〇参壱:張都監(ちょうとかん)、血は鴛鴦楼(えんおうろう)に濺(そそ)ぎ、武行者、夜に蜈蚣嶺(ごこうれい)を走る
さて、張都監は張団練の甘い言葉に乗り、蒋門神への義理立てとして復讐を企て、武松の命を狙いました。しかし、放たれた四人の刺客は、飛雲浦の橋の上で、ことごとく武松の返り討ちに遭って果てたのです。
武松は橋の上に佇み、しばし沈思黙考に沈みました。その胸に渦巻く怒りは天を突き、恨みは骨の髄まで徹しています。
「張都監をこの手で葬らぬ限り、この胸のつかえは一生晴れることはない」
彼は骸の側から腰刀を拾い上げ、質の良いものを選んで腰に差し、朴刀を携えて、再び孟州の城内へと引き返しました。城に辿り着く頃には、すでに黄昏の刻も過ぎ、家々は固く門を閉ざしていました。
【詩に曰く】
十字街には灯火が煌々と輝き
九曜寺からは香の煙と鐘の声が流れる
一輪の明月は青天に静かに掛かり
碧漢には数多の星がまたたく
六軍の営には角笛の音が低く響き
五鼓の楼には銅壺の滴りが刻を刻む
佳人は刺繍の幕へと帰り
士子は書斎の帷を静かに閉ざす
武松は張都監の屋敷の裏庭、馬小屋のあたりに音もなく忍び寄りました。暗がりに身を潜めていると、角門が開き、提灯を手にした馬丁が姿を現しました。刻は一更四点(午後八時頃)。馬丁が馬に秣をやり、ようやく床に就こうとしたその時、武松が静かに戸を叩きました。
「誰だ、こんな夜更けに。泥棒ならもっと早く来い」
馬丁が不用心に戸を開けた瞬間、武松が飛鳥のごとく飛び込み、その喉元を鷲掴みにしました。冷たい刃を突きつけられ、腰を抜かした馬丁は「命だけは、命だけはお助けを……」と地を這って許しを乞います。
「張都監はどこだ」
「蒋門神様、張団練様とお三方で、鴛鴦楼の上で酒を酌み交わしておられます」
「嘘ではないな?」
「もし嘘なら、疔瘡を患って果てても構いませぬ」
「ならば、生かしてはおけぬ」
武松は手起一刀の下に馬丁を斬り伏せました。彼は施恩から贈られた新しい綿入れに着替え、腰周りを引き締めると、馬丁の布団の中から路銀を包んで肩に掛け、朴刀を手に壁を越えて、屋敷の奥深くへと忍び込みました。
月明かりが照らす中、武松は厨房へと足を向けました。中では二人の下女が不平をこぼしていました。
「一日中こき使われて、この期に及んでまだ茶を持ってこいとおっしゃる。あのお客さんも、あんなに泥酔していながら、よくもまあお帰りにならないことだわ」
武松は戸を押し開き、有無を言わさず下女たちを斬り捨てました。亡骸を竈の前に転がし、灯火を消すと、月光を頼りに鴛鴦楼の階段を一段ずつ昇っていきました。
二階からは、三人の親密な話し声が漏れ聞こえてきます。蒋門神が都監に媚びるように語っていました。
「相公のおかげで、ようやく長年の恨みを晴らすことができました。このご恩、必ずや幾重にもお報いいたします」
「わしの兄弟分である張団練の頼みゆえな。金はかかったが、あの武松も今頃は飛雲浦で無惨な死体となって転がっておろう。明朝になれば、待ちわびた吉報が届くはずだ」
武松はその言葉を聞くや、怒りの炎が天を焦がさんばかりに燃え上がりました。
【詩に曰く】
暗室の中、欺くべからず
古今の奸悪、ことごとく誅せられん
金風いまだ動かざるに蝉は喧しく
無常の使いを送りて死を知らず
武松は楼に踏み込みました。
蒋門神が驚愕して立ち上がろうとした瞬間、武松の刀がその顔面を容赦なく叩き割り、椅子ごと斬り倒しました。次いで張都監が逃げようとしましたが、その首筋を深々と斬られて床に伏しました。
武官出身の張団練は椅子を盾に抗戦を試みましたが、武松の神力には遠く及ばず、突き飛ばされたところを鮮やかに首を跳ねられました。武松は蔣門神と都監の首をも落とすと、卓に残された酒を悠然と飲み干し、血を浸した衣の端で、白壁に八文字、大きく書き記しました。
「殺人者、打虎武松也」
(人を殺めし者は、虎を打ちし武松なり)
さらに、異変に駆けつけた都監の夫人、下女の玉蘭、そして幼き子供らまでも、武松は容赦なく手にかけました。
「一に不作、二に不休。百人殺そうと、死ぬのは一度きりだ」
合計十五人の血を流した武松は、銀の酒器を奪い、朴刀を杖代わりにして城壁を軽々と越え、孟州の城を脱出しました。
【詩に曰く】
路上にて刃を開くを図り
楼中にて酒を飲むを喜ぶ
一人、多くの人を害せしも
殺意は殺し手よりも惨し
しからざれば冤鬼に纏わられ
いずくんぞ身を抽き、便走り去らんや
夜通し走り続け、四更三点(午前三時頃)。武松は極度の疲労と傷の痛みに耐えかね、林の中に佇む古い小廟で眠りに落ちました。しかし、不運にもそこを通りかかった村の搗子たちに見つかり、捕らえられてしまったのです。
彼らが武松を連れて行った先は、街道沿いの草深い一軒家でした。
柱に頑丈に縛り付けられ、「良い肉の材料が手に入った」と喜ぶ搗子たち。武松は静かに覚悟を決めました。「こんな名もなき場所で果てるくらいなら、城内で潔く首を刎ねられ、名を残すべきであったか……」
【詩に曰く】
奸邪を殺し尽くして恨みようやく平らぐ
英雄、難を逃るるも名を逃れず
千秋の意気、生きて恥ずることなく
七尺の身躯、死して軽からず
ところが、現れた家の主人の夫婦を見て、武松は目を見開きました。
そこにいたのは、十字坡の「菜園子」張青と「母夜叉」孫二娘の二人だったのです。
彼らは捕らえた男が武松であることを知るや、慌てて縄を解き、非礼を丁重に詫びました。張青が孟州の情勢を尋ねると、武松はことの顛末をすべて語って聞かせました。
「十五人の首を跳ね、城を越えて参った。だが傷が痛み、小廟で休んでいるところを、この者たちに捕らえられたのだ」
張青の部下である搗子たちは平伏して許しを請いました。張青は、武松がいつか逃れてくる日のために、部下たちへ「動ける獲物は殺さずに捕らえておけ」と命じていたのでした。
数日間、武松は張青の屋敷で傷を癒やしましたが、城内では三千貫の賞金が掛けられ、武松の人相書きが至る所に張り出されていました。
「二哥、ここももはや安全ではありません。青州の二龍山へ向かい、魯智深殿を頼りなされ。あそこならば官軍も容易には手出しできまい」
しかし、武松の顔には流刑の罪人を示す「金印」の刺青がくっきりと残っています。
そこで、孫二娘が妙案を差し出しました。
「二年前、ここを通った頭陀(ずだ・修行僧)を一人仕留めたことがありました。その者が残した衣、数珠、度牒(どちょう・身分証)、そして雪花の鑌鉄の戒刀が大切に残されています。二哥、髪を切り、この武行者の姿に身を変えなされ。そうすれば、顔の金印も隠せましょう」
【詩に曰く】
緝捕は星火のごとく急にして
顛危は風波に似たり
もし災禍を免れんと欲せば
まさに頭陀と成るべし
武松は髪を切り、鉄の界箍(かいこ・鉢巻き)を締め、黒の直裰を纏いました。その姿は、まさしく前世からの定めの如く、凛々しき修行僧そのものでした。
張青は武松に路銀と魯智深への手紙を渡し、くれぐれも慎重に行動するよう諭して見送りました。
【描写に曰く】
前の髪は眉を覆い、後ろの髪は頸に及ぶ。
黒の直裰は烏雲が体を覆うが如く
色とりどりの絛は錦の蛇が身に纏うが如し。
額の界箍は燦然として
瞳は火の如く輝く。
戒刀二口、秋の殺気を帯び
数珠百顆、悲風を路に呼ぶ。
人を喰らう羅刹も手を拱き
護法の金剛も眉を顰めん。
武行者の姿となった武松は、夜道を急ぎました。十月の冴え渡る月明かりの下、蜈蚣嶺という険しい峠に差し掛かりました。
すると、林の中に佇む古びた庵から、男女の楽しげな笑い声が聞こえてくるではありませんか。覗いてみれば、一人の道士が女を抱き寄せ、月を愛でながら戯れているではありませんか。
「出家の身でありながら、なんという破廉恥な真似を!」
武松の正義の怒りが爆発しました。彼は腰から戒刀を静かに抜き放ちました。夜風に鳴るその刃は、まだ一度も血を吸ったことがありません。
「この不届きな道士で、刀の試し斬りをしてくれよう」
武松が庵の門を石で激しく叩くと、一人の童子が現れました。
「何奴だ、こんな夜更けに騒がしい!」
「童子、まずは貴様の首を祭壇へ供えてやろう!」
武松の手が閃きました。錚という音と共に、童子の首が地を転がりました。
「誰だ、わしの弟子を殺したのは!」
中から道士が二口の宝剣を手に、血相を変えて飛び出してきました。武松は大笑いし、双振りの戒刀を鮮やかに舞わせました。
月明かりの下、寒光と殺気が激突します。
その様は、まさに飛ぶ鳳凰が鸞を迎えるが如く、角鷹が兎を捕らえるが如し。十数合の死闘の果て、峠の林に鈍い音が響き渡り、一人の影が力なく倒れ伏しました。
飛び散る血飛沫は、静かな月夜に降り注ぐ雨のようでした。
果たして、地に伏したのはどちらか――。
【Vol.031:武松、闇堕ちから「最強の僧侶」へジョブチェンジ】
1. 復讐の鬼、深夜の「突撃!隣の晩ごはん」
飛雲浦で刺客を返り討ちにした武松、怒り値がMAX突破。そのまま孟州城へ逆走します。「元凶を仕留めなきゃ気が済まねえ」ってことで、ターゲット・張都監の屋敷に不法侵入。
まずは馬小屋の馬丁を脅してターゲットの居場所(鴛鴦楼)を吐かせ、「口封じ乙」でサクッと始末。 その後、厨房で愚痴ってた下女たちも巻き添えに。この時の武松、完全に「ジョン・ウィック」状態です。
2. 鴛鴦楼で「サプライズ皆○し」
楼閣の上では、張都監、蔣門神、張団練の悪徳トリオが「武松死んだかな?w」とか言いながら、おいしくお酒を飲んでました。そこに武松が「お待たせ!」と乱入。
蔣門神は椅子ごと斬られ、都監も団練も一瞬でデリート。武松はそこにあった酒を飲み干し、血をインク代わりにして壁に「犯人は俺(武松)だわ」と巨大なサインを残します。承認欲求の塊というか、潔すぎる犯行声明。
3. 殺害スコア「15」とまさかのピンチ
勢い余って都監の嫁さんも、ハニトラ娘の玉蘭も、子供まで皆○しにする武松。「中途半端にやめるくらいなら全員いくわ」という超極端な理論を展開します。
城壁を越えて脱出したものの、疲労コンパイルで小廟で爆睡してたら、地元の小悪党に捕まるというポカをやらかします。最強の男、スタミナ切れには勝てなかった。
4. 懐かしの「人間ミンチ屋」夫婦と再会
捕まった先で「いい肉が手に入ったw」と喜ぶ連中のボスは……なんと以前、武松を人間団子にしようとした張青と孫二娘!
「あ、武松の兄貴じゃん!マジ失礼したわ!」と急に同窓会モードに。武松はここでのんびり傷を癒やしますが、街中に指名手配書が貼られてて、賞金もヤバいことに。
5. 衝撃のイメチェン「武行者」降臨
「刺青あるしバレるよね?」ってことで、孫二娘が提案したのが「僧侶(修行僧)のコスプレ」。
以前店で始末した修行僧の装備一式(黒い服、数珠、カッコいい戒刀)を装備し、武松は髪をバッサリ切って「武行者」にジョブチェンジ。これが驚くほど似合ってて、本人も「前世からこれだった気がするわ」と納得。
6. 深夜の峠で「不純異性交遊」を許さないマン
新しい刀の試し斬りをしたい武松、蜈蚣嶺という峠で不穏な庵を発見。覗いてみると、道士(修行僧)が女の子とイチャついてお酒を飲んでる超絶リア充シーン。
「坊主のくせに女と遊ぶとか許せねえ(俺のハニトラの恨みを思い出させるんじゃねえ)」とブチギレ。まずは弟子をワンパンで倒し、飛び出してきたエロ道士と月光の下でガチバトル開始!
今回のポイント:
武松の闇が深い: 「1人殺すのも100人殺すのも一緒じゃね?」という無敵の人理論。
現場の書き置き: 「殺人者・打虎武松也」のフォントサイズが気になるレベルのドヤ感。
コスプレ(本気): 武松といえば「行者(修行僧)」スタイルですが、その誕生秘話は「死体からの剥ぎ取り装備」という意外な事実。
一言で言うと:
「復讐で15人抜きした武松が、指名手配から逃れるために僧侶にコスプレしてみたら、道中でチャラいお坊さんを見つけて試し斬りしちゃう回」です!




