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私説 水滸伝一〇八編の鎮魂曲  作者: 光闇居士


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〇弐〇:梁山泊の義士、晁蓋を首領に戴き、鄆城県の月夜に劉唐が駆けること

挿絵(By みてみん)

## 陸上自衛隊 統合幕僚監部 陸上総隊司令部 第101D任務分析室


日時:X年Y月Z日 09:00

場所:統合幕僚会議室

出席者:統合幕僚長、陸上幕僚長、海上幕僚長、航空幕僚長、各幕僚監部運用部長、陸上総隊司令官、その他主要幕僚


---


統合幕僚長: 皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。ただ今より、先日の「梁山泊水上強襲作戦」に関する戦闘報告会議を開始する。陸上総隊司令官、報告をお願いします。


陸上総隊司令官: はい。陸上総隊司令官、報告いたします。


### 戦闘報告:梁山泊水上強襲作戦(コードネーム:Operation Crimson Tide)


1. 作戦名: 梁山泊水上強襲作戦 (Operation Crimson Tide)


2. 作戦目的:

* 梁山泊周辺海域における敵「黄安こうあん」率いる官軍水上部隊の排除。

* 敵戦力の中核を成す黄安の拘束または無力化。

* 梁山泊の戦略的要衝確保。


3. 作戦実行部隊:

* 第1水上強襲群:阮小二、阮小五、阮小七(Ruan brothers)を核とした特殊水上攻撃部隊。小型高速舟艇(舟艇数:推定15隻)装備。主要任務:敵船団への直接突入、混乱誘発。

* 第2伏兵潜伏群: 漁師を偽装した軽武装ゲリラ部隊。主要任務:葦原からの奇襲攻撃、側面攻撃。

* 第3後方支援群: 水源地帯における補給・偵察部隊。


4. 作戦実行日時:X年Y月Z日 03:00 ~ 05:30 (約2時間30分)


5. 作戦概要:


敵「黄安」率いる官軍水上部隊は、梁山泊近隣の「石碣村せきけつそん」水域へ侵入。濃霧と複雑な水路を利用し、梁山泊本拠地への偵察及び潜在的攻撃を試みると判断。これに対し、我々は以下の段階で「待ち伏せ強襲作戦」を展開した。


フェーズ1:誘引と包囲(03:00 - 04:00)

* 濃霧を最大限に利用し、官軍部隊の視界を制限。

* 第2伏兵潜伏群が葦原に潜伏し、官軍部隊を水路中央へと誘導。官軍は視界不良のため、我々の意図した進路を辿った。

* 我々の偵察部隊は、官軍部隊が最も密集し、退路を断ちやすい水域への侵入を確認。


フェーズ2:奇襲攻撃開始(04:00 - 04:30)

* 04:00、陸上総隊司令部からの攻撃命令が発令。

* 第2伏兵潜伏群が、潜伏していた葦原から一斉に弓矢による射撃を開始。これにより、官軍部隊は大きな混乱に陥った。

* 同時に、第1水上強襲群の小型高速舟艇が濃霧の中から急速接近。敵船団の側面および後方から突撃を開始した。

* 特に、劉唐りゅうとうを始めとする精鋭隊員が、敵旗艦(黄安乗船)への肉薄攻撃を敢行。

* 報告によれば、劉唐は敵旗艦への直接跳躍を成功させ、甲板上での白兵戦に突入した。この動きは、敵指揮系統の中核に直接打撃を与える極めて大胆な行動であった。


フェーズ3:制圧と掃討(04:30 - 05:30)

* 白兵戦において、第1水上強襲群は敵船内の制圧を迅速に実行。

* 阮氏三兄弟(阮小二、阮小五、阮小七)は、自らの舟艇を巧みに操り、複数の敵船を撃沈または無力化。彼らの卓越した水上戦闘能力が存分に発揮された。

* 混乱した官軍兵士は次々と水中に投げ出され、一部は捕虜として拘束された。

* 05:15、敵指揮官黄安の身柄を確保。抵抗はあったものの、拘束に成功。

* 05:30、残存敵戦力の掃討が完了。作戦は成功裏に終了した。


6. 戦果:

* 敵指揮官「黄安」の身柄拘束。

* 敵軍船団の壊滅(撃沈:約5隻、無力化:約10隻)。

* 敵兵士多数の捕虜確保。

* 我側の人的損害:軽傷者3名。重傷者なし。


7. 成功要因:

* 濃霧の戦術的利用:視界不良が我々の伏兵戦術と奇襲効果を最大限に高めた。

* 周到な偵察と情報収集:敵の進路予測、戦力規模、そして行動パターンを正確に把握していたことが、作戦成功の基礎となった。

* 部隊間の連携:*弓矢による遠距離攻撃と、舟艇による近接強襲が完璧なタイミングで連動。

* 士気の高さと練度の高さ:*第1水上強襲群の隊員たちは、極めて高い士気と水上戦闘における卓越した技能を示した。特に、劉唐の決死の突入は、作戦全体の士気を高め、敵に致命的な打撃を与えた。

* 地理的優位性:梁山泊の複雑な水路と葦原は、我々の戦術にとって理想的な地形であった。


8. 今後の課題:

* 捕虜からの情報収集を強化し、官軍の全体的な戦力と今後の戦略を分析する。

* 今回の作戦で得られた教訓を活かし、水上戦闘訓練プログラムをさらに強化する。

* 梁山泊周辺の警戒体制を維持し、再度の敵襲に備える。


陸上総隊司令官:*以上で報告を終わります。


挿絵(By みてみん)


統合幕僚長:陸上総隊司令官、詳細な報告ご苦労様でした。今回の「梁山泊水上強襲作戦」は、濃霧という厳しい環境下において、我が自衛隊の卓越した戦術眼、部隊間の連携、そして隊員の高い練度と士気を示す、模範的な作戦であったと言える。特に、敵指揮官への直接攻撃を成功させた劉唐隊員の勇気と実行力は、高く評価されるべきだ。


この作戦の成功は、我が国の防衛体制の強化に大きく寄与するものである。各幕僚長には、今回の報告内容を踏まえ、それぞれの領域における今後の課題と対策を検討し、次回の統合幕僚会議で報告してもらいたい。


これにて、本日の戦闘報告会議を終了する。解散!


【しおの】

 林沖は、目の前で崩れ落ちた王倫の骸を冷ややかに見下ろすと、血に濡れた鋭刀を高く掲げ、居並ぶ衆人へ向かってその切っ先を向けた。その眼光は凄まじく、辺りは水を打ったような静寂に包まれる。

「聞きなされ! この林沖、かつては禁軍を追われ、この地へ流れ着いた身なれば、本来ならこの山塞に骨を埋める覚悟であった。しかし、王倫という男はあまりに度量が狭く、賢才を妬んでは退け、天下の豪傑を受け入れようとはしなかった。今日の火併かへいは、私利私欲によるものではない。ただ、この梁山泊の未来を思えばこそ、この狭量な男を討たねばならなかったのだ。私のような無骨者に、この大山を束ねる器量などない。ましてや、官軍に抗い、君側の奸臣を討つという大望など、とうてい果たせようはずもない」

 林沖は一呼吸置くと、傍らに立つ晁蓋の腕を取り、力強く宣言した。

「ここにおられる晁蓋兄は、義を重んじて財を惜しまず、智勇を兼ね備えた真の豪傑。今やその名は天下に轟き、心服せぬ者などおりませぬ。私は今日、この義気にかけて、晁蓋兄を我ら山塞の主として推戴したいと思う。皆の者、異論はあるか!」

 衆人は一斉にひれ伏し、「林教頭のおっしゃる通りです!」と、その声は山々にこだました。

 晁蓋は困惑し、しきりに辞退の言葉を口にする。

「いや、それはいかぬ。古来より『強き兵は、主を圧せず』と申す。私はただの新参者にすぎない。どうしてこの大任に就けようか」

 しかし、林沖はその拒絶を許さなかった。彼は晁蓋の手を掴むと、半ば強引に第一位の交椅(椅子)へと座らせた。

「事はすでに決しました。もはや辞退は無用。もし従わぬ者があれば、この剣が王倫と同じ運命を辿らせるまで」

 林沖の断固たる決意に、晁蓋もついに覚悟を決め、その座に腰を下ろした。林沖の号令により、衆人は広場で拝礼を行い、手下たちに命じて祝宴の支度を整えさせた。王倫の遺体は丁重に片付けられ、山中の頭目たちは、真新しい空気を湛えた聚義庁しゅうぎちょうへと集まった。

 一行は晁蓋を輿に乗せ、大寨へと戻った。正面の主座には「晁天王」の名が掲げられ、清らかな香が焚かれるなか、林沖が再び進み出た。

「私、林沖はただの武辺者。槍棒を振るう以外に能はございません。学も智略も持ち合わせぬ私が、これ以上の席を汚すわけにはいかぬのです。今日、幸いにも志を同じくする豪傑が集いました。これからは旧来の惰弱な体制を捨て、真に義を明らかにせねばなりませぬ。呉用先生、貴殿は軍師として兵権を司り、我ら校尉を導いていただきたい。第二位には、先生が座るべきです」

 呉用は静かに首を振った。

「私は一介の村学者。世を治める才など持ち合わせてはおりません。孫呉の兵法を少々かじった程度で、いまだ何の功もなき身。どうして上座を占められましょうか」

「遠慮は無用です。先生の知略なくして、この山に明日はない」

 林沖の熱い説得に押され、呉用は第二位の席に着いた。続いて林沖は、公孫勝を第三位に推した。晁蓋も「これ以上譲り合っては収まりがつくまい」と促したため、公孫勝も折れて三番目の椅子に腰を下ろした。

 林沖がなおも謙遜して下位に回ろうとすると、上位の三人は異口同音に「貴殿が四位を拒むのなら、我らもこの座を降りる」と譲らなかった。こうして、林沖は第四位に定まった。

 以下、第五位に劉唐、第六位から第八位には阮氏の三兄弟、第九位に杜遷、第十位に宋万、第十位に朱貴と、十一人の好漢の席次がここに定まったのである。

 梁山泊の十一人の英雄が居並ぶ姿は、まさに壮観であった。山中の七、八百の兵がこれに跪き、晁蓋が厳かに宣した。

「皆の者、よく聞け。今日よりこの晁蓋が不肖ながら主となり、呉先生と公孫先生に兵権を託すこととなった。各々は旧職のまま、山前山後の警備をいっそう厳重にし、一分の隙も作らぬよう励め。我らは心を一つにし、大義のもとに集うのだ」

 晁蓋は、略奪した「生辰綱」の財宝や自身の家財を惜しみなく手下たちに分配した。牛や馬を供物として天に祭り、新生梁山泊の門出を祝した宴は、昼夜を違わず数日間続いた。その間にも、食糧を蓄え、武具を新調し、来るべき官軍との戦いに備えて万全を期した。十一人の絆は、血を分けた兄弟よりも固く、その結束は岩をも通すほどであった。

【詩に曰く】

古人の交誼こうぎは黄金をも断ち、

心を同じくすれば よしみはいっそう深い。

水滸の岸辺に集う 忠義の士を見よ、

生死を共にし 歳寒さいかんの志を違えぬことを。

 さて、晁蓋の豪放磊落な振る舞いを間近で見るうちに、林沖の胸には、都に残してきた愛妻の安否が暗い影を落とすようになった。ある日、彼は意を決して晁蓋に打ち明けた。

「この山へ登って以来、いつか妻を迎えたいと願っておりましたが、王倫の心が定まらず、今日まで果たせぬままでした。東京とうけいの空の下、今ごろ妻はどうしていることか……」

 晁蓋は我が事のように驚き、「なぜもっと早く申さなかった。すぐに迎えの者を出そうではないか」と快諾した。林沖は震える手で文を書き、信頼できる部下を密かに都へと走らせた。

 しかし、二ヶ月の月日が流れた後、戻ってきた部下の口から語られたのは、あまりに非情な知らせであった。

「都の張教頭のご自宅を訪ねました。しかし……奥方は高太尉からの執拗な縁談の強要に、操を守るため、半年前、自ら首を吊って果てられました。張教頭もその心労が重なり、半月前に亡くなられたとのこと。今は腰元の錦児が婿を取り、細々と家を守っているのみでございます……」

 林沖はこれを聞くや、天を仰いで慟哭し、その場に崩れ落ちた。以来、彼は俗世への一切の未練を断ち切り、ただひたすらに官軍を迎え撃つための操練に、狂ったように没頭するようになったのである。

 それからほどなくして、済州府さいしゅうふが千人の精鋭と四、五百隻の軍船を繰り出し、石碣村せきけつそんの湖水へと迫っているとの報が届いた。晁蓋は緊張を隠せなかったが、呉用は羽扇を揺らしながら、余裕の笑みを浮かべて言った。

「案ずることはございません。『水が来れば土で防ぎ、兵が来れば将で迎える』。これこそが兵法の要諦です」

 呉用は阮氏三兄弟を呼び寄せ、その耳元で緻密な計略を授けた。また、林沖、劉唐、杜遷、宋万らにもそれぞれの持ち場を指示し、網を張って獲物を待つ構えを見せた。

【詩に曰く】

西の方角より 項羽三千の陣を迎え撃ち、

今日こそ示さん 梁山泊第一の功。

 済州府の団練使・黄安こうあんは、手柄を焦って勇み立ち、小舟の群れを率いて金沙灘きんさたんへと攻め寄せた。すると、静まり返った水面から、鋭い角笛の音が響き渡った。葦の影から現れたのは、赤い鉢巻に赤い衣を纏った、五人乗りの三艘の小舟である。

「あれこそ阮氏の兄弟だ! 逃すな、一人残らず捕らえよ!」

 黄安の命令一下、官軍の舟が殺到する。三兄弟の舟は、あざ笑うかのように口笛を吹き、背後から降り注ぐ矢を青狐の毛皮で鮮やかに防ぎながら、迷路のように入り組んだ水路へと敵を誘い込んでいった。

 二、三里も追った頃、黄安のもとに血相を変えた敗残兵が駆け込んできた。

「都頭! 別の水路へ向かった味方は、伏兵の急襲に遭って舟を奪われ、ことごとく湖底に沈められました! 岸辺からは灰瓶や石が雨のように降り注ぎ、馬も奪われ、全滅の体でございます!」

 黄安が驚愕し、慌てて撤退を命じようとしたその瞬間、四方の葦原から凄まじい砲声が爆発した。

「黄安、首を置いて去れ!」

 隠れていた無数の小舟が飛び出し、弩弓の矢が黒雲のように降り注ぐ。黄安が命からがら逃げようとしたその時、劉唐の乗る舟が激しく横付けされた。大きな鉤爪が黄安の舟を捉え、劉唐が迅雷のごとく躍り込んだ。彼は逃げ惑う黄安の襟首をひっつかむと、そのまま軽々と吊り上げた。

 戦いは梁山泊の圧倒的な勝利に終わった。一、二百人の捕虜を連行し、六百頭の名馬を奪い、軍船もすべて接収した。聚義庁に戻った頭領たちは、黄安を柱に括り付け、勝利を祝う大宴会を催した。山で醸した芳醇な酒に、湖で獲れたばかりの蓮根や魚、新鮮な果物や家畜が並び、一同は心ゆくまで勝利の美酒に酔いしれた。

【詩に曰く】

笑うべし 王倫が不相応に己を誇りしを、

凡才がどうして この大任に耐え得ようか。

ひとたび内紛を経て 新たなる主に帰してより、

今こそ見よ 梁山泊に宿る新しき命の息吹を。

 酒宴の最中、朱貴から「財を積んだ商人の隊列が近くを通る」との知らせが入った。晁蓋は三阮や劉唐らを差し向け、「財宝は奪っても、決して命まで奪ってはならぬ」と厳しく戒めた。翌朝、彼らは二十台を超える荷車に積まれた金銀財宝と、多くの家畜を引き連れて意気揚々と帰還した。

 晁蓋は奪った品々を精査させ、半分を蓄えに回し、残りの半分を頭領から手下まで、功績に応じて公平に分け与えた。

「今日という日があるのは、皆の並外れた働きがあったればこそだ」

 晁蓋は、かつての恩人である鄆城県の宋江と朱仝への報恩を片時も忘れなかった。また、済州の監獄で苦しんでいる白勝を救い出すための策略を、呉用と共に練り始めた。

 一方、大敗の報を受けた済州府は激震に見舞われていた。前任の府尹は更迭されて東京へ召還され、代わって新任の宗府尹が着任した。新知事は梁山泊の勢力拡大に顔を青くしたが、まずは防備を固めるべく、公文書を各県へと飛ばした。

 鄆城県の押司おうし、宋江はその公文書を読み、深く溜息をついた。

「晁蓋たちは、ついに後戻りのできぬ罪を犯してしまった。九族まで処刑されるほどの大罪だ。やむを得ぬ事情があったとはいえ、法に照らせばもはや救いようがない……」

 宋江は割り切れぬ思いを抱え、重い足取りで役所を出た。

 すると、背後から呼び止める声があった。なかだちを生業とする王婆が、一人の老婆を連れて立っていた。

「宋押司、なんという幸運。お会いしたかったのです!」

 老婆の名はえん婆という。東京からこの地へ流れてきたが、夫が病に倒れ、葬儀を出す金さえないという。宋江は不憫に思い、すぐに棺桶を手配し、さらに十両の銀を惜しみなく与えた。

 閻婆は涙を流して感謝し、後日、その恩返しにと、娘の婆惜ばしゃくを宋江の囲い者にしてほしいと申し出た。宋江は初め頑なに辞退したが、王婆の巧みな口車に抗いきれず、ついに承諾した。宋江は小綺麗な楼閣を借り、親子に何不自由ない暮らしをさせたのである。

【詩に曰く】

その姿はたおやかにして、玉のごとき輝きを放つ。

髪には烏雲を横たえ、眉には新月を掃く。

小さな足は愛らしく、歩く姿は情愛に満ちて、見る者の心を惑わす。

 しかし、宋江は根っからの武芸愛好家であり、女色には極めて淡白であった。十八、九歳の若く情熱的な婆惜にとって、宋江という男はあまりに物足りない存在だった。

 そんなある時、宋江は同僚の張文遠――通称「小張三しょうちょうさん」を屋敷に連れてきた。張三は色男で風流を解する男であった。婆惜は一目で彼に惹かれ、二人は宋江の目を盗んでは、禁じられた情事にふけるようになった。

 不貞の噂は宋江の耳にも届いたが、彼は「親が決めた妻でもなし、心が他へ向いたのなら致し方あるまい」と、それきり屋敷へ足を運ぶことをやめてしまった。

【詩に曰く】

美しき娘の意は 流水に随って流れ、

義士の心は 落花を惜しむこともない。

 ある日の夕暮れ時、宋江が茶房で一息ついていると、一人の風変わりな男が目に留まった。汗にまみれ、編み笠を深く被ったその男は、周囲を執拗に気にしながら急ぎ足で通り過ぎる。宋江が不審に思い、茶房を出て後を追うと、男は人影のない小路へと逃げ込んだ。

「そこのお方、どこかで会ったことがないか……」

 宋江が声をかけると、男は突然、その場に平伏した。

「恩人、お忘れですか! 私です、『赤髮鬼』劉唐にございます!」

 宋江は目を見張った。「なんと……! なんという無茶を。役人に見つかれば、命はないぞ!」

 二人はひっそりとした酒楼の個室に身を隠し、劉唐が小声で切り出した。

「晁蓋兄貴が梁山泊の首領となりました。呉先生や皆も息災です。兄貴がどうしても恩返しをしたいと聞き入れず、この手紙と黄金百両を私に託したのです」

 劉唐は包みを解き、黄金の輝きを宋江に示した。しかし、宋江は手紙とわずか一両の金だけを手に取ると、残りを断固として突き返した。

「皆は山を興したばかりで、物入りなはずだ。私は家も裕福で、何も困ってはいない。残りは山へ持ち帰り、大義のために使いなさい。朱仝や雷横への礼も、私がうまく伝えておく。劉唐、すぐに山へ帰りなさい。月は明るい、今夜のうちに発つのが一番安全だ」

 劉唐は食い下がったが、宋江の決意は揺るがなかった。やむなく返事の文を懐に収め、劉唐は深く四拝して、闇夜の彼方へと姿を消した。

 劉唐を見送った宋江は、安堵の溜息をつきながら家路を急いだ。

「危ないところだった。あいつも相変わらず命知らずな真似をするものだ」

 そんな考え事をしながら暗い曲がり角に差し掛かった時、不意に背後から声をかけられた。

「押司、こんな夜更けにどちらへお帰りですか?」

 振り返ると、そこには閻婆が、蛇のような執念を瞳に宿して立っていた。

 この偶然が、宋江をさらなる運命の過酷な渦へと引きずり込んでいくことになろうとは。

 果たして宋江は、この絶体絶命の局面をいかに切り抜けるのであろうか。

【Vol.020】梁山泊のCEO交代と、宋江の詰みかけ不倫フラグ


 梁山泊の強引な組織改革(物理)

まず、キレた林沖りんちゅうが、器の小さすぎる旧ボス・王倫を「お前、マジで空気読めなさすぎ」と物理的にパージ(殺害)。

現場は一瞬「ヒッ…」ってなったけど、林沖が「これからは晁蓋ちょうがいパイセンがCEOだ! 文句ある奴、王倫の二の舞になりたい?」と圧をかけると、全員秒で「異議なし!」と承諾。こうして最強のインフルエンサー集団・新生梁山泊が爆誕しました。


 林沖、推しの奥さんが「ログアウト」してて絶望

新体制でハッピーかと思いきや、林沖は都に残した奥さんが心配でたまらない。

「迎えに行ってきて」と部下を飛ばしたけど、戻ってきた返事は「奥さん、ストーカー(高太尉の息子)に追い詰められて自害してました。お義父さんもショックで亡くなってます」という最悪のバッドエンド報告。

林沖、ここで完全にメンタル崩壊。これ以降、彼は「女なんて興味ねぇ、俺は戦うマシーンになる…」と極限の闇落ちを果たします。


 官軍、なめてかかって「分からせ」られる

「梁山泊とかいう反社、ぶっ潰すわw」と調子こいて攻めてきた地方警察(官軍)の黄安。

でも、軍師の呉用ごようが「はいはい、想定内」と罠を張りまくり、げん三兄弟が水路でハメ倒し、最後は劉唐りゅうとうが「おらぁ!」と物理で黄安をひっつかんで終了。官軍、ぐうの音も出ないほどボコられて、梁山泊は名馬と武器を大量ゲットして大勝利ガチャ確定。


 宋江の「恩返しパパ活」と泥沼不倫

一方、そのころ鄆城県の公務員・宋江そうこうは、困ってた老婆(閻婆)を助けた縁で、その娘の閻婆惜えんばしゃくというギャルを「囲い者」にさせられます。

でも、宋江は根っからの「格闘技オタク」で女子に興味ゼロ。一方の婆惜は血気盛んな10代。

「宋江、マジでつまんね。もっとチャラくてイケてる奴がいい」ってことで、宋江の同僚のイケメン(張三)と絶賛不倫スタート。宋江も「あ、そう。勝手にして」と放置してて、関係は冷え冷え。


 劉唐の「余計な恩返し」と修羅場フラグ

そんな冷戦状態の宋江のもとに、梁山泊から劉唐が「あざす! これ、お礼の100両(大金)と手紙っす!」とガチのワイロを持って登場。

宋江は「バカ! 公務員に見つかったら一発アウトだろ!」と焦りつつ、手紙と一両だけ受け取って劉唐を逃がします。

「ふぅ、危なかったぜ…」と一息ついた瞬間、背後から不倫相手の母親(閻婆)が「宋押司〜、こんな夜更けに何してたんですかぁ?(ニチャァ)」と急襲。


ここで次回へ続く。

(宋江、不倫相手の親に弱みを握られて絶体絶命のピンチ!)

一言まとめ:

「林沖のガチ悲劇」と「官軍への圧勝」でテンション上がった後に、「宋江の不倫トラブル」という世俗的すぎるピンチをぶっ込んでくる、脚本の緩急がエグい回です。


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主要人物図鑑(登場順)


033:済州府の団練使・黄安

今回の「ボコられ役」代表、黄安こうあんくんについてですね。

彼、物語全体で見ると完全に「かませ犬」界のレジェンドみたいなポジションなので、


【悲運の中間管理職・黄安くん(詰み系男子)の生態】

 勘違いの「俺TUEEE」モード

黄安くん、最初はマジで「これ俺の出世ボーナス確定ガチャじゃね?」って思ってたはずなんです。

「千人の軍勢と船500隻とか、数の暴力で余裕っしょww」って感じで、意気揚々と金沙灘に乗り込んだ。この「フラグの立て方」がもうプロの仕事。現代で言えば、仕事のアポ前に「余裕で契約取れるから夜の店予約しといてw」ってLINEしちゃうタイプ。

 プロの「煽り」に耐性のない純粋さ

げん三兄弟っていう、水上のプロによる「煽り運転(ボート版)」にまんまと引っかかっちゃうのが、黄安くんのピュアなところ。

「おーい、こっちだぞ〜(指笛プイー)」って煽られて、「あいつらマジ許さねぇ、全員BAN(捕縛)だ!」って熱くなって複雑な水路に突っ込んでいく。

結果、周りは全員敵だらけ。「これ、詰んでね……?」と気づいたときには、もう手遅れ。煽り耐性ゼロの初心者ゲーマー感がすごくて、ちょっと可愛いまであります。

 「物理」で解決されるラスト

最後がまた切ない。逃げようとしたら、梁山泊のフィジカル担当・劉唐りゅうとうが隣の船からジャンプ一番。

「はい、捕まえた〜!」って、UFOキャッチャーの景品みたいにひっつかまれてそのまま捕虜に。

この「え、俺の軍勢どこ行ったん……?」という虚無感を抱えたまま、柱に縛り付けられて敵の宴会を特等席で見せつけられるという、精神的苦痛メンタル・サバイバルがヤバい。

 黄安くんの貢献度

でもね、彼が全力でボコられてくれたおかげで、梁山泊は「名馬600頭」と「大量の船」という神ドロップアイテムをゲットできたわけです。

新生梁山泊の初期装備を揃えてくれたのは、実質彼。そう考えると、彼は梁山泊の「影のスポンサー」と言っても過言ではありません(政府の金だけど)。


総評:

黄安くんは、「上司からの無茶振り」と「現場の天才(梁山泊)」の板挟みになった、典型的な悲劇の中間管理職です。

「俺、この戦いが終わったら昇進するんだ……」という死亡フラグを教科書通りに回収した彼の姿は、現代の社畜の心にも深く刺さるものがあります。

おつ! 黄安くん! 君の負けっぷりは、水滸伝ファンの中に永遠に刻まれてるよ!


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