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もうもうが口癖令嬢は、婚約者の手先の魔術師にモウモウに変えられてしまいましたが、婚約破棄をしてくれたこと感謝いたします。  作者: 悠月 星花


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第26話 ……何があったの?

「こんにちは」と扉を開けると、とても不思議な店であった。もう一度挨拶すると奥から腰の曲がったおばあさんがニコニコと出てくる。


「いらっしゃい。何かお探しで?」

「えぇ、ここには飛龍の鱗、大大蛇の皮、古木の新芽、ブルーインゴットとなめし革はありますか?」

「おやおや、珍しい組み合わせだこと。えぇ、えぇ、ありますとも! どれくらい必要で?」


 分量を書いたものを渡すと、おばあさんは雑多な棚から迷うことなく取り出しては揃えてくれる。


「あっ、光蜘蛛の糸もあったりしましか?」

「あるよ。ちょっとお待ち」


 グラグラする梯子を支えるために駆けて行く。抑えると「ありがとう」とおばあさんは言って、手を伸ばした。その先に見えたものがあった。


「おばあさん、その箱の隣……」

「これかい? 邪龍の鱗の欠片だね。見ていくかい?」

「いいの?」

「もちろんだよ。売り物だけど、一度も売れたことがない」


 私のお願いした分量の材料を包んでもらい、私は別に出してもらった邪龍の鱗の箱を開けた。開いた瞬間、黒い靄のようなものが噴出したと思ったら、私の影に入っていたシャドウが姿を現し唸っている。


「大丈夫よ? おばあさんが驚いているわ……影に戻って」


 シャドウに言い聞かせると、すんなり戻ってくれる。私は箱に蓋をして、尻餅をついたおばあさんを抱き起こした。


「大丈夫ですか?」

「……あんなに大きな狼は初めて見たよ」

「すみません、驚かせてしまって……」


 申し訳ないと思っていると、天狼に会えたとおばあさんは「冥途の土産には十分すぎる」と笑ってくれる。それにしても、痛そうだ。私は回復魔法をかけようか迷ったが、持っている薬を渡すだけに留めた。


「いいのかい? 薬なんてもらっても」

「もちろん! 私が作ったものだから、効能は保証するわ!」


 ニッコリ笑うと、「優しいお嬢さんに」と邪龍の鱗をおまけにつけてくれることになった。


「……いいのですか?」

「売れないものをいつまでも在庫で持つほど、無駄なことはないからね」


 おばあさんは笑って、見送ってくれる。その優しさに精一杯の感謝を言って店を出た。

 夕方まで時間があるので、私は宿屋へ戻り、買った材料をベッドの上に並べる。実際、薬草を売ったお金や宝飾品が売れたので懐事情はそこそこ温かい。日頃のお礼も兼ねて、翔輝に渡すバッグを作り始めた。


「それにしても、久しぶりだから……うまく作れるかしら?」


 ひとり言のようにごちたあと、チクチクとカバンを作っているとシャドウが影から出てきて、尻尾を振ってこちらを見ている。見慣れないものを見ていることが嬉しいようで、尻尾をブンブン振っていた。


「シャドウにも何かあげたいわね。材料が余るから、それで小さなカバンを作りましょう。私たち三人のお揃いよ?」

「主様は、本当に翔輝想いだな……」

「そんなことは……いつも私を助けてくれるお礼だから」


 ちょうど、シャドウの分も作り終わり、薬を分けてあげたころ、翔輝が戻ってきた。その姿は凄く疲れており、私を見た瞬間倒れかけたので、支えてベッドへと連れて行く。


「……何があったの?」


 おそるおそる腕を捲ると、邪龍の鱗が先日より多くなっていることに驚いた。少しずつ、体を蝕んでいくとは聞いていたが、予想より早い進行に私は驚いてしまい、苦しそうにしている翔輝を見守るしかできない。何かいい方法はないかと『東方伝記』を見返す。そこに書かれていたのは、邪龍の巫女の伝説が載っていた。


 邪龍の力を一時的にでも押さえられる力があればいいのに。


 私は邪龍の巫女ではないので、伝説のとおり邪龍への対応はできない。ただ、苦しむ翔輝の姿を見ていると、こちらまでくるしくなり、そっと手を握る。


 ……良くなれ、良くなれ。


 想いを込めながら、回復魔法を使う。荒々しく痛みに唸っていた翔輝は、徐々に優しい寝息をたてるようになる。苦しみは去ったようで、ホッとした。


 ……どうして、こんなことになっているのかしら?


 おでこにかかる前髪をそっと分けると、そこには鱗の出現を確認してしまった。これから、翔輝の身に何が起こるのか、わかっていたつもりだが、改めて思い知らされる結果となった。

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