〇弐七:母夜叉、孟州道に人肉を売り、武都頭、十字坡に張青に遇う
「あれれ~? おっちゃん、また寝ちゃったの? 全く、肝心な時にこれだから困るんだよな…」
コナンは腕時計型麻酔銃を構え、探偵事務所のソファでいびきをかく小五郎めがけて麻酔矢を放った。プスッ、と小気味よい音がして、小五郎はピクリとも動かなくなった。
「やれやれ…よし、これで当分起きないね、と。さて、みんな、この絵に隠された謎を解いていこうじゃないか!」
コナンは蝶ネクタイ型変声機を操作し、小五郎の声で話し始めた。
「さてさて、この絵を見てみろ。これはただの酒場の風景じゃないぜ? よーく見てみると、怪しい点がいくつもあるんだ!」
「まず、手前にいる男と女。このガタイのいい男が、どうやらこの女を捕らえているようだな。男は上半身裸で、筋肉隆々。額には特徴的な刺青がある。こいつはただの旅人じゃないぞ…何やら尋常じゃないオーラを放っている。そして、捕らえられている女は、まだ若い、艶やかな美貌の持ち主だ。だが、その表情には焦りが見える。一体、この二人の間に何があったんだ?」
「次に、奥のテーブルを見てくれ。二人の男が机に突っ伏して、ぐったりしている。よく見ると、口元からよだれが垂れているし、着ているのは囚人看守の服だ。そして、テーブルには酒の瓶と饅頭らしきものが散らばっている。これはどう見ても、ただの酔いつぶれ方じゃないな…そう、薬物を盛られて意識を失っているんだ!おそらく、この女が提供した酒に、何か仕込まれていたんだろう。」
「さらに、足元にも注目だ。ひっくり返ったテーブル、散らばった饅頭、そして砕け散った茶碗。これは、この場で激しい争いがあったことを示している。普通の酒の席で、こんな惨状になるわけがない。しかも、手前のテーブルの上にも饅頭があるが、これは手つかずだ。つまり、この男は、奥の看守たちが倒れる前に、この女の怪しさに気づいていたということだ!」
「そして、この絵全体の雰囲気もおかしい。奥には不気味な枯れ木がそびえ立ち、酒屋の屋根には蜘蛛の巣のような蔓が絡みついている。遠くの地平線は薄墨で滲んでいて、どこか殺伐とした印象を受ける。これは、この場所がただの酒場ではない、何か裏がある危険な場所であることを暗示しているんだ!」
「つまりだ、俺の推理はこうだ! この美形の男、実は罪人として護送されてきたんだ。護送の途中で、この酒屋に立ち寄った。しかし、この酒屋の女は、旅人を狙って毒入りの酒を飲ませ、金品を奪ったり、あるいは…もっと恐ろしいことをしていたんだろう。現に、奥のテーブルの近くには、すでに倒れている者もいるようだ。」
「この男は、その毒酒の罠に気づき、看守たちが薬酒で意識を失うのを見計らって、この女を捕らえたんだ!女の顔に焦りがあるのは、自分の悪事が露見し、逆に捕らえられたからに違いない!武人らしい力で女を制しているのは、この場で彼女を問いただしているか、あるいは…この後、彼女に何かをさせようとしているのかもしれないな。」
「全てを総合すると、この絵は、正義の武人が、悪しき女と彼女の仕掛けた罠を打ち破り、その真の姿を暴こうとしている、まさにその緊迫した瞬間を描いているんだ!」
コナンはそう言って、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「なあ、みんな、この謎解き、面白かっただろ? 次の事件も、楽しみにしててくれよな!」
【しおの】
さて、武松は向き直ると、四軒の隣人たちへ向かって静かに語りかけた。
「私は兄の仇を討ち、ようやく積年の恨みを晴らしました。この罪は理に適ったものゆえ、たとえ命を落とそうとも悔いはありません。しかしながら、皆様には多大なるご迷惑と驚きを与えてしまいました。これより先、私の身がどうなるかは天のみぞ知るところ。つきましては、兄の霊床を今ここで焚き上げ、家に残した家財道具は皆様で売り払って、私の裁判の費用に充てていただきたい。私はこれから県庁へ自首いたします。罪の軽重は問いません。ただ、どうか事実をありのままに証言していただきたいのです」
言い終えると、武松は速やかに位牌と紙銭を焼き、二階から二つの箱を降ろして中身を隣人たちに託した。そして、元凶である老婆の王婆を厳しく引き立て、二つの生首を提げると、迷うことなく県庁へと向かった。
陽穀県の街は、さながら蜂の巣を突いたような騒ぎとなった。沿道には数えきれぬほどの見物人が詰めかけている。知県(知事)は事の次第を聞いて驚愕し、直ちに審理を開始した。武松は王婆を床に跪かせ、凶器の刀と二つの生首を階下に並べた。武松が左、王婆が中央、四軒の隣人が右に並んで跪く。武松は懐から、かつて胡正卿が書き留めておいた供述書を取り出し、事件の経緯を一部始終、理路整然と語り聞かせた。
知県が役人に命じて王婆を問いただすと、老婆もはや逃げられぬと悟り、すべてを白状した。隣人たちも口々に真実を述べ、何九叔と少年の鄆哥もまた、事の真相を記した供述書を提出した。検死官らが紫石街へ赴き、潘金蓮と西門慶の遺体を検分し、詳細な検分書を作成して県庁へ戻ると、ようやく公的な訴追案が立てられた。知県は長い首枷を持ってこさせ、武松と王婆の首を繋いで投獄し、隣人らは沙汰を待つ間、門番小屋に留め置かれることとなった。
この知県は、武松が義理堅く情に厚い快男児であることをよく知っていた。また、以前に彼が都へ使いに行った際の忠義に免じて、何とかその命を救いたいと考えた。そこで書記を密かに呼び寄せ、こう相談を持ちかけた。
「武松は、誠に惜しむべき義の人だ。この供述書、何とか書き直せぬものか。例えばこうだ――武松が亡き兄を祭ろうとした際、兄嫁がそれを拒んで激しい争いとなった。女房が霊床を突き倒したため、兄の位牌を守ろうとした武松と揉み合いになり、その最中に誤って殺めてしまった。そこへ不貞の相手である西門慶が現れ、女を助けようと武松に襲いかかったため、争いは獅子橋まで続き、死闘の末に討ち取った……とな」
この慈悲深い配慮によって書き直された訴状が武松に読み聞かされ、上級機関である東平府へと送る公文書が調えられた。陽穀県は小さな街ではあったが、義に厚い者が多く、地元の資産家たちは武松の身を案じて路銀を贈り、酒食の差し入れも絶えることがなかった。武松は鄆哥の年老いた父に銀十二、三両を渡し、身辺の整理を終えた。やがて県庁の役人が公文書を抱え、何九叔が守っていた銀や遺骨、証拠の品々を携え、囚人たちを連れて東平府へと旅立った。
府の役所に到着すると、門前は見物人で埋め尽くされていた。府尹(知事)の陳文昭が審理の席に着いた。この官吏こそ、次のような詩で讃えられる人物であった。
【詩に曰く】
平生より心は正直にして、稟性(生まれつき)は賢明なり。
幼き頃は雪の明かりで書を読み、成人しては帝の前で国策を説く。
戸口は増え、税は整い、民はその徳を道すがら謳う。
訴訟は減り、盗賊は鳴りを潜め、長老たちは市井に賛歌を響かせる。
文章の才は李白や杜甫を凌ぎ、政の徳は古の名官にも勝る。
陳府尹は聡明な官吏であり、一目見ただけで事の真相を察した。陽穀県からの文書と各人の供述を精査し、証拠品を厳重に蔵に収めさせた。武松の重い首枷は軽いものへと付け替えさせ、対照的に悪徳の限りを尽くした王婆には重罪人用の枷を嵌めて死刑囚牢へと投じた。隣人や鄆哥、西門慶の親族らには、朝廷からの最終裁定が下るまで待機するよう命じ、陽穀県の役人は帰路につかせた。
陳府尹は武松の義侠心に深く同情し、獄中にたびたび酒食を運ばせた。そのため、獄吏たちも武松からは一文の賄賂も受け取らず、かえって彼を厚遇した。府尹は判決をさらに情状酌量した内容に書き直し、省院へと送り届け、さらに腹心の部下に密書を持たせて都へ走らせた。都の刑部(刑罰を司る官庁)には陳府尹と親しい者がおり、この一件を適切に上申し、その結果、次のような裁定が下された。
「王婆は不倫を唆し、夫を毒殺させた首謀者であり、人倫を著しく乱した罪により、凌遲(全身を切り刻む極刑)に処す。武松は兄の仇討ちとはいえ人を殺めた罪は免れぬが、自首した点を最大限考慮し、脊杖四十(背中を打つ刑)の上、二千里外の地への流刑に処す。死した不倫の男女については不問。その他の関係者はすべて放免とする」
東平府に正式な裁定書が届いた。陳府尹は関係者一同を集め、判決を言い渡した。武松の長枷が外され、背中を四十回打つ刑が執行されたが、役人たちは彼の義挙を尊び、力を加減したため、実際に肉に当たったのは数回に過ぎなかった。顔には二行の金印(罪人の刺青)が彫られ、行き先は孟州の牢城と決まった。
続いて牢から王婆が引き出された。朝廷の命により、彼女は処刑用の木馬である木驢に縛り付けられ、四本の長い釘で手足を打ち付けられ、東平府の市街を無残に引き回された。
【描写】
破れた太鼓が二度鳴り、砕けた銅鑼が一たび響く。
罪状を記した札が先導し、棍棒が後ろから歩みを急かす。
鋭く研がれた二振りの刃が掲げられ、白い紙花が風に揺れる。
東平府の賑わう中心にて、悪徳の老婆はその身を細かく刻まれた。
武松は首枷を嵌められたまま、王婆の末路を静かに見届けた。隣人の姚二郎が、家財を売って工面した銀を武松に手渡し、涙ながらに別れを告げた。二人の護送役人が武松を連れ、孟州を目指して出発した。
二人の護送人は、武松が類まれな豪傑であることを知っていた。それゆえ、道中は彼を丁重に扱い、決して無礼な振る舞いはしなかった。武松もまた彼らの配慮に感謝し、手元にある金銀を使って、村の店に立ち寄るたびに酒や肉を買い求め、三人で仲良く分け合って食べた。
時は三月から二ヶ月が過ぎ、孟州へと向かう道すがらは六月の盛夏となっていた。炎天下、石をも溶かすような猛暑の中、三人は少しでも涼しいうちに歩を進めようと、夜明け前から街道を歩き続けた。二十日ほどが経ち、大きな街道の峠に差し掛かったのは、午前十時を回った頃であった。
「ここらで一休みしましょう。峠を下りて、酒と肉が食える場所を探しましょう」
三人が峠を下ると、遠くの土手の陰に十数軒の草屋が見え、一本の大きな柳の木に酒屋の旗がゆらりとなびいていた。
「あそこに店があるぞ!」
道すがら、柴を担いだ木こりに地名を尋ねると、彼はこう答えた。
「ここは孟州道。あの広大な樹林の傍らに佇むのが、世に名高い十字坡でございます」
武松たちが十字坡へ近づくと、そこには四、五人で抱えるほどもある巨木があり、枯れた蔓が蛇のように絡みついていた。その巨木を回り込んだ先に一軒の酒屋があり、門の窓際に一人の婦人が座っていた。緑の薄衣を纏い、頭には金の簪を差し、耳元には艶やかな野花を飾っている。三人が近づくと、彼女は立ち上がって愛想よく出迎えた。
下のスカートは鮮やかな紅。顔には白粉と紅を厚く塗り、胸元を大きくはだけて桃色の下着を覗かせている。その姿を形容するならば……
【詩に曰く】
眉には冷徹な殺気を湛え、眼には凶悪な光が漏れ出す。
麺棒のように不恰好な腰つき、槌を思わせる無骨な手足。
厚く塗られた白粉は荒れた肌を強引に隠し、
濃すぎる紅は乱れた髪の端まで及ぶ。
金の腕輪は魔女のごとき腕を飾り、紅き衣は夜叉の精霊を映し出す。
婦人は門に寄りかかり、「旅のお方、どうぞお休みください。美味い酒も肉も、ふっくらとした大きな饅頭も用意しておりますよ!」と声をかけてきた。三人が店に入ると、柏の木のテーブルに荷を置き、武松は首枷の封印を解かせて自由になると、上半身を脱いで涼をとった。
「酒をいくらでも持ってこい。肉も三、五斤ほど切ってくれ。代金は後でまとめて払う」
婦人が「大きな饅頭もいかがですか?」と勧めるので、武松は二十個ほど注文した。婦人は不気味な笑みを浮かべて奥へ入り、大きな桶に入った酒と、三つの大きな茶碗、肉の皿、そして蒸したての饅頭を運んできた。
護送人たちがむさぼり食う中、武松は一つ饅頭を手に取り、割って中身をじっくりと眺めると、突然大声で叫んだ。
「おい、店主! この饅頭の具は人肉か? それとも犬の肉か?」
婦人は平然と笑って答えた。
「旦那様、また冗談を。この太平の世に人肉の饅頭などあるはずがございません。うちで出しているのは、代々伝わる黄牛の肉でございますよ」
「俺は江湖を歩いていて、こんな歌をよく耳にしたぞ。
『大樹のある十字坡、旅人よ、ゆめゆめ足を踏み入れるな。
肥えた者は切り刻んで饅頭の餡とし、痩せた者は川に沈めて魚の餌とする』とな」
「まあ、それは旦那様のでっち上げでしょう」
「いや、この肉の中に、まるで人間の股ぐらの毛のようなものが混じっているのが怪しいと思ったまでだ。ところで、あんたの亭主はどこだ?」
「商売に出かけて留守にしております」
「ふうん、女一人ではさぞかし寂しかろうな」
婦人は心の中でほくそ笑んだ。(この囚人め、わざわざ死にに来たか。まさに『灯火に飛んで火に入る夏の虫』だね。向こうからからかってくるとは、好都合だよ)
「旦那様、冗談はそのくらいにして、もう数杯飲んで裏の木陰でゆっくり休みなさいな」
武松は直感した。(この女、ろくな魂胆ではない。よし、まずはこっちから遊んでやろう)
「おかみさん、この酒は少々薄いな。もっと上等なのはないか?」
「香りの強い、いい酒がございます。ただ、少し濁っておりますが」
「それがいい。酒というものは濁っているほど美味いのだ」
婦人は喜び勇んで、奥から濁り酒の入った酒器を運んできた。
「これだ、これを熱くして飲むのが一番いい」
武松の言葉に、婦人は確信した。(死にたがりの囚人め、わざわざ熱くしろとは。その方が毒の回りが早くなるというもの。もう私のまな板の上の鯉だよ)
熱くされた酒が三つの碗に注がれた。空腹と渇きに耐えかねた護送人たちは一気に飲み干した。武松は言った。
「おかみさん、酒だけでは飲みにくい。もう一皿、肉を切ってきてくれ」
婦人が背を向けて奥へ入った隙に、武松は酒を暗がりへ捨て、口の中で舌を鳴らして「美味い! 効くぜ、この酒は!」と景気のいい声を上げた。
肉を切りに裏へ行くふりをして戻ってきた婦人は、パンと手を叩いて叫んだ。
「倒れろ! 倒れろ!」
護送人たちは途端に目が回り、仰向けに倒れ伏した。武松もまた、目を固く閉じ、ベンチから崩れ落ちるように倒れた。
「やったわ! どんなに幽霊よりずる賢かろうと、あたいの洗脚水(毒酒)を飲みゃおしまいだよ。おい、小二! 小三! 出てきな!」
奥から筋骨逞しい大男が二人現れ、まずは護送人を運んでいった。婦人はテーブルの上にある武松の荷物を手に取ると、そのずっしりとした重さに「いい獲物だわ。数日分の饅頭の材料と、このたっぷりの金銀。今日は大当たりだね」とほくそ笑んだ。
大男たちが武松を運ぼうとしたが、まるで千斤もの重さがあるかのように微動だにしない。婦人は焦れて怒鳴りつけた。
「この役立たずめ! あたいがやるよ。この大男、あたいを散々からかいやがって。これだけ肥えていれば上質な黄牛肉として売れる。あの痩せた奴らは水牛肉だ。さあ、運び込んで、まずはこいつから捌くよ」
婦人は薄衣を脱ぎ捨て、袖をまくり上げ、赤いスカート姿で武松をひょいと持ち上げようとした。
その瞬間である!
武松は電光石火の速さで婦人を抱きかかえ、鋼のような両腕で彼女の胸元を締め上げると、両足で彼女の下半身を力強く挟み込み、地面へと圧し潰した。婦人は殺される豚のような悲鳴を上げた。大男たちが駆け寄ろうとしたが、武松の凄まじい一喝に蛇に睨まれた蛙のごとく立ちすくんだ。地面に押さえつけられた婦人は「助けて、お代官様!」と叫ぶばかりであった。
【詩に曰く】
虎を打つ英雄を痺れさせ、饅頭の餡にしようと企てる。
いずくんぞ知らん、真の英雄が、罠を見抜いて待ち構えていたことを。
牛肉になるどころか、豚のような悲鳴を上げる羽目になるとは!
そこへ、柴を担いだ男が門前に現れた。武松が婦人を押さえつけているのを見て、彼は大股で店内に駆け込んできた。
「好漢、どうか怒りを収めてください! 訳を話しますから、どうか妻を許してやってください!」
武松は跳ね起き、左足で婦人を踏みつけたまま、拳を固めて男を鋭く睨んだ。男は三十代半ば、頭に布を巻き、整った髭を蓄えた、落ち着きのある身なりの男だった。男は恭しく拝礼して言った。
「願わくば、好漢のお名前をお聞かせ願えないでしょうか」
「俺は行くも座するも名を変えぬ、陽穀県の都頭・武松だ!」
「もしや、景陽岡で人喰い虎を素手で打った、あの武都頭ですか!」
「いかにも」
男は驚愕し、その場に平伏した。「お名前は予々伺っておりました。まさか今日、このような場所でお会いできるとは思いも寄りませんでした」
「あんたがこの女の亭主か?」
「はい。私の愚妻が泰山を見分けられず、とんでもないご無礼を働きました。私の顔に免じて、どうか、どうかお許しください」
【詩に曰く】
古来、怒りに燃える拳も、真実の笑顔には勝てぬもの。
礼節こそが、荒ぶる魂を服従させる。
義勇ある真の男子、凶暴なる母夜叉を遂に降伏させたり。
武松はそのあまりに丁寧な態度に毒気を抜かれ、婦人を放してやった。
「あんたたち夫婦も、決してただ者ではあるまい。名を名乗れ」
男は妻に服を着させ、改めて武松に深々と挨拶をさせた。
「先ほどは失礼をいたしました、奥方」
「いいえ、すべては私の不徳の致すところ。どうか、奥の席へお入りください」
やがて、男が静かに身の上を語り始めた。
「私は姓を張、名を青と申します。元は光明寺の菜園番をしておりましたが、些細な争いから僧侶を殺めてしまい、寺を焼いて逃げ出し、ここで追剥をしておりました。ある日、柴を担いだ老人に挑みましたが、逆に打ち負かされました。その老人は若い頃から追剥の達人で、私の腕を見込んで娘をくれ、ここで酒屋を開くよう勧めてくれたのです。
道を通る客に蒙汗薬(しびれ薬)を盛り、肥えた者は黄牛肉、痩せた者は水牛肉として売り、端肉は饅頭の具にして暮らしておりました。世間では私を菜園子張青と呼び、妻の孫氏は父の技をすべて受け継いだため母夜叉孫二娘と呼ばれております。
私は日頃から妻に、決して殺してはならぬ三つの者の話をしておりました。
一つは僧侶。彼らは苦行に身を捧げる人々。実はかつて、延安府の軍官でありながら鎮関西を殴り殺し、五台山で僧となった魯達――後の花和尚、魯智深殿もここを通りました。妻が薬を盛って捌こうとした際、私が戻って彼の立派な禪杖を見て驚き、すぐに救い出して義兄弟の契りを交わしました。彼は今、二龍山で楊志という男と共に暴れているそうです。
……もう一つ、殺してしまったことを今も悔やんでいるのは、ある修行者(頭陀)です。その時は私の戻りが遅すぎ、手遅れになってしまいました。今でも彼の遺品である数珠と、二振りの名刀『戒刀』が、夜中に悲しげな唸り声を上げています。
二つ目は、各地の妓女や芸人。彼らは身を削って金を稼ぐ不憫な身。そんな者たちを殺せば、江湖の笑い草になります。
三つ目は、罪を犯して流される囚人たち。彼らの中には、必ずや志の高い好漢が混じっているものです。
今日、妻が私の教えを破り、武都頭に手を出してしまったのは、武都頭の荷物が重そうで金目に見えたことと、武都頭がわざと妙な色目を使われたからだそうです」
武松は豪快に笑って答えた。
「俺は数々の死線を越えてきた男だ。女をからかって楽しむような卑劣な真似はしない。ただ、奥方が俺の荷物をじろじろと品定めしていたので、罠を張らせるためにわざとふざけてみせたのだ。あの酒は隙を見て捨て、毒にあたったふりをしたのさ。奥方が俺を運ぼうとした瞬間に捕らえたまで。驚かせて済まなかったな」
張青は大笑いし、武松を奥の清潔な席へと招き入れた。
「兄貴、どうかあの護送人たちを助けてやってください」
武松が張青に案内されて人肉の解体所へ足を踏み入れると、壁には人皮が張られ、梁からは人間の脚が吊るされていた。護送人たちは解体台の上で、無残に逆さまに転がされていた。
「彼らを救ってくれ。悪い奴らではないのだ」
張青は解毒の薬を用いて二人を生き返らせながら、武松に真剣な面持ちで問いかけた。
「都頭、これから孟州へ行かれるのでしょうが、私に一つ、兄貴の身を案じた考えがございます」
張青が武松に告げた言葉。それは、孟州の城下を揺るがし、安平寨に激震を走らせる、新たなる波乱の幕開けであった。
果たして、張青の提案とはいかなるものか。
【Vol.027】人肉レストランでプロレスしてみた:武松vs孫二娘
1. 武松、潔すぎて逆に神対応
兄貴をネトラレの末に毒殺された武松。ブチギレて犯人カップル(パン・ジンリェン&西門慶)をブチのめし、セルフで首を狩って仇討ち完了。
「俺、やったんで自首します!」と隣人たちに家財を預け、堂々と出頭。この潔さに町の人も役人も「武松ニキ、マジ推せる……」とファン化。忖度しまくりの調書書き換えで死刑を回避し、顔にタトゥー(流刑の刻印)を入れられて、孟州への「徒歩の旅」がスタート。
※ちなみに黒幕のクソババア(王婆)は、木馬に釘付けにされてエグい公開処刑を喰らいました。残当。
2. 夏フェスより熱い孟州道
気温は40度超え。護送の役人2人と「マジ暑くね?」と愚痴りながら歩く武松。たどり着いたのが、有名なヤバい店「十字坡」。
そこで店番をしていたのが、胸元ガッツリ開けてケバいメイクをした熟女・孫二娘。
見た目からして「あ、こいつ地雷だわ」というオーラ全開。
3. 恐怖!人肉まんじゅう「実食」レビュー
武松、出されたまんじゅうを割って一言。
「おい店主、これ具の中に人間の陰毛混じってね? 人肉か、これ?」
パワーワードすぎる。店主の孫二娘は「何言ってんすか、牛肉っすよw」と流すけど、武松は確信。
彼女の別名は「母夜叉」。太った客は「霜降り牛肉」、痩せた客は「水牛肉」としてミンチにしてまんじゅうにするサイコパスなシリアルキラーだったのです。
4. ドーピングvsプロレス技
孫二娘は「この酔っ払い、いい素材だわ」とニチャリ。
睡眠薬(蒙汗薬)入りの濁り酒を出すけど、武松はガチ勢。酒を捨てるふりをして「あー、効くわー(棒)」とダイナミックに寝たふり。
獲物だと思って近づいてきた孫二娘を、武松がいきなり「フルコンタクト・パイルドライバー」並みの勢いでマウント。
最強の格闘家・武松に組み伏せられ、人肉クイーンの孫二娘は「ギャー!殺されるー!」と豚のような悲鳴。
5. 「待て待て! 嫁を許して!」旦那の張青、登場
そこへ旦那の張青が帰宅。「好漢、マジで勘弁して! 嫁がバカやりました!」と全力で土下座。
話を聞けば、この夫婦も元アウトロー。
「実は、有名な『花和尚』魯智深もここで殺しかけたんすよw」
「殺しちゃいけないリスト(僧侶・囚人・芸人)があったのに、嫁が欲張っちゃって……」
と、超ブラックな経営実態を暴露。
6. 結局、全員ブラザー
武松が「俺、あの虎をワンパンで殺した武松だけど」と名乗ると、夫婦は「本物だぁぁ!」とテンション爆上がり。
毒で気絶してた護送役人も中和剤で蘇生させられ、みんなで宴会。
「人肉さばき場」という最悪すぎるロケーションで、まさかの「義兄弟の契り」を交わすことに。
武松: 毒も罠も効かない、フィジカルと察し能力がカンストしてるチート主人公。
孫二娘: 令和なら即バズって炎上する系の人肉レストラン経営者。
張青: 嫁の不始末を謝るのが仕事の苦労人。
次回、武松が流刑地でさらなる大暴れを開始! マジで「治安」という概念が仕事しません。
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主要人物図鑑(登場順)
037:母夜叉・孫二娘★梁山泊一〇八将★
【属性:ガチ筋力のサイコパス・クイーン】
出自:
実は「強盗のサラブレッド」。父親の孫元は、江湖で知らない人はいないレベルの伝説的な強盗でした。孫二娘はその父親から、護身術から「獲物のさばき方」まで英才教育を受けて育った、いわば「格闘特化型のお嬢様(裏社会限定)」です。
キャラ:
とにかく性格が尖りまくってる地雷系女子。旦那の張青より圧倒的に気が強く、実力行使担当。厚化粧で露出度高めの服を着て、エロい雰囲気で旅人を釣るけど、中身はゴリゴリの武闘派。
ヤバいポイント:
獲物をしびれ薬で眠らせた後、自分で解体するのが日課。死体から「これ、いい霜降りじゃん」とか言いながら、まんじゅうの具を作るメンタルはもはや異次元。武松にマウント取られた時は、さすがに「ぴえん」を超えて「ギャー!」って絶叫してました。
038:菜園子・ 張青★梁山泊一〇八将★
【属性:元・寺勤めのリスクマネジメント担当】
出自:
もともとは光明寺っていうお寺で、「菜園番(野菜作り担当)」をしていた真面目な公務員(?)でした。でも、些細なトラブルで僧侶をブチ殺しちゃって、お寺を丸焼きにしてバックレ。そのまま十字坡で山賊デビューするという、なかなかの闇落ち人生を送ってます。
キャラ:
山賊をしていた頃、孫二娘のパパ(レジェンド強盗)に喧嘩を売ったのが運命の分かれ道。返り討ちに遭って「お前、骨があるじゃん。俺の娘をやるよ」と、まさかの逆玉の輿(?)で孫二娘と結婚。それ以来、夫婦で酒屋(表向き)を経営してます。
ヤバいポイント:
奥さんがサイコパスすぎるので、彼は「リスク管理」をする係。
「僧侶、流刑人、風俗嬢は殺すなよ」っていう『十字坡・三つの校則』を作ったのも彼。でも、奥さんがそれを無視して武松みたいなヤバい奴に手を出すから、いつも後始末で「あ、それマジでごめんなさい!」って土下座する、実は中間管理職的な苦労人でもあります。
【二人の関係性まとめ】
孫二娘: 「金持ってる奴は全員肉まんの具だろ」という直感型イケイケCEO。
張青: 「いや、有名人殺すと後で炎上するからやめとけって」という慎重派のコンプラ担当。
この二人が、あの「花和尚」魯智深を殺しかけたり、後に武松とマウントの取り合いをした末に「あ、君ら最高じゃん」と意気投合してズッ友(義兄弟)になる。
この「治安の悪すぎる友情」が、水滸伝の最高に熱くてカオスなところです!




