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『七行詩集』

七行詩 581.~590.

作者: s.h.n


『七行詩』


581.


私という 怪物を生み出したのは 貴方なのに


どうして私を拒むのでしょう


愛しても 苦しめるだけなら


どうして私を作ったのでしょう


貴方にさえ それが分からないのだから


悲劇に責任は取れない


ただ 起こるままに起こり 闇を突き進むだけ



582.


咳き込む夜に 差し込む月明かりは眩しく


私に休息を 与えてはくれない


何も掴めず 持て余す両手には


冷えきった花瓶を 温める熱さえ


もはや残されていないのか


貴方はその顔を もう一度


私に見せては くれないのか



583.


いつか貴方が思い出すとき


カセットテープを裏返せば


私の声が聴こえますか


アルバムをめくり返せば


私の顔は浮かびますか


砂浜に描いた絵のように 海が貴方を忘れても


心に寄せる波である 貴方を私は忘れない



584.


貴方を何度失っても


私は貴方を探すでしょう


見知らぬ人に 杖を借り


ようやく辿り着くならば


誰にも頼れず 地を這うように


貴方に辿り着くならば


私の宿命は果たされるでしょう



585.


私は 暖炉に揺れる火を眺めている


少しずつ形を変えながら


私の傍へと伝わる熱は


私に夢を見せ続ける


それは貴方から 伝わるものに似ているので


安息を得るために 手を伸ばす


私には 貴方の幻が必要なので



586.


“誰か拾ってください”と


その看板には書いてあった


私がたどり着く頃に


傍には誰の姿もなく


仕方がないので 私はそこで待つことにした


次に誰かが通りがかったら


その人は私を 連れていってくれるだろうか



587.


貴方が自由を愛したように


私は 自由な貴方を愛した


私は自由に 貴方を愛した


よく考えてみてください


いつも貴方のことを想い 貴方に選ばせたのは誰か


私は貴方を自由にし


私を選んでくれるのを待った



588.


今年も雪が降りました


それは静かに降りました


貴方に会うため 凍った橋を渡るには


転ぶ覚悟が必要ですか


それとも 凍った川の上を 渡れば良いのでしょうか


私がこの町に来た年にも 雪は白く 深く積もり


先の出会いを 予感させていたでしょう



589.


すべては長い道のりのため


時間が必要なのでしょう


その道のりに耐えるため


私は大人になったのでしょう


いつか貴方に捧げるために


私は今日まで守り続けた


荷物を抱え 魂の旅は続くでしょう



590.


この先出会うことがなくても


貴方はいつか知るでしょう


私は幸せの中に居ると


貴方を想う幸せに 絶えず包まれているのだと


その日まで 貴方は長く生きてください


私のことも 忘れるほどに


ただ貴方の幸せのために


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