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私説 水滸伝一〇八編の鎮魂曲  作者: 光闇居士


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〇弐六:遺骨を盗みて何九叔は葬列を送り、人頭を供えて武二郎は祭壇を設けること

挿絵(By みてみん)

『義胆、楼を揺るがし、血風に舞う豪虎の咆哮』

楼揺るがす 虎の咆哮 血飛沫散る

因果応報 天の裁きか 獅子橋に

宿命背負い 修羅の道行く 武松なり


【しおの】

 さて、何九叔が気を失って倒れると、居合わせた葬儀の助手たちが慌てて抱き起こした。王婆が「これは何かにあたったに違いない、早く水を!」と叫び、二、三度その顔に水を吹きかけると、九叔はようやく意識を取り戻した。王婆は「まずは家へお送りして、後の始末はこちらで済ませましょう」と言い、助手たちは九叔を戸板に乗せて自宅まで送り届けた。

 家では妻子が驚いて迎え、九叔を寝所に横たえた。妻は枕元で泣き崩れ、「元気に家を出たというのに、一体どうしたことか。平生、このような持病などなかったはずなのに」と嘆き悲しむ。九叔は助手たちが去ったのを見計らい、妻を軽く蹴って言った。

「泣くのはおよし、私は無事だ。実は武大の納棺に赴いた際、路地の入り口で薬種屋の西門慶に呼び止められ、酒を振る舞われた挙句、十両の銀を渡されたのだ。『死体のことは万事、うまく隠蔽してくれ』とな。不審に思って武大の家へ行けば、あの女房は見るからに不届きな様子。白絹を剥いで検分してみれば、武大の顔はどす黒く変じ、目や耳、鼻、口の七竅ななつあなからは血が滲み、唇には歯を食いしばった跡があった。紛れもなく毒殺だ。その場で告発しようとも思ったが、武大には後ろ盾がなく、西門慶を敵に回せば蜂の巣を突くような事態になろう。さりとて黙って葬れば、あの景陽岡で虎を打った武松が黙ってはいまい。彼が帰れば必ず露見するはずだ」

 これを聞いた妻は答えた。

「私も噂を耳にしましたよ。後小路の鄆哥という少年が、武大の密通現場を暴こうとして茶屋で暴れたとか。まさにそのことでしょう。今はただ、助手たちに葬儀を任せ、いつ出喪しゅっそうするかを確かめるのです。もし遺体を家に留め、武松の帰りを待ってから葬るというなら、何の問題もありません。しかし、すぐに焼き捨てようとするなら、それは隠蔽の証拠。その時、貴方は弔問に行くふりをして、隙を見て骨を二片ほど盗み出し、西門慶から受け取った十両の銀と一緒に隠しておきなさい。それが何よりの証拠になります。武松が帰ってきて何も聞かれねばそれまで、もし問われたならば、それを差し出せばよいのです」

 九叔は「賢い妻を持って幸せだ」と感心し、助手たちに命じた。

あたって動けぬゆえ、お前たちだけで納棺を済ませてこい。いつ葬儀を出すかを聞いて戻るのだ。報酬はお前たちで分ければよいが、私の分は受け取ってはならぬぞ」

 助手たちが納棺を終えて戻り、「奥方が『三日のうちに城外で火葬にする』と申しております」と伝えた。九叔は妻に「お前の言う通りになった。当日に骨を盗み出すことにしよう」と頷いた。

 さて、王婆が急かし、潘金蓮は夜通し遺体に付き添う振りをしていた。二日目には僧侶を呼んで読経させ、三日目の早朝、助手たちが棺を担ぎ出し、近所の人々も弔問に訪れた。金蓮は喪服を纏い、道すがら嘘泣きを続ける。城外の火葬場に着き、火が放たれた。

 そこへ何九叔が紙銭を手にして現れた。王婆と金蓮が「九叔、お体はもうよろしいのですか」と迎えると、九叔は「生前、武大殿から炊餅の代金を借りていたのを思い出し、供養に参りました」と殊勝に答え、紙銭を焼いた。九叔は火葬を急かし、女二人を「斎堂さいどうへ行って近所の方々を接待なさい。ここは私が見ておくから」と追い払った。

 二人が去るや、九叔は火の中から骨を二片拾い上げ、水に浸した。見れば、骨は脆く黒ずんでいる。九叔はそれを隠し持ち、斎堂でひとしきり談笑してから帰宅した。年月、日時、参列者の名を記した紙と共に、遺骨と十両の銀を袋に収め、寝所に深く隠した。

 さて、金蓮は帰宅後、位牌を立てて「亡夫武大郎之位」と書き、供え物を並べたが、それからは毎日、西門慶と楼上で享楽に耽った。以前の茶屋での密会とは違い、今は邪魔者もおらず、西門慶は三、五日も自分の家へ帰らないことさえあった。

【詩に曰く】

「風流」の二文字を読み解けば、良き縁も悪しき縁となる。

山妻小妾さんさいしょうしょうを常の飯とせば、恋患いもせず金も損なわず。

 二人が周囲の目も憚らず酒色に溺れる様は、街中の知るところとなったが、西門慶の勢力を恐れて誰も口出しはしなかった。

「楽極まれば悲しみ生じ、極まればたい来たる」。

 光陰矢の如く過ぎ、四十日あまりが経った。

 武松は東京とうけいでの公務を終え、陽穀県へと戻ってきた。往復でちょうど二ヶ月。出発は初春であったが、帰りは三月の初めである。道中、胸騒ぎがしてならず、一刻も早く兄に会いたいと願っていた。県役所へ報告を済ませると、知県は大いに喜び、武松に銀と酒食を賜った。

 武松は身なりを整え、すぐさま紫石街へと向かった。隣人たちは武松の帰還を見るや、「ついに災いが起きた。あの太歳たいさいのような男が黙っているはずがない」と息を呑んだ。

 武松が門を潜り、中に入ると、そこには「亡夫武大郎之位」と記された位牌があった。武松は呆然とし、目を見開いて叫んだ。

「見間違いか。あねさん、武二ぶじが戻ったぞ!」

 楼上で楽しんでいた西門慶は、その声を聞くや腰を抜かし、後門から王婆の家へと逃げ出した。金蓮は「叔父さん、今行きます」と答え、慌てて化粧を洗い落とし、華やかな飾りを外して髪を乱し、喪服に着替えて嘘泣きをしながら下りてきた。

「兄さんはいつ死んだ。何の病だ。誰の薬を飲んだのだ」

「貴方が発って二十日ほどして、急に心臓が痛み出し、十日ほど病んで死んでしまいました……」

 金蓮が泣きながら言い逃れをすると、隣の王婆も加勢して「天に不測の風雲あり、人に暫時の禍福あり。こればかりはどうにもなりません」と支離滅裂な弁明を添えた。

 武松は沈吟した後、一旦役所へ戻り、素朴な服に着替え、腰に鋭い解腕刀かいわんとうを忍ばせ、供養の品を買い揃えて夜に再び家を訪れた。

 武松は位牌の前で拝礼し、酒を注いで泣きながら誓った。

「兄さん、魂は遠くないはずだ。生前は弱かったが、死してなお不明であってはならない。もし冤罪であれば、夢に現れて告げてくれ。この弟が仇を討ってやる」

 その夜、武松が位牌の前でまどろんでいると、三更(午前零時)の頃、冷たい風が吹き抜け、霊前の灯が陰った。そこには兄の姿があった。

「弟よ、俺は無惨に死んだ……」

 武松が問い直そうとした瞬間、その姿は消えた。武松は「兄の死はやはり尋常ではない」と確信した。

【詩に曰く】

三寸の小男と嘲られど、生前は愚直、死しては精霊とならん。

同じ気を感じ合わずば、冤鬼えんきが夜に形を現そうか。

 翌朝、武松は金蓮に問い質した。

「兄の死について、何九叔という者が納棺したそうだな」

 金蓮がそれを認めると、武松は役所へ行くふりをして何九叔の家を訪ねた。九叔は武松の姿を見るや、慌てて隠しておいた骨と銀を懐に入れた。武松は九叔を酒場へ連れ出し、机の上に鋭い刀を突き立てて言った。

「私は『えらみにはこうべあり、かりにはあるじあり』ということわりを知っている。実のところを話せ。嘘をつけばこの刀でお前の体に三百の穴を開けてやる!」

 九叔は震えながら、袋を差し出した。

「これが、動かぬ証拠です」

 中には酥黒そくろくの骨と、西門慶から渡された十両の銀があった。九叔は西門慶による口止めと、毒殺の兆候、そして密通の噂をすべて白状した。

 武松はさらに、梨売りの鄆哥を捜し出した。鄆哥に五両の銀を渡し、茶屋での密通現場と、西門慶が武大を蹴り倒した一部始終を聞き出した。

「よし、これですべてが繋がった。お前たち二人、役所へ来て証言してくれ」

 武松は二人を連れて県役所へ行き、知県に訴え出た。しかし、西門慶はすでに役人たちを買収していた。知県は「証拠が不十分だ。死体もないのに告発はできん」と武松の訴えを退けた。

 武松は悟った。法が正義を行わぬならば、己の刃で行うまでだ、と。

 武松は何九叔と鄆哥を自分の部屋に留め置き、家に戻って盛大な酒宴の準備をさせた。金蓮には「兄の法要の礼に近所の方々を招く」と告げ、王婆と隣人四人を招き入れた。

 客が揃うと、武松は門を閉めさせ、土兵に番をさせた。酒が数巡し、隣人の胡正卿こせいけいが立ち去ろうとすると、武松は鋭い眼光でそれを制した。

 武松は突然、懐から尖刀を抜き放ち、机に突き立てた。

「高隣(近所)の方々、驚かれますな。私は麤鹵そろな男ですが、冤罪を晴らすまでは死ねません。どうか証人となっていただきたい。もし立ち去る者がいれば、この刀の錆にしてやる」

 武松は金蓮の髪を掴み、王婆を指差した。

「淫婦よ。兄をどう殺したか、ありのままを話せ。さもなくば、この場で引き裂いてやる!」

 武松は胡正卿に筆と紙を持たせ、一言一句を記録するよう命じた。死の恐怖に直面した金蓮と王婆は、密通、毒殺、そして王婆の教唆に至るまですべてを白状した。二人は震えながら指印を押した。

 武松は兄の位牌の前に金蓮と王婆を跪かせた。

「兄さん、魂は遠くないはず。この武二、仇を討つぞ!」

 武松は金蓮の胸元を切り裂き、鋭い刀でその心臓と肝臓を抉り出した。そして一刀、彼女の首を切り落とした。鮮血が床を染め、近所の人々は顔を覆った。武松は金蓮の首を布団に包み、刀を拭って鞘に収めると、隣人たちに言った。

「恐縮ですが、皆様は二階でお待ちください。すぐに戻ります」

 武松は金蓮の首を提げ、西門慶がいるという「獅子橋ししきょう」の酒楼へと駆け込んだ。

 二階の座敷、西門慶が女たちと飲んでいるところへ、武松は踏み込んだ。武松は包みを解き、金蓮の生首を西門慶の顔に向かって投げつけた。

 驚いた西門慶は窓から逃げようとしたが、逃げ場はない。武松は机を蹴散らし、西門慶に飛びかかった。西門慶が放った蹴りが武松の手を打ち、刀が階下へと落ちた。西門慶は勝機ありと見て拳を振るったが、武松はそれをかわし、西門慶の頭と肩を掴み、力任せに逆さまに担ぎ上げた。

「下へ行け!」

 武松の剛力によって、西門慶は窓から街路へと投げ落とされた。地面に叩きつけられた西門慶が虫の息で動いているところへ、武松は階下へ飛び降り、落ちていた刀を拾い上げた。

 武松は西門慶を押さえつけ、一刀の下にその首を切り落とした。

 武松は二つの首を提げて紫石街の家に戻り、兄の霊前に供えた。冷たい酒を地面に撒き、静かに言った。

挿絵(By みてみん)

「兄さん、安らかに眠ってくれ。仇は討った。今日、すべてを焼き尽くそう」

 武松は二階から隣人たちを下ろさせ、王婆を前に引き据えた。

 血塗られた刀と二つの首を手に、武松は四人の隣人たちに、ある言葉を語り始めた。

 それは景陽岡の英雄が囚人へと堕ち、陽穀県の都頭が行者あんじゃへと変貌を遂げる、運命の始まりであった。

 果たして、武松が語ったその言葉とは。

【Vol.026:最強の弟、ブチギレの復讐】〜法が無理なら力で解決〜


1. 検視官・何さんの神回避と有能すぎる嫁

葬儀屋のプロ、何九叔かきゅうしゅくが武大(お兄ちゃん)の遺体を見たら、顔は真っ黒、毒殺のサインが出まくり。犯人は地元の権力者・西門慶さいもんけいだし、関わったら消されるレベル。何さんはビビり散らかして「あ、自分メンタルやられたんで……」と気絶したフリして帰宅。

でも、ここの嫁が超有能。「あとでお兄ちゃんの弟(最強の武松)が帰ってきたら絶対ヤバいから、証拠として焼いた骨の一部と口止め料の10万円(十両)をセットで隠しとけ」とアドバイス。何さん、ミッションコンプリート。


2. 浮気カップル、やりたい放題

お兄ちゃんを亡き者にした藩金蓮と西門慶は、喪中なのに毎日ラブラブで宅飲みパーティー。近所も「あいつらエグい……」と思ってるけど、西門慶が怖くて誰も通報できない完全な地獄の空気感。


3. 武松、帰還。違和感エグい

出張から帰った武松ぶしょうが家に入ると、そこにはお兄ちゃんの遺影が。ジンリェンは「急に心臓が痛くなって……」とか嘘泣きして誤魔化すけど、武松の「嘘つけセンサー」が反応。夢にお兄ちゃんの幽霊まで出てきて「無念だわ……」と訴えてくる始末。


4. 証拠集めと警察の闇

武松はガチの捜査を開始。何さんを脅して「毒殺の証拠の骨」をゲットし、梨売りキッズの鄆哥うんかから「現場を見た」という証言も確保。

役所に「こいつら犯人です!」って突き出したけど、西門慶に買収済みの警察は「証拠不十分。解散!」と門前払い。武松、ここで「あ、法は詰んだわ。自分でやるわ」とスイッチが入る。


5. 地獄の飲み会、スタート

武松は「お兄ちゃんの法要でお世話になったから」と、犯人と近所の人たちを招待してディナーを開催。全員が集まった瞬間、ドアをロック。ナイフをドーン!と机に突き立てて「これから自白タイムな。逃げる奴は殺す」と超絶圧をかける。

ビビりまくったジンリェンと王婆は、密通から殺害まで全部自白。武松はそのままの勢いでジンリェンを解体(物理)。お兄ちゃんの遺影に首を供える。


6. 西門慶、空中散歩

最後はラスボス・西門慶。武松は奴がキャバクラ(酒楼)で飲んでるところに突撃。ジンリェンの生首をポイっと投げて「次はお前な」とタイマン開始。

西門慶も一応戦うけど、相手は虎を素手で倒すバケモノ。武松に逆さまに担ぎ上げられて、二階からストリートへシュート(投げ落とし)。虫の息の西門慶を、武松が冷静にトドメを刺して終了。


まとめ:

証拠を保管してた何さんの嫁、MVP。

警察が仕事しないから、最強の弟が物理で解決しちゃった。

虎を倒す奴に喧嘩を売ってはいけない(教訓)。

これにて武松、伝説の復讐劇・完! 次回からはお尋ね者ライフが始まります。

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