第13話 ギルド上層部より
本日2本目です。
日が変わって朝の8時半。時間通りにギルドの前に着く。入口にマスターが立っていた。
「来たか。今日はよろしく頼む。」
こちらに気づき声をかけてきた。
「昨日の時点では返事をしてなかったんだが面白そうだからやってやる。」
「ありがとよ。」
「それで、受験者はどこだ?」
「9時に集合とだけ言ってある。」
「わかった。ウォーミングアップをしてくる。」
「いや、必要ない。流石にお前が本気になるような相手はいなかった。それよりも」
マスターはそこで話を切り、1通の手紙を取り出した。双頭の鷲に二本の剣が交差する冒険者ギルド本部の紋章が入った蜜蝋で封をしている。
「昨日送った報告書の返事だ。ここにお前の処遇が書いてある。待ってる間に読んどけ。」
確か冒険者ギルドには迅速に連絡を伝える為に報告用転移魔道具が設置されていたがそれで送られてきたのだろう。普通の郵便ではまだ報告が届いてすらいないだろう。キュロスは手紙を受け取り、封を剥がした。確かにキュロスの処遇について明記されている。
前略 キュロス・マーベル殿
此度のスタンピード事件における多大なる働きを評価し冒険者ギルド上層部は以下の事を決定した。
2年7か月前の暴行事件の罪を不問とする。
冒険者資格停止処分を即時破棄、並びにランクを1段階昇格とする。
この決定により貴殿はSランク中位となった。その自覚を持って今後とも冒険者業に励みたまえ。
草々 冒険者ギルド対外施策室長 ナインハルト・シーク
実際の文面には報告の内容への疑問や今後の指示など長々と書き連ねられていた部分もあったが面倒なので必要な部分だけ読んだ。Sランク中位になったが何も感じることはなかった。並みの冒険者ならBランク下位にまで上り詰めれば上々だ。それ以降は天賦の才が物を言う。それ程までにSランク冒険者とは成り難いものだった。世間では高ランク冒険者は様々な特典があり、高ランクというだけで信用に値すると聞く。だがキュロスは富や名声の為に冒険者になったわけではない。ましてや生活の為でもない。何物にも代えがたい親友と共に冒険者を志したのだ。キュロスはランクになど興味がなかった。むしろ功績をあげたのだからとりあえずランクを上げればいいと言うギルド上層部に苛立ちを感じた。手元でグシャリと音がした。見るといつの間にか力が入り手紙を握り潰していた。
「そろそろ時間だぞ。受験者が来る頃だ。お前も中に入れ。」
準備を終えたらしい。マスターが扉を開け、声をかけた。
「分かった。今行く。」
そう返事をして酒場の中へと入った。
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10分ほどして続々と冒険者が集まってきた。マスターと同じく檀上に立っているキュロスを見て彼らは揃って不思議に思った。
「なぁ、あいつ誰だか知ってるか?」
「さぁ?試験官じゃない?」
「昨日ここにきたやつだろう?なんで試験官をやってんだ?」
「マスターの知り合いとか。」
「噂のSランク冒険者とか。」
「まさか~。嘘が下手すぎるぞ。」
「だよね~。なんでこの街に居るんだって話だもんね。」
「俺は見たぞ!昨日のスタンピードで敵を殲滅してるとこを!」
「殲滅って街の中には大して入ってきてないだろ。ボケてんのか?」
口々に囃し立てるが誰も正体を知るものはいなかった。
「ちゅうもーーく!!」
マスターが声を張り上げた。いよいよ始めるらしい。
「昇格試験の時間だ!お前ら準備はいいかー!!!」
「「「「おー!!!!」」」」
そういう感じなのか。マズイ。ついて行けん。
「その前に気になっているであろうこいつを紹介する。キュロス・マーベル。今日付けでSランク中位になった男だ!!!人手が足りねぇからな。こいつも試験官をやる!」
ランクは言わなくていいだろとか思ったがもう遅い。
「マジか!」
「Sランクとかほんとにいたんだ。」
「Sランク冒険者が試験官とか受かる気がしない...」
ほら見ろ。こうなるのは分かってた。
「試験内容は簡単だ。俺かキュロスに全力で攻撃する。これだけだ。武器を使おうが魔法を使おうが構わん。とにかく全力の攻撃を俺たちに見せろ。その場で合格か不合格か言い渡す。」
「それだけでいいのか。」
「私にもできそうな気がしてきた!」
場がにわかに活気づく。そりゃあSランクとギルドマスター2人を相手に善戦しろとかだったら普通に心が折れる。
「頼んだぞ。次のランクに見合う攻撃をしたやつを合格にしてくれ。」
マスターが小声で耳打ちしてきた。
「了解。」
簡単に返事すると前を向いて笑った。
「これから試験会場に移動する。酒場の裏手にある闘技場だ。」
冒険者達は一斉に移動し始めた。
書かれていませんが昇格試験を受ける冒険者は30人ほどです。一体何人合格するでしょうか。
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