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私説 水滸伝一〇八編の鎮魂曲  作者: 光闇居士


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43/49

〇四弐:還道村(かんどうそん)にて天書三巻を授かり 宋公明、九天玄女にまみえる事

挿絵(By みてみん)

『天命の調べ 〜九天玄女の御告げ〜』

         近日リリース、乞うご期待!

[Intro]


[Verse 1]

宋江よ、汝の忠義と志、天に通じたり。

この乱世、衆生は苦しみ、道は乱れ、民は塗炭の苦しみに喘ぐ。

ゆえに天は汝を選び、正しき道を示す。


[Pre-Chorus]

地の果て、天の涯、乱れるは人の心。

争いの炎、悪しき淵、光を失いし世よ。


[Chorus]

今、汝に三巻の天書を授けん!

その一巻は、『替天ティエンティエン』の理を示す!

天の意思を代行し、乱れし世を正すべし!

私欲を捨て、大義に徹する心こそが、天の道なり!


[Verse 2]

その二巻は、『行道シンダオ』の法を説く。

地の理を悟り、弱きを助け、強きを挫け。

集いし百八の星々を束ね、侠義を重んじ、悪を討つべし。

その歩みこそが、地の道なり。


[Bridge]

その三巻は、『無常ウーチャン』の真理を語る。

栄華も、権勢も、尽きせぬ富も、いずれは塵芥と化す運命を知れ。

世は移ろい、人もまた移ろう。

その中にあって、変わらぬは『信』と『義』のみ。

これなくしては、大業は成らざるべし。


[Chorus Reprise]

汝、これら三つの教えを心に刻み、天に替わりて道を往け!

幾多の困難、血と涙の試練が待ち受けようとも、

その心、決して揺るがすことなかれ!

これぞ、汝に課せられたる『替天行道』の使命なり!


[Outro]

我が言を忘れず、天命を全うせよ……

天命を、全うせよ……


【しおの】

 さて、物語の筋を紐解けば、梁山泊りょうざんぱくでの一幕に遡ります。

 ある日の宴席でのこと、宋江そうこうは居並ぶ好漢たちを前に、重い口を開きました。

「私、宋江は皆様の厚き義侠心によって救われ、この山に身を寄せることができました。連日こうして華やかな宴に預かり、真に楽しく過ごしております。しかしながら、一つ、故郷に残した老父の安否が気がかりでなりませぬ。江州こうしゅうでの一件が都へ奏上されれば、必ずや管轄の済州さいしゅうへと通達が飛び、我が郷里の鄆城うんじょう県へ家族の逮捕命令が下りましょう。下手人を捕らえるより先に、父の命が危うくなるやもしれませぬ。父を想うと居ても立ってもいられず、自ら実家へ戻り、父をこの山へ連れ出して憂いを絶ちたいと存じます。兄弟の皆様、どうかお許しいただけないでしょうか」

 これを聞いた頭領の晁蓋ちょうがいが答えました。

「賢弟よ、それは人の道として、何にも代えがたい大事である。我らばかりがここで安逸を貪り、君の父君に苦労を強いるなど、あってはならぬことだ。ただ、兄弟たちは連日の戦いで疲れが溜まっており、人馬の備えもまだ万全ではない。あと二日だけ待ってくれぬか。兵を整え、一気に迎えに行こうではないか」

 しかし、宋江は首を振りました。

「仁兄、お気遣い痛み入ります。ですが、数日待つ間に江州からの公文書が届けば、すぐさま父子の身に手が及びましょう。ここは一刻を争います。大勢で押しかける必要はございませぬ。私一人で密かに戻り、弟の宋清そうせいと共に父を連れ出し、夜を徹して戻って参ります。そうすれば、誰にも気づかれることはありますまい。もし大軍を引き連れていけば、かえって村を騒がせ、不測の事態を招きかねませぬ」

「とはいえ賢弟、道中で万一のことがあれば、誰も救うことができぬぞ」

「父のためであれば、この命、ちりのように捨てても悔いはございませぬ」

 その日、皆が必死に引き留めるのも聞かず、宋江の決意は揺らぎませんでした。彼はフェルトの笠を深くかぶり、短い棒を手に、腰には鋭い刃物を忍ばせて山を下りました。頭領たちは金沙灘きんさたんまで見送り、後ろ髪を引かれる思いで山へと戻っていきました。

 さて、宋江は渡し場を越え、朱貴しゅきの酒場で岸に上がると、大道へ出て鄆城県を目指しました。道中、飢えれば喰らい、渇けば飲み、夜に宿を取り、あかつきとともに道を行きました。

 ある日のこと、宋家村へと急ぐものの、日は無情にも暮れてしまい、その夜は宿に泊まりました。翌日、暗いうちから道を急いで村に着いたのは、まだ夜も明けきらぬ早朝のことでした。林の中に身を潜め、夜の訪れを待ってから、懐かしき屋敷の裏門を叩きました。

 中から弟の宋清が出てきて門を開けましたが、兄の姿を見るなり仰天しました。

「兄さん、どうして戻ってこられたのですか」

「父上とお前を迎えに来たのだ」

「兄さん、江州でしでかした事は、すでにこの界隈に知れ渡っています。県からはちょうという二人の都頭ととうが派遣され、連日監視を続けており、私たちは一歩も動けない状態です。江州の文書が届けば、すぐに私たち父子を捕らえ、兄さんを誘い出すための人質にする手はずなのです。昼夜を問わず、百人以上の兵が巡回しています。一刻の猶予もありません。早く梁山泊へ戻り、頭領たちに頼んで助けに来てください」

 これを聞いた宋江は、驚愕のあまり冷や汗を流しました。門に入ることも叶わず、すぐさまきびすを返して梁山泊への道を走り出しました。

 その夜、月はおぼろで道も定かではありません。宋江は人目を避けて小道を選び、必死に足を動かしました。一更(午後八時頃)ほど歩いた頃でしょうか、背後から凄まじいときの声が上がりました。振り返れば、一、二里ほど後ろに松明たいまつの光がうごめき、「宋江、逃がさぬぞ!」という叫びが夜風に乗って聞こえてきます。

 宋江は走りながら、激しい後悔に苛まれました。

(ああ、晁蓋兄の忠告を無視したばかりに、このような災難を招いてしまった。天よ、どうか宋江をお救いください)

 遠くに微かな集落を見つけ、そこを目指して無我夢中で走りました。しばらくして風が雲を払い、明月が顔を出すと、宋江はその場所をはっきりと見て、「しまった!」と叫び声を上げました。そこは「還道村かんどうそん」と呼ばれる、奇妙な場所だったのです。

 周囲を険しい山々に囲まれ、山裾を谷川が巡るこの村には、入り口となる道がただ一本しかありません。一度中に入れば、他へ抜ける道はなく、必ず入り口まで戻らねばならない袋小路だったのです。

 宋江は入り口まで引き返そうとしましたが、すでに追手はそこまで迫り、松明の明かりが昼間のように辺りを照らし出しています。やむを得ず、宋江は村の奥へと走り込み、身を隠せる場所を探しました。

 林を抜けると、一軒の古びたびょうが姿を現しました。その様子を眺めれば――

 塀は崩れ落ち、御殿は今にも傾かんとし、

 両廊の壁画には蒼い苔が長く這い、

 敷き詰められた瓦の隙間からは草が生い茂る。

 門前の小鬼は腕を失い、凄みを無くし、

 殿上の判官は頭巾も無く、威厳も失せている。

 供物台には蜘蛛が網を張り、香炉の中には蟻が巣を構える。

 狐狸こりは常に古びた炉の中に眠り、蝙蝠こうもりは天蓋を離れず。

 宋江は廟の門を押し開き、月明かりを頼りに中へ入り、必死に隠れ場所を探しました。前殿、後殿と巡るも、身を隠せる隙間もなく、焦燥ばかりが募ります。その時、外から人の声が届きました。

「都頭、間違いありません。奴はこの廟へ逃げ込んだようです」

 それは紛れもなく、趙能ちょうのうの声でした。もはや逃げ場はありません。ふと見ると、殿上に神像を納める厨子ずしがありました。宋江はとばりをまくり上げ、その中へ身を滑り込ませました。棒を置き、体を小さく丸めて、息を殺してうずくまりました。外からは松明を持った一団が踏み込んでくる気配がします。

 宋江が厨子の中からこっそり覗くと、趙能と趙得ちょうとくが四、五十人の兵を引き連れ、殿上へと近づいてきます。

「もはやこれまでか……。神明よ、どうかお守りください」

 兵たちは次々と通り過ぎていきますが、厨子の中を覗く者はいません。天の助けかと思ったその刹那、趙得が松明をかざして厨子に近づきました。

「ああ、今度こそ捕まる!」

 趙得は片手に武器を持ち、神前の帳を跳ね上げ、火をかざしました。

 その瞬間、どこからともなく煤煙ばいえんが舞い上がり、黒い塵が趙得の目に飛び込みました。

「痛っ!」

 趙得は堪らず松明を床に投げ捨て、足で踏み消しました。殿外へ出ると、兵たちに向かって言いました。

「ここにはおらぬ。他に道はないはずだが、どこへ消えおった?」

 兵たちが答えます。

「きっと村の林の中でしょう。ここは還道村、逃げ場は一本道しかありません。入り口さえ押さえていれば、奴が翼を生やして空を飛ぼうとも逃げられはしません。夜が明けたら、しらみつぶしに捜しましょう」

「もっともだ」

 趙得たちは一度、殿を下りていきました。

 宋江は胸をなでおろしました。

(これこそ神仏の加護だ。もし命が助かったなら、必ずやこの廟を修復し、恩返しをいたします)

 祈りが終わらぬうちに、再び廟の門前で声が上がりました。

「都頭、ここにいましたぞ!」

 趙能、趙得らが一斉に雪崩れ込んできました。

「なんという不運だ。今度こそ……」

 趙能が問います。「どこだ?」

 兵が答えます。「都頭、廟の扉を見てください。埃の中に手形が二つ。さっき扉を押し開けて中に隠れたに違いありません」

「なるほど。もう一度、念入りに捜せ」

 再び捜索が始まりました。前殿から後殿まで、煉瓦の一枚までひっくり返すような勢いです。松明の光がいよいよ厨子に迫ります。趙能が言いました。

「やはり、この中しかあるまい。先ほどは見落としたのだ。俺が照らしてやる」

 兵が松明を持ち、趙能が帳を掲げ、五、六人が首を突っ込んで覗き込もうとした、その瞬間でした。

 神厨の中から一陣の「あやしき風」が巻き起こり、松明をことごとく吹き消してしまったのです。廟の中は一瞬にして漆黒の闇に包まれました。

「なんだ、これは!」

 趙能の叫び声が響きます。

「平地にいきなりこのような風が吹くとは、ただ事ではない。きっと神仏がお怒りなのだ。ここは一度退散しよう。入り口を見張って夜明けを待つのが得策だ」

 しかし、趙得は食い下がります。「ですが、中をよく見ておりません。槍で突いてみたらどうですか」

「よかろう」

 二人が進み出ようとしたその時、殿の奥から再び怪しげな嵐が巻き起こりました。砂を飛ばし石を走らせ、建物全体をガタガタと揺さぶります。黒雲が垂れ込め、肌を刺すような寒気が辺りを支配し、毛髪が逆立つほどの恐ろしさです。

「こ、これは不味い! 逃げろ、神の怒りだ!」

 一味は蜘蛛の子を散らすように廟の外へ逃げ出しました。転ぶ者、足を挫く者、我先にと門を這い出していく惨状です。

 趙能が戻って見ると、数人の兵が石段で転び、木の根に衣服を絡ませて、死に物狂いでもがいていました。武器も放り出し、ただ「助けてくれ」と悲鳴を上げるばかりです。

 厨子の中でこれを聞いていた宋江は、思わず吹き出しそうになりました。

 趙能は兵を助け出し、門外へと連れ出しました。逃げた兵たちが言いました。

「申し上げた通りです。この地の神は霊験あらたかだ。あんた方が無理をするから、神罰が下ったんですよ。村の入り口を固めておけば、奴も逃げられはしません」

「その通りだ。入り口を四方から固めろ」

 一団は入り口の方へと去っていきました。

 宋江は感謝しつつも、どうやってこの袋小路を脱すべきか思案に暮れていました。すると、裏の廊下からしずしずと人の気配がします。

「また来たか……いや、様子がおかしいぞ」

 見れば、二人の青衣せいいを纏った童子が厨子のそばに立ち、清らかな声で告げました。

小童しょうどう、娘々(にゃんにゃん)の法旨ほうしを奉じ、星主せいしゅ様をご案内申し上げます」

 宋江は恐れて返事をしません。童子は再び繰り返します。

「娘々がお招きです。星主様、どうかお出ましください」

 聞こえてくるのは鶯や燕のさえずるような、この世のものとは思えぬ美しい声でした。宋江は意を決して厨子から這い出しました。

「宋星主様、さあこちらへ」

 宋江が帳を分けて外に出ると、そこには巻き上げた髪に美しい礼を尽くす二人の女童がいました。その姿たるや――

 若々しい肌に緑の髪、白い歯に輝く瞳。

 塵の世に染まらぬ、気高い天仙の趣がある。

 高く結い上げた髪は山峰のごとく、鳳凰の刺繍ある靴は蓮の花のように軽い。

 深い青の襟には銀の糸で文様が編まれ、

 紫の帯には金色の霞が結ばれている。

 まさに仙界の住人、この世のものならぬ麗しさである。

 宋江は尋ねました。

「お二人の仙童、どこから来られたのですか」

「娘々の命を受け、星主様を宮殿へご招待に参りました」

「人違いでしょう。私は宋江というしがない庶民、星主などではありません」

「間違いございません。さあ、娘々がお待ちかねです」

「娘々とはどなたですか。お会いしたこともないのに、伺うわけには……」

「行けば分かります。お尋ね無用」

「その娘々はいずこに?」

「この廟の裏の宮殿にいらっしゃいます」

 青衣の童子に導かれ、宋江は殿を下りました。角門を抜けると、そこには星と月が満ち、香しい風がそよぐ別世界が広がっていました。

(廟の裏にこれほど立派な道があったとは。知っていればあんな怖い思いをせずに済んだものを)

 さらに歩を進めると、朱塗りの欄干がある美しい石橋が現れました。岸には見たこともない奇花異草が咲き乱れ、橋の下には清らかな水が流れています。

 橋を渡ると、大きな朱塗りの門がそびえ立ち、その奥に壮麗な宮殿がそびえていました。

 金の釘に朱の扉、みどりの瓦に彫刻ある軒。

 柱には経文が踊り、真珠が戯れ、帳には双鳳そうほうが暁を告げる。

 赤い泥の壁には宮花が咲き、

 たなびく霞の中に瑞々しい光が籠もる。

 窓からは香風が吹き込み、すだれの間から月が照らす。

 天上の神仙の住まいでなければ、帝王の宮殿そのものである。

 宋江は畏怖のあまり足がすくみますが、童子に促されるまま中へと入りました。正面の大殿は煌々と輝き、重厚な空気が漂っています。

「娘々、星主様をご案内いたしました」

 宋江は震える体で地にひれ伏しました。

「私は下界の罪深き者、聖なる御顔を拝すること能わず。どうか天の慈悲を賜りたい」

 御簾みすの奥から、静かな声が響きました。

「星主にお座り願いなさい」

 宋江は顔を上げられぬまま、錦の椅子へと導かれました。

「御簾を上げよ」

 簾が上げられ、宋江はようやく顔を上げました。正面の九龍の椅子には、かの娘々が座しておられました。その神々しい姿は、言葉では言い尽くせぬほどのものでした。

 娘々が口を開きました。

「星主よ、別れてより変わりはありませんか」

「……私は庶民ゆえ、以前のことは存じ上げませぬ」

「ここへ来たからは、堅苦しい礼は無用です」

 娘々は童子に命じ、酒を献上させました。宋江は勧められるまま玉杯を受け取り、一口飲みました。その香りは全身に染み渡り、心まで洗われるような不思議な味わいでした。さらに仙棗ナツメを勧められ、宋江は作法を失わぬよう一粒食べ、その種を手に握りしめました。

 計三杯の酒と、三つのナツメ。

 宋江はほろ酔い加減となり、これ以上の失態を恐れて辞退しました。

 すると、娘々が告げました。

「酒が飲めぬなら、これを取り出し、星主に授けなさい」

 渡されたのは、黄色の布に包まれた三巻の「天書」でした。

 娘々は宋江を静かに見つめ、こう続けました。

「宋星主よ、汝にこの三巻の天書を授ける。汝はこれより『替天行道(天に替わって道を行う)』の使命を果たすべし。主には忠義を尽くし、国を助け民を安んじ、邪を退けて正しきへ導け。私から四句の天言てんげんを授ける。決して忘れず、他人に漏らしてはならぬ」

 宿しゅくに遇わば重重じゅうじゅうの喜び、

 こうに逢わばれ凶ならず。

 外夷がいい及び内寇ないこう

 幾処いくしょにか奇功きこうを見ん。

「玉帝は、星主の魔心が未だ断たれず、修行が完了しておらぬゆえ、暫し下界へ留めておられる。だが、遠からず天界へ戻ることができよう。決して怠ってはならぬ。この書は、『天機星てんきせい』とのみ共に読み、他者に見せてはならぬ。功を成した後は、これを焼き捨てよ」

 娘々は「天と地は隔たっており、長く留めることはできぬ」と言い、宋江を戻らせるよう童子に命じました。

 石橋まで送られた宋江は、童子から「橋の下で龍が戯れているのを見なさい」と言われ、身を乗り出したその時、背中をドンと突き飛ばされました。

「あっ!」

 宋江は叫び声を上げ、神厨の床に激突しました。

 気づけば、それは「南柯なんかの夢」であったのです。

 宋江が這い起きて見ると、月は中天にあり、真夜中の静寂が戻っていました。しかし、袖の中を探ると、手の中に三つの種があり、手ぬぐいに包まれた三巻の天書が確かに存在していました。口の中には、今なお仙酒の芳醇な香りが残っています。

「夢のようで夢ではない。神霊が私をお救いくださったのだ」

 廟の額を見上げれば、「玄女之廟げんにょのびょう」の文字がありました。九天玄女きゅうてんげんにょ娘々が、窮地の宋江を救い、天書を授けてくださったのです。宋江は深く感謝し、再建を誓って廟を後にしました。

 村の入り口へと向かうと、前方から凄まじい叫び声が聞こえてきました。また追手か、と身を隠すと、逃げ込んできたのは都頭の趙能たちでした。

「助けてくれ、皆殺しだ!」

 その後ろから、上半身裸で二振りの斧を振り回す大男が現れました。あの「黒旋風」李逵りきです。

 李逵は転んだ趙能を一撃で斬り伏せると、周囲を蹴散らしました。宋江が姿を現すと、欧鵬おうほう陶宗旺とうそうおう劉唐りゅうとう石勇せきゆう李立りりつら好漢たちが次々と現れました。

「兄貴! 無事だったか!」

 戴宗たいそうからの知らせを受け、晁蓋自ら好漢たちを引き連れて助けに来たのです。宋江の父と弟も、すでに別の隊によって救出され、梁山泊へと送り届けられたとのことでした。宋江の目からは熱い涙が溢れました。

 梁山泊に戻った宋江は、父・宋太公との再会を果たしました。

「父上、申し訳ございませぬ……」

 太公もまた、息子との再会を喜び、共に過ごせる幸せを噛み締めました。梁山泊は連日、宋江父子の再会を祝う宴で沸き立ちました。

 しかし、数日が過ぎた頃、公孫勝こうそんしょうが故郷の母を案じて山を下りたいと申し出ました。

「師匠と母を見舞い、安否を確かめたいのです。三、五ヶ月で必ず戻ります」

 晁蓋たちは別れを惜しみながらも、親孝行のための帰郷を許しました。

 その見送りの席で、突然わんわんと泣き出した男がいました。李逵です。

「面白くねぇ! 皆が親父だ御袋だって迎えに行くのに、俺だけが土の中から湧いて出たわけじゃねぇだろ! 俺だって田舎に老いた御袋がいるんだ!」

 李逵もまた、苦労ばかりかけている母親を迎えに行きたいと訴えました。

 宋江は李逵の荒っぽい性格を心配して止めようとしましたが、その熱意に負け、三つの条件を出すことにしました。

 果たして、李逵に課せられたその条件とは何か。

挿絵(By みてみん)

(厳かで神秘的な雰囲気の中、九天玄女の声が天から響き渡る。その声は、深遠でありながら慈悲に満ち、宋江の心に直接語りかけるように響く。)


「宋江よ、汝の忠義と志、天に通じたり。」

「この乱世、衆生は苦しみ、道は乱れ、民は塗炭の苦しみに喘ぐ。

ゆえに天は汝を選び、正しき道を示す。」

「今、汝に三巻の天書を授けん。

その一巻は、『替天』の理を示す。

天の意思を代行し、乱れし世を正すべし。

私欲を捨て、大義に徹する心こそが、天の道なり。」

「その二巻は、『行道』の法を説く。

地の理を悟り、弱きを助け、強きを挫け。

集いし百八の星々を束ね、侠義を重んじ、悪を討つべし。

その歩みこそが、地の道なり。」

「そして三巻は、『無常』の真理を語る。

栄華も、権勢も、尽きせぬ富も、いずれは塵芥と化す運命を知れ。

世は移ろい、人もまた移ろう。

その中にあって、変わらぬは『信』と『義』のみ。

これなくしては、大業は成らざるべし。」

「汝、これら三つの教えを心に刻み、

天に替わりて道を往け。

幾多の困難、血と涙の試練が待ち受けようとも、

その心、決して揺るがすことなかれ。」

「これぞ、汝に課せられたる『替天行道』の使命なり。

我が言を忘れず、天命を全うせよ。」


(九天玄女の声が静かに消え、神殿に再び静寂が訪れる。宋江は、天書を両手に固く抱きしめ、その言葉の重みと使命の大きさに、深く頭を垂れる。彼の心には、清らかな決意と、来るべき困難への覚悟が刻み込まれた。)


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【Vol.42:宋江、神域でチート本をゲット&黒旋風の爆泣き】


 宋江、無謀なソロ活動を開始

梁山泊で連日パリピ生活を送っていた宋江だけど、急に「実家のパパがヤバいかも」とメンヘラ化。「大勢で行くと目立つから」って周囲の制止をスルーして、単身で里帰りするっていう、フラグびんびんなステルスミッションを強行しちゃいます。


 秒で詰む。

実家に着いた途端、弟の宋清に「アニキ、警察(官憲)が張り込んでんぞ!今すぐ逃げろ!」とガチギレされ、速攻でとんぼ返り。案の定、見つかって追われる羽目に。逃げ込んだ先は「還道村」っていう初見殺しの袋小路。宋江、ここで「終わったわ…」と絶望します。

 

 神隠し系異世界転生(?)

ボロい廟(神社みたいなとこ)の厨子の中に隠れた宋江。警察が「ここ怪しくね?」とガサ入れに来るけど、神風が吹いて松明が消えたり、砂が目に刺さったりする超常現象が発生。警察が「ここ呪われてるわ、無理」とビビって撤退。

すると、どこからともなく可愛い侍女が現れて、「女神様がお呼びです」と宋江を謎の超豪華パレス(異世界)へ招待。


 女神様からの激レアギフト

そこにいたのはラスボス級のオーラを放つ九天玄女(九天玄女)様。

神の酒とナツメ(めっちゃ美味い)をご馳走になる。

「天書」3巻を授けられる。「これで天に替わって道を行け(替天行道)」と、物語のメインテーマを丸投げされる。

「内容は軍師の呉用以外に見せちゃダメだよ」と釘を刺される。

目が覚めたら元のボロ廟。でも手元にはガチで本とナツメの種がある。「夢じゃなかった!」


 脳筋無双、現る

夜が明けて村を出ようとしたら、また警察に囲まれてピンチ!…と思いきや、背後から「黒旋風」こと李逵りきが斧を振り回して爆速でエントリー。「アニキぃぃ!邪魔な奴らは全員ブチ殺してやるぜ!」と警察をひき肉にします。

実は、心配した梁山泊のメンバーがフル装備で助けに来てくれてて、パパも弟もすでに救出済み。宋江、最初から全部任せとけばよかったね。


 李逵、マザコン全開で大暴れ(情緒)

梁山泊に戻ってハッピーエンド…かと思いきや、別の仲間が「母ちゃんに会いに行ってくるわ」と言い出したのを見て、李逵が「ずるい!俺だって母ちゃんに会いたい!俺は地面から生えてきたとでも思ってんのか!」と子供みたいに地べたを叩いて爆泣き。

あまりに面倒くさいので、宋江が「わかったから、3つの約束守れるなら行っていいよ」と許可を出して、次回へ続く!


ひとことまとめると

宋江が独断専行でピンチになるも、女神様にチート本をもらってラッキー。ラストは殺人マシーンの李逵が「ママー!」って泣き喚いて全部持っていく回。

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