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もうもうが口癖令嬢は、婚約者の手先の魔術師にモウモウに変えられてしまいましたが、婚約破棄をしてくれたこと感謝いたします。  作者: 悠月 星花


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第25話 俺のところへ永久就職!

 街に着くまでに名を決める……、そういうことに決まった。ここからだと1日くらいで次の街に着くらしく、それまでに決めないといけない。私はうんうん唸りながら、よい名前がないかと考えて次の街にまだつかないでと願った。


「そんなに難しく考えなくてもいいよ。黒いからクロとかさ? 捻った名前なんて付けても覚えられる?」

「……そうですね。それなら、シャドウにしましょう。影のように黒いので」

「なるほど……シャドウな。よかったな? いい名前を付けてもらえて」


 ニッと笑う翔輝に羨ましいだろう? と、笑っている天狼が加わり賑やかになったと私も微笑んだ。


「シャドウは……何ができるのかしら?」

「言葉がしゃべれるようになったし、人にも成れる」

「……人にも?」


 ポンっと音がしたあと、目の前にいたシャドウは5歳ほどの男の子に変化した。私は驚いて目をぱちくりさせる。


「シャドウ……素っ裸じゃないか。レディの前で、それはいただけないなぁ?」


 元に戻るように翔輝に言われ、渋々、狼に戻ったシャドウ。子ども用の服を買わないといけないという話になり、次の街での買い物計画を立てる。旅の仲間が増えれば、荷物も増える。益々、私のカバンの優秀さを発揮できることになったのだが、やはり、私も翔輝に同じものを贈りたいと考えるようになった。


「次の街で、転移門を使うから、西の国とはさよならになる。ベス、本当に一緒に来てもいいんだね?」

「えぇ、ついていきます。もう、私は、この国に未練はありません。転移門は初めてなんですが、私、大丈夫でしょうか?」

「そうだね……ちょっと乗り物酔いのように酔うかもしれないけど、概ね大丈夫だよ。さてと、シャドウの名前も決まったし、野良犬じゃないってわかるように、首輪をしておこうか?」


 ニヤッと笑う翔輝と私の後ろに隠れようとするシャドウ。仕方がないので間に入って、手招きをすると、おとなしく座った。私はしゃがみ込み、翔輝から渡されたシャドウに首輪をつける。名付けをした私にはどうやら逆らえないようで、大人しくいうことを聞いてくれた。


「影に入ることもできるのではないの?」

「あぁ、そうだ! 我は街にいる間、ベアトリスの影に入るとしよう!」


 思いついたと言わんばかりに、得意げに私の影に飛び込んでいってしまう。どうやら、それが1番楽な対処法だったのではないかと、今更ながら、ため息が出てきた。


「ハハハ……、もっと早く気が付けばよかったね。街に入ったら、1日滞在したあと、転移門へ行く。そのまま、東の国へ向かうよ? 今日は手続きをしに役所へ向かうけど……ベス、身分証ってあるよね? シャドウは別として」

「あの、私……着の身着のまま追い出されたので……」

「そのカバンの中にない?」


 翔輝に言われてカバンの中を探ると、身分証が出てきた。懐かしいその紋章をなぞると、両親のことを思い出した。それ以上に胸に込み上げてくるものがないことに驚きもした。


「ベス、大丈夫?」

「はい、なんともないです。これがあれば、転移門を使えるのですね?」

「あぁ、大丈夫。ベスも知っていると思うけど、この通行証は魔力で識別しているから、違う人が使うことはできない。じゃあ、さっそく……手続きに行こうか?」


 街に入ったあと役所へと向かう。横に大きな私はどこに行っても目立つ。相変わらずヒソヒソと聞こえてきたり、バカにされたりするが、今は翔輝を抑える方が大変だった。


「ダメです! 私のことはいいので、手続きを!」

「だって、ベスが!」

「もう、翔輝だけでも大変なのに、シャドウまで出てこようとしないで!」


 自分の影をゲシゲシ踏んづけてシャドウを影から出さないようにしているのだが、まるで私が地団駄を踏んでいるようだった。


 ……そっちの方が恥ずかしい。


 翔輝を引きずるようにカウンターへ行き、ニッコリ笑う。巨女に笑いかけられたマリアーヌのような守ってあげたくなるような小さな受付嬢は飛び上がった。


「あ、あの、御用でしょうか?」

「ここで転移門の受付をしていると聞いて」

「う、受付でございますね? では、こちらにお名前とご希望の出発日時を記入ください」


 震えながら私に書く場所を指定していく。指示に従い書いていく。


「翔輝の分も書きますか?」

「えっ? 書けるの?」

「一応、言葉と文字は日常生活に困らない程度には読み書き出来ます」

「……ねぇ、ベス?」

「なんでしょう?」

「優秀だね?」


「それはどうも」と投げやりに返事をして、翔輝の名を記入すると、「本当に書けてる!」と驚いていた。マリアーヌ似の受付嬢も驚いていた。東の国の言葉は、西の国からしたら難しいから。明らかに西の国の住人である私がスラスラと書いたことは、本当にすごいことであった。


「ねぇ、ベス?」

「次はなんですか?」

「国に帰ったら、就職先を斡旋するよ!」


 背中にもたれかかっていた翔輝の方に向き直り「本当ですか?」と問うた。

 ニッと笑う翔輝の様子を見れば、なんとなく予想がついてしまった。


「本当、本当!」

「それって……」

「俺のところへ永久就職! 3食昼寝付きで、ちょっと仕事量は多いかもしれないけど……、衣食住の苦労はないし、生活は安定! お給金も弾むよ?」

「永久就職にお給金ですか?」

「お小遣いのほうがよかった?」


 予想していた就職先にため息をつきながら、そんな将来もいいなと考えている私もいた。そんな優しい未来が二人にあるのか……、わからないからこそ、憧れたのかもしれない。


「どちらでもいいですよ? 謹んでお給金はいただきますし、3食昼寝付きは願ったり叶ったりです」

「じゃあ、決まりだね! うちは、忙しいよ! 冗談抜きで、人手不足だから!」


 あははははと笑う翔輝のどこまで本気なのかわからず、「望むところです!」と答えた。

 明日の昼過ぎに予約をして、私たちは役所を後にする。そのあとはいつものように街を見て、作った薬や宝飾品を売り歩く。手持ちも温かくなったころ、「少し出かけてくる」と、宿屋の前で翔輝と別れた。私は、そのまま宿には戻らず、街の魔法雑貨屋へと向かった。

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