まさか俺が突然けもみみロリっ娘の義兄になって奴隷労働させられるなんて夢にも思わぬ侍(ざむらい)w
――1965年、冬。パリは矢鱈と寒かった。
ジョルジュはシガー・ケースからゴロワーズを1本取り出すと、セーヌ川へと投げ込んだ。そうしたかったからだ。
昨晩のロマネ・コンティがまだ残っているのか、頭ががんがんする。眩暈を抱えて適当なブランジェへと入った。店内にはクロード=ウィリアムソンのナンバーが流れていた。カルティエは右手首の上で意味もなく回っている。店員の少女は熱心に算盤を弾いている。ジョルジュはその年端もいかない少女を一瞥すると「ボンソワール(今晩は)」と声を掛けた。
彼女はブロンドの髪を無造作に束ね甘納豆を絡ませて、物憂いげな蒼い瞳を顔面に取り付けていた。桃色のワンピースに白いエプロンをつけ、大きな髷を結っていた。名をサラという。
サラはジョルジュが何も身に纏っていないことに暫くしてから気付き、赤面した。
あなたは宇宙人がなぜ銀色の肌で描かれるかご存知であろうか。それは、金だと仏像だからである。
その冬、高校5年生のユタカは自室でさんまを茹でていた。明石家の方のさんまである。
昨晩、酩酊した母を介抱していたら、ポケットからさんまを見つけたのだ。さんまを見つけたら茹でる。これが倉沢家の家訓であった。
田中ユタカはさんまを菜箸で転がしながらあることに気づいた。焼きそばはそばではない、ということに。そして、カップ焼きそばに至っては焼いてすらいない、ということに。
完結