〇壱七:花和尚、単(ひとり)にして二龍山を打ち、青面獣、双(ふたり)して宝珠寺を奪う
ケンタ(20代後半、エネルギッシュな映像作家):「いやー、タケル、この絵、やんな。」
っぱすげぇよな!」
タケル(20代前半、冷静沈着な分析家):「うん、ケンタさん。これ、今回使うメインビジュアルとして完璧っすね。特にこの水墨画の表現、ヤバい。」
ケンタ:「ヤバいよ、「なわかる!ほら、見てみろよ、この魯智深の迫力!坊。で主なのにこの筋肉!背中の蓮の刺青もちゃんと滲んだ表現になって、対する楊志のこの鋭さ。顔の青痣もインパクトあるけど、この朴刀の『一閃』感がすごい。大刀じゃなくて朴刀ってて、なんか皮膚の上で本当に生きてるみたいじゃん?」
タケル:「分かります。あの禅杖の重厚感も、墨の塊で描かれてるから、振り下ろす瞬間の『ゴォン!』って音が聞こえてくるみたいっすもんね。」
ケンタ:「そうそう!で、対する楊志!ところが、またリアルな感じあの『青面獣』の青痣がさ、ただがしていいの青じゃなくて、深い藍墨で沈んでるのが、彼の内に秘めた執念とかプライドを感じさせるんだよな。」
タケル:「朴んだよな。あの、ちょっと長めの刀の表現もバッチリっすね柄と。あの『一閃の、しなやかな刃の感じが、ちゃんとこの雷』っていう指示が、本当に光の残像絵から伝わってくる。」
【二人の若い映像作家は絵感に訴えを見上げ、熱かけてくるっていうか。肌意に満ちた表情で殺気を感じるで頷き合うし、風の音も聞こえてくるようだ。】
ケンタ: 「マジで、この絵一枚で、何分でも語れそうっすね。これをどうやって映像に落とし込むか…腕の見せ所っすわ。」
タケル: 「ああ。この『静と動』、『剛と鋭』のコントラストを、いかに映像で表現するか。この絵が持つ『運命の交差』ってテーマを、最大限に引き出すのが俺たちの仕事だ。」
ケンタ: 「くぅ~、燃えてきた!今回の作品、絶対バズらせようぜ!」
タケル: 「もちのろん。この絵に負けないくらいの、最高の映像を作りましょう!」
【しおの】 ふっふ、ふっふふ、わたしの指とキーボードの間で踊るがいい (笑
さて、物語を進めよう。楊志は黄泥岡にて「生辰綱」を奪われ、もはや梁中書へ合わせる顔もないと絶望し、岡の上から身を投じて死のうとした。しかし、ふと思いとどまって足を踏ん張り、考え直した。
「俺は両親から五体満足な体を授かり、幼い頃から十八般の武芸を身につけてきた。それが、このような不覚で終わってよいものか。今日ここで死ぬくらいなら、いっそ後日捕らえられた時にでも、その始末をつければよかろう」
振り返って十四人の従者たちを見れば、彼らはただ楊志を見つめるばかりで、起き上がる気力すら失っているようであった。楊志は彼らを指差して罵った。
「貴様らが俺の忠告を聞かなかったからこそ、このような事態を招いたのだ。俺まで巻き添えにしおって!」
楊志は木の根元に置かれていた朴刀を手に取り、腰刀を帯びると、あたりを見回したが、他に持ち出すべき物は何もない。一つ大きなため息をつくと、そのまま岡を下り、どこへともなく去っていった。
残された十四人の者たちは、二更(午後九時過ぎ)になってようやく痺れが抜け、一人また一人と這い起きると、口々に不平をこぼし始めた。老都管は嘆いて言った。
「お前たちが楊提轄の言葉を軽んじたばかりに、わしまでこのような無残な目に遭ってしまったわ!」
皆は口を揃えて言った。
「旦那様、起きてしまったことは悔やんでも仕方がありません。皆で相談しましょう」
「何か良い案でもあるというのか」
「悪いのは我々です。しかし、古人の言葉にも『火が我が身に迫れば払いのけ、蜂が懐に入れば衣を脱ぐ』とあります。もし楊提轄がここにいれば言い逃れはできませんが、幸い、奴は行方をくらましました。我々が戻って梁中書様にお目にかかった際、すべてを彼に擦りつければよいのです。『楊志は道中、我々を罵り虐待し、身動きが取れぬようにしました。そして賊と共謀し、我々に痺れ薬を盛って縛り上げ、金品を全て奪って逃走したのです』と報告するのです」
「なるほど、それが良かろう。夜が明けたら、まずは地元の役所へ届け出よう。二人を虞候として残して捜査に協力させ、残りの者は夜通し北京へ戻って梁中書様にご報告するのだ。公文書を作成し、太師様へもご報告申し上げれば、済州府へ命令が下り、賊を捕らえさせることになろう」
翌朝、老都管と一行は済州府の管轄役所へ訴え出たが、その話はしばらく置いておこう。
一方、楊志は朴刀を提げ、重苦しい気分のまま黄泥岡を離れた。南へ向かって半日歩き、さらに夜半まで歩き続けて林の中で野宿をした。
「路銀も尽き、頼れる知人もいない。これからどうしたものか……」
空が白み始めると、涼しいうちにと再び歩き出した。二十里(約十一キロメートル)ほど進んだところで、一編の詩がある。
面の青痣、毒気を含み豪傑を気取れど、
むざむざと金珠十一担を送り出す。
今日なにゆえ道を急ぐや、
知らずや、誰が鞭打たれる身となるかを。
歩き疲れた楊志の前に、一軒の酒屋が現れた。
「酒でも飲まねば、やっていられん」
店に入ると、桑の木の机と椅子に腰を下ろし、傍らに朴刀を立てかけた。竈のそばから一人の婦人が声をかけた。
「お客さん、お食事ですか?」
「まず酒を二角持ってこい。それから飯を炊いてくれ。肉があれば少し炒めてくれ。代金は後でまとめて払う」
婦人は若い男を呼び、先に酒を注がせ、飯を炊き肉を炒めて楊志に出した。楊志はそれらを一気に平らげると、立ち上がって朴刀を掴み、そのまま店を出ようとした。
「お客さん、お代を頂いておりませんよ!」
「戻ってきた時に払う。それまでツケにしておけ」
そう言い捨てると、楊志は足早に歩き出した。
酒を注いだ若い男が追いかけてきて楊志を掴んだが、楊志の一撃によってあっけなく殴り倒された。婦人が「人殺し!」と叫び声を上げる。楊志は構わず進んだが、背後から誰かが追いかけてくる気配がした。
「そこのお前、どこへ行く!」
振り返れば、上半身裸の男が棒を引きずりながら、飛ぶような速さで走ってくる。楊志は心中で毒づいた。
「運がない時は、とことん重なるものだ。俺に喧嘩を売るとはな」
楊志は足を止めた。見れば、先ほどの若い男も鋤を手にして追いかけてくる。さらに二、三人の農夫も棒を手に殺到してきた。
「最初の一人を片付ければ、残りは追って来まい」
楊志は朴刀を構えて男に向き合った。男もまた、棒を振るって迎え撃つ。二人は二十から三十合ほど打ち合ったが、男は楊志の敵ではなく、次第に防戦一方となり、逃げ回るばかりであった。
後続の若い男や農夫たちが加勢しようとしたその時、男は戦いの輪からパッと飛び退いて叫んだ。
「待て! 手出しは無用だ。おい、その朴刀使いの大男、名を名乗れ」
楊志は胸を叩いて豪快に言った。
「俺は行くも座するも名を隠さぬ。青面獣楊志とは俺のことだ!」
「もしや、東京殿司の楊制使ではございませぬか?」
「なぜ俺が楊制使だと知っている」
男は手にしていた棒を投げ捨て、その場に平伏した。
「私には泰山を見分ける目がございませんでした」
楊志は男を助け起こして尋ねた。
「貴殿は何者だ?」
「私はもともと開封府の者で、八十万禁軍都教頭・林冲の弟子、姓は曹、名は正と申します。先祖代々の屠殺業で、家畜を捌くのが得意なため、筋を切り骨を削ぐ腕前から、人は私を操刀鬼と呼びます。ある富豪から五千貫を預かって商売に来ましたが、失敗して故郷へ帰れなくなり、この農家に婿入りしたのです。先ほどの婦人は私の妻、鋤を持っていたのは妻の弟です。手合わせをして、まさに林師匠と同じ腕前であると感じ、到底敵わぬと悟りました」
「なんと、林教頭の弟子であったか。お前の師匠は高太尉に陥れられ、今は梁山泊に身を寄せておられるぞ」
「噂には聞いておりましたが、やはり真実でしたか。まずは我が家でお休みください」
楊志は曹正と共に店に戻った。曹正は楊志を奥座敷へ通し、妻と義弟に挨拶をさせると、改めて酒食を整えてもてなした。宴の最中、曹正が尋ねた。
「制使、どのような事情でこちらへ?」
楊志は花石綱の失敗から、今回の生辰綱強奪に至るまでの経緯を包み隠さず語った。曹正は深く頷いて言った。
「ならば、しばらく拙宅に留まって、今後の策をお練りください」
「ありがたい申し出だが、役人の追手が恐ろしい。長居はできぬのだ」
「では、どちらへ向かわれるおつもりで?」
「梁山泊へ行き、師の林教頭を頼ろうかとも思う。以前、あそこを通りかかった時に彼と手合わせをし、首領の王倫にも引き留められたのだが、当時は断ってしまった。今さら顔に金印(流刑の刺青)を増やしてのこのこ出向いては、志がないと笑われそうで、迷っているのだ」
「制使のお考えは正解かと存じます。噂によれば、王倫という男は器が小さく、他人を受け入れぬ性格だとか。師匠も苦労されているようです。それよりも、ここから程近い青州の境に二龍山という山がございます。そこには宝珠寺という寺があり、山が寺を包み込むような地形で、道は一本しかありません。現在の住職は還俗して髪を伸ばし、僧侶たちを従えて四、五百人の手下を集め、強盗を働いております。頭目は金眼虎鄧龍と申します。落草されるおつもりなら、あそこへ行って身を寄せるのが良いでしょう」
「そのような場所があるなら、いっそ奪い取って自分の城にしてくれるわ」
楊志はその晩、曹正の家に泊まり、路銀と朴刀を借りて別れを告げると、二龍山へと向かった。一日歩き続け、夕暮れ時に高く険しい山が見えてきた。
「今日は林で休み、明日になってから山を登ろう」
林に入ると、驚くべきことに、一人の太った僧侶が素っ裸になり、背中の見事な刺青をさらけ出して松の根元で涼んでいた。僧侶は楊志の姿を見るや、禪杖をひっ掴んで跳ね起き、大喝した。
「おい、そこのクソ野郎! どこから来やがった!」
ここに詩がある。
平らかに珠宝の担を落とし空しくなり、
却って宝珠寺に借りを問う。
寺裏の強人に投ぜんと要し、
先ず引出す 寺外の和尚。
楊志はその言葉の訛りを聞いて、「こいつも関西の人間か。同郷だな」と思ったが、僧侶はいきなり禪杖を振り上げて打ちかかってきた。楊志も「無礼な坊主だ、鬱憤晴らしにしてやる!」と朴刀を構えて応戦した。
二人は林の中で激しく打ち合った。その戦いを讃えて曰く、
二匹の龍が宝を競い、二頭の虎が獲物を争う。
禪杖は虎の尾や龍の筋のごとく唸り、朴刀は龍の髭や虎の爪のごとく舞う。
天は崩れ地は裂け、黒雲が渦巻き、雷鳴と風の音が轟く。
殺気の中に金光が閃き、肝を冷やすごとき激戦。
目は光を放ち、野獣のごとく駆け巡り、山神さえも毛を逆立てて震え上がる。
五十合ほど打ち合ったが、一向に勝負はつかない。僧侶は隙を見て飛び退くと、「休戦だ!」と叫んだ。楊志も手を止めて、内心で感心した。
(どこの坊主か知らぬが、大した腕前だ。俺と互角に渡り合うとは)
「おい、青い顔の漢、お前は誰だ?」
「俺は東京制使の楊志だ」
「東京でならず者の牛二を殺した、あの刀売りの楊志か?」
「この顔の金印が見えんのか」
僧侶は豪快に笑った。「こんなところで会うとはな」
「師兄、失礼ながら貴殿はどなたか。なぜ俺のことを知っている」
「俺は延安府老種経略相公の軍官であった魯提轄だ。三発の拳で『鎮関西』を殴り殺し、五台山で出家した。背中の刺青から、人は俺を花和尚魯智深と呼ぶ」
楊志は声を上げて笑った。「同郷であったか。江湖でその名はかねがね聞いている。大相国寺におられたはずだが、なぜこのような場所に?」
「話せば長くなる。大相国寺の菜園番をしていた時、豹子頭林冲と出会った。彼が高太尉に陥れられたのを助け、滄州まで護送したのだ。そのせいで高俅に睨まれ、寺を追われて放浪の身となった。孟州の十字坡で危うく殺されかけたが、そこの菜園子張青と母夜叉孫二娘の夫婦と義兄弟になった。彼らにここを勧められ、鄧龍を頼って来たのだが、あの野郎、俺を山に入れようとしないのだ。喧嘩になったが、俺に勝てないと分かると、山下の三つの関所を閉ざして引きこもってしまった。いくら罵っても出てこない。腹が立ってここで燻っていたところに、貴殿が来たというわけだ」
楊志は大いに喜び、二人は林の中で一夜を語り明かした。楊志も自らの不運な身の上を語り、曹正の勧めでここへ来たことを話した。
「関所が閉じているなら、ここにいても進展はない。曹正のところへ戻って策を練ろう」
二人は再び曹正の店へ戻った。曹正は驚きつつも二人を歓迎して酒宴を開き、二龍山攻略の相談を始めた。
「力攻めでは無理です。知恵を使いましょう」と曹正。
「どうすればよいのだ」と魯智深。
「策がございます。制使には農夫に変装してもらい、私が師匠(魯智深)を縛り上げて山へ連れて行きます。『この和尚が酔っ払って暴れたので、捕まえて献上しに来ました』と言えば、奴らは必ず門を開けるでしょう。鄧龍の前へ出た瞬間に縄を解き、用意した武器を渡します。そこでお二人が暴れれば、一巻の終わりです」
二人は「名案だ!」と手を叩いて喜んだ。
詩に曰く、
乳虎 龍と称するも亦た枉然、
二龍山は二龍の蟠るを許す。
人 忠義に逢えば情 偏えに洽く、
事 顛危に到れば策 愈全し。
翌朝、準備を整えた一行は二龍山へ向かった。楊志は笠を深く被って農夫に扮し、魯智深は縛り上げられ、曹正たちが護送するふりをした。
関所の見張り番に「酔って暴れた和尚を捕らえたので、大王様に献上しに来た」と告げると、報告を受けた鄧龍は大喜びし、「奴の心臓を取り出して酒の肴にしてやる!」と門を開けさせた。
険しい三つの関所を通り抜け、一行は宝珠寺の本堂へと至った。そこには虎の皮を敷いた椅子に鄧龍がふんぞり返っている。
「ハゲ驢馬め、俺の腹を蹴りおって。今に見ていろ」
その時、魯智深が大喝した。
「逃がすか、クソ野郎!」
曹正たちが縄を一斉に解くと、魯智深は禪杖を受け取り、楊志も朴刀を構え、曹正も棒を振るって襲いかかった。鄧龍は慌てて逃げようとしたが、魯智深の禪杖がその脳天を直撃し、椅子ごと粉砕された。楊志もまた、向かってくる手下数人を瞬く間に突き殺した。
「降伏せぬ者は生かしておかぬぞ!」
曹正の叫びに、残る五、六百の手下たちは恐れおののいて降伏した。鄧龍の死体は焼かれ、魯智深と楊志は新たな山の主となり、勝利の酒宴を開いた。曹正は彼らに別れを告げ、晴れやかな顔で帰っていった。
詩に曰く、
古刹 雄奇にして翠微に隠る、
翻って賊寨と為りて慈悲を借る。
天生の神力 花和尚、
棒を弄し刀を磨いて住持と作る。
さて、話を戻せば、逃げ帰った老都管たちは、ようやく北京の梁中書の屋敷へ辿り着いた。彼らは平伏して、あらかじめ考えておいた嘘の報告をした。
「楊志が賊と結託して我々を痺れ薬で眠らせ、生辰綱を奪って逃走いたしました」
梁中書はこれを聞いて激怒し、「あの恩知らずめ、見つけ次第八つ裂きにしてくれる!」と罵った。すぐに済州府へ公文書を送り、東京の蔡太師へも事の次第を報告する手紙を出した。
東京の蔡太師もこの報告を受け、怒り心頭に発した。
「去年に続き、今年も我が家への贈り物が奪われるとは、断じて許せん!」
蔡太師は腹心の府幹を済州府へ派遣し、「十日以内に賊を一人残らず捕らえよ」と厳命を下した。
済州府の府尹(知事)は、昨年の事件も解決せぬまま頭を抱えていたところへ、太師府の使いが到着した。
「太師様の命である。十日以内に楊志と七人の共犯者を捕らえて東京へ護送せよ。もし失敗すれば、相公は沙門島への流刑となるぞ」
府尹は驚愕し、即座に三都緝捕使臣(捜査官の長)である何濤を呼びつけた。
「生辰綱の強奪犯を捕らえよ。期限は十日だ。失敗すればお前も流刑を免れぬぞ!」
府尹は刺青師を呼び寄せ、何濤の顔に「迭配……州」という刺青の下書きを彫らせた。「……州」の部分は空欄のままであり、もし失敗すれば行先を書き込み、即刻流刑にするという冷酷な脅しであった。
詩に曰く、
顔皮に稿を打つは太だ乖張、
自ら平安を要めて人に殃を受けさす。
賤面 煩いて計を作すこと無かるべし、
本心も亦 合に細かに商量すべし。
何濤は部下を集めて相談したが、誰も有力な手掛かりを持っていなかった。
「深山の強盗がたまたま襲っただけでしょう。そう簡単に捕まるはずがありません」
部下たちは皆、そう言って匙を投げた。何濤は絶望の淵に立たされ、重い足取りで家に帰り、馬を繋いで悶々と過ごしていた。
詩に曰く、
双眉 重ねて上す 三鍠の鎖、
満腹 填め平らぐ 万斛の愁い。
網裏の漏魚 何くにか覓めん、
瓮中の捉鼈 誰にか向かって求めん。
妻が心配して尋ねた。何濤は事情を包み隠さず話し、顔の下書きの刺青を見せて嘆き悲しんだ。そこへ、何濤の弟である何清がやって来た。何濤は「博打打ちの弟など、何の役にも立たん」と無視したが、妻は弟を台所へ招いて酒食を振る舞い、夫の置かれた窮状を話して聞かせた。
「兄貴は普段、金回りがいい時は俺を無視するくせに、困った時だけ泣き言を言うのか」と何清は鼻で笑った。
「生辰綱を奪ったのは、七人の棗商人と一人の酒売りだそうよ」
妻がそう言うと、何清は大声を上げて笑い出した。
「なんだ、そんなことか。兄貴も間抜けだな。俺なら、そいつらをすぐに捕まえられるぜ」
妻は驚愕し、急いで夫にそのことを伝えた。何濤は慌てて弟を呼び戻し、必死に懇願した。
「兄弟、もし知っているなら頼む、教えてくれ! 俺の命がかかっているんだ!」
何清はなおも渋ったが、何濤が銀十両を目の前に積むと、ようやく口を開いた。
「兄貴、その賊たちは、もう俺の『袋の中』に入っているようなもんだ」
何濤は目を見開いた。「どういうことだ?」
何清は指を二本立てて、語り始めた。
これぞ、鄆城県に義侠の英雄を導き出し、梁山泊に擎天の好漢を集める端緒となる。
果たして、何清が語るその正体とは。
【Vol.017 :人生詰んだエリート楊志、無職からの「山乗っ取り」起業!助っ人は最強の刺青坊主www】
1. 楊志、メンタル崩壊からの「お前らのせい」
生辰綱(お宝)を奪われて「人生終わったわ……死のう」と崖っぷちに立つ楊志。でも、「いや、俺才能あるし、ここで死ぬの勿体なくね?」と秒で立ち直ります。
とりあえず、寝てる部下たちに「お前らが言うこと聞かないからだぞ!」と特大の八つ当たりをして、一人でバックレ。
一方、残された部下たちも「アイツが裏切ったことにすれば良くね?」とソッコーで楊志に罪をなすりつける口裏合わせ。この職場、信頼関係ゼロです。
2. 食い逃げ失敗からの「林冲の弟子」との出会い
路銀が尽きて、プライドを捨てて酒屋で食い逃げをカマす楊志。そこに店のオーナーで「操刀鬼」の曹正が登場。
ガチ喧嘩になりますが、曹正は楊志の強さに「え、師匠(林冲)並みに強くね?」と気付き、意気投合。曹正から「二龍山っていう、ちょうどいい物件(砦)がありますよ」と転職先を紹介されます。
3. 森のエンカウント:VS 花和尚・魯智深
二龍山へ向かう途中、林の中で「上半身裸で刺青だらけのデカい坊主」が昼寝してました。これが伝説の魯智深。
挨拶代わりにいきなりPVP開始! 50合やり合っても決着がつかない神展開。
話してみれば、二人とも「高俅(最高権力者)のパワハラ被害者の会」だと判明。同郷だし「一緒にあの山、奪っちゃおうぜ」と即席チーム結成です。
4. 潜入ドッキリで「二龍山」を乗っ取り
二龍山の現ボス・鄧龍が引きこもってて門を開けないので、曹正が作戦を立案。
「暴れる坊主を捕まえてきたんで、差し上げます!」という、前回の呉用顔負けの嘘の献上ドッキリを敢行。
見事に潜入成功した瞬間、魯智深が「だまされたなクソ野郎!」と大暴れ。楊志も加勢して、一瞬で山を制圧。ここが彼らの新アジトになります。
5. 警察サイド、顔に「下書き」される
場面変わって、お宝を盗まれた上層部はブチギレ。担当捜査官の何濤は、「10日以内に捕まえないと流刑な」と脅され、顔に「流刑地の名前(予定)」を下書きされるという、屈辱すぎるプレッシャーをかけられます。
絶望する何濤の前に、ギャンブル好きの弟・何清が現れて一言。
「あ、その犯人たちの正体、俺知ってるよ。もう袋のネズミだわ」
ついに、ドリームチーム(晁蓋たち)の身元がバレそう……!というところで次回へ。
【今回のポイント】
楊志: 食い逃げしたけど、結果的に最強の相棒(魯智深)をゲット。運が良いのか悪いのか分からん。
魯智深: 相変わらずの暴力装置。楊志と互角というだけで、楊志の株も爆上がり。
警察のパワハラ: 顔に刺青の下書きをする知事、現代なら一発アウトのブラック官庁。
何清: 影のキーマン。次回、ついに犯人グループに捜査の手が伸びる!
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主要人物図鑑(登場順)
030:操刀鬼・曹正★梁山泊一〇八将★
起業に失敗したけど、実は伝説のインターン生だった「有能すぎる肉屋」
まずは、楊志を助ける曹正。彼は「水滸伝」界における「最強の中途採用枠」です。
経歴が「エモい」:
実はこの男、あの伝説の軍人・林冲の直弟子。今の感覚で言うなら、「超大手ホワイト企業のカリスマ役員のカバン持ちをしていたエリート」です。でも、親の金を預かって起業(商売)したものの、大失敗して詰んでしまいます。
メンタルが「大人」:
普通、林冲の弟子ならプライド高そうなもんですが、彼は「しゃーない、今は嫁の実家の肉屋を手伝うわ」と切り替えが早い。
楊志が食い逃げしようとした時も、ただの喧嘩で終わらせず、「こいつ、俺の師匠と同じくらいのオーラ(武芸)出してるわ……」と一瞬で相手のスペックを見抜く目を持っています。
企画力が「コンサル級」:
「山を奪いたい」というパワー系コンビ(魯智深と楊志)に対し、「潜入捜査ドッキリ作戦」を立案。脳筋(失礼!)な二人に足りない「知略」を補う、まさに有能なプロジェクトマネージャー。
彼がいなければ、楊志たちは一生山の関所の前で叫んでるだけでした。曹正、マジで仕事できる男です。
031:何清 兄へのマウントが止まらない! 街の「情報強者」なニート
そして、物語の後半で急に「犯人知ってるよ」と出てくる何清。彼は「2ちゃんねる(5ちゃんねる)の特定班」みたいな男です。
立ち位置が「リアル」:
兄の何濤は警察の幹部で、いわゆる「勝ち組」。でも弟の何清は、定職にもつかずギャンブル三昧の「街のプー太郎」。普段、兄からはゴミのように扱われています。
「特定」のプロセスがエグい:
兄が「犯人が見つからない、詰んだ、顔に下書きされた……」とガチ泣きしている時に、何清はニヤニヤしながら登場します。
「兄貴、普段俺のことバカにしてるけどさ。俺、あの日の『ナツメ商人』たちがどこに泊まって、誰とつるんでたか、全部メモってあるんだよね」。
観察眼がニートの域を超えてます。 普段街でブラブラしているからこそ、怪しい集団の違和感に気づけた。これぞ、現場のフィールドワークの勝利です。
「金と承認欲求」のパッション:
タダでは教えません。「まずは銀十両(約数十万円相当)な」としっかり請求。さらに、死ぬほど困っているエリートの兄に対して、特大のマウントを取る瞬間が彼にとっての最高にハイな時間。
「俺の情報、バカにできないだろ?」という逆転の快感。何清は、意外に水滸伝の中でも屈指の「人間臭い」ダークホースなんです。
この二人の凄み:
この回、何が面白いかって、「一線から退いた元エリート(曹正)」と「社会の底辺で見放されていた弟(何清)」という、普段は脇役に甘んじている二人が、歴史を動かす超重要な情報を握って、物語のハンドルをグイッと切るところです!
曹正: 「実力はあるけど場所がない」英雄たちに、最高の職場(二龍山)をプレゼンして提供。
何清: 「絶対バレない」と思ってた天才軍師・呉用のミスを、ストリートの知恵で暴き出す。
「水滸伝」って、こういう「一見モブキャラに見えるヤツらが、実は一番ヤバい」っていうパッションが詰まってるから最高にアツいんです!




