五月は“乾燥する”
さて、過酷な夏がやって来るぞ。モンちゃんもますます燃え上がってきちゃうからね♪
とにかく、この時期は気候が厳しい。暑さも渇きも一気に厳しさを増していくからな。当然、この厳しい気候を乗り切るには、より強力な神の力に縋らねばならない。
当然ながら、祭事にも力が入るというものよ!
そう、この時期の主役となる神は、戦神であるテスカトリポカだ。
テスカトリポカは黒と黄が混じったジャガーのような姿をしており、戦神ということもあって強力な力を有し、戦士達から信仰を集めている。また闇を司る魔術師でもある。その強大な力を使って、“一番目の太陽の世界”を支配したのだ。
しかしある時、テスカトリポカの宿敵である風神ケツァルコアトルに棍棒で殴り飛ばされ、玉座より追い出されることになる。怒ったテスカトリポカは当時世界に住んでいた巨人族を皆殺しにし、更には世界そのものをも滅ぼした。
なお、“二番目の太陽の世界”の支配者となっていたケツァルコアトルも、あとできっちり報復して、その世界も滅ぼしておるがな。
この二柱の神はとにかく仲が悪くてな。顔を会わせる度にケンカをしておる。ケンカと言えば聞こえがいいが、天地改変するくらいに周囲に影響を与えている。
この世界が天上世界、地上世界、地下世界の三分割にされたのも、この二柱のケンカが原因だからな。なんとも強大な力の持ち主であろう?
これほどまでに強力な神だ。当然、捧げる供物もまた、強力でなければならないのは自明である。
まず、捕虜の中から厳選に厳選を重ねた一人を選ぶ。若くて美形であることはもちろんのこと、肉体は強靭であり、かつ精神は善良でなくてはならない。そうして一人の男を選び出す。
この選ばれし者は大切に扱われ、テスカトリポカの化身となるのだ。
神の化身であるから、どこへでかけようとも皆からの尊敬を一身に浴びる。選ばれし者には誰であれ、敬意をもって接するのが習わしなのだ。もちろん、あらゆる贅沢も彼には許される。女も群がる。いいこと尽くしだ!
そして、化身となった一年後には、きっちり心臓を抉り出されて神への捧げ物とする。化身として一年過ごしたことにより、強力な存在となり、供物としての格が上がるとうわけだ。
手間暇かけて育んだ生贄だ。これでテスカトリポカも思わずニッコリ。この厳しい季節を乗り越える力を得られるというものよ!