16歳の少女が可憐に美しく戦うピエロに変身しました。
1、 サーカス一団の解散
「みなさん、本日は当一団のサーカスにお越しいただいて、ありがとうございます。続きましては当一団の花形、リトルプリンセスによる空中ブランコのショーをご覧に入れます。」
11月の冷たい雨が降る東京で羽光サーカス一団の最後の公演をやっていました。
私はお客さんが大勢見守る中で空中ブランコを披露しました。
お客さんから盛大な拍手が送られ、その後ライオンの火の輪くぐりや、父さんのマジックショーなどが披露されていきました。
「みなさん、楽しい時間はあっという間に過ぎ去っていきます。本日最後のショーとなります、リトルプリンセスによる綱渡りです。」
私は、高さ3.5メートルある場所から一本のロープを歩いていきましたが、いつ落ちてもおかしくない状態でいました。
ロープはミシミシと音を立てながら揺れています。
額には汗が噴き出ていました。
私はなるべく下を見ないで、出口に向かってゆっくり一歩一歩進んで行きました。
客席ではかたずをのんで私を見守っています。
このたった数分で、私は緊張と恐怖に耐えながら、ロープの上を歩いていきました。
出口に着いてスタッフに支えられて、緊張の糸がほぐれたあと、客席からは盛大な拍手が送られました。
「みなさん、盛大な拍手をありがとうございます。実はみなさんに重大なお知らせがございます。本日の公演をもって、当一団は解散となります。みなさんにおかれましては最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございます。」
会場は騒然としました。
客席からは「うそでしょ!?」とか「もっと続くのかと思った。」などと言う声が広がってきました。
団長である父さんが、最後の挨拶をし終えて、出ていく観客一人一人にお辞儀をして見送ったあと、一団は今後のことについて話し合うことにしました。
「みなさん、本当にお疲れさまでした。実は今後の皆さんの身の振り方なんですが・・・。」
「団長、自分はまだここに残りたいです。」
「自分もです。」
「気持ちはわかる。だが、これはすでに決まったので、変えられないのだよ。」
「団長、自分は他に行くのは反対です。」
「実はみんなの次の行き先なんだが、天空大サーカスになった。そこは私の従兄弟がやっているサーカス団で、先日出来たばかりなんだよ。事情を話したら喜んで引き受けてくれたから。それと、ライオンのジャックなんだが、申し訳ないがアフリカに帰すことにしたよ。」
団員たちは納得のいかない顔をしていましたが、決まった以上従うより他はありませんでした。
「みんなの納得いかない気持ちはわかるが、これ以上続けるには限界が来ている。紹介状を渡すから、それを持っていけば受け入れてくれるはず。」
「それしか方法がないのですね。」
3人の団員はしぶしぶ認めたって感じでいました。
「団長、今日まで本当にお世話になりました。」
「こういう形になって、本当にすまなかった。」
父さんは申し訳なさそうな顔をして、3人の団員に頭を下げて、テントの外で見送りました。
「雨が降っているから、風邪をひかないように。天空大サーカスでも元気でやるんだよ。」
雨はさっきよりも強くなってきて、まるで滝の中にいるような感じでした。
私と母さんはこの光景をぼんやりと座って見つめていました。
「何とか認めてくれたよ。」
「仕方ないよ。それしか方法がなかったんだから。」
「このテントもいよいよ見納めの時が来たんだね。」
父さんはため息交じりに呟きました。
「このテントを解体する前に最後に3人で記念写真を撮ろうか。」
父さんはテントの奥から三脚とデジカメを用意して写真を撮りました。
「私、幼いころからサーカスを始めていたから、辞めると聞いた時には正直残念に思えたよ。」
「父さんもだよ。このサーカスにはたくさんの思い出があるからな。」
「私、もう少しサーカスを続けたかった。」
「本当にそうだね。でも、仕方がないんだよ。」
横で聞いていた母さんはハンカチを用意して涙ぐんでいました。
私、羽光舞子は15歳で来年の春から横浜市内にある私立の女子高へ通うため、受験勉強に専念することになりました。
家はサーカス一団で全国を回っていたので、学校も転校を繰り返してきたので、友達がいませんでした。
私の高校受験を機にサーカス一団を解散し、来年から新たなスタートを始めようとしました。
翌日、昨日の雨が上がって嘘のように晴れていたので、父さんと母さんはスタッフに混ざってテントの解体を始めていました。
サーカスで着ていた衣装や小道具は使えるものはネットで売ったり、使えなくなったものは廃棄処分しました。
私が着ていた衣装は記念に残しておきたかったので、自分で管理することにしました。
さらにその次の日にはライオンのジャックを貨物船でアフリカへ送るため、東京港まで行きました。
「元気でね。」
「ジャック、今までありがとう。」
「アフリカでも元気で暮らすんだよ。」
ジャックは檻の中で無言のままでいました。
そのままクレーンで持ち上げられて、船の奥へ入れられてしまいました。
船は汽笛を上げて、そのままアフリカへ向かいました。
私は両親の車に乗って、横浜にある新居へ向かいました。
新居は藤が丘駅からバスで15分のところにある静かな住宅地にありました。
もともとは父さんの古い友人が住んでいたのですが、その人が少し前に海外へ移り住むことになったので、安く買い取ったのです。
家の作りは古い洋館みたいな感じになっていて、中も3人で暮らすには少し広いくらいでした。
私の部屋は2階の西側にあるフローリングの部屋を使うことにしました。
中は机とベッド、本棚が置いてあり、窓にはおしゃれな薄いピンクのカーテンがかかってありました。
私は疲れたのか、そのままベッドで何もせずに眠ってしまいました。
夜になって空腹を促した私は、食堂から漂ってくるトンカツの匂いに連れられて向かいましたら、食卓にはきざみキャベツと一緒に盛られていたトンカツが置いてありました。
私はがまんが出来なくなり、テーブルの上にある箸に手を付けようとした瞬間、母さんが私の手を叩きました。
「食事はお父さんが来てから。」
「だって、もうお腹が空いたよ。」
「じゃあ、お父さんを呼んできてちょうだい。」
私は父さんの部屋に向かいました。
「お父さん、食事だって。」
「うん。」
「何しているの?」
「次のお仕事の準備だよ。」
「次のお仕事?」
「そう。今度は手品師をやるからね。」
「そうなんだ。それより、お腹が空いたからご飯にしよ。」
「すまない。先に行っててくれないか?すぐに行くから。」
私の頭の中はトンカツでいっぱいでした。
「途中でやめるわけにはいかないの?」
「そうしたいんだけど、父さんとしては切り目のいいところで終わらせたいから。」
「こっちは空腹の限界が来ているんだけど・・・。」
「じゃあ、先に食べてくれる?」
「それで先に食べようとしたら、母さんに手を叩かれた。」
「わかった。今行くよ。その代り3分だけ待ってくれないか?」
「私も何か手伝っていい?」
「悪いけど、見てるだけにしてくれない?」
父さんはそう言って、残りの作業を数分で終わらせました。
食堂へ戻ったころには母さんの頭から鬼の角が生えていて、ナマハゲのような顔して待っていました。
「舞子、お父さんを呼びに行ってから随分と時間がかかったね。」
「実は次のお仕事の準備に時間がかかって・・・。」
「お仕事はいつから?」
怒りの矛先は父さんに向けられました。
「来週の月曜から。」
「だったら急がなくてもいいんじゃない?」
「そうは言っても準備には時間がかかるんだから・・・。」
「そう、頑張ってちょうだい。」
母さんはそれ以上のことは何も言わず、食事を始めました。
食べる前に私はスマホで写真を撮ってSNSに載せようとしたら、母さんに注意をされました。
「食事中にスマホを持ち込むのはマナー違反よ。」
「写真くらい、いいじゃない。」
「そのあと何かいじっていたでしょ?」
「SNSに乗せようとしただけ。」
「ほら御覧なさい。」
食事中も母さんの顔はナマハゲになっていました。
「写真は許すとしても、それ以外は禁止だからね。」
私はスマホをお皿から少し離れた位置に置いて、食事を始めました。
食事中は気まずくなり、終始無言のままでいました。
食べ終えて食器を片付けた後、私は部屋に戻り、机の上に教材を置いて勉強を始めました。
年明けには受験が始まるので、本格的にやらないと追いつきませんでした。
サーカスの公演中も空いている時間に勉強を進めてきましたが、正直なかなか思うように進みませんでした。
その日は英語だけにしようと思いましたが、辞書を引くのに時間がかかってしまい、思い通りに行きませんでした。
翌日からは家庭教師が家にやってきて、本格的にマンツーマンでの指導が始まり、受験科目である英語と数学、国語、理科、社会の5科目を毎日少しずつやっていきました。
年が明けてから先生は毎日のように確認のための小テストを出していきました。
「だいぶ、点数がよくなってきたね。この分だと間違いなく志望校へ合格できるよ。」
「ありがとうございます。」
「舞子ちゃんの第一志望は横浜北女子だよね?」
「そうです。」
「じゃあ、来週からもう少しレベルを上げてみようか。」
「はい。」
私はラストスパートをかけて頑張っていきました。
そして迎えた受験当日です。
私は受験票を持って会場まで向かいました。
朝の東急田園都市線は下りと言うこともあって、比較的すいていました。
青葉台駅で降りたあと、そこからバスで10分のところに横浜北女子高校がありました。
中へ入ってみると、単語カードや参考書を取り出して確認をしている人を何人か見かけました。
試験監督が入ってきて問題用紙と回答用紙を配り始めた途端、急に緊張が高まってきて、覚えてきた内容がすべて忘れてしまいそうなほどでした。
試験監督が「はじめ!」の号令をだして、問題用紙を広げて見たら、勉強してきた内容ばかりでしたので、少しだけ安心しました。
午前中に国語、理科、社会の問題を解いていきました。
昼休みに入って、ほとんどの人は売店でパンやおにぎりを買って自分の席で食べていましたが、私は母さんに作ってもらった弁当を用意して食べました。
弁当箱の入っていたきんちゃく袋には一枚の紙が入っていて、そこには<最後まで頑張るんだよ。 母さんより>と書かれていました。
午後に入って、私は残りの数学と英語も最後まで頑張りました。
あとは結果を待つだけでした。
数週間後、私の家に大きな封筒が送られてきました。
はさみを取り出して開封してみると、合否結果の通知が書かれている紙が入っていて、そこには大きく「合格」という2文字が書かれていました。
私は嬉しくなって、舞い上がり、家庭教師にお礼の電話をしました。
「先生、合格しました!」
「やったじゃないか。」
「本当にありがとうございます。」
「4月から大変になるかと思うけど、たった一度しかない人生だから思い切り楽しんでくるんだよ。」
「はい。」
その後も両親やクラスメイトにも報告したら、一緒に喜んでくれました。
卒業式、春休みを終えて、いよいよ4月から女子高生になります。
しかし、このあと私の人生を180度変える大きな事件に巻き込まれるとは、その時は思ってもいませんでした。
2、 不思議なアイテムと謎の人形
入学式当日、私は真新しい制服に着替えました。
私が行く学校の制服のデザインは白のセーラー服で水色と紺のリボン、下が青と紺のチェック柄のスカートなので、とても気に入っています。
靴下と靴は自由なので、白と水色のボーダーのニーソックスにして、靴は白のショートブーツにしました。
私は鏡の前で髪形をポニーテールにして、水色のリボンを結んで、一階の食堂で食事を済ませたあと、母さんと一緒に車で学校へ向かいました。
母さんが来客用の駐車場に車を置いている間、私は桜の木のある校門をくぐり、校舎の中へと向かいました。
教室へ入ってみると、みんな知らない人ばかりでしたが、サーカスをやっていたころ、転校を繰り返してきたので、一人でも平気だと思っていました。
私は自分の席を探して座って周りを見てみると、さっそく新しい友達を作って世間話をしていました。表向きでは平気でも、実際こういう光景を見ていると、正直うらやましく感じました。
自分だけが浮いていると思って、一人スマホを取り出していじっていたら、後ろから背中を「ポンッ」と軽くたたいてきた人がいました。
私が後ろを振り向いたら、彼女は軽くにこやかな表情を見せていました。
「ねえ、人違いだったら謝るけど、あなたって去年の11月に東京でサーカスをやっていたよね。」
「はい、そうですが・・・。」
「私、見ていたけど、最後の綱渡りすごかったよ。」
「ありがとうございます。」
「あのさ、気になっていたけど、さっきから使っている敬語なんとかならない?私ら同い年なんだし、タメクチにしない?」
「でも今日知り合ったばかりなんだし・・・。」
「そんなの関係ない。じゃあ、今から私があなたの友達。私の名前は火ノ川春子、家が写真館をやっているの。あなたの名前は?」
「私は羽光舞子。少し前までサーカスをやっていたけど、今は解散して両親はそれぞれ別の職業に就いたの。」
「本当に解散したんだね。今はどんな職業に就いているの?」
「父さんは手品師、母さんは体操教室の先生をやっているの。」
「そうなんだ。」
「そして、私は女子高生になったの。」
「それは、見ればわかるよ。」
その直後、担任の先生が入ってきたので、一緒に体育館へ向かいました。
入学式で校長先生や来賓の話を聞かされたあと、教室で担任の先生の自己紹介が始まりました。
「みんな、初めまして。先生の名前は華立和子。担当科目は保健体育、そして部活は新体操だ。新体操に興味のある人はあとで私のところまで来るように。ここまでで質問のある人はいるか?」
「先生、彼氏はいますか?」
「いきなりそれ?今は一人。」
「先生の好きな食べ物ってありますか?」
「特にない。っていうか、それを聞いてどうする?ほかに質問は?」
「先生の家はどこですか?」
「長津田だ。それ以上は個人情報だから、ここでは言えない。」
「ちぇっ。」
「『ちぇっ』じゃないだろ。他になかったら終わりにする。」
「待って。」
「今度はなんだ?」
「先生はLINEやTwitterはやっていますか?」
「一緒にやりたい人間はあとで職員室まで来い。他にないなら終わりにする。」
先生はそのまま教室からいなくなってしまいました。
「よかったら一緒に帰ろ。」
教室を出ようとしたら春子は私に声をかけてきました。
「いいよ。春子は家どこ?」
「藤が丘だよ。舞子は?」
「私も藤が丘。」
「じゃあ、一緒に帰ろ。」
「私、車なんだけど、よかったら一緒に乗る?」
「いいの?じゃあ、お言葉に甘えて。」
「そういえば、おばさんは?」
「母さんなら、先に帰った。」
私は母さんに頼んで春子を家まで送るように言いました。
「おばさん、初めまして。私、火ノ川春子と申します。今日は車に乗せていただいてありがとうございます。」
「いいえ。これから舞子のことよろしくね。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
車はそのまま藤が丘の方角へと走っていきました。
「春子ちゃんの家は藤が丘のどのあたり?」
「この通りを横切った場所にある写真館が私の家です。」
「ああ、この写真館?一度お世話になったことがある。あなた、ここの写真館の子だったのね。」
「はい。よかったら火ノ川写真館をよろしくお願いします。おばさん、今日は乗せていただいてありがとうございました。」
春子が軽くお辞儀をして玄関に入ったのを確認して、母さんは車を走らせて家に戻りました。
入学式から2週間が経ち、教室の中では部活の話が飛び交っていました。
文化部にするか運動部にするかで会話が弾んでいました。
「ねえ舞子、入りたい部活見つかった?」
「まだわからない。」
「私ね、写真部に入ろうと思っているの。よかったら一緒に入らない?」
「少し考えさせて。」
「もしかして、帰宅部?」
「それもいいかもしれない。」
「マジ!?」
「うん、だって入りたい部活がなければ帰宅部しかないかなって思ったの。」
「よく考えた方がいいよ。1度しかない高校生活なんだから。よかったら一緒に写真部に入る?それともサーカスをやっていたわけなんだし、新体操なんてどう?」
「それもいいかもしれないね。」
「本当に新体操やるの?」
「うん。実はサーカスをやっていた時の特技を活かしてみようと思ったの。」
「そうなんだ。」
「写真部に入ったら、私の写真よろしくね。」
「いいよ。その代わり、ちゃんと頑張りなさいよね。」
放課後、入部届を出してそのまま帰りました。
帰り道、私は青葉台の駅前でスポーツ用品売り場に行って新体操の競技用具を見ました。
さすがに全部買いそろえると破産してしまうので、リボンから始めてみようかなと思いました。
それでも、いい値段していて買えるかどうかどうか微妙でしたので、その日は下見して終わりになりました。
その日の夜、父さんも母さんも仕事で帰りが遅くなると連絡がきたので、私は近所のコンビニへ行って、弁当とフルーツゼリー、ジュースを買って家に戻ることにしました。帰り道、家の近くの道端で見慣れない人形が、捨てられたように置いてありました。
人形はピンク色のロングヘアで緑色のドレスを着ていました。
近所の車の音でよく聞き取れませんでしたが、耳元で聞いてみると「・・・けて、助けて」とささやいていました。
しゃべる人形かと思って私は自分の部屋に連れ込み、背中の部分から電池を探してみましたが、見当たりませんでした。
再び人形は「助けて。」と言い出しましたので、私は「どうしたの?」と返事をしました。
そのとたん、外では公園の方角から人の叫び声が聞こえてきました。
私はあわてて玄関を出て公園の方角へと進みました。
そこには見慣れない怪物が暴れていました。
その姿は茶色いカエルの化け物になっていて、ごみを散らかしていました。
人形はまたしても「助けて」と言って私にしがみつきました。
「人形さん、あの怪物知っているの?」
「私の名前はチェリー。トイワールドからきた人形型の妖精なの。そして、あの怪物はエゴイスト帝国の幹部、ダーティ。街を平気で汚していくの。」
私は思わずダーティに向かって注意をしました。
「やめなさい!みんなが嫌がっているでしょ!」
「なんや、自分は?俺に何の用なんやゲロ?」
しかも強烈な関西弁を使ってきたので、かなりの威圧感がありました。
「ここはみんなの公園なんだから、ごみを拾って帰りなさい!」
「やかましいねん!自分に何の権限があって、こんなんが言えるんゲロ?」
「ここはみんなの公園なんだから、汚さないでくれる?」
「そんなん自分には関係あらへんやろ。俺がどこで何しようと自由やゲロ。あんまりしつこいと、こうだゲロ。いでよ、ダイメイワク!自分の相手はこれで十分やゲロ。」
ダーティは近くにいる人間を空き缶と一緒に融合させて、化け物の姿にしてしまいました。
「おい、ダイメイワク。この口やかましい小娘をちゃっちゃとやっつけるんやゲロ。」
ダイメイワクと呼ばれた空き缶の化け物は公園内で激しく暴れて、ヤジウマに来ていた人たちを次々と襲っていきました。
私は怖くなって走って逃げようとしました。
「自分、えらそうなこと言うとったわりには逃げるんかゲロ?たいしたことあらへんのやなゲロ。」
「あんな化け物とどうやって戦えと言うの?私、警察を呼んでくる!」
「待って、あの化け物は警察でもどうにでもできないの。」
「じゃあ、どうしろっていうの?」
チェリーは懐から小さなコンパクトを取り出し、私に差し出しました。
私が受け取った直後、コンパクトは手のひらサイズに大きくなりました。
「チェリー、このコンパクトは?」
「プリティコンパクトよ。」
「プリティコンパクト?」
「簡単に言ってしまえば、変身アイテムよ。」
「じゃあ、ひみつのアッコちゃんみたいに呪文を唱えれば変身できるの?」
「そんな感じかな。」
「それで私は何に変身すればいいの?」
「リトルピエロだよ。」
「これって、ひみつのアッコちゃんと同じ呪文?」
「さっきから言ってる、ひみつのアッコちゃんって何?」
「そういうアニメ。」
「とにかく私が言うように変身しなさい!まず下の部分にある赤いボタンを押しながら、『リトルピエロ・メイクタイム!』って叫ぶの。」
私はコンパクトにある赤いボタンを押しながら「リトルピエロ・メイクタイム!」と叫びました。
すると、コンパクトから強い光が出てきて私を覆いかぶさってしまいました。
光はやんで、私の姿は白と黒の道化師の衣装、白塗りの顔にドミノマスクのピエロになっていました。
「何このコスプレ!?私、いつの間に着替えたの!?」
私は何度も自分の姿を見ていました。
「おい、今がチャンスや。ダイメイワク、やってまいなゲロ。」
ダイメイワクは空き缶の形をした両手を振り回しながら、追いかけてきました。
「怖い!やっぱ警察を呼んでくる!」
私は恐怖でいっぱいになり、ひたすら逃げ回りました。
「逃げてばかりじゃダメだよ。」
「どうすればいいの?」
「戦って!」
「あんな化け物とどうやって戦えばいいの?」
「頭の中でイメージして。」
「そんなことを言われても・・・。」
「おい、今がチャンスやゲロ。あの小娘を始末するんやゲロ。」
私は公園を抜けて近くの交番まで走ろうと思いました。
「おい、どこへ行くんやゲロ?走って逃げても無駄やゲロ。」
「リトルピエロ、どこへ行くの?」
「決まっているでしょ、交番に行くのよ!」
「交番に行ってどうするの?」
「助けを求めるに決まっているじゃん!」
「さっきも言ったように警察を呼んだって無駄なんだから!」
私はチェリーに言われて再び公園に戻って、戦うことにしました。
頭の中でイメージを浮かばせながら高くジャンプしてキックをし、そのあと右手で強烈なパンチを入れました。
ダイメイワクはバランスを崩し倒れました。
「おい、どないした。何してんのやゲロ?ちゃっちゃと起き上がってやっつけろゲロ。」
ダーティは少し慌てた表情してダイメイワクに言いました。
「今よ!」
チェリーは私に攻撃を促すように言いました。
「何をすればいいの?」
「リングカッターを出して。」
「リングカッター?」
そのとたん、私の右手から赤と黄色、青のリングカッターが出てきました。
「これをどうすればいいの?」
「『リトルピエロかまいたちシャワー!』と叫んでみて。」
私は言われるままに3枚のリングカッターを構え始めました。
「レディースアーンドジェントルマン。これよりリトルピエロによる3枚のリングカッターによる不思議なショーをご覧に入れます。リトルピエロかまいたちシャワー!」
私がリングカッターをダイメイワクに向けて投げつけた瞬間、ダイメイワクは人間と空き缶に分離しました。
「次のショーも、ご期待ください。」
「なかなかやるやんけゲロ。次はそうはいかへんさかいゲロ。」
ダーティはそう言い残していなくなりました。
私は元の姿に戻って家に戻り、机の上にあったコンビニの弁当を食べ終えて、寝ることにしました。
3、 え、秘密がばれちゃった!?
次の日の放課後、私は学校の帰り道でチェリーから事情を聴くことにしました。
「ねえチェリー、昨日の化け物といい、私の変身といい、いったい何なの?」
「昨日も話したように、私はトイワールドから来た人形型の妖精で、私の世界はエゴイスト帝国の女王、モレストレイナに支配されているの。私は長老様からプリティコンパクトを預けられ、一緒に戦ってくれる人を探してきたの。」
「そうなんだね。」
「お願い、これからも一緒に戦って。」
「断る!もうあんな怖い思いはたくさんだから。どうしてもというなら、他の人を探してくれる?」
チェリーは困った顔をしました。
「私がどんな思いをして戦ったかわかる?」
「わかるけど・・・。」
「じゃあ、他の人を探してちょうだい。私はまだ死にたくないから。」
「さっきも言ったようにトイワールドは危ない目にあっているの。」
「それはもう聞いたわよ。私はあなたの救世主になれないの。このコンパクトも返す。」
私がプリティコンパクトを返そうとした瞬間、後ろから春子がやってきました。
「舞子、今誰かと話していなかった?」
「いや、誰とも話してないよ。」
「今、話し声が聞こえたけど・・・。」
私は必至に隠しました。
「ま、いいや。それより昨日の夜、公園の近くを歩いていたら、ピエロのコスプレをしてた女の子が空き缶の化け物と戦っていたから写真を撮ってきたよ。これあたしらと同い年に見えるんだけど・・・。」
「そうだね。」
私は写真を見るなり、動揺してしまいました。
「舞子?」
「何?」
「大丈夫?顔が真っ青だよ。」
「うん、大丈夫だよ。じゃあ、そろそろ帰るね。」
「まって、舞子。私に何か隠してない?」
「何も隠してないよ。」
私は必至に隠し通そうとしましたが、どうやら限界が来ていました。
「本当に何も隠してない?」
「うん。」
「じゃあ聞くけど、このピエロのコスプレをした女の子が誰だかわかる?」
「わからない。」
「わからないなら、SNSに載せても大丈夫だよね?」
「うん。」
「舞子、やっぱこのピエロのコスプレをした女の子の正体を知っているんでしょ?正直に白状しなさい!」
「実は私なの。」
「マジ!?」
「昨日空き缶の化け物を倒したのも私なの。」
「あのさ、アニメの変身ヒロインじゃないんだから・・・。」
「そのアニメの変身ヒロインのまねごとを昨日やったの。」
「なんで、こんな危ないことをしたの?」
「それは私から説明するよ。」
その時カバンに隠れていたチェリーが表れて説明を始めました。
「何、この人形!?しゃべらなかった?」
春子は驚いた表情でチェリーを見ていました。
「びっくりさせてごめんね。私トイワールドから来た人形型の妖精、チェリーなの。」
チェリーはトイワールドのこと、エゴイスト帝国のこと、舞子がリトルピエロに変身して戦うことなどすべて話しました。
「じゃあ、ダーティというカエルの化け物が、昨日のような空き缶の化け物を生み出して人々を襲うんだね。」
「ダーティは人の心の中にある自分勝手な心を利用してダイメイワクにしてしまうの。」
「例えば、それって警察では倒せないの?」
「警察や軍隊が束になっても勝てない相手だから、そのためのリトルピエロなの。」
「そうなんだね。」
「そういえば、まだ名前聞いてなかったけど・・・。」
「私、火ノ川春子。舞子と同じで横浜北女子の生徒で、家が写真館。部活は写真部に入っているんだよ。よろしくね、チェリー。」
「写真部ってことは、昨日のことをスクープにするの!?」
チェリーの顔は急に不安になりました。
「大丈夫よ。友達の秘密は絶対に守るから。それにこんな大事な秘密を私に教えてくれて、正直うれしいんだよ。だから、安心して。」
「春子ちゃん、ありがとう。」
私がスマホの時計を見て帰ろうとした瞬間、春子が私の左肩をつかんで引き止めました。
「お嬢さん、どちらへお出かけ?」
「そろそろ帰ろうかなって思っていたんだけど・・・。」
「そういえば、私がチェリーから話を聞いていた時もスマホを見てそわそわしていたよね?」
「そう?」
「そうよ!言っておくけど、これ全部あんたのことなの。あんたがそれを聞かなかったらどうするの!」
「そろそろ帰りたいんだけど・・・。」
空を見上げたら太陽が傾き始めていました。
「それもそうだね。じゃあ、続きは明日の昼休みだね。」
「うん。」
藤が丘の駅前に着いた頃には空が薄暗くなっていました。
私は時刻表で次のバスの時間を確かめていたら、20分後になっていましたので少し待つことにしました。
バスが到着して、私と春子がバスに乗ろうとした瞬間、一人の女性客が列を割り込んで乗ろうとしました。
後ろにいた人が注意に入ろうとした瞬間、またしてもダーティが現れました。
「お、ええもの見つけたゲロ。お嬢さん、列の割り込みしてまいなやで。後ろに並んどったら座られへんくなるで。順番を守る方が間違うてるんやさかいゲロ。」
女性は路線バスの化け物にされてしまいました。
「エゴイスト帝国!?」
私は思わず声をあげてしまいました。
「なんだ、あの化け物は!?」
「向こうには関西弁をしゃべるカエルの化け物がいる!」
「おい、だれか警察を呼べ!」
人々は混乱していました。
「みんな、ここは危ないから駅の方へ逃げてください!」
春子はバス乗り場にいる人を駅の中へ避難させました。
「舞子、今のうちに変身して!」
「リトルピエロ・メイクタイム!」
私はコンビニの裏へ隠れてプリティコンパクトを取り出して変身しました。
「夢と正義のリトルピエロ、ここからが私の時間よ!」
「来よったな、リトルピエロ。容赦せえへんぞゲロ。おい、ダイメイワク、リトルピエロをやっつけろゲロ。」
バスの形をしたダイメイワクはタイヤやハンドルを投げつけて私に攻撃してきました。
私は反撃ができないので、逃げ回ることしか出来ませんでした。
「おい、今のうちにリトルピエロをやっつけろゲロ。」
「リトルピエロ、何しているの。さっさと攻撃しちゃいなさいよ。」
「そうは言っても、逃げるので精いっぱいよ!」
「ダイメイワク、リトルピエロが逃げ回ってる間に攻撃を続けるんやゲロ!」
ダイメイワクの攻撃は続く一方でした。
私は止まっている車の陰に隠れて、態勢を直すことにしました。
「舞子、大丈夫?けがはない?」
「ありがとう、私は大丈夫だよ。」
「よかったあ。」
「春子もどこか安全な場所へ早く逃げて。」
「わかった。ねえ、チェリー。何かいい方法はないの?このままだと舞子がピンチだよ。」
「リトルピエロ、ジャグリングボール爆弾を投げて。そのあとにリングカッターでとどめを刺して。」
「わかった!」
その直後、ダイメイワクは私が隠れている車を持ち上げて放り投げたあと、タイヤを投げつけて私に攻撃をしようとしました。
私はとっさによけて、ジャグリングボール爆弾をダイメイワクに投げて当てました。
ダイメイワクは私の攻撃を受けて、倒れてしまいました。
「今よ、とどめを刺してちょうだい!」
チェリーは私に叫びました。
「レディースアーンドジェントルマン。これよりリトルピエロによる3枚のリングカッターによる不思議なショーをご覧に入れます。リトルピエロかまいたちシャワー!」
私はとどめを刺して女性をもとに戻しました。
「割り込みをしないで、ちゃんと順番を守ってちょうだいね。」
「ちっ、今回はこの辺で勘弁したるゲロ。やけど、次回はそうはいかへんさかい、覚悟しておくんだなゲロ。」
ダーティはそう言い残して、いなくなりました。
「しんどかったよ。」
「おつかれ。」
私は元の姿に戻って、バスで家に帰りました。
「それにしても、間近でリトルピエロを見たときには驚いたよ。」
「なんで?」
「すごく可愛くて、思わず抱きたくなった。」
「正体が私でも?」
「もしかして、機嫌悪い?」
「そんなことない。ちょっと疲れているだけ。」
「そうか、じゃあ今夜はゆっくり休んでちょうだいね。」
春子と別れて、自分の部屋に戻ろうとした瞬間、母さんが私を呼び止めました。
「舞子、ちょっと話があるから来てちょうだい。」
「明日の予習をしたいんだけど・・・。」
「すぐ終わるから。」
母さんはそう言って私を居間にあるソファに座るように促しました。
「今日遅かったけど、どうしたの?」
「部活をやって、そのあと春子ちゃんと一緒に駅前で寄り道をしてきた。」
「なんで、連絡しなったの?」
「忘れていた。ごめんなさい。」
「今日、藤が丘の駅前で化け物が暴れていたという情報が入ってきたから、もしかしたら舞子や春子ちゃんが襲われていたのかと心配していたの。」
「心配かけてごめんなさい。」
「もういいわ。こうやって無事に戻れたわけなんだし。次遅くなる時にはきちんと連絡してちょうだいね。そのためのスマホなんでしょ?」
「うん、わかった。」
「それより、ご飯は食べたの?」
「まだ。」
「余っているおかずでよければ、用意できるよ。」
「じゃあ、それでお願い。」
「今日の夕食はなんだったの?」
「今夜は野菜炒めと、ご飯とみそ汁よ。」
私は食堂で簡単に夕食を済ませたあと、風呂に入って疲れをほぐしていました。
あと敵を何体倒せば元の生活ができるのか、エゴイスト帝国の女王、モレストレイナとはどんな人なのか、それを考えていたら私は不安な気持ちになりました。
しばらく湯船に入っていたら急に眠気が襲ってきたので、私はすぐに上がってパジャマを着て自分の部屋に戻りました。
軽く予習を済ませたあと、私はそのまま眠りました。
4、 梅雨と宿題
6月に入り、中間試験を終えて、うっとうしい梅雨に入りました。
休日になるたびに外出ができず、部屋で退屈する日が多くなりました。
その日も部屋で私はスマホをいじりながら、大きなため息をついていました。
「あー、退屈。何もすることがない!」
私は部屋で大きな声をあげてしまいました。
しばらくして何かを思いついたようにプリティコンパクトを取り出して、リトルピエロに変身して、鏡の前でいろんなポーズをとって遊んでいました。
「舞子、リトルピエロに変身してどうしたの?」
「退屈だったから、変身して鏡の前でポーズをとっていたの。」
チェリーは少し呆れ顔で私を見ていました。
時間が経つにつれて、自分のやっていることにむなしさを感じてしまい、私は元の姿に戻りました。
窓から外を見ていたら、雨はやむどころか、強さを増していき、滝のように降っていました。
仕方がないので、私は台所へ行って一つだけ残しておいた、いちごジャムのコッペパンを食べようとした瞬間、カビが生えていたことに腹が立ち、悔しさが込みあがってきました。
「チェリー、リトルピエロってカビを消すことってできる?」
「もしかして、このコッペパンのカビを消したいってこと?」
「そうに決まっているじゃない!」
私は食べ物の恨みは怖いってことをチェリーの前で強くアピールしました。
「リトルピエロはダイメイワクにされた人間をもとに戻すことだけなの。」
さらに私の中で悔しさが増大していきました。
仕方がないので、おせんべいを食べて我慢をしようと思ったら、口の中でかじった瞬間にしけっていたので、またしても腹が立ってきました。
(恐るべし梅雨。食べ物が一瞬にしてダメになるとは。)
私は心の中でそうつぶやきました。
部屋に置いてあったスマホを見ていたら、春子から着信がありましたので、折り返しの電話を入れました。
「もしもし、どうしたの?」
「舞子、今どうしているの?」
「私は今日一日暇つぶしをやっている。」
「マジ?私もだよ。今から舞子の家に行ってもいい?」
「いいけど、食べ物がみんな、カビと湿気に支配されている。」
「マジ!?うちも。ケーキを食べようとしたら、カビが生えていた。」
「現代文でやった、あれをやってみない?」
「あれって?」
「わさびを近くに置く実験。」
「わさびなんか置いたらみんな、わさびのにおいがつくよ。」
「カビになるよりマシじゃない?」
「そうだけどさ、私は賛成じゃない。」
「じゃあ、今度から早めに食べた方がいいかもしれないね。」
春子は電話の向こうで苦笑いをしていました。
「そろそろ切るね。」
「うん、また明日。」
電話を切ったころには雨が弱まっていたので、私は歩いて近所のコンビニまで行って食べ損ねたコッペパンとフルーツミルクを買って家に戻りました。
居間のテレビをつけてみたら、この一週間、うっとうしい梅雨に悩まされると言っていましたので、気持ちが憂鬱になってきました。
翌日も外はジトジトと雨が降っていました。
しかも月曜日なので気分はどん底でした。
私は空色の傘を広げてバス停に向かいましたら、雨のせいか、いつもより人が多く並んでいました。
「おはよう。」
後ろから春子が声をかけてきました。
「毎日雨で、いやになるね。」
「うん。」
「昨日は踏んだり蹴ったりの一日だったよ。」
「とんだ災難だったね。」
「本当にカビだけは何とかした方がいいかもしれないね。」
「そうだね。」
「実は電話を切ったあと、パウンドケーキの近くにわさびを置いたら、母さんに嫌な顔をされた。」
「さすがにパウンドケーキの近くにわさびはヤバいよ。」
春子は苦笑いをしながら言いました。
学校に着くといつも賑やかな教室が、雨が降っているせいなのか黙々とスマホや雑誌に夢中になっていました。
「なんか教室の中、静かになってない?」
「そうだね。」
「いつも騒がしいのに。」
私と春子は自分の席に着くなり、ぐったりしていました。
「梅雨になると、テンション下がるよね。」
私はボサボサになった髪を触りながら、春子にぼやいていました。
週明けの最初の授業が体育と数学という最悪な組み合わせになっていました。
時間割表を見るなり、春子は絶望的な顔をしていました。
ホームルームが始まる数分前、廊下で同じクラスの臼井美幸さんが友達に宿題の催促をしていました。
「ねえ、頼むよ。」
「またあ?今日で何回目?」
「藤田っていう熱血馬鹿が次忘れたら罰ゲームを出すっていうんだよ。」
「そんなのやってこなかった自分が悪いんでしょ。」
「確かにそうだけど・・・。」
「悪いけどあきらめな。」
臼井さんが廊下で友達からノートを見せてもらおうとした瞬間、またしても窓からダーティがやってきました。
「自分、宿題忘れたんやろ?やったら遠慮なしに見してもらいなゲロ。」
「あなたは誰?」
「俺か?俺はダーティやゲロ。みんなの夢を叶えるためにやってきたんやゲロ。」
「でも、他人のノートを借りて写すのは迷惑になるから、大人しく罰を受けるよ。」
「そんなん迷惑ちゃう。宿題を忘れたら誰かのノートを借りて写すのが当たり前なんやゲロ。さあ、お友達からノートを借りて宿題を写しなゲロ。」
臼井さんが友達からノートを借りた瞬間、ダーティは臼井さんをノートの形をしたダイメイワクの姿にしました。
「俺様の夢はこの学校をめちゃくちゃにすることゲロ。おいダイメイワク、さっきからキャーキャー言うてる小娘たちを黙らせるんやゲロ。俺様はこの騒音のような叫び声がめっちゃ好かんのやげゲロ。」
私と春子は廊下にダーティとダイメイワクがいることに気づき、みんなを安全な場所へ避難させました。
「先生とみんなは安全な場所へ逃げてください。私と春子は助けを呼んできます。」
「気を付けるんだよ。」
私と春子はダイメイワクを廊下の突き当りまで誘導させたあと、二人で空き教室に隠れました。
「舞子、今のうちにリトルピエロに変身して。」
「うん、わかった。リトルピエロ・メイクタイム!」
私は春子に言われるまま、プリティコンパクトを取り出して、変身しました。
「夢と正義のリトルピエロ、ここからが私の時間よ!」
「来たな、リトルピエロ。今日こそ自分を倒したるゲロ。今日の戦いはギャラリーが多いさかい、倒しがいがあるゲロ。おい、ダイメイワク、ちゃっちゃとリトルピエロを倒してまいなゲロ。」
「どうしよう、ここじゃ戦えない。」
階段で降りていると、時間がない。私は思い切って2階の窓から飛び降りて校庭に向かいました。
「おい、どこへ逃げるんやゲロ。逃げても無駄やゲロ。おいダイメイワク、この小娘をちゃっちゃとやっつけてまいなゲロ。」
私は校庭の真ん中あたりで攻撃する体制に入りました。
ノートの形をしたダイメイワクは右手からシャープペンの形をした武器で私を襲い掛かりました。
短い芯が容赦なく飛んできたり、消しゴムで私の顔を消そうとしてきました。
「頑張って!リトルピエロ。」
「こんな化け物、早くやっつけて!」
校舎の窓からはクラスメイトの声援が聞こえてきました。
しかし、敵の攻撃はやむことなどありません。
ジャグリングボール爆弾を投げるにしても距離が短すぎて、できませんでした。
もう絶体絶命、そう思って私はダメ元でダイメイワクを蹴り倒すことにしてみました。
ダイメイワクは勢いよく校庭の端の部分まで飛んでいきました。
そのすきに私はリングカッターを取り出して、とどめ指す準備をしましたが、それよりも先にダイメイワクが立ち上がって、私に襲い掛かってきました。
「そうや、その調子やゲロ。リトルピエロが攻撃する前にやっつけろゲロ。」
雨がよりいっそう強く降る校庭で私はびしょ濡れになりながら、ダイメイワクと戦いました。
ダイメイワクはまたしてもシャープペンで私に攻撃をしようとしました。
私は急いでジャグリングボール爆弾を投げつけてダイメイワクを気絶させました。
「レディースアーンドジェントルマン。これよりリトルピエロによる3枚のリングカッターによる不思議なショーをご覧に入れます。リトルピエロかまいたちシャワー!」
私はリングカッターでとどめを刺して、臼井さんを元に戻しました。
「宿題は人に頼らないで自分でやるんだよ。」
私は校舎の裏庭に行って元の姿に戻って、春子のところへ行きました。
ダーティは悔しそうな顔をして何も言わずいなくなりました。
「ふう、終わった。敵が強かったから、しんどかったよ。」
「おつかれ。そういえば衣装って雨に濡れても大丈夫なの?」
「そういわれてみれば・・・。たぶん大丈夫なんじゃない?」
家に帰るころには雨も上がって空はオレンジ色に染まっていました。
「きれいな空だね。」
「うん。」
「あ、そうだ。せっかくだから夕日をバックに一枚撮ろうか。」
春子は一眼レフカメラを取り出して私を何枚か撮りました。
「舞子、かわいいポーズをとってみて。」
「こんな感じ?」
私自身、正直可愛いポーズがどんなものか、わかっていませんでしたので、適当にとってみました。
「うーん、そうだね、学校帰りだし、カバンをもって後ろから振り向くのってどう?」
私は言われたようにやってみました。
「結構いい感じに取れたから、明日学校に持っていくね。」
「ありがとう。」
翌日の朝、教室で春子が写真を用意して私に持ってきました。
「どう?」
「すごくいい感じに取れている。」
「これ、舞子にあげるから。」
「ありがとう。どうやったらきれいに撮れるの?」
「知りたい?」
「うん。」
「それは、ひ・み・つ。」
「もう、意地悪を言わないでよ。」
「わかったから、今度教えてあげるね。」
教室の中はいつもと変わらない一日が始まろうとしていました。
5、 ダイメイワクにされた春子。そして、ダーティの最後
7月に入って暑さも本格的になり、いつ熱中症になっても不思議ではない状態でした。
教室には一応冷房はかかっていますが、周りを見渡すと携帯用の扇風機を顔に当てたり、うちわでパタパタと扇いでいる人を見かけました。
「おはよう、こう毎日暑いと体が干物になっちゃうよ。」
春子は駅前で配っていたうちわをパタパタと扇ぎながらぐったりとしていました。
私が冷えた緑茶を飲んでいたら突然、大声を出しました。
「あー、自分だけズルい!」
「何が?」
「なんか、おいしそうにお茶を飲んでる!」
「あ、これ?1階の美術室の近くにある自販機で買ってきた。」
「私も買ってくる!」
春子はさっきとは別人のようになり、リオデジャネイロ五輪男子100m決勝で9秒81のタイムで1位を取ったジャマイカのウサイン・ボルトよりも早く、廊下を駆け抜けていきました。
しかし、タッチの差で緑茶は売れきれとなり、春子は自販機の前で、燃え尽きた「あしたのジョー」のように真っ白になっていました。
仕方がなかったので、春子はほうじ茶を買って我慢していました。
「緑茶売れきれになったから、ほうじ茶を買ってきた。」
「ほうじ茶も案外おいしいと思うよ。」
春子はしぶしぶとほうじ茶を飲み始めました。
「ほうじ茶もさっぱりしておいしい!」
「よかったね。」
ホームルームを終えて各教科から期末試験の答案が返ってきました。
私はかろうじて赤点を回避できましたが、春子は英語と数学、国語が赤点になりました。
しかも再試験で合格しないと夏休みは補習と聞かされ、春子の顔はムンクの叫びのような顔になってしまいました。
「今日よかったら、うちで勉強しない?」
「いいの!?」
「私も全部は無理だけど、わかる範囲でよければ、教えることができるから。」
「ありがとう!」
「でも、私だってわからないところがあるんだから、その時は先生に質問してね。」
「わかった。」
その日の放課後、春子は私の家に来て勉強道具を広げました。
「それで、どこがわからないの?」
「全部。」
「マジ!?」
「どこから手を出したらいいかわからない。」
春子は少し投げやりになっていたので、私は時間をかけて教えることにしました。
「春子、再試験っていつ?」
「来週の木曜日から再来週の月曜日まで。」
「だとすると時間がないよね。わかった、明日からの放課後と次の土日、うちに来て。その時に集中して進めるから。」
私は春子のために少し鬼になろうと思いました。
春子は悲鳴を上げつつも、なんとか私についてきたって感じでいました。
「一応私がわかる範囲のところは全部教えたから。」
「ありがとう。」
「他でわからない所があったら、先生に聞いてくれる?」
「うん。」
そして迎えた再試験、私は春子が無事合格するのを祈ることしか出来ませんでした。
再試験を終えて、春子の顔は少し気難しそうな感じでした。
「どうだった?」
「結果が来ないと何とも言えないよ。」
「よく頑張ったよ。お疲れ。」
翌日、担任の華立先生から答案用紙が渡されました。
答案用紙を見た春子は、天に舞い上がるような顔をして喜んでいました。
「どうだった?」
春子は私に答案用紙を見せました。
「合格したよ。」
「やったじゃん!」
「これで夏休みは遊び放題だよ。」
「それは違う、一応宿題も出るみたいだから。」
「マジ!?」
春子は一瞬にして天国から地獄へ落ちたような顔をしていました。
「舞子、宿題ってどれくらい出るの?」
「それは先生に聞いて。」
「間に合わなかったら、手伝ってくれる?」
「自分でやらないことを前提に進めている。少しは自分でやったら?」
春子はつまらなさそうな顔をしていました。
そして終業式当日のこです。ホームルームで通知表と一緒に分厚い宿題を渡されました。
宿題を見るなり、春子は大声を上げました。
「どうした火ノ川、大声だして。」
「先生、宿題を減らしてください。多すぎます!」
「なら各教科担当に言ってくれ。私は保健体育だから関係ない。」
「そんな冷たいことを言わないでよ。これじゃ遊びに行けないよ。」
「ちょうどいいじゃん。一学期赤点取ったことだし、これを機に宿題をするがてら復習をすればいいでしょ。」
「ええ!」
「なら宿題をやらない代わりに、毎日補習を受けてみるか?」
「遠慮しておきます。」
「なら、きちんと計画を立ててやってみろ!」
「は~い。」
春子はしょんぼりした顔で席に戻りました。
「舞子、助けてよ。こんなの一人じゃ終わらないよ。」
「じゃあ、一緒にやる?」
「いいの!?」
「その代わり、ヒントは出すけど答えは教えないからね。」
「やったー!」
「羽光、あんまり火ノ川を甘やかすなよ。」
「大丈夫でーす!」
それを聞いていたみんなは笑っていました。
「明日から夏休みに入る。予定を立てている人も多いかと思われるが、くれぐれも事故やケガ、病気にならないように。あと宿題も忘れずにやってくること。特に火ノ川、羽光に泣きつくことのないように計画的にやれよ。」
「わかっていますよ。」
「質問がなければ、今日は終わりだ。途中の登校日も忘れずに来ること。以上!」
教室や廊下ではすでに夏休みの話題でいっぱいでした。
「そういえば舞子は夏休み、予定どうなっているの?」
「私は部活と宿題かな。」
「他には?」
「特にない。」
「じゃあ、一緒に遊ばない?」
「春子、写真部は大丈夫なの?」
「大丈夫だよ。」
「部長が探していたけど・・・。」
「大丈夫だって。」
その時、学校にダーティが現れて、春子の耳元で何かささやきました。
「なあ、部活も宿題もめんどいさかい、やりたないよな。部活はさぼったらええし、宿題なんて、最終日に誰かの写さしてもらいなはれゲロ。夏休みは長いんやし、好きなように過ごしとっても誰にもやかましゅう言われへんゲロ。」
なんと、春子とダーティが一つになり、ダイメイワクの姿になってしまいました。
しかも強さも桁違いになっていて、どうすることもできませんでした。
「なあ、どないした。変身せえへんのかゲロ?それともみんながおるさかい、でけへんのかゲロ?」
「こっちに来なさい!」
私はみんなのいない旧校舎の入り口まで誘導させて、変身しました。
「リトルピエロ・メイクタイム!」
「リトルピエロ、ここが自分の墓場と選んやわけやなゲロ?」
強さは今までのダイメイワクよりの数倍、あるいは数十倍もありそうな感じでした。
しかも春子が吸い込まれているので、うかつに手を出したら、春子の身も危なくなると判断しました。
「どないした、リトルピエロ。戦わへんのかゲロ?なら、こっちから攻めるゲロ。」
ダーティは容赦なしに私に攻撃してきました。
私はよけて、かわすのが精いっぱいでした。
どうしたらいい?そう思った瞬間、何かを思いついたようにジャグリングボール爆弾を取り出しました。
(春子、少しだけ痛いのを我慢して。今すぐ助けてあげるから。)
私は心の中で、そうつぶやいて投げつけまたが、効きませんでした。
「この程度の攻撃で俺を倒したつもりやったゲロ?甘いんやゲロ。こんな子供だましの攻撃で倒そうなんて、10年早いでゲロ。」
ジャグリングボール爆弾が効かないなんて、ありえない。
「チェリー、どうしたらいい?」
「赤鼻閃光弾でダーティの目をくらますことができるはず。」
「わかった、やってみる。」
私は、ダーティにめがけて投げつけてみました。
「くらいなさい、強烈な光を。」
「無駄無駄、今の俺様に何やっても無駄やゲロ。」
その瞬間、閃光弾がダーティの目に直撃して暴れ始めました。
「なんや、この光は?まぶしいゲロ。めっちゃ目ぇ開けられへん強烈な光やゲロ!」
今がチャンス!そう思ってリングカッターを取り出しました。
「レディースアーンドジェントルマン。これよりリトルピエロによる3枚のリングカッターによる不思議なショーをご覧に入れます。リトルピエロかまいたちシャワー!」
3枚のリングカッターはダーティにめがけて飛んでいきましたが、ダーティはよけきれず、もろに直撃して消滅し、春子が出てきました。
「春子、けがはない?」
「うん、大丈夫だよ。」
「本当に?保健室に行かなくて大丈夫?右足から血が出ているよ。」
「そんなの家に帰って手当をすれば大丈夫だって。」
「ばい菌入ったら大変だから、今すぐ保健室へいこ。」
「わかったよ。それより言いたくはないけど、いい加減変身解いた方がいいんじゃない?」
「誰のせいで変身したと思っているの?」
「それもそうだよね。ごめん、保健室へ行こうか。」
私は変身を解いて、春子を保健室へ連れていき、傷の手当てをしました。
「終わったよ。」
「ありがとう。」
「帰ろうか。」
帰り道、炎天下に耐え切れなくなり、近所のコンビニへ立ち寄り、アイスを買い食いしました。
「舞子、これってアイスチョコモナカ?」
「そうだよ。春子のはチョコミント?」
「うん。」
「チョコミントって味どう?」
「なんか、歯磨き粉を食べている感じ。」
「そうなんだね。」
私と春子はベンチでアイスを食べながら涼んでいました。
「私、明日から毎朝一緒に宿題をしたいと思っているから、舞子の家に行っていい?」
「いいけど、部活の日は勘弁してね。」
「私、ダーティと一緒にされた時、少し反省したから。」
「そうなんだ。」
「舞子を見習って、明日からちゃんと頑張るよ。」
「そんなことを言っても、何も出ないよ。」
明日から楽しい夏休みが始まろうとするのと同時に、これから私たちの街がモレストレイナによって支配されるとはその時は誰も思ってもいませんでした。
6、 モレストレイナの登場、藤が丘大パニック!
夏休みが始まって10日が経ち、私と春子はいつもと変わりのない生活を送っていました。
今日も春子が勉強道具を用意して私の部屋で宿題をやっていました。
「舞子、この平方根の計算の解き方を教えて。」
「これは、√(ルート)の中の数字が一緒だから、そのまんま計算できるよ。」
「ありがとう。」
その後も他の計算問題も順調に解いていきました。
一段落がついたので、冷えたジュースとチョコレートで一休みをすることにしました。
「舞子、このチョコ、少し硬いよね。」
「うん、冷凍庫で冷やしたから。」
「冷やすなら、冷蔵庫でいいんじゃない?」
「不満があるなら、食べなくていいよ。」
「いや、そういうつもりで言ったわけじゃないから。」
「冗談。」
「舞子が言うと、マジに聞こえるから、ちょっと怖い。」
休憩を済ませて残りの時間で宿題を終わらせることにしました。
時計を見たら、すでに夕方6時を回っていたので、春子は帰る準備を始めました。
「春子、帰るの?」
「うん、今日は疲れたから残りは明日にするよ。」
「ごはん、うちで食べていったら?」
「そうしたいけど、この時間母さんが作っているはずだから。」
「そうか、じゃあ無理強いはできないよね。じゃあまた明日。」
「うん。」
春子は少し疲れた顔して、家に帰ってしまいました。
夕食を済ませて風呂に入った後、居間で新聞のテレビ欄を見ていたら、夏休みの特別番組をやっていると書いてあったので、アイスを食べながらテレビを見ることにしました。
次の日、春子が勉強道具を抱えて私の家に向かっているときのことでした。
真夏の炎天下だというのに、フードを被った黒マントの女性が住宅街の中を歩いていました。
すれ違う人々は黒マントの女性をじろじろと見つめていました。
「お母さん、このおばさん、黒いマントを着ているよ。」
「しっ、見ちゃだめ。」
指さして見ていた男の子に母親が注意して、そのまま手を引いていなくなってしまいました。
マントを着た女性は、近所の児童公園でベンチに腰かけているおじいさんに声を掛けました。
「そこの老人、つかぬ事を聞くが、この近くで白と黒のピエロの格好をした女の子を見かけなかったか?年は16歳あたりと見たんだが・・・。」
「いや、知らんな。ピエロって、この近くでサーカスでもやっているのか?」
「いや、そうじゃない。」
「普通はサーカスでもないのに、ピエロの姿になってうろつく人なんていないだろ。」
「老人のおっしゃる通りだ。時間を取らせてすまなかった。」
黒マントの女性はそう言い残して、いなくなってしまいました。
その数分後、黒マントの女性は春子と遭遇しました。
「そこのお嬢さん、この近くでピエロの姿をした16歳の女の子を知らないか?」
「いえ、知りません。」
「そう。もし見かけたらここに連絡してくれないか?」
黒マントの女性は春子に連絡先が書いてあるメモを渡したあと、不気味な笑みを見せながらいなくなってしまいました。
春子は何かを感づいたように、急ぎ足で私の家に向かいました。
部屋に入るなり、春子は険しい表情で私に何か訴えかけようとしてきました。
「さっき、コンビニの近くで黒マントを着た怪しい女性に『ピエロの姿をした女の子を見かけなかったか?』と尋ねられた。でも私はとっさに『知らない』と返事したけど、間違いなく舞子のことだったよ。しかも、別れ際に不気味な笑みを見せていた。」
「もしかしたら、モレストレイナかもしれない。」
「モレストレイナって、エゴイスト帝国の女王だよね?なんで、ここにやってきたの?」
「たぶん、モレストレイナ自らが攻撃に入ると思うの。」
「だとすると、戦闘も今までよりハードになるから気を付けた方がいいよ。」
「もちろん、覚悟はできているよ。」
「私は変身して戦うことができないから、その分たくさん応援するよ。」
「ありがとう。じゃあ、早く宿題終わらせよ。」
「うん。」
夕方になり、宿題を終えて帰ろうとした瞬間、空の色が紫色に染まっていました。
「おい、こんな空見たことがないぞ!」
「空が急に紫色になった!」
「ただの異常気象じゃないぞ!」
人々は空を見上げるなり、珍しがってスマホで写真を撮っていました。
「舞子、これってもしかしてモレストレイナの仕業かも。」
「うん・・・。」
私と春子は外の様子を見に行きました。
すれ違う人たちは正気を失っていました。
「大丈夫ですか?しっかりしてください。」
私と春子は次々に声をかけていきましたが、すでに反応がなくなっていました。
数分後にはダイメイワクの姿になってしまい、街の中を徘徊するようになってしまいました。
「やっぱり、こうなったか。」
チェリーはその時を恐れていたような言い方をしていました。
「チェリー、やっぱりって、どういうこと?」
私は少し不安げな感じで聞いてみました。
「私の住んでいるトイワールドもモレストレイナが住人たちをダイメイワクの姿にしていったの。」
私と春子は何も言えず、そのまま聞いていました。
空は次第に濃い紫色になり、街全体が地獄へと変化していきました。
「舞子は今すぐ変身して。私は無事な人間を安全な場所へ避難させるから。」
「春子、お父さんとお母さんも忘れずに。」
「わかった。」
私はプリティコンパクトを取り出して変身して、春子と一緒に行くことにしました。
「舞子、なんでついてきたの?」
「やはり、両親のことが気になるから。それにモレストレイナと戦うのは後回しにできるし、まずは両親を避難させることが優先よ。」
「そうだね。」
「春子、私の家に地下室があるの。そこにおじさんとおばさんを隠すことができるはずだから。」
「そうさせてもらえると、助かる。」
春子は私を連れて自分の家へと急ぎました。
玄関に着くとドアを強めに開けて、部屋の中へ入っていきましたが、誰もいませんでした。
春子の頭の中は「不安」の二文字でいっぱいになりました。
最後に向かったのは寝室だけとなりましたが、やはり誰もいませんでした。
今度は店の中へ入り、奥の撮影スタジオへ向かいました。
「うわあ、勘弁してくれ。って春子か。」
「ここにいると危ないから、安全な場所へ避難しよ。」
「安全な場所っていうと?」
「友達の家の地下室。そこなら絶対に大丈夫だから。」
「友達って?」
「初めまして、私リトルピエロこと羽光舞子。春子ちゃんのお友達です。」
「舞子ちゃん?春子からよくあなたのことはよく聞かされていたわ。これからも娘のことをよろしくお願いします。」
「いえ、こちらこそ。」
「母さんも舞子も挨拶は後回しにして、早くにげよ。」
春子は私とおばさんの手を引いて、逃げるよう促しました。
横で見ていたおじさんは少しいらだった顔をして、この光景を見ていました。
「お前たち、何をしてるんだ!早く逃げるぞ!」
行く先々はダイメイワクにされた人たちでいっぱいでしたが、それを全部相手となるときりがないので、極力無視して逃げるようにしました。
なんとか逃げきれて家に着き、私はみんなを連れて地下室へと向かいました。
地下室は少し広く作られていて、6人いても余裕があり、中へ入ってみると、すでに父さんと母さんが奥で隠れていました。
「おい、誰だ!」
父さんが少し震えた声で言ってきました。
「突然お邪魔して申し訳ありません。私、火ノ川春子の父で和也と申します。この近くで写真館をやっている者です。」
「同じく、妻の浩美と申します。娘がいつもこちらでお世話になっています。」
「いえ、こちらこそ。私は・・・・。」
「お父さん、自己紹介は後回しでいいから。」
「誰なんだ、お前?」
「自分の娘に向かって『誰なんだお前?』はないでしょ?」
「もしかして、舞子!?」
「そうよ。」
「なんで、こんな姿になっているんだ?」
私は変身していたことをすっかり忘れてしまい、いつものペースで会話を進めてしまいました。
「こんな姿って、いつもの普段着だよ。」
「お前、こんな格好で近所を歩いていたのか?」
「舞子、鏡を見て。」
私は春子に言われるまま、地下室の奥にある鏡で自分の姿を見ました。
そこで初めて自分が変身したことに気が付き、思わず大声をあげそうになりました。
私はみんなに今までのことをすべて打ち明けました。
「じゃあ、舞子ちゃんが『リトルピエロ』に変身して、エゴイスト帝国からやってきたダーティというカエルの化け物や、その手下のダイメイワクっていう化け物をやっつけてきたのか。そこに役立たずで無能な春子が舞子ちゃんのサポートをしてたというわけなんだね。」
「『役立たずで無能』は余計でしょ!」
「現に店の手伝いも満足にできない人間がそれを言うか?」
「まあまあ、喧嘩はこの辺にしておいてください。」
父さんはあわてて止めに入りました。
「私、そろそろ行くね。」
「まって、どこへ行くんだ?」
父さんは私の手首をつかんで止めに入りまた。
「モレストレイナを倒して、元の日常を取り戻してくる。」
「こういうのって警察に任せるのは無理なの?」
母さんは心配そうなまなざしで私を見ていました。
「正直、警察がどうこうできるレベルではないの。」
「じゃあなおさらよ。警察が倒せないなら、母さんは反対。そのモレストレイナと戦って勝てなかったらどうするの?」
「舞子ちゃん、お母さんの言う通りよ。もしかしたら、敵の方から撤退するかもしれないから。」
「それはないです。敵の目的はこの街全体を支配することなんです。」
「おじさん、こういうのに疎いから何とも言えないけど、目の前の現実はテレビの特撮とはわけが違うの確かだ。舞子ちゃんがモレストレイナを倒して元の世界に戻したい気持ちもわかるが、みんなも心配しているわけだし、ここは従うっていうわけにはいかないのか?おい、春子、お前からも言ってやれ!」
「舞子、お願い。今すぐモレストレイナを撃退してきて。」
「だから、お前は無能なんだよ!友達を危ない目に合わせるバカがどこにいるんだ!」
「じゃあ、父さんはこのまま『敵におびえた生活を送れ』と言うの?」
「そんなことを言ってない!」
「舞子を行かせないってことは、そういうことなんでしょ!舞子今すぐ行って!私、舞子が無事に戻ってくることを信じているから!」
「春子、ありがとう。おじさん、おばさん、お父さん、お母さん、勝手を許してください。モレストレイナは私が責任もって撃退してきます。」
私はみんなの前で軽くお辞儀をして地下室を抜けて、チェリーと一緒にモレストレイナのアジトに向かいました。
7、 モレストレイナとの決戦、そしてエンディング
モレストレイナは藤が丘のはずれにある古いアパートに身を構えていました。
周りの人たちはすでにダイメイワクにされて、まとに戦えそうにありませんでした。
「待っていたぞ、リトルピエロ。こっちは待ちくたびれた。」
「モレストレイナ、ここがあなたのお墓よ。」
「面白いことを行ってくれるじゃないの。お墓に入るのはお前の方だ!」
最初に攻撃を仕掛けたのはモレストレイナでした。
モレストレイナは私の顔に強烈なパンチを食らわせましたが、こんなのはまだあいさつ代わりにしかすぎませんでした。
「どうした。私ばっかじゃ、つまらないから、お前からもかかってきなさいよ!」
私も反撃をつづけましたが、正直なかなか歯が立ちませんでした。
もうお手上げかと思った瞬間、私は赤鼻閃光弾を投げつけようとしましたが、まだ作戦があるかもしれないと思って、もう少ししてから投げようと思いました。
私が辺りを見渡して武器になりそうなものを探している間、モレストレイナは自分の髪の毛を一本抜き取り、それを剣のようにビュンビュンと振り回していました。
「さあ、お嬢ちゃん、逃げても無駄よ。覚悟をなさい!」
モレストレイナは髪の毛で作った剣を私にめがけて切りつけようとしました。
私はよけて逃げるだけで精いっぱいでした。
その直後、階段近くにあった竹ぼうきを見つけたので、私はほうきを持って心の中で自分が使いたい武器をイメージしてみました。しばらくすると、ほうきは薙刀の形となって出てきました。
私はそれをモレストレイナにめがけて攻撃しましたが、なかなか当たりませんでした。
「どうした、お嬢ちゃん。こんな攻撃では私を倒せないよ。」
モレストレイナは余裕の表情で私の攻撃をよけていきました。
どうしたらいいか悩んでいたら、赤鼻閃光弾を持っていたことに気が付き、それをイチかバチかで投げつけてみようと思いました。
「くらいなさい、強烈な光を!」
私はモレストレイナにめがけて投げつけました。
「こんな小さなゴムまりで、私を倒せると思ったの?」
赤鼻閃光弾はモレストレイナに直撃し、そのまま強い光を出しました。
「なんだ、この光は!?」
さらに私はもう一つ赤鼻閃光弾をモレストレイナに投げつけました。
「うわあ、目が!」
モレストレイナは目を押さえて暴れていました。
「おのれ、何をしやがった!」
「リトルピエロ、今よ。リングカッターでとどめをさして!」
「モレストレイナ、あなたの最後よ。覚悟なさい!」
私はリングカッターを取り出してとどめを刺す準備にかかりました。
「レディースアーンドジェントルマン。これよりリトルピエロによる3枚のリングカッターによる不思議なショーをご覧に入れます。リトルピエロかまいたちシャワー!」
モレストレイナは絶叫をあげて苦しんでいましたが、なぜか消滅せず体をピクピクさせながら動いていました。
私はモレストレイナが作った髪の毛でできた剣を使い、心臓めがけて最後のとどめを刺して消滅させました。
その直後、空は明るくなり、雲一つない快晴になりました。
ダイメイワクにされた人たちも元に戻り、街は平和に戻りました。
私は変身を解いてないことを忘れて、そのまま家に戻りました。
「舞子、おかえり。けがはなかった?」
「私は大丈夫だよ。」
「平和になったところ、申し訳ないんだけど、いい加減変身を解いた方がいいよ。さもないと近所の笑い者にされるから。」
それを見ていた大人たちは笑っていました。
それからというもの、私と春子はこの長い夏休みを宿題や部活、遊びなどに費やしていきました。
夏休み最後の日曜日、私は父さんがやるマジックショーのチケットをもらったので、春子と一緒に新宿まで向かいました。
さすが東京となると人の数も多く、いつはぐれても不思議でない状態でいました。
私と春子は手をつないで歌舞伎町にある古い劇場に行きました。
受付でチケットを渡して中に入ってみたら、すでに何人か人が集まっていました。
時間になり、父さんはみんなの前であいさつをしたあと、早速マジックを始めました。
定番のシルクハットとステッキを使ったマジックから始まり、コインをコップに貫通させたり、トランプのマジックを披露していきました。
「さて、次のマジックは新聞紙を使ったマジックです。こちらの新聞紙は今朝駅前で買ってきた神奈川報道新聞です。こちらを破いていただきたいのですが、誰にしましょうか・・・・。」
父さんは私の方に目を向けて助手に迎えに行かせました。
「今日は私の娘に手伝って頂くことにします。では、破いていただく前に一面の記事を読んでいただきましょう。」
「父さん、見出しから?」
「当たり前だろ、早く読め。みんなが待っているんだから。」
「カンダ首相、ゴウに出発・・・。ゴウってどこ?」
「菅田だ。それと濠と書いてオーストラリアだ。早く続きを読め。」
「菅田首相は9月15日に特別専用機で成田から出発。」
「結構だ。帰ったら漢字の書き取りと新聞の感想文を書かせるから、そのつもりでいろ。」
客席から笑い声が聞こえてきました。
私が客席に戻ろうとした瞬間、「おい、待て。」と父さんに呼び止められました。
「何?」
「『何?』じゃないだろ。早く新聞を破け。」
「あ、そうだった。」
私は父さんに言われるままに新聞を破いていきました。
「これでいい?」
「また、ずいぶんと派手に破いたな。結構だ。席に戻れ。」
父さんは破いた新聞紙を丸めて、再び広げましたら、元の新聞紙に戻っていました。
すると客席から大きな拍手が送られました。
その後も父さんのマジックが続いて、終わったのが夕方近くになっていました。
帰る前、私は父さんに会って、一言挨拶を済ませることにしました。
「父さん、お疲れ間様。」
「どうもな。それと言いたくはないけど、新聞くらいきちんと読んでおけ。あんな読み方をしていたら、いい笑い者だぞ。」
「すでに笑い者にされました。」
「春子ちゃん、すまないが舞子のことをお願いしてもいい?」
「わかりました。」
「じゃあ、二人とも気を付けて帰るんだぞ。」
私と春子は父さんと別れて新宿駅に向かおうとしていた時でした。
「舞子ちゃーん!」
後ろの方で聞き覚えのある声が聞こえてきました。
「舞子ちゃんだよね?」
「種田さん、お久しぶりです。」
「舞子ちゃん、今日はお友達と一緒?」
「そうなんです。」
「種田さんはお休みですか?」
「まあね。明日から東京ドームで講演があるんだよ。よかったら見に来て。これ無料の招待券。」
「ありがとうございます。」
「舞子ちゃんは今何をしているの?」
「学校で新体操をやっています。明後日から合宿なので忙しくなります。」
「そうか。無理だけはするなよ。それじゃ。」
種田さんはまだ27歳で、今は天空大サーカスに所属していますが、とてもしっかりしていて、私とサーカスをやっていた時から面倒見がよかった人です。
種田さんと別れた後、私と春子は電車に乗って家に帰っていきました。
翌日、種田さんからもらったチケットを持ってサーカスを見たあと、その帰りに合宿の買い物をしました。
今回は客席から見るだけとなりましたので、大会には出られませんが、今回の合宿は全員参加となりましたので、私も一緒に参加することになりました。
夏休みが終わり、秋のインターハイに向けての猛特訓が続きました。
そして季節はあっという間に過ぎ去っていき、気が付けば春休みを迎えていました。
今日はチェリーとお別れの日でした。
「舞子、今までありがとう。」
「チェリーも元気でね。」
「うん。」
「落ち着いたら、トイワールドに遊びに行くから。」
「待っているね。」
チェリーは部屋の窓から空にめがけて飛んでいき、雲の中へと消えていきました。
翌日、私は部屋の中を整理していたら、プリティコンパクトが出てきました。
「そういえば、この変身アイテムってどうなったんだろ。チェリーがいなくなったら使えなくなるのかな。」
私は試しに変身してみることにしました。
「リトルピエロ・メイクタイム!」
鏡を見たら一応変身ができていました。
その直後、玄関でドアチャイムが鳴ったので、私はそのままドアを開けてみましたら、そこには春子がいました。
「あ、春子。いらっしゃい。」
「あんた、ついにコスプレに目覚めたんだね。」
「違うって。」
「衣装が買えないからと言って、リトルピエロに変身するのは反則じゃないの?」
「だから、違うって。チェリーがいなくなったあとも変身ができるかどうか、試しただけ。」
「一応言っておくけど、ドアの前にいたのが私だったからいいけど、もし近所の人や配達業者だったらどうする?」
「ちょっと恥ずかしいかも・・・。」
「そういう意味もあるわけなんだし、むやみに変身して玄関のドアを開けない方がいいよ。」
「気を付けるよ。来てもらってそうそう申し訳ないんだけど、実はおじさんにお願いがあるんだけど・・・。」
「何?」
「実はこの姿で記念写真撮ってほしいと思ったの。」
「それは構わないけど、出歩くなら一度変身解いてちょうだいね。」
私は一度変身を解いて、春子と一緒に写真館へ向かいました。
「ただいまー。」
「あれ、今日舞子ちゃんの家に行ったんじゃないの?」
「実は舞子が撮影の依頼をしてきたから。」
「こんにちは。」
「いらっしゃい。撮影の依頼なんだって?どんな写真を撮ってもらいたいの?」
「実はリトルピエロの姿で撮っていただきたいのですが・・・。」
「OK!じゃあ、まずは着替えてきなよ。春子、隣の更衣室に連れて行ってやれ。」
春子は隣の部屋のドアを開けて、私を入れました。
「ここで変身して。」
「うん。」
私はプリティコンパクトを取り出して、変身を始めました。
その後、スタジオに戻ったのですが、背景が無地の青からニューヨークのスラム街風の背景に変わっていました。
「せっかくだし、少し雰囲気出した方がいいと思って・・・。」
「ありがとうございます。」
「じゃあ、何枚か撮るから適当にポーズとってくれる?」
「ポーズって言われても・・・。」
「すまない、おじさんもポーズの指示って、うまく出せないんだよな。おい、春子。お前ならわかるだろ。舞子ちゃんにポーズの指示をしろ!」
春子は私にいろんなポーズの指示を出して、おじさんがシャッターを押していきました。
「お、いいね。おい、春子、奥の部屋からトランプを用意しろ。」
春子は私にトランプのカードを何枚か持たせてポーズをとらせました。
「かわいいよ。」
撮影が終わって、写真が出来上がったのが夕方近くになっていました。
「一応、CD-Rに焼き付けておいたから、あとで自分で見てね。」
「ありがとうございます。あと、もう一つお願いがあるのですが・・・。一枚、L版に引き伸ばしていただきたいのです。」
「それで、どのポーズにする?」
「このトランプを持ったポーズをお願いします。」
「じゃあ、少しだけ待ってくれる?」
待つこと15分、おじさんはL版に引き伸ばした写真をフレームに入れて私に手渡してくれました。
「ありがとうございます。それでお値段は?」
「本当は5000円って言いたいんだけど、今日だけ特別2000円に負けておくよ。」
「ありがとうございます。」
「これからも春子のことを頼むよ。」
「いえ、こちらこそ。」
「春子、家まで送ってやれ。あと荷物運びもしろ。」
私は春子と一緒に家に向かいました。
「今日はありがとう。」
「また撮ってもらいたい写真があったら、うちに来て。」
「明日うちに来る?」
「気が向いたらね。」
「じゃあね。」
春子と別れた後、私は写真館で撮ってもらったL版の写真を見ていたら、可愛くきれいに写っていたので、部屋に飾ることにしました。
その日の夜、私はプリティコンパクトを鍵のついた金属の小さな箱に入れてクローゼットの奥へしまいました。
リトルピエロ、いままでありがとう。
新学期が始まって、私は2年生になり、部活では1年生の指導に当たるようになりました。
写真部では春子は1年生のおもちゃにされていて、「先輩」というより「友達」という扱いを受けていました。
桜の花が散り終わり、新緑の季節が始まるころ、学校も街も笑顔のあふれる平和な日々を過ごしていました。
おわり
みなさん、今回も最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
今回は久々に変身ヒロインのお話を書かせていただきましたが、みなさんはどのような感想をお持ちだったでしょうか。
さて、今回は本編で大活躍でした、リトルピエロこと羽光舞子さんにお越し頂きましたので、早速インタビューをしてみようと思います。
「お疲れ様です。」
「ありがとうございます。」
「変身をされた時、いかがでしたか?初めて戦った時、どんな気分でしたか?」
「正直『何このコスプレ!?』と思いましたが、友達の春子から可愛いと言われて、少しだけうれしくなりました。敵は正直怖かったです。逃げたい気持ちでいっぱいでしたが、リトルピエロになった以上戦わなくてはならないと思いました。」
「今、ここで変身して頂くことは可能ですか?」
「不可能です。可能でもお断りします。」
「そうですよね。失礼しました。今回、街の人や学校のクラスメイトがエゴイスト帝国によって、ダイメイワクにされました。彼らは身勝手な行動でそうなりましたけど、そんな彼らに何か伝えたいことはありますか?」
「私はマナーを守れない人、自分さえよければ周りの迷惑なんかお構いなしと思っている人は最低だと思っています。皆さんにはマナーを守れる人間になってもらいたいです。」
「最後に読者の皆さんに一言メッセージを。」
「最後まで応援していただきまして、ありがとうございました。またどこかでお会いできることを楽しみにしています。」
「ありがとうございました。」
「失礼します。」
舞子さんも言っていたのように他人に迷惑をかける人は最低だと思っています。
そういった人はエゴイスト帝国によって、ダイメイワクにされてしまうので、気をつけましょう。
それでは次回の作品でお会いできるのを、楽しみにしています。