表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

馬鹿げてる、でも憧れる

作者: 島猫。

いつも真面目に過ごした。

授業はしっかりと聞き、「分かる人」と問われれば姿勢よく挙手し、板書(ばんしょ)はノートに丁寧な字で書き写し、出された宿題はきっちりとする。


「つまらない子」

「他にすることが無いんじゃないの?」


いつも真面目に過ごした。

そうすれば親が安心するから。

教師からは褒められる。

内申点が上がる。

慌てなくてもテストでそこそこの点数が取れる。


「家で勉強ばっかりしているんじゃない?」

「くそマジメ」


いつも真面目に過ごした。

だって、真面目が楽だから。

真面目にしていればそれなりに成績が良くなって、素行(そこう)が良ければ入試にもきっと有利で、不真面目な子よりも楽に進学できると思うから。


でも、憧れる。

堂々と授業をサボる子、宿題を忘れてもテストが赤点でも平然としている子、スカートの丈が短い子、夜光タスキを着けない子、ヘルメットを被らない子。

授業をサボれば教科書が進んでしまう、授業に出てちゃんと聞けばいいのに。

宿題を忘れたらテストで満点を取ってもきっと総合的な評価が満点ではなくなる、家でやらないのなら授業が終わってすぐの休み時間にすればいいのに。

スカートの丈が短いと階段の昇降時に下から見えてしまう、カモシカのような足ならまだいいかもしれないけれど、大根足はただ醜いだけなのに。

夜光タスキを着けないのもヘルメットを被らないのも被っていて(あご)のベルトを止めないのも、ただ危険なだけなのに。被っていてベルトを止めない……安全性で見て何の意味もない、被らないという勇気もない、中途半端。

自分は?

私は?

真面目、凄く真面目、つまらない真面目、何の面白みもない糞真面目。

でも、ちょっとだけ、抵抗する。

真面目からの、糞真面目からの抵抗。

制服の白ブラウスのボタンを留めている白い糸を、裁縫セットから取り出した糸切り鋏でチョキンと切る。

切れた糸の先を引っ張って、ボタンを外す。

針に新しい糸を通す、薄い灰色の糸を。

糸の一方を玉結びして、ブラウスの裏側から針を出し、ボタンの穴に針を通して。

白ブラウスはほんの少しだけ表情を変える、きっと誰も気付かない。

人から見たら真面目街道一直線のつまらない私。

でも、私だけは自分がそうじゃないことを知っている。

私は真面目だけれど要領のいい真面目で、でも、ほんの少し不真面目な真面目。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] >人から見たら真面目街道一直線のつまらない私。 >でも、私だけは自分がそうじゃないことを知っている。 この部分がとても良かったです。 言われたことをするだけの人間ではなくて、ちゃんと自分…
[良い点] 少しだけ背伸びしてみた、少年少女の青春のようで、甘酸っぱい感じですね。 昔を思い出します。
[良い点] 改造企画から伺いました。 テンポをかなり意識・重視されたのかなと思いました。テンポのよさには心地よさを、文章全体には力強さを感じました。 小さな"改造"、でしたね。でも、彼女にとっては…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ