第11話 執務室にて
あれから3度風呂に入ったがまだ臭う気がした。ナヴィよ、人の顔を見るや否や消臭スプレーをぶちまけるのはいい加減にしてくれ。心の中で愚痴を言いながら、扉の前に立っていた。ペタ攻防戦から一夜明けた。街の復旧、被害を受けた住民の保護、やることは山積みだ。そんな時マスターに後でギルドに来いとだけ伝えられた。ギルドの受付に事情を説明するとマスターの執務室へ通された。扉をノックすると中から入れという声が聞こえた。
扉を開けるとマスターの他5人立っていた。
「あなたがキュロス・マーベルね?私は青の帝王のリーダー、リーン・マクフォース。街を救ってくれてありがとう。」
青の帝王か。噂には聞いたことがある。確か女子5人のチームでそれなりにランクが高く、まともなチームで――かなりの数の冒険者は荒っぽく下手すれば強盗紛いのこともやっているチームも多い―――街の住民も慕っているとか。
「どうも。」
返事だけはしておく。
「ちょっと。」
横にいたまだ15歳にもなっていなさそうなチビっ子が声をかけてきた。
「ねえさ、リーダーに向かってその態度は何様のつもり?ねえ、ごほん、リーダーは今回の件でAランク下位に上がったのよ。もう少し敬意を払ってくれる?」
「ルル、やめなさい。」
「でも姉さま。」
「でもじゃない。」
リーンとやらにたしなめられたその子はこちらをキッと睨みつけた。
「覚えてなさいよ。」
お前が叱られたのは俺のせいじゃないだろう。怒る相手を間違えている。
「それで、なんの用ですか。マスター。」
本題に入ろう。
「今回の件で起こった事を全て報告してくれ。」
「分かった。まず今回のスタンピードは通常とは違う点があった。それは――」
「なんであいつがマスターと対等に話してんのよ。」
小声で喋っているのが聞こえた。そちらを向くとさっき突っかかってきたチビっ子がブツクサ文句を言っていた。
「大体マスターと対等に喋れるのはAランク上位以上の冒険者ぐらいでしょ。そんな人がいたら噂になってる。でもあいつはどう見ても姉さんより強いとは思えない。腰の剣にしてもただの片手剣2本吊るしてるだけだし下手したらあたしより弱いんじゃないの?」
その言葉に少しカチンときた。
「大方初めて執務室に呼ばれて舞い上がっちゃった低ランク冒険者ってとこね。どうせ仲間も弱っちい奴らばっかで酒場でグダグダするしか能のない馬鹿なんじゃない?」
だんだんと声が大きくなり周りにも聞こえていた。青の帝王のメンバーも揃って眉をひそめていた。
・・・
・・・
・・・よろしい戦争だ。俺のことはどうでもいい。だがあいつらのことを悪く言うのは許せない。
「おい、そこのチビッ子。」
「ひ、ひゃい。」
慌てて取り繕おうとしたがもう遅い。
「お前は本当に冒険者だよ。」
彼女の肩をたたき皮肉った。
「?そ、そうよ?」
鈍感なのか天然なのか皮肉に気づいていない。
「自分の方が実力は上だと思っているのに尊敬するリーダーには見下している奴が褒められて面白くないのはわかる。無理に反対すればリーダーの言うことを否定することになる。結局誹謗中傷しかできない。実に冒険者らしい。」
皮肉であることに気づいたようだ。顔を真っ赤にして屈辱に耐えている。
「キュロスさんこれ以上は。」
リーンが止めに入るが無視した。
「俺のことはどうでもいいんだよ。でもな、大切な仲間が悪く言われる筋合いはない。分かるよな?お前みたいな低能でも」
「・・・ないもん。」
「あ"?」
ルルは小さく言い返した。足下に水滴が落ちた。
「ルルは低能じゃないもん!グスッ、お、お、お前なんか姉さまが本気出したら足元にも及ばないんだから!」
涙が溢れ頬を伝う。
「キュロス、これ以上はやり過ぎだ。」
マスターが止めに入った。こんぐらいで勘弁しといてやるか。
「キュロスさん。ウチのメンバーが迷惑をかけて申し訳ありません。まだ世間知らずな子どもです。世界には私より強い者が大勢いることを信じようとしないんです。」
「・・・そんぐらい見りゃ分かる。説教だけで手打ちにしといてやる。」
「ありがとうございます。」
リーンは深くお辞儀をした。
「仲間を大切に思っているのですね。とても素晴らしいことです。」
「・・・」
キュロスは何も答えず、リーンは不思議がった。
「報告の続きだ。キュロス、門の外で何があった?」
本題を忘れるところだった。
「スタンピードとして押し寄せた魔物は軍隊として機能していた。指揮官らしき人物がいたが取り逃がした。そいつが奥の手としてドラゴンゾンビを召喚した。鱗が硬く外からは有効な攻撃を与えらなかったので、体内に入って攻撃し、討伐した。以上だ。」
簡単に説明したが予想外の事態にマスターは頭を抱えた。
次回から少し場面が動きます。
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