第2話 街へ
水の量ですったもんだした後ふと気づいた。そういえばまだ名前も聞いてなかったな。
「あんた名前は?」
「ん?ああ、俺の名前はキュロス。キュロス・マーベルだ。」
「ふーん。あたしはナヴィ。ナヴィ・ストレンジャー。」
それにしてもなんで1人なんだろう?普通砂漠越えをするなら、前衛3,4人、後衛2人ぐらいでパーティーを組んで移動するのが普通だ。でも周りを見渡しても誰かがいる様子もないし、私を助けたときに魔物を一瞬で倒した―――私には何が起こったのか分からなかった―――実力から見てもあいつ以外全滅したとは思えない。そんなことを考えていると
「そういえばこいつって食えたっけ?」
腹でも減ったのかあの馬鹿は魔物の死体を突っついていた。
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さっき助けた獣人―――ナヴィとか言ったか―――はやけに驚いてたな。何か変なことでも言ったか?なにやら考え込んでいる様子だが。驚かれる理由が分からずに突っ立っていると
「ぐ~~~~」
腹が鳴った。そうだ。食糧もなかった。あるのは干し肉少しと薬草一掴み。こんなんじゃ話にならない。せめて何か食えそうな物はないか周りを見渡したが何もない。しょうがない、我慢するかと思ったが腹の虫は鳴き止まない。ふと横を見ると
「あんじゃん。」
先ほど倒した魔物の死体が転がっていた。食えそうかな、大丈夫、きっといける、ちょっと紫っぽいけどいけるいける、などと思いながら手持ちのナイフで解体しようとすると
「何やってんの?!馬鹿なの?!死にたいの?!」
ナヴィにはアウトだったらしい。恐ろしいほどの剣幕で罵声が飛んできた。
「そいつはキラーリザードの変種。筋肉に強い毒があって食ったら体中の穴という穴から血を吹いて死ぬよ?!」
「マジで?」
「うん。」
驚いた。そんなやばいやつだったのか。とりあえずこいつを食うのは止めておくか。
「お前何でこいつに追われてたんだ?」
少し気になって聞いてみた。すると
「薬草採取の依頼で行ったオアシスの近くに巣があったみたいでそこから追いかけられてた。あんたこそ何で1人で砂漠を渡ろうとしてたの?」
逆に質問で返された。
「1人旅の途中だから。」
「それ答えになってないわよ。」
「近くに街とか集落とかない?」
「無視か。ここから1日ぐらいのとこに街があるわ。」
「ありがと。」
そう言って街に向かおうとすると
「ちょっと待って。」
呼び止められた。まだ何かあんのか?
「できれば私も一緒に行きたいんだけど。」
「別にいいけど。」
「やった!しばらくの間よろしくね!」
とナヴィは二カっと笑ってそう言った。
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夜になったがまだ街につかず野宿することになった。夜の砂漠は冷え込む。アイテムボックスから取り出した毛布にくるまり、焚火に当たっていると
「なぁ」
キュロスがおもむろに話しかけた。
「何よ。」
「薬草採取の依頼ってことは冒険者なのか?」
「そうだけど。それがどうかしたの?」
「ランクは?」
「Dランク下位。」
「そうか。」
「何か問題でも?」
「いや、何でもない。」
「そういうキュロスはどうなのよ。異様に強いけど何者なの?」
そうキュロスは異様に強いのだ。あれから出てきた魔物は全部瞬殺だった。魔物の方がかわいそうになるくらい。だがその答えは
「秘密。」
秘密だった。
「ちょっと!それぐらい教えてよ。」
「・・・」
「え、無視?あたし泣いちゃうよ?いいの?いいの?泣いちゃうよ?」
「・・・さっさと寝ろ。」
「あ、はい。」
早く寝ろと言われたので寝る準備をするがナヴィは違和感に気づいた。
「寝ないの?」
「一応見張りがいるだろ。仮にも冒険者ならそれぐらい分かれ。」
「は~い。」
「本当に分かってんのかこいつ。」
「じゃあ見張りよろしく~。おやすみ~。」
「・・・」
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「 ...うーん...おはよ~」
ナヴィが目覚めたときにはもう日が高くなり始めていた。
「やっと起きたか。この寝坊助。」
「あれ、キュロス機嫌悪い?どったの?」
「別に何も。見張りを交代しようとしたのに全く起きない馬鹿がいただけだ。」
「あ...」
どうやらキュロスは全く寝ていないらしい。そのせいか少し、いやかなり不機嫌そうだ。
「とにかく街に行くぞ。さっさと支度しろ。」
「キュロス...ごめんね...」
「早くしろよ。」
「分かった!」
それから2時間キュロスは寝不足で意識が朦朧としながら歩いた。そしてようやく街に辿り着いた。