第14話 試験中
会場へ移動した冒険者たちは各々準備を始めた。準備体操を始める者、武器を手入れする者、緊張をほぐす為か仲間に話しかける者もいた。ドラゴンゾンビ戦で壊れた剣の代わりを探しているとおもむろに1人の男が近づいてきた。
「今日はよろしく頼む。胸を借りるつもりでやるぜ。」
「こちらこそよろしく。」
わざわざ挨拶に来たのか。礼儀正しいやつもいるんだな。
「あと5分で試験を始める。それぞれ準備が終わったら俺かキュロスの前に立ってくれ。1人ずつだからな。割り込むんじゃねーぞ。」
マスターは声をかけた。彼らは頷き揃ってマスターの方に並んだ。流石に自分からSランクの試験官の方に並ぶ奴は少ないか。全員が並び終わったときキュロスの前に立っていたのはたった5人だった。
「よーし。試験開始だ。順番にやるぞ。名前と現在のランクを言ってくれ。」
そう声をかけ、試験開始を促した。1番目は筋肉ムッキムキのまだあどけなさが残る男だ。関節を守るサポーターをはめているが、武器は持っていない。体術使いか。
「フロム・リュウ、Ⅾランク上位だ。よろしく。」
名前を言って構える。上段を誘う構えだ。あえて誘いに乗ってみた。二刀のうちの片方を脳天めがけて振り下ろす。
「【火魔法】フレイムガントレット!」
火魔法の派生か。見た目より魔法も使えるのか。剣が直撃する寸前で魔法を発動し、炎の勢いで受け流した。そして体勢が崩れた時に大きく踏み込み顎と鳩尾を同時に狙った。
「【剣術】流水。」
「へっ?」
残っていた剣の峰で攻撃を弾く。その辺のごろつきや盗賊なら受けきれずにもらうだろうな。
「発想はいい。戦闘センスも申し分ない。だが視線で狙いがバレバレだ。合格レベルには達しているから気を落とさずに修行に励め。次。」
カウンターで脇腹に少し強めに当てながら言った。刃はつぶされているので切れることはないが痣位は出来るだろう。
「ありがとうございました。」
フロムは脇腹を抑え苦し気に礼を言った。
次の相手は両手杖を持った魔導士だった。顔が隠れよくわからないが体形から見て女だろう。
「よ、よろしくお願いします...ネル・フローです。・・・あっランクはCランク下位です。」
深くお辞儀をしたがどこか不安げな様子だった。
「よし始めよう。」
「はいっ。よいしょっと。」
始めるよう伝えるとおもむろにアイテムボックスから赤と緑の魔法薬を取り出した。
「えいっ!」
気の抜けるような掛け声とともに持っていた赤の魔法薬を投げつけた。魔法薬の使い道は大きく分けて4つ。回復、攻撃、バフ、デバフだ。相手に投げつけたということは攻撃かデバフ。ならば瓶が割れさえしなければ効果が発揮されることはない。キュロスは繊細な剣裁きで魔法薬を受け止めた。
「この程度では合格はな―――」
「【火魔法】プチボム、【風魔法】バレットウインド」
ネルは同時に2つの魔法を発動させた。魔法にもレベルがある。同レベルの魔法を全く同じ速度で放った時それらは合成されその威力は跳ね上がる。だがその技術は解明されているにも関わらずかなり難しい。
「魔法合成とは。天才だな。だがこれで終わり―――」
「まだです。」
合成された魔法がキュロスのもとに届く。合成しても元の魔法が弱ければ威力も上がらない。そう判断したキュロスは最低限の回避を行った。その場には初めに投げつけられた魔法薬が落ちていた。
「!」
その瞬間キュロスは気づいた。今までの行動がすべて布石で合ったことを。魔法が瓶に当たり瓶が割れる。瓶が割れ中の魔法薬がこぼれだす。そして反応を起こし誘爆した。一面が豪炎に包まれた。瓶の中には上位相当の火魔法が発動するように作った魔法薬が入っていたようだ。あまりの火力に砂がガラス化し燃え尽きる。爆風が辺りに吹き荒れネルの帽子が飛んで行った。
「やった?」
あまりの威力に一瞬呆けていると背後に影が移動した。
「まともに食らったらやばかったかもな~。」
「え?なんで...」
「ただ惜しいのは才能が無駄になってる。そこだけだな。実力はちゃんとある。十分合格だ。」
「あ、ありがとうございます...」
「さっきのを改良するなら逃げ場をなくすことだ。実力のあるやつなら魔法の効果が薄いところから強引に抜けれるからな。それと緑の方はブラフか?」
「赤の薬が不発だった時に使う予定でした。」
「二段構えの作戦か。ますます良い。話してるときりがないからこんくらいにしとこう。次。」
興味は尽きないがこれ以上待たせるのはよくない。キュロスは次の受験者を呼んだ。
フロム君のモデルは分かりますよね?アレですよアレ。
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