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ケンのターン3

「かんぱーい!」

「もうあんなやつ忘れてやる~」

「そうだよ!飲みな、飲みな!」

若年層向けの低価格の居酒屋の奥の席は華金ということを差し引いても、特に盛り上がっている。

「でも、あんたからフったんでしょ?」

そう、フったのは私から。それでも悲しいものは悲しいし、辛いものは辛いんだ。

「そうだけどさ~。」「カナもそうやって私に説教するんだ~。」

「そんなんじゃないよ!偉かったんじゃんってこと。ちゃんと考えた上で、好きな人のことフるなんてなかなかできるもんじゃないよ」

「にしても、ちょっともったいないよね~。だって初めてじゃない?あんたがこんなに悩んだの」


私は、大学に入るまで彼氏ができたことがなかった。中学も高校も好きな人はいたけど、結局告白もできなかった。当時の私は今よりもずっと地味な感じで、正直同級生の男の子たちからは全く相手にされなかった。

大学でサークルに入ると、いろんな男の人が声をかけてくれるようになった。2つしか離れてないとは思えない大人な先輩も、少し無邪気な同い年の男の子も。でも、大学での恋愛はそんないいもんじゃなかった。


男の子と付き合った経験のなかった私は、サークルの男の子から向けられた言葉や態度を全部純粋な好意と捉えてた。でもみんな違った。私は恋愛に憧れてたけど、実際の恋愛経験は全然なくて、言われるがまんまいろんなところに付いてった。周りから惚れっぽいって言われる上に経験のない私は結局遊ばれるだけだった。

それに気づいてから、男の子との関係は長くは続かなかった。友達からいろいろ教えてもらって試してみた。毅然とした態度でちゃんと自分の感情を相手に伝えるようにしてみたら、逆ギレした相手にあることないこと言われて。最近は関係ない人たちからも変な噂をされるようになった。


そんな時に出会ったあの人は、私にはとても新鮮に見えた。正直、大学では恋愛とかいいやって思ってたのに、あの人としゃべってる時はとても楽しくて、こんな人もいるんだなって思った。だから、告白された時はとっても嬉しくて舞い上がっちゃって。


「別れない道もあったのかな...。」

「まあさ、しょうがないんじゃん?」「これも勉強だと思ってさ!飲も飲も!」

「彼氏と長いこと幸せにやってるあんたに言われても慰めにならないよ~」

飲み始めは勢いとお酒の力で完全に忘れようと思っていたのに、気づけばもうあの人のことを考えてしまっている。

でも、多分、私よりあの人の方が悲しんでる。今は私にこんなこと言う資格はない。


なんて考えるのは明日からにする!今日は大好きな友達みんなに甘えて思いっきり悲しんでやる!

近くにあったグラスを手に取り、一気に喉に流し込む。

「にが」

普段飲まないビールの味はこんな時にも私の味方にはなってくれなかった。

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