とものターン7
3日が経った。
その間、驚いたことがいくつもあった。
まず、あの地震はとても大きかったとのこと。一時は「日本が終わった」とまで言われていたらしい。
しかし、今では復興し、元通りとまではいかないが、経済は十分に回っているとニュースでやっていた。
そして、サヤカはもう3年も目を開けていないらしい。
俺が数日前に目を開けられたのは本当に奇跡だったらしい。
そう。地震があった日から、実は3年が経っていたらしい。
ジュニが少し老けているのも、体がうまく扱えなかったのも、それを聞いた時に納得が行った。
看護師さんには、「目を開けた時点で奇跡なのに、立ち上がれたのは本当にあり得ない」と言われた。
俺は意識が無くなって数日くらいにしか思っていなかったので、それのおかげだったのであろう。
今は逆に立ち上がれない。筋肉痛が酷すぎる。
とまあ、そんな感じであった。驚きはあったが、俺はなぜかスッと受け入れられてしまった。
それよりも、ジュニが何か気になることを言って帰って行ったのがずっと気になっている。
いつもなら……いや、正確には3年前のあいつなら、毎日来ていたに違いない。
が、3年経てば社会人とのこと。
この3日間、連絡しても返事すらない。
どうもよっぽど忙しいらしい。数年で人は変わるらしい。ここまでその差を実感できる人はほぼいないであろう。
毎日のように「サヤカの元へ連れて行ってくれ」と、看護師さんに言っているのだが、なかなか聞き入れてくれない。
まだその顔さえ見えていない。
なぜ、サヤカに面会することすら許されないのであろうか。
できることは何もないが、時間だけはある。
少し、昔のことを思い出していた。
それはサークルの新歓だった。
キラキラとした印象な目、ばっちりメイクにふんわり茶髪の(女性耐性のない俺には近寄り難い)可愛い女の子がいた。
その子と話す場面があり、俺は少し緊張してうまく話せなかったが、ふと見せてくれたその子の笑顔は純粋で可愛くて、ここまで真っ直ぐに綺麗な笑顔を向けられる人がいるんだ。と思った。
と同時にその刹那、ハッとした。俺はその笑顔を知っていた。
実は、そのはるか前、高校生の時、ジュニと一緒に行った大学のオープンキャンパスで、その子を見ていたのを思い出した。
講堂で全体説明を受けている時、質問コーナーでピンっと真っ直ぐ手をあげ、
「初代学長が特徴的な髪型をしていたと思いますが、なんていう髪型なのでしょうか」
という意味のわからない質問をしているジュニの隣に、彼女は座っていた。
彼女は、制服で黒縁の眼鏡をしていて、髪はポニーテールにしていた。一見したら素朴な女の子で、その時は特に印象に残ることもなかった。
しかし、ジュニの意味のわからない質問に笑っている顔が妙に可愛くて、ずっと頭に残っていた。
新歓でのその子は、あの時の彼女とは似ても似つかない格好であったが、その笑顔を見た時、ジュニの隣に座っていたあの彼女であることがわかった。
これが、サヤカとの出会いだった。
しかし、その後の彼女は見るに堪えなかった。サークルの先輩連中にいいように遊ばれているという印象しかなかった。
その間はサークルでの集いで顔を合わすものの、深い関わり合いになることはなかった。
あの時の素朴な彼女を汚されていくような感じがして先輩連中とは仲良くなれなかったし、彼女自身もそれで良さそうだったのが嫌で居心地が悪かった。が、なんとなくサークルは続けてしまっていた。
数年が経ち、なぜかジュニがサヤカと交流を持っていたので、その繋がりで仲良くなった。
その時のサヤカは、色々とうまくいかない、と嘆いていた。彼女はあの時の笑顔をもう作れなくなっているようだった。
彼女の笑顔を取り戻したい一心で、慣れない告白なんぞをしてしまった。
そうか、これは、俺が始めた物語なのか。
ぼーっとそんなことを思い出していると、あっという間に夕方だ。外は黄昏時の特徴的な赤さが街を染めていた。
時計の針は、19時を指していた。
夏は怖い。どちらかというと夜ではないか。
ポン。とスマホの音が鳴った。
ホーム画面には、
「明日の夜時間ができそうだでそっちいく。その時に話す 差出人:ジュニ」
そう書かれていた。




