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もうもうが口癖令嬢は、婚約者の手先の魔術師にモウモウに変えられてしまいましたが、婚約破棄をしてくれたこと感謝いたします。  作者: 悠月 星花


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第11話 もしも、世界が翔輝の敵なったとしても

「結構な距離歩いたけど、体はキツくない? 靴擦れもおこしていない?」

「はい、思ったよりかは、大丈夫そうです。心配ないですよ」


 とはいえ、私は牛のような大きな体をゆさゆさと揺すりながら歩くので、身体強化をしていても大量の汗をかき服も髪もベタベタだ。さらに、息も上がっている。はぁはぁとみっともないほどにだ。


「あんまり大丈夫そうには見えないけど……ごめんね? ベスのこと何も考えずに、休憩も取らず歩いていたね」

「いえ、私も付いていけると思っていたので……」


 はぁはぁ……と、言いながらも微笑んだ。うまくできているのかはわからないが、大丈夫だといい、気を使って欲しくないと伝えた。

 未だ私の感覚は、数日前の姿のままだ。私自身が今の私を受け入れられないのか、自覚がないので恥をかく。こんなに汗だくになるなんて思ってもみなかったのだ。


「ん、わかった。それより、すごい汗だね。そろそろ日も落ちそうだからここらで野宿にして、準備をするからお風呂に入るかい?」


 翔輝は私を見て、明らかに気を使ってくれているのがわかるので、首を横に振る。簡単に解決できる方法があるので、その方法を使うことにした。お風呂は入りたいが、特にそれで問題もないだろう。


「いえ、魔法で服を着たまま体ごと洗いますから、お気になさらずに……」

「あぁ、そういう魔法があるのか。便利そうだな。それ、俺にも教えてくれる?」

「いいですけど、使えないのですか?」

「初めて聞いた。服を着たまま体を洗えるなんて、使えると便利そうじゃないか」


 翔輝は私の隣に並んで、私の魔法を見ている。無詠唱でできる私は難なく身を清めた。体はもちろん、服も綺麗になり乾燥までする。

 じっくり見られていて恥ずかしいが、翔輝はますますこの魔法を気に入ったらしい。


「ベスの魔法って無詠唱でできるんだ? 詠唱後にどこかへストックみたいな感じで出し入れできるようになっているの?」

「いえ、私は簡単なものなら、全て無詠唱ですよ。人に危害を加えるような魔法は使わないですし、一緒にパーティーを組むような方々は私の位置を確認して巻き込まれないようにされてました」

「なるほど。ベスの前に立つと、魔法が飛んでくるかもしれないってことだね?」

「そうです。気をつけてくださいね?」


 息も整い、たわいもない話のあと、生活に便利な魔法を教える。火の属性は使えるのに、水はダメらしい。「使える属性に偏りがあるのかも」という翔輝。練習をすればできるはずと詠唱を教える。


「大地を潤す恵みの雨よ。我に従い恩恵を与えたまえ! 洗濯!」


 呪文を唱えれば、水の球体ができていき、私を綺麗にしていく。それを見ながら、翔輝も呪文を唱えた。流石のセンス持ち。教えた一回で魔法の仕組みや魔力量の調整やらをしてしまう。逆に私へひらひらと手を振ったときには、見事なまでに洗われてピカピカになっている。


「これはスゴい! もっと他にも教えてくれる?」

「もちろんです! 私に出来ることなら、なんでも言ってください」

「なんでも?」


 眉を寄せる翔輝の表情に何かを感じ、「えっと……」と言葉を詰まらせた。「その……」と続けようとしたら、翔輝が優しく笑う。


「何でもは言わない方がいい。言われた方は期待してしまうから……」


 私の長い髪を一房取り口元へ持っていく。その翔輝の動きをジッと見つめていた。髪に落ちていた翔輝の視線が不意に上がり目があった。


「止めないの?」

「えっ?」

「ベスって、意外と無防備だよね? それとも、俺が許されているのか。どちらにしても、そんなだと悪い男に騙される。例えば、俺みたいな」

「翔輝は私を騙したりしません!」

「どうして言い切れる?」


 挑戦的な視線に思わず唾を飲んだ。その強い眼差しに見覚えがあるように感じたが、首を横に振った。


「信じるに値すると私が判断しました。それでいいのではないですか?」

「なるほど? それで、こんな怪しげな男にどんな信じるに値するところがあったのかな?」


 クスッと意地悪笑う翔輝。いつもの優しい雰囲気ではないことで、反応に困った。


「それは、こんな私を助けてくれたから……」

「そんなことで信じたの? 売られるとか騙されるとか乱暴なことをされるとか考えなかった?」

「……考えなかったわけではありませんわ。私は、信じてます。翔輝以上に私自身のことを。翔輝が何と言おうと、私は翔輝のことを信じていますから、ついてきたのです。葛藤がなかったとは思わないでください! 私だって、一大決心をして今、ここにいるんですから!」

「そっか。なら、何があっても、俺を信じてくれる?」

「今更ですわ。翔輝を信じています。もしも、世界が翔輝の敵なったとしても、私はあなたを信じますし、守ってみせますわ!」


 驚いた表情のあと、より一層嬉しそうに笑った。手に持っていた髪を手放し、私の大きな体を抱きしめる。背中の途中までしか腕が回らないのを感じる。


「ベス、……ありがとう」


 その言葉の真意はわからなかったが、私の信用が今の翔輝に必要なように、私にも翔輝が必要だ。


「こちらこそ、ありがとうございます」とお礼を言い、笑い合った。

 今日はこのまま、この場で野宿することになり、私たちはそれぞれの鞄から準備をする。数日間で翔輝が私に野宿のイロハを教えてくれたおかげで、すぐに準備ができる。携帯食を食べたあと、火の番と仮眠と分かれる。先に火の番を任され、更けていく夜空を私は見上げた。

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