第5話 スタンピード
「仲間が行方不明って酷い...」
「今も行方不明の仲間は見つかってないんだ。キュロスが旅を続けているのはいなくなった仲間を探してるのかもな。」
「あたしキュロスを探してくる。」
ナヴィは立ち上がって出て行ったキュロスを追いかけようとギルドを出ようとした時、大慌てで入ってきた男とぶつかった。
「痛てて...大丈夫?」
「自分は大丈夫であります。それよりもギルドマスター殿はおられますか!」
ナヴィと正面衝突した男は鼻をぶつけたのか鼻血をダラダラと流しながらギルドマスターを呼んだ。
「マスターは俺だが、何かあったのか?」
少し困惑した様子のマスターが尋ねた。
「自分は衛兵隊の者であります。早急にお伝えすべき案件が発生したので冒険者ギルドに伺ったのですが...」
衛兵はそこで一旦言葉を切ると、鼻に手をやった。
「ハンカチかなにか貰えませんでしょうか?」
やはり鼻血が流れ続けているのが恥ずかしかったのかそう言った。気の利く職員が奥から布切れを持ってきて彼に渡した。
「・・・ありがとうございます。」
彼は布切れを受け取って鼻にあてると要件を言った。
「スタンピードが発生しました。」
その言葉に一部を除いて酒場に居たほとんどの冒険者が騒ぎ出した。
「おい、スタンピードだと?」
「どっから出てきやがった?」
「本当にスタンピードなんか起きてんのか?酔った誰かが見間違えたんじゃねぇのか?」
「おめーより酔ってるやつはいねーよ。」
「静まれっ!」
マスターの一喝で酒場は水を打ったように静まりかえった。そして気合を入れるかのようにこう続けた。
「お前らは何者だ?ビービー泣くしかできん赤ん坊か?それともせっかくのチャンスをふいにする腰抜けか?もしそうなら冒険者辞めて別の仕事探せ!そうでないならさっさと支度して魔物共を迎え撃て!!!」
マスターの言葉にハッとした冒険者達はすぐさま魔物を迎え撃つ準備を始めた。こっそり逃げだした者もいたが、誰も気にしなかった。
「マスター!」
ナヴィがマスターに向かって呼びかけた。
「どうした!」
元はそこそこ名の知れた冒険者だったマスターは自分も戦う準備をしながら答えた。
「キュロスを呼んでくる!」
「そうか!分かった!」
そこら中から聞こえる騒ぎ声で聞き取りづらかったがなんとか答えた。返事を聞いたナヴィはキュロスを呼びに外へ走って行った。
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「・・・来た!」
ギルドに報告があってから30分も経っていなかったが、門の上に立っていた衛兵が魔物の群れがあげる土埃を目にした。
「クソッ!早すぎる!こっちはまだ準備が整ってねぇってのに。ナヴィはキュロスを見つけられたのか?」
マスターが叫ぶと
「大丈夫だよ!ちゃんと言ってきたから。」
「うぉっ!お前戻ってたのか?!・・・そうか!よくやった!で、キュロスはどこにいるんだ?」
「門の外に出て魔物を迎え撃つって。」
「1人でか?!無茶だ!どれだけ魔物がいるのかわかってんのか?!」
マスターは慌ててキュロスを止めに行こうとしたが
「もうじき魔物が門にたどり着きます。今から行っても間に合いません。ここは彼に任せましょう。」
と、ギルドの職員が止めに入った。
「チッ、確かにその方が良さそうだ。よし、聞け!冒険者共!」
マスターはギルドにいる冒険者達に話しかけた。
「いいかお前ら!門の前には最強の冒険者、キュロス・マーベルが立っている。俺たちの役目はキュロスが抑えてられなかった魔物を街に入れねぇことだ。分かったなお前ら!」
「「「「おう!」」」」
その場にいた冒険者達は揃って返事をした。いや、ただ1人面白ない顔をしている男がいた。
「チッ、誰だよそいつ。」
自称Bランク下位のネッツだった。
「いや、待てよ。ここで手柄を立てりゃあ一気に昇格間違いねぇだろ。こんなとこより手柄を立てれそうなとこがあんじゃねぇか。」ネッツは下卑た笑みを浮かべ、誰にも気づかれないようにその場から立ち去った。
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「こんな大群が街で暴れたらひとたまりもねぇな。」
キュロスは門の前に立って呟いた。
「まぁこんな雑魚相手ならこの街の冒険者に任せてもよかったと思うが。マスターは現役ならAランク入りしてただろうし。」
向かってくる魔物はどれも単体なら一番ランクの高いものでもDランク上位というところだろう。群れでいるため危険度は上がっているが、それも複数人で対処すればさほど問題ない。そのためキュロスの心配はまた変な噂が広がらないかということだった。
「とりあえず程々にやろう。」
剣を抜き、構えてそう言った。
さてペタの街攻防戦一体どうなるでしょう。次回をお楽しみに!(まだ考えてない)
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