第12話 昇格試験
ペタが襲われてから2か月。街は徐々に活気を取り戻してきた。ドラゴンゾンビのブレスで破壊された街並みも少しずつ復旧してきた。だが失われた命が戻ることはない。そう思うとこの街の活気も空元気に見える。
「キュ~ロス。そんな辛気臭い顔してどうしたの?お腹空いた?1個分けてあげよっか?」
両手に屋台で買った大量の串焼き肉を抱えて大口を開けて頬張りながら傍らの少女が声をかけてきた。ナヴィだ。両手で持ち切れず紙袋に入れている。
「いや、いい。腹は減ってない。考え事をしてただけだ。」
「そっか。はむっ。ん~おいひ~♪」
上の空で返事をして本日6本目の串焼き肉を頬張った。
「そんなに食って大丈夫か?太るぞ。」
「ギクッ。」
”太る”という言葉に大きく反応した。一応女らしいところもあるようだ。
「これ以上太ったら仕事ができなくなるぞ。」
さらに追い打ちをかける。
「だ、大丈夫だよ?ちゃんと運動もしてるし...」
言い返したが顔が少し青ざめていた。
「仕事行くぞ。・・・何してんだ?」
「うーん。ホントに仕事ができなくなったらどうしよう。ブツブツ。」
さっきの言葉を受けしばらく考え込んでいたがいい考えを閃いたようだ。
「何かあったらキュロスに養ってもらうから大丈夫!」
「はぁ~...」
何を言うかと思ったら堂々とヒモ宣言だ。楽観主義にしても程があるだろう。
「一応パーティーメンバーなんだし、ちゃんと養ってね?」
「わーったよ。一応仲間だからな。」
「なんでそんなに強調するの!?」
くだらないことを話しながらキュロスは2か月前のことを思い出していた。
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「よし、とりあえずこれで本部への報告は済んだ。追って返事が来るだろう。今日はこれで解散だ。」
今回のスタンピードの顛末を報告書にまとめて冒険者ギルド本部へ送ったらしい。こんな短時間で報告書をまとめるとは見た目はたたき上げの冒険者にしか見えないが支部でもギルドマスターを任されるだけあってかなり優秀なようだ。
「おい、今失礼なことを考えただろ。」
「まぁな。」
「そこは否定しろよ!?とにかく今回の件で一番の功労者のお前にはかなりの褒美があるだろう。期待しといても損はないぞ。」
「分かった。しばらくペタに留まっておく。」
そうして執務室を後にした。酒場に戻るとナヴィが話しかけてきた。手には消臭スプレーを持っていた。
「お疲れ。どうだった?」
「答える前にそのスプレーを置け。俺にぶちまけるのはもうやめろ。さすがに臭いもとれただろ。」
「まだちょっと臭うんだけど...」
「本当か?」
「うっそ~♪」
「・・・」
呆れてものも言えない。もう帰るか。
「待って待って帰らないで!私が悪かったから!謝るから!」
何も言わずに酒場を出ようとすると慌てて引き留めてきた。
「それで?何か言うことは?」
「からかってごめんなさい。もうしません。」
「よろしい。で、何の用だ。」
近くの椅子に座って用件を聞いた。
「パーティーを組んでください!」
「断る!」
冗談じゃない。俺の仲間はあの3人だけだ。他の誰かと馴れ合うつもりはない。
「しくしく...ひどい...ひどすぎるよ...」
断られたナヴィは項垂れて泣き出した。
・・・
・・・
・・・気まずい。まさかこんなことになるとは。
「・・・次の昇格試験に合格したら考えてやってもいい。」
「ほんと!?」
ガバリと跳ね起き顔を近づける。さっきのはウソ泣きだったんだな。いやそれより顔!近すぎるだろ。
「・・・本当だ。」
「やったー!」
言ってしまった手前今更やっぱだめとか言えるわけがない。諦めよう。それにこの騒ぎだ。昇格試験なんてすぐには―――
「野郎ども!今回の騒ぎで冒険者が大勢死んだ。そこで通常は半年に1度の昇格試験を明日行う。参加資格は今のランクに上がってから1回以上依頼をこなしたことだ。我こそはというやつは名乗り出ろ!」
マスターがとんでもないことを言い出した。ナヴィがパーティーに入るのは思ったより早くなりそうだ。面倒ごとの臭いを感じ取ったキュロスはそっとその場を離れ宿に戻ろうとした。が
「どこ行くんだ?キュロス。話があるんだ。」
ガシッと肩を掴まれ満面の笑みを浮かべたマスターに捕まった。本気でやれば逃げられるだろうが余計な騒ぎになる。諦めて話を聞くことにした。
「今言ったところだが明日昇格試験をやるつもりだ。だが人手が足りん。試験官として付いて来てくれ。」
「断る。面倒ごとは御免だ。」
「そう言うな。明日の8時半に酒場の前に来てくれ。いいな?」
「だからことわ、っておいまだ話は終わってないぞ。戻って来い!」
こちらの話も聞かずにどこかへ行ってしまった。キュロスは肩を落として今度こそ宿に戻った。
いつの間にか仲間になっていますが気にしないでください。m(__)m
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