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私説 水滸伝一〇八編の鎮魂曲  作者: 光闇居士


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〇参参:宋江、夜に小鰲山(しょうごうざん)を看(み)、花栄、清風寨(せいふうさい)に大いに鬧(あば)れる

挿絵(By みてみん)

【花栄神箭図】

寨門洞開 寒霧渺 砦の門は大きく開かれ、冷たい霧がはるか彼方に広がる。

一箭挽月 静気高 一本の矢は月を引き絞るがごとく、その静かな気迫は高い。

宋甲黒袍 凛姿風 宋の甲冑と黒い外套をまとい、その姿は風のように凛としている。

遠山淡墨 敵兵怯 遠くの山々は淡い墨色に霞み、敵兵は恐れおののいている。

神弓引満 弦鳴刹 神の弓は満月のように引き絞られ、弦が鳴る一瞬の静寂。

何人敢近 英雄遥 誰がこの英雄に近づくことができよう、その威厳は遥か彼方にある。

小李広名 天下聞 小李広の名は天下に知れ渡り、

侠胆鉄石 射鵰豪 その侠気と鋼の胆力、まさに射鵰しゃちょうの豪傑である。


【しおの】:趙雲の時同様の力入れようである(笑)

 山東の古都、青州から百里(約五十キロ)ほど離れた地に、清風山という険しい山がある。その麓、青州へと続く三叉路の要衝に位置するのが清風鎮せいふうちんである。ここは三方の悪山に通じる喉元であるがゆえに「清風寨せいふうさい」という砦が置かれていた。人家は三千から五千を数えるほどの賑わいを見せているが、清風山の山賊たちにとっては、わずか一日の行程にある臥榻がとうの側の地であった。

 さて、三人の頭領と別れ、清風山を下りた宋江そうこうは、ただ一人包みを背負い、清風鎮へと足を踏み入れた。行き交う町人に知寨の居所を尋ねると、男は丁寧に答えた。

 「この町の中心に清風寨の役所がございます。そこから南へ行けば文官であるりゅう知寨のお屋敷、北へ向かえば武官である花知寨のお屋敷でございます」

 宋江は礼を述べ、北の寨へと歩を進めた。門前に至り、番兵に名を告げて取り次ぎを頼むと、やがて寨の中から一人の若き軍官が風のように走り出てきた。彼は宋江の姿を見るなり駆け寄り、その手を取って深く拝礼した。

その若武者の姿は、まさに絵に描いたような美丈夫であった。

歯は白く唇はくれないをさし、涼やかな双眸には精気が宿る。眉はびんに届くほど長く清らかで、引き締まった細腰と広い肩は俊敏な猿のよう。荒馬を乗りこなし、鷹を操ることを好むその姿は、百歩離れた柳の葉をも射抜く神技の持ち主であることを物語っていた。弓を引けば秋月のように鮮やかで、矢を放てば流星の如く敵を砕く。人呼んで「小李広しょうりこう」、将門の血を引く若き英雄、花栄かえいとは彼のことである。

 この日、清風寨の武知寨たる花栄の装いは、ひときわ華麗であった。金翠の刺繍が施された戦袍せんぽうをまとい、腰には貴重な山犀さんさいの玉帯を締めている。頭には鮮やかな青の頭巾、足元には緑に塗られた典雅な靴を履き、その威風はあたりを払うようであった。

花栄は挨拶もそこそこに、部下の軍漢に宋江の荷物と武器を預けさせると、敬愛する義兄を支えるようにして正庁へと導き、中央の涼床すずみだいに座らせた。花栄は改めて四度拝礼し、感極まった様子で口を開いた。

「兄上とお別れしてから、指折数えれば早五、六年もの歳月が流れました。常に兄上を慕い、想わぬ日はございませんでした。風の便りに、兄上が鄆城うんじょう県でふしだらな女を殺め、各地にお尋ね者として手配されていると聞き、私は居ても立ってもおられず、針のむしろに座るような心地でした。貴荘へ何度も手紙を差し上げましたが、届いておりましたでしょうか。今日、天の導きによりこうして兄上にお目にかかれましたことは、この花栄、生涯の喜びでございます」

 そう言って再び頭を下げる花栄を、宋江は慌てて引き起こした。

「賢弟よ、礼儀はしなに。まずは座って私の話を聞いてくれ」

 花栄がうやうやしく斜めに腰掛けると、宋江は閻婆惜えんばせきを殺めるに至った経緯から、柴進さいしんの屋敷への逃亡、武松ぶしょうとの出会い、そして清風山で捕らえられ燕順えんじゅんらに救われた顛末をつぶさに語った。

花栄は感慨深げに聞き入っていたが、やがて口を開いた。

「兄上はそれほど多くの艱難かんなんを乗り越えてこられたのですね。しかし、今日こうして私の元へ来られたからには、数年はここに留まり、ゆっくりと今後の策を練りましょう」

宋江は答えた。

こう太公の屋敷に弟の宋清そうせいからの手紙が届いていなければ、ここへ寄ることもなかっただろう」

 花栄は宋江を奥の堂へと招き、妻のさい氏や妹を呼び出して挨拶させた。そして旅の塵を洗うよう着替えと入浴を勧め、奥の堂にて洗塵せんじんの宴を張り、手厚くもてなした。

 酒宴のさなか、宋江がふと、清風山にて劉知寨の妻を救った話をすると、花栄は途端に眉をひそめ、不快感を露わにした。

「兄上、何のゆえあって、あのような女を助けられたのですか。あんな奴の口など、塞いでしまえばよかったものを!」

宋江は驚いて尋ねた。

「おかしなことを言う。清風寨の知寨の奥方と聞いたからこそ、君の同僚の顔を立て、王矮虎わいきゃくこの恨みを買ってまで救い出したのだ。なぜそのように腹を立てるのだ」

 花栄は吐き捨てるように言った。

「兄上はご存知ないのです。私が一人でこの寨を守っていた頃は、強盗どもに青州を荒らされることもありませんでした。しかし最近、あの欲深な劉高りゅうこうという男が正知寨として赴任してきました。あいつは文官のくせに無能で、村の富豪から金を巻き上げ、法を曲げ、悪事の限りを尽くしております。私は副知寨として、常にあの男から屈辱を受けており、あの禽獣きんじゅうめを殺してやりたいとすら思っているのです。ましてやその妻ときたら、夫に不仁を唆し、民を苦しめ、賄賂を貪る希代の悪女。辱めを受けるのがお似合いだったのです。兄上は、救うべきでない者を救われました」

それを聞いた宋江は、穏やかに諭した。

「賢弟よ、それは違う。『怨讐おんしゅうは解くべくして結ぶべからず』と言うではないか。同僚である以上、欠点はあっても長所を見てやるべきだ。そんな狭量な考えを持ってはいけない」

花栄は少し落ち着きを取り戻し、頭を下げた。

「兄上のお言葉、ごもっともです。明日、役所で劉高に会った際、妻を救っていただいた件を話してみましょう」

「そうすれば、君の徳も高まるというものだ」と宋江は微笑んだ。

 それからというもの、花栄の一家は朝夕問わず宋江に酒食を供し、至れり尽くせりのもてなしをした。その夜、宋江は奥の堂の軒下に設けられた静かな寝所で休んだ。翌日もまた、盛大な宴が催された。

 宋江が花栄の寨に滞在して四、五日が過ぎた。花栄は信頼できる部下を交代で宋江に付け、小遣いを与えては、毎日清風鎮の賑わいや名所旧跡を案内させ、宋江の心を慰めた。宋江は案内人と共に芝居小屋や茶店、寺院を巡り、酒を酌み交わした。案内人が支払おうとすると、宋江はそれを制して自分の銀で支払った。宋江は寨に戻っても花栄にはそのことを告げず、案内人は金も得られ、暇もできるので大いに喜び、皆が宋江の徳を慕うようになった。

 こうして一月余りが過ぎ、冬が去り春が巡ってくると、早くも元宵げんしょうの節句が近づいてきた。

清風鎮の住民たちは、元宵を祝う灯籠飾りの準備に湧いていた。寄付を募り、土地大王廟とちだいおうびょうの前に「鰲山(ごうざん・灯籠の山)」を築き、五、六百もの華やかな灯籠を吊るしたのである。廟の中では様々な催しが行われ、家々の軒先にも灯籠棚が設けられた。都の華やかさには及ばぬものの、この世の極楽のような賑わいであった。

 元宵の当日、空は晴れ渡り、花栄は馬に乗って役所へ向かうと、夜の警備のために数百の軍兵を点呼した。柵門の守りを厳重にし、午後三時頃に寨へ戻ると、宋江に点心を勧めた。

宋江が「今夜の灯籠を見に行きたいのだが」と切り出すと、花栄は残念そうに答えた。

「私もお供したいのですが、今夜は警備の職務があり、持ち場を離れるわけにはまいりません。家の者と共にご覧になり、夜更け前にはお戻りください。家で節句の酒を用意して待っております」

 宋江は「それが良い」と頷いた。やがて日が落ち、東の空から美しい満月が昇ってきた。

玉漏ぎょくろうの時を刻む音も忘れるほど、星の橋と火の樹は明るく輝き渡る。鰲山は青雲の上に聳え立ち、この美景を見に来ぬ者などあろうか。

 宋江は花栄の部下二、三人を伴い、月明かりと灯火の中をゆっくりと歩き出した。清風鎮の家々には物語の絵や、牡丹、蓮の花を模した見事な灯籠が飾られ、夜を昼のように照らしている。宋江たちは手を携えて大王廟の前まで進み、聳え立つ鰲山を見上げた。

 その景観たるや、岩を穿って双竜が水に戯れるが如く、雲霞に映えて一羽の鶴が天を舞うが如し。金蓮灯、玉梅灯は瑠璃の光を放ち、荷花灯、芙蓉灯はにしきの彩りを散りばめる。銀の蛾が舞い、雪柳が煌めき、村の歌や太鼓の音が響く中、老いも若きも灯火の影に酔いしれていた。これらはすべて、豊作の年を祝う喜びの輝きであった。

 宋江たちが鰲山を後にし、南へ進むと、五、七百歩ほど先で大勢の人だかりができていた。一軒の大きな屋敷の門前で銅鑼が鳴り響き、喝采が上がっている。それは「鮑老ほうろう」という滑稽な踊りの一座であった。小柄な宋江は人垣に阻まれて見えなかったが、同行の部下が気を利かせて人波を分け、宋江を前の方へと導いた。踊り手の剽軽な動きを見て、宋江は思わず呵呵かかと大笑いした。

 その屋敷の中では、劉知寨夫妻が下女たちと共に灯籠見物をしていた。宋江の笑い声を耳にした劉高の妻は、灯籠の光に照らされたその顔を見て、はっと息を呑んだ。そして夫を振り返り、指差して叫んだ。

「あそこにいる色の黒い背の低い男、あれこそ先日清風山で私を拉致した賊の親分です!」

 劉高は驚愕し、直ちに部下六、七人に命じて、あの笑っている黒い男を捕らえさせた。宋江は気配に気づいて逃げようとしたが、十数軒も行かぬうちに軍漢たちに取り押さえられた。その早業は、鷹が燕を追い、猛虎が羊を喰らうが如き勢いであった。宋江は縄で縛られ、劉高の寨へと引き立てられた。案内をしていた部下たちは仰天し、急ぎ戻って花栄に急を告げた。

 劉高は庁に座り、跪かせた宋江を見下ろして罵った。

「貴様、清風山の強盗の分際で、何という大胆不敵な奴だ。捕らえられたからには言い逃れはできんぞ!」

宋江は必死に弁明した。

「私は鄆城うんじょう県の商人、張三ちょうさんと申します。花知寨の古くからの友人で、強盗など身に覚えがございません」

 すると、劉高の妻が屏風の後ろから躍り出て、金切り声を上げた。

「よくも白々しい嘘を! 私にお前を『大王(親分)』と呼ばせたのを忘れたのかい?」

宋江は訴えた。

「奥方、それは違います。あの時、私も拉致されて山を下りられなかったのだと申し上げたはず。それを忘れたのですか」

劉高は机を叩いて詰問した。

「ならばどうやって山を下り、ここへ来たのだ」

妻は間髪入れずに嘘を重ねた。

「この男は山では中央の椅子にふんぞり返り、私が何を言っても聞き入れなかったのです。大悪党に違いありません」

宋江は嘆いた。

「奥方、私が力を尽くしてあなたを救い出したことをお忘れか。恩を仇で返し、なぜ私を強盗に仕立てようとするのですか」

 女は激昂し、「このしぶとい奴め、打たねば白状するまい!」と叫んだ。劉高の命により、部下たちが宋江を竹箆しっぺいで滅多打ちにした。宋江は皮が裂け肉が飛び散るほどの傷を負い、ついに鉄鎖に繋がれた。劉高は彼を「鄆城虎うんじょうのこ」張三として囚車に入れ、明日州へ護送することを決めた。

 一方、逃げ帰った部下から報告を受けた花栄は大いに驚き、すぐに筆をとって劉高宛ての手紙をしたため、使いを走らせた。

『花栄、同僚の劉相公に謹んで申し上げます。近日済州から参りました親族のりゅう丈が、灯籠を見物中に誤って貴殿のお怒りに触れたとのこと。何卒寛大なお心で放免いただきたく、後ほど改めてお礼に参上いたします』

 劉高はこの手紙を見るや、怒りに任せて粉々に引き裂いた。

「花栄め、不届き千万! 朝廷の将校でありながら強盗と通じ、私を欺こうとは。この賊は自ら張三と名乗っているのに、なぜ劉丈などと書くのだ。私を愚弄するのもいい加減にしろ。同姓であることを利用して放免させようなど、浅ましい魂胆だ!」

 劉高は使いの者を怒鳴りつけて追い出した。報告を聞いた花栄は、「兄上に申し訳ない! 直ちに馬を引け!」と叫んだ。

 花栄は甲冑をまとい、愛用の弓矢を携え、三、五十人の精鋭を率いて劉高の寨へと乗り込んだ。その殺気立った勢いに恐れをなし、門兵たちは散り散りに逃げ出した。花栄は庁に駆け上がると、馬から下りて槍を手に叫んだ。

「劉知寨、出てきて話をしろ!」

 劉高は花栄の鬼気迫る形相を盗み見て、魂を消し飛ばし、奥に隠れて出てこようとしなかった。花栄は部下に命じて屋敷を捜索させ、はりに吊るされていた血まみれの宋江を発見した。花栄は自らの手で縄を解き、宋江を救い出すと、自分の寨へと丁重に送らせた。

 帰り際、花栄は馬に跨り、槍を掲げて叫んだ。

「劉知寨、正知寨だからといって花栄を侮るな! 私の親戚を強盗に仕立て上げるとは、明日、この始末は必ずつけてやるぞ!」

 宋江を奪われた劉高は、二、三百人の兵をかき集め、奪還に向かわせた。指揮を執る二人の教頭は、花栄の武芸が神域にあることを知りつつも、上司の命には逆らえず、夜明け前に花栄の寨を遠巻きに囲んだ。しかし、花栄を恐れて誰一人として踏み込もうとはしない。

 夜が明けると、寨の門は大きく開け放たれており、中では花栄が正庁に堂々と座り、弓に矢を番えて待ち構えていた。

花栄は弓を引き絞り、雷のような大音声だいおんじょうを上げた。

「兵士たちよ、よく聞け! 怨讐には元がある。劉高に命じられたからといって、犬死にするな。新任の教頭たちよ、まずは花栄の弓の腕前を見よ。これを見てもなお劉高のために動きたい者は、かかってくるがよい。まずは左の門神もんしんが持つ骨朵(こつだ・飾りの珠)を射抜いてみせる!」

弦音つるおと一響、放たれた矢は吸い込まれるように飛び、見事に骨朵を射抜いた。どよめきが走る中、花栄はすかさず二の矢を番えた。

「次は右の門神の兜の朱纓(しゅえい・房飾り)だ!」

矢は寸分違わず房飾りを貫き、二本の矢が門扉に突き刺さった。花栄は三の矢を番え、白装束の教頭に狙いを定めた。

「次はそこの白い服を着た教頭の心窩みぞおちを射抜くぞ!」

 その教頭は「ひえっ、お助けを!」と悲鳴を上げて逃げ出し、それを見た軍兵たちも一斉に蜘蛛の子を散らすように逃げ去った。花栄は悠々と門を閉じさせ、奥の堂で宋江の介抱に向かった。

「兄上にこれほどの苦痛を与えてしまい、合わせる顔もございません」と詫びる花栄に、宋江は答えた。

「私は大丈夫だ。だが、劉高がこのまま黙っているはずがない。今後のことを考えねばならぬ」

 花栄は憤然と言った。

「官職など捨ててでも、あの禽獣と決着をつけます」

 しかし、宋江はそれを止めた。

「あの女が恩を仇で返し、夫に私を打たせるとは……。本名を明かせば閻婆惜の一件が露見することを恐れ、張三と名乗ったが、劉高は私を強盗の頭目として州へ送るつもりだ。君が助けてくれなければ、言い逃れもできなかっただろう」

花栄は悔しげに言った。

 「同じ姓のよしみで情けをかけるかと思いきや、これほど不仁な奴とは。とりあえず救い出しましたが、どうしたものでしょう」

 宋江は冷静に提案した。

「賢弟よ、物事は三思せよ。君の威勢で兵は散ったが、奴は必ず上司に報告するだろう。今夜中に私が清風山へ逃げれば、あとは君と劉高の諍いとして、文武の不和で済む。だが、私がまた捕まれば、もはや言い逃れはできない」

 花栄は宋江の深謀遠慮に感服し、傷ついた宋江を案じたが、宋江は「一刻を争う」と言い、黄昏たそがれ時に密かに山へ向かった。

 一方、劉高は兵たちが逃げ戻ったと聞き、花栄の神弓の威力を知って震え上がったが、文官らしい陰湿な執念で策を巡らせた。

「花栄のことだ、今夜中にあの賊を清風山へ逃がすに違いない。明日しらを切られても、文武の不和で済まされては敵わぬ。今夜、街道に伏兵を潜ませておこう。運良く捕らえられれば、密かに屋敷に監禁し、夜通し州へ使いを送って軍隊を呼び、花栄もろとも始末してやる。そうすれば清風寨は私の天下だ」

 果たして二更(午後九時から十一時)の頃、待ち伏せていた兵たちが宋江を再び捕らえ、劉高の屋敷へと連行した。劉高は大いに喜び、宋江を誰にも会わせぬよう後院に閉じ込めると、青州知府ちふへ早馬を送った。翌日、花栄は宋江が逃げ切ったものと思い込み、知らん顔をしていた。劉高もまた沈黙を守り、二人は互いに腹を探り合っていた。

 時の青州知府は慕容ぼよう彦達げんたつといい、徽宗きそう皇帝の貴妃きひの兄という威光を笠に着て、悪政を敷く奸物であった。劉高からの報告書を受け取り、花栄が強盗と通じているという内容に驚いた知府は、兵馬都監へいばとかん黄信こうしんを呼び出し、討伐を命じた。この黄信という男、武芸に秀で、清風山、二龍山、桃花山の三つの悪山を平らげると豪語し、自ら「鎮三山ちんさんざん」と号していた。

 黄信は五十の精兵を引き連れ、清風寨の劉高の元へ乗り込んだ。囚車に入れられた宋江を確認すると、黄信は劉高に「花栄を捕らえる計略」を授けた。

「明朝、酒を用意して公庁で待ち伏せるのだ。私は『知府の命で、文武の仲直りをさせに来た』と言って花栄を誘い出す。そこを一網打尽にする」

 翌日、黄信は言葉巧みに花栄を公庁へと誘い出した。花栄は同じ武官である黄信を疑わず、劉高の待つ庁へ向かった。酒が酌み交わされ、宴がたけなわとなった頃、黄信が杯を床に叩きつけた。それを合図に、屏風の裏から武装した兵たちが一斉に飛び出し、花栄を取り押さえて縛り上げた。

「何の罪だ! 卑怯だぞ!」と叫ぶ花栄に、黄信は冷ややかに言い放った。

「貴様は強盗と通じた逆賊だ!」

 証拠を見せろと抗議する花栄の前に、囚車に入れられた宋江が引き出された。やつれ果てた宋江の姿を見て、花栄は言葉を失った。

 花栄は必死に訴えた。

「この人は私の親戚だ。強盗に仕立てるというなら、上司に直訴する!」

 しかし黄信は「弁明は州へ行ってから聞く」と答えるのみ。劉高に百人の兵を付けて護送を命じ、黄信と劉高は馬上の人となり、二台の囚車を厳重に護衛して青州へと出発した。

 これこそが、幾百の家屋を紅蓮の炎に包み、幾千の命を奪う大嵐の幕開けであった。

生事せいじ事を生ず、君 ゆるすなかれ、

害人がいじん人を害す、なんじ いかるをめよ。

 果たして、解送される宋江と花栄の運命やいかに・・・

【Vol.033:宋江、パリピ祭りで詰んで、イケメン弟分が神エイムで無双する話】


1. 宋江、ガチ勢のイケメン弟分と合流

清風山を降りた宋江そうこう、ド田舎だけど要塞都市な「清風鎮」に到着。ここに住むマブダチ、花栄かえいを訪ねる。

この花栄、顔面偏差値が高すぎて直視できないレベルの美青年。しかも「小李広(李広将軍の再来)」と呼ばれる弓の達人で、スペックが異世界転生主人公なみ。

再会して「兄貴ィィィ!」って拝み倒される。宋江、ここでも財布の紐ゆるゆるで、ガイド役におごりまくって現地のファンを獲得。さすがカリスマ。


2. 害悪BBA(劉高の妻)による理不尽な特定

花栄には悩みがあった。上司の劉高りゅうこうって文官が無能な上に性格がカス。しかもその妻が、以前宋江が山賊から助けてやったのに、礼も言わないドクズ女(地雷)だった。花栄マジ切れ。「あんな奴助けなくてよかったのに!」

季節は春、元宵節ランタンフェスティバル到来

宋江、「俺もキラキラしたの見たい」って夜遊びへ。変なおっさんのダンス見て「草」って爆笑してたら、その笑い声で例の地雷妻にバレる。

妻「あいつ私を誘拐した山賊の親玉よ!」(←大嘘。助けてくれた恩人です)

劉高「捕まえろ!」→ 宋江、ボコられて逮捕。「張三」っていう偽名使うも、妻の「山賊の親分プレイ強要された」っていう妄想証言で詰む。


3. 花栄の神エイム炸裂と、まさかのバッドエンド

花栄ブチ切れ。「親戚のおじさんですぅ~」って手紙書くもビリビリに破られ、実力行使へ。

武装して役所にカチ込み、宋江を奪還。「覚えとけよゴミ上司!」と捨て台詞。

翌日、劉高が兵を差し向けるも、花栄がチート級の弓技を披露

門の飾りにヘッドショット

兜の房をピンポイント狙撃

「次は白い服着たお前の心臓な」と予告

→ 敵兵「無理ゲーすぎワロタ」と全員逃走。物理で解決。

しかし、宋江が「このままじゃヤバい」と夜逃げを図るも、劉高が芋り戦法(伏兵)を使ってて再逮捕される。無念。

さらに青州の偉い人が「鎮三山・黄信こうしん」っていう強そうな名前(噛ませ犬臭がする)の将軍を派遣。

黄信「仲直りしようぜ(大嘘)」と花栄を呼び出し、宴会の席でコップを割る合図で伏兵出して逮捕。


結末:

花栄「話が違うぞゴルァ!」

黄信「うるせえ、お前ら二人とも護送車行きな」

宋江と花栄、二人仲良く檻の中。青州へドナドナされることに。これ絶対絶命じゃね?

次回、地獄の護送車ツアー!大嵐の予感しかない。


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主要人物図鑑(登場順)


045:小李広しょうりこう花栄かえい★梁山泊一〇八将★

~顔面国宝にしてエイム障害(褒め言葉)のSSRキャラ~

【スペック】

役職: 清風寨の副知寨(ナンバー2)。実質、武力担当の現場エース。

ビジュ: SSR確定演出。歯が白くて唇が紅いとか、加工アプリなしでこの完成度はバグ。歩くインスタ映え。

スキル: 「神エイム」。FPSなら確実にBANされるレベルのオートエイム(自動照準)持ち。百歩離れた柳の葉っぱを撃ち抜くとか、物理エンジンの設定ミスを疑う。

性格: 宋江(兄貴)への愛が重い「強火オタク」。兄貴のためなら職も地位も秒で捨てる潔さがヤバい。

【ここが沼!】

あだ名の由来: 「李広りこう」は漢の時代の伝説的スナイパー将軍。「小」は「二世」とか「再来」的なニュアンス。つまり「令和の李広」みたいなこと。本家超えしてる説まである。

ファッション: 戦闘服のセンスが良すぎる。銀の鎧にマントとか、完全に「俺が主役です」オーラ出してる。

推しポイント: クールな見た目なのに、劉高みたいな害悪上司にはガチギレして暴れる「瞬間湯沸かし器」な一面も。ギャップ萌えの塊。でも兄貴(宋江)の前では急にデレる。スパダリ(スーパーダーリン)属性完備。


046:鎮三山ちんさんざん黄信こうしん★梁山泊一〇八将★

~プロフ盛りすぎ? 苦労人の中間管理職~

【スペック】

役職: 青州の兵馬都監。知府(県知事クラス)直属のエリート用心棒。

ビジュ: 悪くないけど花栄の隣だと霞む「雰囲気イケメン」。

スキル: 「喪門剣そうもんけん」という強そうな剣技を使う。実力はある……あるんだけど、周りがバケモノすぎて「普通に強い人」止まり。

性格: 上司(慕容知府)の命令は絶対な社畜マインド。策を使って花栄を捕まえるなど、真面目ゆえにちょっとセコい手も使う。

【ここがツッコミ所!】

あだ名の由来(炎上案件): 「鎮三山」=「清風山・二竜山・桃花山の三つの悪党の巣窟を鎮圧する男」という意味。

実態: 「まだ鎮圧してません」。

これ、「鎮圧した実績」じゃなくて「いつか鎮圧してやるぜ(願望)」っていう目標をあだ名にしちゃった痛いパターン。YouTubeのサムネで「重大発表」って書いて中身たいしたことない釣り動画みたいなもん。タイトル詐欺疑惑あり。

立ち位置: エリートなのに、登場早々、花栄(天才)と宋江カリスマの引き立て役をやらされる不憫なキャラ。典型的な「噛ませ犬」ムーブをかましてくれるが、根は悪い奴じゃない……たぶん。今後、自分のあだ名に苦しめられる運命確定。


今回のまとめ:

花栄 : 課金キャラ並みの最強スペックを宋江への愛に全振りした「狂犬ワンコ系イケメン」。

黄信 : プロフ盛りすぎたせいで後に引けなくなってる「意識高い系(物理)社畜」。

この二人が今後どう絡んでいくか(というか黄信がどうボコられるか)、要チェックです!

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