二月は“皮を剝ぐ”
さあさあ、モンちゃん、ノリノリになってきましたし、次なる二月の祭事を話そうか。
二月の祭事は穀物の神シペトテックを祀る。もちろん生贄の儀式もあるぞ。シペトテックに捧げるのは、厳選された敵国の捕虜を用いる。
儀式を始める前の下準備として、供物となる捕虜は頭髪を剃られ、頭をピカピカにしておく。そして、前後不覚になるほどにたっぷりを酒を飲ませて、ベロンベロンに酔わせるのだ。
フラフラに酔ったところで無理やり歩かせ、さらに故郷の歌を歌わせる。二度と帰れぬ故郷に涙しながら神殿の階段を上らせ、儀式の祭壇まで登らせてから殺す。
そして、もっとも重要なのは、神聖なる祭壇の上で、その死体の皮を剥ぐことなのだ。
ああ、言い忘れておった。心臓を抉ってから皮を剥ぐのか、皮を剥いでから心臓を抉るのか、その時の天候によって変わって来るから間違えないようにな。
そして、剥いだ皮は戦士が身に付け、再び敵国の捕虜と対決してもらう。もちろん八百長だぞ♪ 我が国の戦士が負けることなど、あってはないらないからな!
なぜ、ここま“皮”に拘るのかと言うと、シペトテックが皮に包まれた神であるからだ。そして、シペトテックはその皮を変異させ、食料を生み出す力を有しておる。
その皮の下は黄金の肉体が秘められておるのだが、なんだか似ておると思わぬか?
そう、これだ、これ! 我らの主食“トウモロコシ”だ!
シペトテックは黄金の体を秘めたる皮に包まれた神、すなわちトウモロコシの神格なのだ。
それにほら、人も似ておろう? 皮を剥いでそこから覗く皮下脂肪! 脂肪は黄色の粒々! なんだかトウモロコシみたいではないか!
我らの先祖がそれに気づき、このような儀式の形を整えたのであろう。皮を剥いで食べる。おお、偉大なるかなシペトテック! 偉大なるかなトウモロコシ!
大地に実りを! 腹を満たし、豊かなる心を!
我が国に栄光と繁栄あれ!