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〇〇壱:張天師、祈祷を捧げて疫病を払い、洪太尉、誤って妖魔を解き放つ

挿絵(By みてみん)

【万古の封印、潰えし瞬間とき――百八の魔星、天を衝く】

「伏魔殿破れし刻、黒龍天を衝く。

百八の星、金光となりて四散す。

龍虎山河は震え、因果の歯車今、動き出す。」


【しおの】

時は大宋、名君として知られる仁宗じんそう皇帝の御代。嘉祐かゆう三年の三月三日、まだ夜も明けきらぬ五更の頃のことです。天子は紫宸殿ししんでんに御出ましになり、居並ぶ百官から朝賀を受けられました。

その宮中の情景は、筆舌に尽くしがたいほどに荘厳なものでした。

瑞々しい雲が鳳凰を象った楼閣にたなびき、めでたい気が龍の住まう高楼を包み込んでいます。朝露に濡れた宮中の花々は、整然と並ぶ衛兵の武器にその輝きを映し出し、煙るような柳の枝は、風にそよぐ旗を優しく撫でています。

高貴な香りが漂うなか、頭に玉のかんざしを差し、赤い靴を履いた高官たちが中庭に集い、仙界の音楽が鳴り響くなか、色鮮やかな刺繍を施した衣を纏った者たちが天子の乗り物を支えます。

真珠を散りばめた御簾みすが静かに巻き上がれば、黄金の殿上にまばゆいばかりの御車が現れ、鳳凰の羽をあしらった扇が開かれると、白玉の階段の前に宝飾を凝らしたてぐるまが止まります。

静寂のなか、静鞭せいべんが三たび鳴り響くと、文武百官は一斉に身を正しました。

殿頭官が「奏上あらば班を出て述べよ、なければ朝を退けよ」と声を上げると、宰相の趙哲ちょうてつと参政の文彦博ぶんげんはくが歩み出て、深々と頭を下げて奏上しました。

「現在、都の京師かいほうでは恐ろしい疫病が猛威を振るい、軍人から庶民に至るまで、犠牲者が後を絶ちません。陛下におかれましては、どうか罪人を赦し税を免じ、天に災厄を鎮める祈祷を捧げ、万民を救い給え」

仁宗皇帝は直ちにみことのりを下し、天下の罪人を赦免し、あらゆる寺院で災いを払う儀式を行わせました。しかし、人々の願いも虚しく、疫病の勢いは増すばかりでした。

憂慮された天子が再び百官を集めて対策を問うと、参知政事の范仲淹はんちゅうえんが進み出て進言しました。

「天災が極まり、民の苦しみは計り知れません。私の愚見によれば、江西省の龍虎山におわす嗣漢しかん天師を召喚し、宮中で大規模な道教の儀式を執り行えば、その誠は天界の神に至り、必ずや疫病を鎮めることができましょう」

皇帝はこの提案を快く受け入れ、自ら筆を執って詔を認め、尊い御香を授けました。そして、殿前太尉の洪信こうしんを皇帝の使者である「天使」に任じ、龍虎山へと向かわせたのです。

洪信は詔を背負い、御香を大切に抱え、数十人の従者を連れて都を発ちました。

道中の風景は、旅の疲れを忘れさせるほどに美しいものでした。

遥か遠くの山々は幾重にも緑を重ね、清らかな水がどこまでも透き通っています。見たこともない奇妙な花々が錦のように咲き乱れ、黄金の糸のような柳の枝が風に揺れて地面を払います。穏やかな風と暖かい陽射しのなか、一行は野原の店や山あいの村を通り過ぎ、平坦な道を進み、夜は宿駅で旅の垢を落としました。華やかな衣は道中の埃に揺れ、駿馬は都へと続く道を軽快に駆けていきました。

一行が江西省信州に到着すると、地元の官吏たちに手厚く迎えられました。翌日、上清宮じょうせいきゅうの道士たちが奏でる音楽と香しき花々に導かれ、洪信はついに神聖なる龍虎山へと足を踏み入れました。

そこはまさに、この世のものとは思えぬ仙境でした。

青々とした松は複雑に枝を伸ばし、古びたひのきが涼やかな影を落としています。門には皇帝直筆の金の額が掲げられ、戸口には霊験あらたかな札が並んでいます。祭壇の傍らには花々が咲きこぼれ、不老不死の薬を練る炉の辺りには古木が静かに佇んでいます。左右には神々の守護兵や童子が控え、北の果てを司る大帝や南の長寿の神が、聖なる動物たちを従えて鎮座しています。

階段の下を清流が流れ、周囲を名山が囲む庭では、丹頂の鶴が舞い、緑の毛が生えた不思議な亀が歩んでいます。梢では猿が木の実を捧げ、草むらでは白鹿が霊草を口に銜えています。鐘の音が響けば道士が雲を歩むように現れ、楽器が鳴れば修行者が星々を拝みます。その光景は、あたかも天上の神を迎える準備が整った聖域のようでした。

三清殿で詔を供えた後、洪信は住持に「天師はどこにおられるのか」と尋ねました。住持は答えます。

「現世の天師、虚靖きょせい先生は清らかな孤独を愛し、山の頂にある庵で独り修行に励んでおられます。滅多なことでは下山されません」

洪信は困惑しました。「皇帝の詔があるのだ、お会いせぬわけにはいかん」

住持は諭すように言いました。「真心を尽くし、貴方お一人で草鞋を履き、詔を背負い、御香を焚いて、自らの足で険しい山を登り、拝跪してお請けなさい。心に少しでも不実があれば、お会いすることは叶わないでしょう」

洪信は意を決し、翌朝、身を清めて質素な布の衣に着替え、一人で山道へと向かいました。

その山道は、想像を絶する険しさでした。

根は地の底に深くわだかまり、頂は天を突き刺さんばかりです。遠くから眺めれば雲を削るように高く、近くで見れば明月を飲み込むほどの迫力があります。無数の峰が競い合うようにそびえ、深い谷には滝が飛沫を上げ、古びた藤の蔓が逆さまに垂れ下がっています。虎の咆哮が風を呼び、猿の悲しげな鳴き声が沈みゆく月に響き渡ります。

登り始めて二、三里。都での贅沢な暮らしに慣れた洪信は、すぐに足が痛み出し、つい不満を漏らしました。「都では分厚い布団で眠り、美味に舌鼓を打っていた私が、なぜこんな草鞋を履いて苦労をせねばならんのだ」

そう毒づいた瞬間、松の木陰から激しい突風と共に、眉間に白い模様のある巨大な虎が飛び出してきました。

その姿は恐るべきものでした。

金色に輝く毛並みを誇り、銀の鉤のような鋭い爪を剥き出しにしています。眼光は稲妻のごとく鋭く、尾は鞭のようにしなり、血の盆のような大きな口には槍のような牙が並んでいます。その虎が腰を伸ばして一吠えすれば、あたりには雷鳴が轟いたかのような衝撃が走り、森の獣たちは皆、その影に震え上がりました。

虎は洪信の周りをゆっくりと一周しましたが、再びひと吠えすると、そのまま姿を消しました。洪信はあまりの恐ろしさに腰を抜かし、歯の根が合わぬほど震え上がりました。

ようやく気を取り直して歩き始めると、今度は竹藪の中から、雪のように白い巨大な大蛇が這い出してきました。

首をもたげれば風が巻き起こり、眼を動かせば電光が走ります。吐き出す息は雲となり、千の玉をちりばめたような鱗を輝かせ、銀の山を巻き取るほどに太く長い尾をくねらせています。

大蛇は洪信の顔に冷たい毒気を吹きかけ、彼を絶望の淵に突き落としましたが、危害を加えることなく山を下っていきました。洪信は「もし天師に会えなければ、あの道士たちをただでは済まさぬぞ」と呪詛の言葉を吐きながら、なおも進みました。

すると、松林の向こうから清らかな笛の音が聞こえてきました。見れば、一人の少年が黄牛の背に逆さまに乗り、鉄の笛を吹きながらやってくるではありませんか。

頭には二つのお下げ髪を結い、青い衣を纏っています。瞳は星のように明るく、歯は白く輝き、俗世の汚れを一切感じさせない清らかな姿でした。

洪信が呼び止めると、少年は屈託なく笑って言いました。

「太尉殿、天師をお探しかな。天師は今朝、鶴に乗って雲を抜け、都へ向かわれました。もう庵にはおられませんよ。山には恐ろしい生き物が多い、早くお帰りなさい」

少年は再び笛を吹きながら去っていきました。洪信は驚愕しました。「あんな子供が、なぜ私の名と目的を知っているのだ。きっと天師様が言い残されたに違いない」

彼はそう自分を納得させ、命からがら山を下りました。

住持たちが洪信を迎え入れると、彼は山での恐ろしい出来事を語り、あの不思議な少年のことを尋ねました。住持は手を打って感嘆しました。

「太尉殿、その少年こそが天師様ご本人です。天師様は貴方の真心を試されたのですよ」

洪信は「なんと、ご本人にお会いしながら、みすみす見逃してしまったか!」と地団駄を踏んで悔しがりました。しかし、天師がすでに都へ向かったと知り、まずは役目を果たせたと胸を撫で下ろしました。

翌日、道士たちは洪信を宮内の案内に出かけました。壮麗な殿閣を巡るうち、右側の廊下の奥に、赤い泥壁に囲まれ、何重もの封印が厳重に貼られた不気味な建物を見つけました。

軒先には「伏魔之殿ふくまのでん」という額が掲げられています。

「これは一体、何のための建物だ」と問う洪信に、住持は声を潜めて答えました。

「これは唐の時代、老祖天師が世に災いなす魔王を封じ込めた場所です。代々の天師が自ら封印を重ね、『決して開けてはならぬ』と固く戒められております」

ところが洪信は、持ち前の好奇心と傲慢さから、「開けて見せよ。魔王など、無知な民を惑わす迷信に過ぎん」と言い出しました。住持が「とんでもない、恐ろしい災いが起きます」と必死に制止するのも聞かず、洪信は大声を張り上げました。

「開けぬというなら、都に戻って貴様たちが皇帝の使者を侮辱し、怪しげな術で民を欺いていると奏上してやる。この寺を潰してしまってもいいのだぞ!」

脅しに屈した道士たちは、やむなく火工(作業員)を呼び、古びた封印を剥がし、頑丈な大鎖を叩き壊しました。

重い扉が開かれると、そこには数百年もの間、光を拒み続けてきた暗闇が広がっていました。

そこは、億万年もの間、月の光さえ届かぬほどに深く沈んだ場所でした。冷たく重い黒煙が肌を刺し、妖しい気配が闇の中を往来しているかのようです。真昼だというのに一寸先も見えぬほど、深淵のような暗がりに包まれていました。

松明たいまつを灯して中へ足を踏み入れると、中央に五、六尺ほどの石碑が、大きな石の亀の背に乗って立っていました。その碑の裏側を検めると、そこには力強い筆致で四文字が刻まれていました。

「遇洪而開(洪に遭いて開く)」

「見ろ! 数百年も前から、私がここを開く運命になっていたのだ!」

洪信は勝ち誇ったように笑い、石碑の下を掘り返すよう命じました。三、四尺ほど掘り進めると、一丈四方もある巨大な青石の板が現れました。

住持が「どうか、これ以上はお止めください!」と叫びながら縋り付きましたが、洪信はそれを撥ね退け、石板を無理やり担ぎ上げさせました。

すると、石板の下には底知れぬ漆黒の穴が口を開けていました。

その瞬間、天地を揺るがすような恐ろしい轟音が響き渡りました。

それは、天が崩れ落ち、地が裂け、山々が震えて峰々が砕け散るかのような衝撃でした。

荒れ狂う潮が押し寄せ、伝説の巨神が山を真っ二つに割ったかのような響きが轟きます。一陣の烈風が千本の竹をなぎ倒し、十万の軍勢が一斉に鳴らす雷鳴のごとき音が、人々の耳をつんざきました。

穴の底から一筋の巨大な黒い気が噴き出し、殿閣の屋根を突き破ると、空高く舞い上がりました。それは天の半分を覆うほどの勢いで広がり、やがて百余りのまばゆい金の光となって、四方八方の空へと飛び散っていったのです。

人々は恐怖のあまり悲鳴を上げ、道具を投げ捨てて我先にと逃げ惑いました。洪信もまた、顔は土色になり、ただ呆然と立ち尽くすほかありませんでした。

ようやく廊下へと逃げ戻った洪信に、住持は深い嘆きを込めて言いました。

「ああ、なんと恐ろしいことを……。取り返しのつかないことをなさいました」

洪信が「あの逃げ出したものは、一体どんな化け物だというのだ」と問いかけたところで、第一回は幕を閉じます。

この時、空に放たれた百余りの光こそが、やがて地上へと降り立ち、宋の天下を大きく揺るがすことになる「一百八人の豪傑」たちの魂だったのです。

【Vol.001:エリート官僚、やらかして世界線変えちゃう件】


1. パンデミック発生で詰みかけの朝廷

時は宋代。都でエグいレベルの疫病パンデミックが発生。皇帝も「マジで無理、誰か助けて」状態に。そこで「龍虎山の最強チート道士・張天師を呼んで祈祷してもらおうぜ!」という超自然派な解決策が決定。


2. 意識高い系エリート・洪信コウシンさんの登山

勅使に選ばれたのは、プライドだけはエベレスト級の洪太尉。

山に着くなり「なんで俺が草履履いて登山しなきゃいけないわけ? 労働環境ブラックすぎ」とブチギレ。途中でタイガー&スネークに遭遇してガチビビりし、腰を抜かして失禁寸前。

そこへ牛に乗った生意気なショタ(道童)が現れて「天師ならもう都に行ったよ」とネタバレ。実はそのショタこそが変装した天師本人だったんだけど、洪さんは気づかずに「あー疲れた、下山しよ」とスルー。


3. 「絶対開けるな」は「開けろ」の合図

下山中、見つけちゃったんです。「伏魔之殿」っていう、見るからにヤバい封印がベタベタ貼られたお堂。

住職が「ここだけはマジで開けちゃダメ。先祖代々の約束だから」って必死に止めてるのに、洪さんは「は? 俺、皇帝の使いだけど? 権力見せつけちゃうよ?」とパワハラ全開で無理やり開封。


4. 運命のフラグ回収とビッグバン

中には石碑があって、裏を見たら「洪に遭いて開く」の文字。

洪さん「ほら! 俺が開ける運命だったんじゃん! 俺、選ばれし者(笑)」と大興奮。調子に乗って石碑の下を掘り返した瞬間……。

ドォォォォーーン!!!

地響きと共に真っ黒な煙が空高く噴き出して、それが「108つの眩いサーチライト」みたいに四方八方へ飛び散った!

実はこれ、封印されてた「108の魔星(ヤバい魂)」たち。

洪さんは「……あ、これマジでやらかしたわ」と顔面蒼白。


5. 伝説の幕開け

この108つの光が各地に散らばって、後の激アツ・アウトロー集団「梁山泊」のメンバーとして転生することになるんです。

一人のエリートが好奇心(と傲慢さ)でボタン押しちゃったせいで、歴史が動き出す……っていう、壮大すぎる「前振り」の回でした!

要するに:

「おつかいに来た高スペックな勘違い男が、歴史的立ち入り禁止区域をノリで爆破しちゃって、108人のアウトローを世に放った」というお話。

ここから、彼らが大暴れする最高の物語が始まるぜ!って感じですね!


⭐️今の若い子たちはわかるかな、これって聖闘士星矢の冥王ハーデス編の冥闘士解禁のくだりと似てね?というのはこれが出典元(有名な話らしい)

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