第7話 魔物の軍勢
敵軍の奥深くまで入り込んでいったキュロスは指揮官の能力の高さに舌を巻いていた。前方に歩兵として替えの利くランクの低いゴブリンやオーク、右翼と左翼に急襲をかける為の足の速いウルフ系や武器を持った魔物、後方には知能が高く魔法で応戦できるゴブリンメイジやオークメイジ、そして中央には指揮官を守るための強い魔物が配置されている。中央の魔物は並みの冒険者が束になっても勝てるかどうかと言ったところか。前方の魔物が全滅した時にそいつらが街に攻めこんでくるのが一番不利になるな。そう考えたキュロスは先に中央を制圧するかと動いた。その時だった。
「「「あおえうsけhヴぉsyヴぁっづ」」」
後方のメイジ達が一斉に独自の詠唱を始め、門付近に魔法陣が出現した。その魔法陣から大量に魔物が現れたのだ。
「メイジは召喚要員だったか。」
もちろんそれだけでなく攻撃魔法も使っているが、主な役割は魔物の召喚、あるいは別の場所にいた魔物をこの場に呼び寄せることだったか。この調子で魔物を呼ばれ続ければ街は魔物の手に落ちるだろう。一刻も早く指揮官を倒さなければ。
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魔物に囲まれたテントの中で1人暇そうに椅子にふんぞり返って欠伸をする人間がいた。魔物の指揮官だ。フードを目深にかぶって、黒を基調にしたアーマーを要所用所に着込み、これまた漆黒のマントをたなびかせている。腰には魔剣と呼ぶような剣の形をした何かを帯びており、世界が違えば「うわぁ...あの人いい年して厨二病だ...」と周りから引かれてもおかしくない格好をしていた。
「どう思う?」
「・・・」
配下の魔物に尋ねたが人語を理解しえない魔物から返事はなかった。
「はぁ~、ほんと嫌になるよ。」
額に手を当て大げさにため息をついた。
「こんな街にお目当ての人間がいるとは思えないけど、我れらが主の命なら仕方がない。もうここに居るのも飽きたから一気に潰しちゃって。もしいるならそれで出てくるだろ。」
魔物たちにペタ殲滅の命を下し伝令用の魔法を飛ばそうとしたとき、外が騒がしくなった。
「なんだよ~、今から昼寝しようと思ったのにこんなに騒がしくちゃ寝れないじゃんか~。」
文句を言おうと外に出たとき、彼女を守る4体の魔物の内の1体の体が斜めにずれ、一拍遅れて噴水のように血を噴き出して倒れた。
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他の雑魚とは格の違う4体を見つけたキュロスは同時にテントから禍々しい気配を感じた。
「恐らくあの4体が幹部でテントの中の奴がこの群れの指揮官か。さすがに幹部はいい装備をしてるな。同時にやるのは少しきつそうだ。まずは幹部だ。」
そして眼にもとまらぬ速さで近づき1体を袈裟懸けに斬った。厚い鱗と筋肉を纏いさらにその上から鎧を着込んでいたがキュロスの剣技と名工の手によって作られた剣の前では熱したナイフでバターを切るのと同じだった。
「は?」
気の抜けた声が聞こえた。そちらを見ると真っ黒で香ばしい雰囲気の漂う恰好をした人物がいた。
・・・
・・・
・・・
・・・見なかったことにしよう。あんな感じで拗らせたまま成長する人間もたまにいる。自分にもそんな時期があったとか思ってない。断じてない。今は目の前の敵を倒すのが先だ。剣を構えなおすと槍を持ったケンタウロスが前に出た。どうやら1体ずつやるつもりらしい。舐められているのかそれともそういうルールでもあるのか。さっきのを見て知能があるのなら舐められているということはない、いやあれか?「そいつは四天王の中でも最弱!!」みたいなやつか?そうこうしているうちにケンタウロスが、槍を構えて突進してきた。いなして反撃を―――
「コフッ、そう来たか。」
いつの間にか背後に回り込んだオーク―――毛並みがよくでっぷり太っているからオークキングか―――が剣を鳩尾を狙って突き刺した。貫通した剣は赤黒くぬれ、血が滴り血だまりを作っている。内臓がどこかやられたらしい。血が喉をせり上がってくる。傷を負ったのは久しぶりだ。最近じゃ滅多なことではケガなんてしない。仕方ない。本気でやろう。
「グッガァァァァァ!!!!」
その瞬間その場にいた魔物は怖気づいた。本能でこの人間には敵わないと悟った。いやそもそも人間であるかすら疑わしい。なぜなら人間ならほんの一瞬目を離したすきに首を飛ばされるなどあるはずがない。剣で貫いた傷が一瞬で塞がることなどあるはずがない。気配だけで怖気づくなどあるはずがない。
「これで終わり。」
キュロスはそう呟いた。キュロスが本気を出して数秒でペタを攻めた魔物約1200体の首が地に落ちた。
いやーキュロスにも厨二病の時期があったんですねー(棒)
・・・
・・・
・・・すまん何も思いつかなかったんや...
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