵は思わずカッとなって手を振り上げ、怒鳴りそうになった。だがその時、一人の男が背後から飛び出し、彼の腰を力一杯抱きかかえた。
「張の兄貴! こんなところで何をしてるんですかい!」
振り返れば、それは変装した朱貴であった。
「お前、何でここにいるんだ?」
驚く李逵を、朱貴は鋭い目配せで制した。
「いいから、こっちへ来てください。話があります」
二人は西門に近い村の酒屋へ入り、奥の静かな一室に腰を下ろした。朱貴は声を潜めて李逵を叱り飛ばした。
「お前という奴は、なんて無茶を! あの高札には宋江が一万貫、戴宗が五千貫、そしてお前には三千貫の賞金が懸かっているんだぞ。そんな顔をしてのんきに眺めていて、もし捕まったらどうするつもりだ。宋江の兄貴がお前を心配して、俺を後から寄こしてくれたんだ。俺はお前より一日遅れて出たのに、先回りして着いていたぞ。一体、何をしていたんだ?」
李逵は頭を掻きながら答えた。
「いや、兄貴に酒を飲むなって言われたもんだからよ、どうにも足が重くて遅くなっちまったんだ。ところで、ここはお前の家なのか?」
「ここは俺の弟、朱富の店だ。俺は一度故郷を捨てた身だが、今回、お前の様子を見がてら戻ってきたんだ」
朱貴は弟を呼び、李逵に引き合わせた。朱富は喜び、酒を用意して李逵をもてなした。
李逵は、並べられた酒を前に生唾を飲み込んだ。
「兄貴には飲むなと言われたが、もう故郷の土を踏んだんだ。二杯くらいなら、罰は当たらねぇだろう?」
朱貴もその熱意に負け、少しばかりの酒を許した。
夜が更け、午前二時を回る頃まで彼らは語り合い、やがて夜明けが近づいた。星がまばらになり、欠けた月が白み始めた頃、李逵は実家へ向かう決意をした。朱貴は念を押すように言った。
「近道だと言って小道を行くんじゃないぞ。あの大きな榎を曲がり、東の大通りを行け。それが一番安全だ」
しかし、李逵は聞き入れない。
「俺は小道を行くぜ。まどろっこしい大通りなんて御免だ」
「小道には虎が出るし、強盗も潜んでいるというぞ」
「俺が何を恐れることがあるってんだ!」
李逵は笠を深く被り、朴刀を手に、朱貴兄弟に見送られて険しい小道へと分け入っていった。
数里も歩いた頃、東の空が白んできた。草露を跳ねて一匹の白兎が飛び出し、李逵の前を走っていく。彼はそれを愉快そうに追いかけながら、「畜生め、道案内をしてくれるのか」と笑った。
その険しくも静まり返った山道の情景は、まさに古の詠み歌にあるが如くであった。
山道は険しく 静寂は深く
秋の西風が 紅葉を枯林に散らす
偶然にも 兎を追って見知らぬ地を過ぎ
逸る心で この道を行くことさえ忘れるほどに
やがて前方に、五十株ほどの大木が鬱蒼と茂る場所に差し掛かった。初秋の冷気が漂い、木の葉は鮮やかに色づいている。
李逵が林の影に差し掛かったその時、突如として一人の大男が飛び出してきた。
「命が惜しくば、通行料を置いていきな!」
男の姿を見れば、赤い絹の頭巾を被り、粗末な上着を纏っている。手には二丁の板斧を握り、顔には墨を塗りたくっていた。
李逵は鼻で笑った。
「どこの能無しだ。俺様の前で身の程知らずな真似を」
男は太い声で吠えた。
「俺の名を聞いて腰を抜かすなよ。俺様こそが『黒旋風』だ! 荷物を置いて失せろ!」
これには李逵も大笑いした。
「ふざけた野郎だ。どこから湧いて出たか知らねぇが、俺様の名を語るとはいい度胸だぜ!」
李逵は朴刀を閃かせ、男に襲い掛かった。偽物は到底敵わず、逃げようとしたところを太腿に鋭い一突きを受け、無様に転がされた。李逵は男の胸を力強く踏みつけ、怒鳴りつけた。
「俺様が誰だか分かるか!」
「お、お爺様、どうか命ばかりは!」
「俺こそが本物の『黒旋風』李逵だ! 貴様、俺の名を泥で塗り潰しやがって!」
男は必死に地面を這い、許しを請うた。
「あっしも李という姓ですが、本物じゃございません。お爺様の武名が轟いているので、その名を出せば旅人が荷物を置いて逃げ出すと思い、こうして小銭を稼いでいただけなんです。本当に人は殺しておりません。あっしの名は李鬼と申しまして、前の村に住んでおります」
「ふてぶてしい。俺の斧を真似て悪さをしやがって、まずはその首を跳ねてやる!」
李逵が斧を奪い取り、振り下ろそうとしたその時、李鬼は叫んだ。
「お爺様! あっし一人を殺せば、二人を殺すことになります!」
「どういう意味だ?」
「家には九十になる老いた母がおります。あっしが死ねば、母も餓死するしかございません。だからこそ強盗の真似事をして母を養っていたのです。どうか、どうかお助けを……!」
李逵は人殺しを厭わぬ修羅のような男だが、その胸の奥には深い親孝行の心があった。
(俺は母親を迎えに来たんだ。ここで母親を養っている男を殺しては、天罰が下るかもしれん)
そう思うと、殺意が消えた。
「よかろう。俺こそが本物の黒旋風だ。二度とその名を語るなよ」
「ありがとうございます! これからは足を洗い、真面目に働きます」
「お前には孝行心があるようだ。これを元手に、まっとうな商売をしろ」
李逵は銀子十両を李鬼に与えた。男は何度も頭を下げて去っていった。
李逵は一人笑いながら道を続けた。
「あいつも運のない奴だ。だが、孝行者なら改心もするだろう。殺さなくて正解だったぜ」
彼は朴刀を杖代わりに、さらに山奥へと進んだ。その道中は、後世に語り継がれる皮肉な巡り合わせの詩そのものであった。
李逵は母を迎える旅路で 思わぬ傷を負い
李鬼の言葉は 偽りの孝行に過ぎなかった
世の忠孝が 真実であるか否か
その言葉の裏を 見極めることこそが肝要である
午前十時を過ぎる頃、李逵は空腹と渇きを覚えた。しかし周囲は荒涼とした山道ばかり。
しばらく歩くと、谷間に二軒の草屋が見えた。駆け込むと、奥から一人の女が出てくる。髪は乱れ、野花を挿し、顔には不自然なほど白粉を塗った女だった。
「酒はねぇか。一貫文払うから、何か食わせてくれ」
李逵の迫力に圧された女は、しぶしぶ答えた。
「酒はないけど、飯なら作ってあげるよ」
「たっぷり頼むぜ」
「米一升でいいかい?」
「三升だ。腹が減ってたまらねぇんだ」
女が米を研ぎに川へ向かうと、李逵は用を足しに家の裏へ回った。すると、そこへ足を引きずった男が帰ってきた。李鬼である。
物陰で聞いていると、戻ってきた女が男に尋ねた。
「あんた、その足はどうしたんだい?」
「ああ、危うく死ぬところだった。カモを待っていたら、なんと本物の『黒旋風』に出くわしちまった。太腿を突かれ、万事休すと思ったが、『九十の老母がいる』と嘘をついたら、あの馬鹿、あっさり信じて金までくれやがった。気が変わらぬうちにと思って、裏山を回って逃げ帰ってきたのさ」
女は声を低めて言った。
「馬鹿だねぇ、声が大きいよ。今、表に黒い大男が座って飯を待ってるよ。そいつじゃないのかい? もしそうなら、痺れ薬を飯に混ぜて倒しちまおう。金銀を奪って県へ逃げれば、こんなところで強盗するよりずっといい」
それを聞いた李逵の逆鱗に触れた。
「銀までやって助けた恩を、仇で返そうってのか! 天が許しても俺が許さねぇ!」
李逵は裏口から飛び込み、驚く李鬼を捕らえた。女は悲鳴を上げて逃げ出した。
李逵は李鬼をねじ伏せ、腰刀でその首を一閃した。そのまま表へ女を追ったが、山中へと消えた後だった。家の中を漁ると、李鬼の懐からは先ほどの銀子が、籠の下からは盗んだ金品が見つかった。李逵はそれらを全て懐に収めた。
竈を見れば、三升の飯が炊き上がっているが、おかずがない。李逵は皮肉な笑みを浮かべた。
「目の前にいい肉があるじゃねぇか」
彼は李鬼の遺体から肉を切り取り、炭火で焼いて平らげた。腹を満たすと、死体を床下に放り込み、家に火を放って悠々と立ち去った。
百丈村に着く頃には、夕闇が迫っていた。実家の戸を押し開ければ、そこには盲目の老母が一人、念仏を唱えていた。
「おっ母、鉄牛が帰ってきたよ」
「ああ……鉄牛かい。どこへ行っていたんだい。お前を思って泣き暮らすうちに、私の目は見えなくなってしまった。兄さんはよそで作男をして、自分の口を凌ぐのが精一杯なんだよ……」
李逵は胸を突かれる思いだった。山賊をしているとは言えず、咄嗟に嘘をついた。
「俺は役人になったんだ。おっ母を迎えに来たんだぜ」
「本当かい? でも、どうやって連れて行ってくれるんだい」
「俺がおんぶして、立派な車に乗せていくよ」
そこへ、兄の李達が帰ってきた。李逵の姿を見るなり、彼は罵声を浴びせた。
「このろくでなし! 何の用だ! 江州で暴れ回り、今や三千貫の賞金首だというじゃないか。お前のせいで俺まで役人に連行されそうになったんだぞ。地主様がとりなしてくれなきゃ、今頃首がないところだ!」
李逵は兄をなだめようとしたが、逆上のあまり李達は人を呼びに走り去ってしまった。
李逵は決断した。兄が追手を連れてくる前に出なければならない。彼は五十両の銀子を寝台に置いた。
「おっ母、行くぜ。しっかりつかまってな」
彼は母を背負い、夜の闇へと紛れていった。戻ってきた李達は、銀子を見て立ち尽くした。追えば殺される。彼は弟が母を楽にさせてくれるだろうと自分に言い聞かせ、追うのをやめた。
李逵は母を背負い、険しい沂嶺の峠へと差し掛かった。あたりは漆黒の闇に包まれ、冷たい風が吹き抜ける。あたかも、これから起こる悲劇を予兆するような光景であった。
たなびく煙は遠くの峰に横たわり
霧は奇岩を鎖し 鳥たちは林に身を寄せる
雁の群れは 長江に落ちるように姿を消し
蛍の光は 枯草の間で弱々しく明滅する
秋風は枯葉を舞い上げ 霜の気配が深山を満たす
背中の母が、枯れた声で訴えた。
「鉄牛や、喉が渇いて死にそうだよ。水を一口おくれ」
「おっ母、峠を越えれば村がある。もう少しの辛抱だ」
「もう一歩も動けないよ。助けておくれ」
李逵は母を大きな松の木の下、平らな青石の上に下ろした。
「ここで待っててくれ。水を探してくる」
谷川の音を頼りに岩場を下りると、清らかな流れがあった。その光景は、山奥に潜む生命の源のようであった。
崖を穿ち 谷を抜けて進み
遥か高みより 湧き出る水の清さを知る
渓流の細き流れも やがては
大海へと至り 荒波となる宿命にある
水を飲んで一息ついた李逵は、ふと山頂に古い祠を見つけた。泗州大聖の廟である。そこにあった石の香炉を力任せにもぎ取ると、器代わりにして水を汲み、急ぎ母のもとへ戻った。
しかし、松の木の下に母の姿はなかった。あるのは、地面に突き刺したままの朴刀だけだった。
「おっ母! どこだ!」
返事はない。不吉な予感に震えながら血痕を辿ると、そこには大きな洞窟があった。中では二匹の子虎が、人間の脚を食らっていた。
偽の黒旋風は命を欺き 死して肉を焼かれ
真の母の脚もまた 飢えた虎の牙にかかる
飢えと報い 全ては逃れられぬ因果か
李逵の絶叫が山々に響き渡った。怒りに血が逆流し、彼は朴刀を振り回して二匹の子虎を刺し殺した。そこへ、血の匂いを嗅ぎつけた母虎が戻ってくる。李逵は身を潜め、虎が洞窟へ入ろうとした瞬間、腰刀をその肛門へ根元まで突き立てた。絶叫と共に母虎は谷底へ転落した。
さらに、暴風と共に現れた巨大な雄虎をも、李逵は渾身の力で斬り伏せた。
四頭の猛虎を葬った李逵だったが、時すでに遅く、母の遺骸は無惨な姿となっていた。彼は涙ながらに残された遺骨を集め、廟の裏に埋葬した。その姿は、荒ぶる鬼の心に灯った最後の悲しみであった。
沂嶺の秋風に 虎の親子は集い
老いた母を食らい 英雄に血の涙を流させる
命を賭して虎穴を探り 立ちどころに仇を討つ
泗州廟の裏に 母を眠らせた鉄牛の名は
千古に語り継がれるであろう
翌朝、疲れ果てて峠を下りる李逵を、地元の猟師たちが見つけた。一人で四頭の虎を仕留めたと聞き、彼らは腰を抜かした。虎の害に悩まされていた村は大騒ぎとなり、李逵は英雄として曹太公の屋敷へ招かれた。
李逵は「張大胆」と偽名を名乗ったが、運命の悪戯は終わらない。群衆の中に、あの李鬼の女房が混じっていたのである。
「あれこそ夫を殺した李逵です!」
彼女の告発を受け、曹太公は計略を練った。英雄をもてなす振りをしながら、酒に痺れ薬を混ぜたのである。李逵は宋江の戒めを忘れ、振る舞われた酒を飲み干して泥酔し、無惨にも縛り上げられてしまった。
沂水県から遣わされたのは、赤髯に碧眼の猛将、「青眼虎」李雲であった。
広い額に濃い眉 赤き髯を蓄え
その瞳は碧く 異国の人の如し
沂水県に轟く 豪傑の名
これぞ「青眼虎」李雲なり
李雲が李逵を護送する道中、朱貴と朱富の兄弟が立ちはだかった。彼らは李雲の教え子であることを利用し、「師匠、虎退治のお祝いです」と痺れ薬入りの酒と肉を振る舞った。慎重な李雲も、弟子の熱意に負けて口にしてしまう。
次々と土兵たちが倒れ伏す中、李逵は縄を引きちぎって暴れ出した。曹太公、李鬼の女房、そして裏切った村人たちを次々と斬り伏せ、積年の恨みを晴らした。
朱富は恩師である李雲の命を救うべく、彼を山へと誘う決意をする。意識を取り戻し、怒りに燃えて追いかけてくる李雲。それを迎え撃つ李逵。
まさに、梁山泊に新たな星が加わらんとする、嵐の前の静けさであった。黒旋風と青眼虎、両雄の激突の行方は如何に。
【Vol.43:マザコン無双、まさかのトラ4頭抜き】
今回の主人公は引き続き、梁山泊きっての暴走機関車こと黒旋風・李逵。
束縛強めの宋江兄さん
李逵が「田舎のおっ母を迎えに行くわ」って言い出した。心配性のリーダー宋江は「①寄り道禁止 ②酒禁止 ③あのヤバい斧(板斧)を持ってくの禁止」っていう鬼の三箇条を突きつける。李逵は「おけまる!」って秒で返事して、ダッシュで山を下りる。でも宋江は「あいつ絶対やらかすわ……」と不安すぎて、スパイ役の朱貴をこっそり後回しにする過保護ぶり。
偽物乙!パチモン黒旋風の登場
道中、李逵の偽物が現れる。その名も「李鬼」。紛らわしすぎ。
偽物「俺は黒旋風だぞ!金置いてけ!」
本物「は?(圧)」
李逵がワンパンでボコすと、偽物は「90歳の母ちゃんを養うためなんですぅ!」と大嘘。マザコンの李逵、それを信じて銀まであげて見逃す神対応。
サイコパス・クッキング
腹が減った李逵、たまたま寄った民家でご飯を頼む。実はそこ、さっきの偽物の家。
偽物と嫁の会話を盗み聞きすると「さっきの黒いバカに薬盛って殺そうぜw」という胸糞プランが判明。
ガチギレした李逵、偽物を瞬殺。おかずがないからって、偽物の太腿の肉を焼いて食うというガチのサイコパスムーブをかまして家を焼く。
おっ母、トラに食われる
実家に着いて、盲目のおっ母を背負って逃走。道中、おっ母が「喉乾いた」って言うから、李逵は水を汲みにいく。
戻ってきたら、なんとおっ母がトラに食われてる。
ここから李逵の「阿修羅モード」が発動。怒り狂って子トラ2頭をぶっ刺し、母トラのケツから刀をぶち込み、さらに襲ってきた父トラを朴刀でバラバラにする。1人でトラ一家を壊滅させる超絶チート。
ヒーロー扱いからの、即「詰み」
村に戻って「トラ4頭倒したぜ」って報告したら、一躍ヒーローに。
でも、さっき逃げた偽物の嫁が通報。「あいつ、指名手配中の李逵やん!」
村の金持ち(曹太公)は卑怯にも、お祝いで李逵をベロベロに酔わせる。宋江との約束「酒飲むな」を秒で破った李逵、爆睡中にガチガチに縛り上げられて御用。
朱貴ブラザーズ、有能すぎる
ここでスパイの朱貴と、その弟の朱富が登場。
護送チームのリーダー(李雲)は、実は朱富の師匠。「おめでとう!」と見せかけて、酒に睡眠薬を混ぜてチーム全員を「おねんね」させる。
縄を解かれた李逵、起きた瞬間に「よくもハメたな!」と村人や役人を皆殺しにするリベンジを果たす。
李逵のスペック: 攻撃力カンスト、知力5。
教訓: 嘘はつくもんじゃない(肉を焼かれる)、約束は守るもん(捕まる)。
本日のハイライト: 悲しみのあまりトラ4頭を「全滅」させた李逵の情緒不安定な強さ。
最後は、助けてくれた師匠の李雲も「もう帰る場所ねーわ」ってことで、みんなで仲良く梁山泊へレッツゴー。
マザコン・バイオレンス・サバイバルな回だったね。
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主要人物図鑑(登場順)
066:笑面虎・朱富★梁山泊一〇八将★
ニコニコ顔でエグいことする「策士系サブカル男子」
朱富は、梁山泊の初期メン・朱貴の弟。地元で居酒屋を経営してたんだけど、ただの店主じゃない。
師匠を薬でハメる: 恩師の李雲に盛り土(睡眠薬入りの酒)をして、護送任務をフルコンボで失敗させる。
その後は強制転職: 「先生、もう戻っても死刑っしょ? 梁山泊、今なら採用枠空いてるんすよ」と笑顔で詰め寄る。「笑顔で師匠の退路を断つ」っていう、なかなかのサイコパス・プロデューサーっぷりを発揮。でもこれ、全部「兄貴のメンツ」と「仲間のため」っていうのが泣けるよね。
梁山泊でのポジション:酒造りとロジの鬼
山に登った後は、持ち前の「飲食経営スキル」をフル活用。
醸造責任者: 梁山泊で飲む酒はだいたいこの人が監修。宴会大好きな梁山泊にとって、朱富は「命の水を供給する神」。
後方支援のプロ: 派手なバトルにはあまり出ないけど、兵糧の管理や事務作業を完璧にこなす。まさに「有能すぎるバックオフィス」。
地味だけど、彼がいないと梁山泊は一週間で酒不足になって暴動が起きるレベル。
【ネタバレ注意】朱富のラスト:切なすぎる兄弟愛と結末
ここからは物語のクライマックス、方臘戦の話。
朱富の最期は、戦場での華々しい戦死……じゃないんだ。これがまたリアルで切ない。
看病中に感染: 遠征中、兄の朱貴を含む多くの仲間が伝染病に倒れちゃうんだ。
献身的な看病: 他のメンバーが戦場へ向かう中、朱富は一人残って、兄や仲間たちの看病を必死に続ける。
そして……: 結局、兄の朱貴が亡くなり、その直後に看病していた朱富自身も感染して亡くなってしまう。
「戦場に行かずに、最後まで誰かのために尽くして逝く」。
あだ名は「トラ」なんて怖そうな名前だけど、その本質は「誰よりも情に厚い、最高の介護系男子」だったんだよね。
朱富パイセンのまとめ
初期: 笑顔で師匠をハメる、キレッキレの軍師候補。
中期: 梁山泊の「酒とメシ」を支える、最強のインフラ担当。
最期: 兄のそばを離れず、看病の末に逝く「愛の男」。
最初は「笑顔が怖い策士」かと思いきや、実は「家族と仲間のためなら、自分の泥を被ることも厭わないし、最後まで寄り添う」っていう、マジで推せるキャラなんだ。
067:青眼虎・李雲★梁山泊一〇八将★
一言で言うと、「真面目すぎて詰んだ、ビジュアル特化型の不憫なハイスペ公務員」です。
ビジュアルが完全に「異世界転生者」
まず、見た目がバグってます。通り名の通り目が青緑色で、髭が真っ赤。
現代なら「カラコン?」「地毛でそれ?」って聞かれるレベルの派手髪・派手顔。ぶっちゃけ、中国の役人の中に一人だけファンタジーRPGのキャラが混じり込んだような異質感がすごい。めちゃくちゃ強キャラ感漂ってるけど、中身はガチガチに真面目な県警の警部(都頭)です。
「弟子にハメられる」という、エモすぎる絶望
李雲は、李逵を助けようとした朱富の格闘技の師匠なんです。
弟子の朱富から「師匠!トラ退治おめでとうございます!お祝いの差し入れっす!」って酒と肉を出されて、「お前、いいやつだな……」って信じちゃう。
結果、睡眠薬(蒙汗薬)盛られて爆睡。 起きたら犯人の李逵は逃げてるし、村の有力者は皆殺しにされてるしで、公務員としてのキャリアが完全に終了。「詰んだわこれ」状態で、嫌々ながら梁山泊へ入ることになります。
梁山泊でのポジション:戦うより「マイクラ」担当
梁山泊に入った後の彼は、武闘派としてガンガン戦う……と思いきや、まさかの「建築・土木担当」になります。
ランキング(百八星)は97位とかなり低め。でも、梁山泊の巨大な要塞や建物を全部プロデュースする「総監督」として、インフラ整備に命をかける裏方エースに。いわば梁山泊のマインクラフト・ガチ勢です。
【ネタバレ】あまりにも切ないラスト
そんな彼にも、最後は戦場へ出る時がやってきます。方臘の乱というラストキャンペーンでのこと。
敵の猛将・王寅というヤバい奴に遭遇します。李雲は歩兵として果敢に立ち向かうんだけど、相手は馬に乗ったプロ。
最後は「馬に踏みつぶされて死亡」という、文字通り物理的にブッ潰される悲惨な結末を迎えます……。
ただ、李雲のここが推せる!
属性: 異国情緒、公務員、師匠、不憫、建築職人。
尊いポイント: 自分をハメた弟子の朱富と一緒に梁山泊へ行くところ。結局「いい師匠」なんだよね。
エモさ: 派手な見た目なのに、地味な土木工事をコツコツ頑張るギャップ。
「真面目に働いてただけなのに、気づいたら山賊のインフラ担当になってて、最後は馬に踏まれる」という、水滸伝屈指の「巻き込まれ事故人生」。
派手な見た目とは裏腹に、職人気質で損な役回りを引き受けちゃう彼の生き様、情熱的に推していこうぜ!




