とものターン4
朝が来た。時計は9時前を指している。
今日は何の予定もない日であり、しかもせっかく故郷にいるのだ。地元の友達と遊ぼう。そう思い友人に片っ端から電話してみるも、誰1人として空いてる人はいなかった。
しょうがないので、実家でゆっくり昔の漫画でも読むしかない。本当はゲームでもしたかったが、pcは名古屋にあるのでそれも出来なかった。
日の光を浴びて、窓越しの空を見上げて伸びをする。
「よし。全力でゆっくりとしていよう」
今日の目標が決まった。
頭では、やはり、昨日の出来事と今までの思い出ががぐちゃぐちゃと巡っているが、それはそれとしたい。
ガチャ
「ねえあんた。やる事ないなら手伝って」
母である。ノックもせずに入ってきた。相変わらずである。
「えーー、何を?」
「店に決まってるじゃない」
「嫌だよめんどくさい」
「急に帰ってきたんだから“タダ泊”は高く着くよ!お昼だけでいいで手伝って。先に行って待っとるで。11時過ぎくらいにおいで」
ガチャ。
母は、近くに飲食店を経営している。自分が小学生の頃から始めていたので、かれこれ10年以上だ。
近くの会社の社員さんや、主婦さん達の憩いの場となっている。
しかし、俺はとりあえず漫画をめくる。
かれこれ1時間ほど漫画を読んでいたが、少しばかり疲れてきた。
「そろそろ行くかあ」
なんとか立ち上がり着替える。
店の手伝いは面倒くさいが、接客は嫌いではない。顔見知りの常連客ばかりだから、なんだかんだやりやすい。
で、オカンもああ見えてきっちりした性格なので、意外とちゃんと給料もくれる。(なんならそれ目当てで帰ってきたまであるが、これは内緒。)
身なりを整え、机の上に置いてあった朝食を食べ終わると、家を出て、自転車にまたがる。
10分ほど漕ぐと店に着く。
自転車は久々だな。とグッとペダルに力を入れ、漕ぎ出したその時だった。
ガタンと自転車の悪い音が聞こえる。
「おっと?」
自転車から降り、タイヤを見てみると空気が全く入っておらず、空気入れの箇所が地面に当たりガタンと鳴ったようだった。
「ありゃりゃ。うちには空気入れはないし、自転車屋は遠い。しょうがない、歩くか」
時計をみると、10:55を指している。
「歩くと20分くらいだから、11:15。まあ、いいか」
自転車を元の場所に片づけ、お店に向かって歩き出す。
歩いて数分が経った頃だった。後ろからなにか気配を感じた。
なんとなくだが、一昨日の夜。家に帰る時に感じたあの感覚と同じものな気がする。
巻いてると時間がない。これはしょうがない。
・・・走る!!!
汗が滲む。
後ろからの気配はだんだんと大きくなるのを感じる。
あと少しで店だ!
そう思った時、追いつかれガバッと後ろから取りつかれた。