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とものターン5

店に着き裏口から店へ入ると、

「遅い。40秒で支度しな」

「あいあいさ」

母にエプロンを渡され、すぐさまに着替えてキッチンへ向かう。

一般的なファミレスほどの広さがあり、平日これを一人で回す時があると言うのだからすごい。

店は、母のこだわりがしこたまに詰まっている。

南側にお客さんの入り口と窓があり、昼間は暖かな日が当たる。

西側の壁には一面に絵が飾られており、東側の壁には棚を設置してモダンアート調の彫刻が雑多でありながらも、どこか調和の取れた並びで飾られている。

お客さんの入り口のすぐ天井には、”イエス様の磔”と思しき大きな彫刻が飾られている。

ほぼ美術館である。

そして北側にはキッチンがあり、基本的に母はずっとそこにいる。


キッチンからホールに出るとパートさんと常連客に挨拶。

と言っても、基本、静かなお店なので顔見知りでも会釈程度の挨拶で済ます。


とりあえず、片付いていない席を片付けたり、呼ばれたら注文を聞いたり、レジ打ちをしたり、料理を運んだりせせこまと働く。

と言っても、今日はパートさんが2人いるので、そこまで大変ではない。

そつなくこなしていく。

かれこれ12時から13時半までの忙しい時間帯が終わり、一息つきたいなと思いながら机を拭いていた。

それにしても、今日の夜は、何を話したものか。

一昨日のことだぞ、あれ。

心変わりが一瞬すぎやしないか。

別れ方もこっぴどかったのに……。

もしかして、多重人格とか、そう言うことだったのか。

俺の名前間違えてたし。


カランカランと、扉の開く音がした。

「いらっしゃいませ……」

ハットした。

「来ちゃった」

何が起こったと思った。元カノ、もといサヤカ、もとい、多重人格ではないか。

どことなく、心がバクバクする、というか体が揺れているような気がした。

もしや自分は、こんなにも、大地を揺らさんとばかりの体の揺れが発生するほどに、彼女に対して”好き”と言う感情に溢れているのかと思った。

が、結論から言うと違った。


バシャアアンという音ともに、南側の壁の棚に飾られていた彫刻が全て落ちているではないか。

扉の鐘は、ガランガランとけたたましい音をあげ、机や、椅子、ライトもギシギシと全てが揺れている。

俺が揺れているのではなく、世界が揺れているのか!


「危ない!!」

彼女の大声とともに、目の前にいるサヤカがジャンプしながら俺を倒すように覆いかぶさった。

天井からイエス様が落ちてきたのが彼女の体越しに見えた。

そしてそのまま、下敷きになり、意識はここで途絶えた。


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