概要
『実働部隊って……何するんです?』
ヨミ「私と同じ事だよ。あと、敬語もいらないよ。同じ部署の同僚みたいな感じになるからねー」
ん?ちょっと何言ってるんだろうこの人。
『いやいやいやいや!俺にも殺人をしろって事ですか!?無理無理無理無理!無理にきまってますよ!』
できる訳がない。今まで殺したといえばRPGで出てきたモンスター位だぞ!
FPSは酔うからできないし!後は蚊とか!
ヨミ「まぁ普通はそうだね。もちろんいきなり人を殺せなんて言わない。当分は訓練を受けてもらうよ」
『それでも人を殺せるようになるとは思えないのですg……。いや思えないんだが』
本当に。どう考えたって無理だろ!これは欠損してでも2つ目の選択肢選ぶべきだったのでは。
今から変更できるかな?あ、いや無理そうだ。今から選択肢変えたらどうなるかわかってんだろうな的な目つきをしてる。ヨミさん怖すぎるだろっ!
こうなったら訓練でめっちゃヘタレだと解ってもらってデスクワークに変えてもらうしかないな。うん、そうしよう。
ヨミ「決心したようだね。フフッ、百面相してて面白かったよ」
『っ!……顔に出てたか』
しかし、この人笑うとすごい可愛いんだよなぁ。って思ってるのもバレたらヤバそうだし表情変えないようにしなくては!
そんな話をしながらエレベーターで降りていく。
『あ、そういえば、ふと思ったんですが、完全犯罪を行う犯罪者を殺しているって話、それなら最初の犠牲者が出る前に殺すとか、改心させるとかできないんでs……できないの?』急にタメ口は難しいな。
ヨミ「我々も万能じゃないんだよね。酷い話ではあるのだけど、犠牲者がいるから犯罪が浮き彫りになる。どうしても2人以上の殺人事件がおきないと我々も感知できないんだよ。」
ヨミ「例えば、1人殺した犯人がいて、その犯人が完全犯罪を行ったとする。その場合、私たちはその犯人を見つけられない。最初の事件を感知するのはほぼ不可能だからだ。」
ヨミ「そして、全ての未来を視れる訳ではない。視る未来は1人目の犠牲者が出た後からになる。それから犠牲者の周辺を未来視する。視れる未来はだいたい1週間先までだ。1週間視たら次の1週間、という風にずっと確認する作業を繰り返して行く訳だ。」
ヨミ「だが、それと両立して他の犯行現場も確認していくため、何か月も犯行のない現場を視続けるのは厳しい。次第に、確認する未来の時間を夜間のみ等に変更していく。」
ヨミ「そこで新しい犯行が起きる事もある。それが一番起こりうる連続殺人が続く理由だ。こればかりは確認班の人数を増やして貰わないとどうしようも無い。確認班は本当に大変だと思う。」
ヨミ「そして、確認していると連続殺人犯ではなく、身内や知人による犯行が数多くある。その場合は警察に匿名で通報している」
そう言って一息つき、また話だす。
ヨミ「最初の事件を感知するのが「ほぼ」不可能と言った理由は、犠牲者周辺を未来視している時に、付近で犯罪が起きた場合だ。」
ヨミ「その場合は、抑止として犯罪を起こそうとする瞬間に話しかけたり、通報したり、犯罪が起きないようにしている。だから、単に殺すだけじゃなく色々やっているね」
ヨミ「……未来を視れても過去には行けないから、1人目の犠牲者を助ける事は我々にはできない。なんとも歯痒いんだけどね」凄く悔しそうな顔をして、ヨミさんはそう言った。
『それなら連続殺人犯も犯人が解った時に、警察に通報すればわざわざ殺さなくてもいいんじゃ?』
ヨミ「言ったでしょ?完全犯罪を行った犯人を殺しているって。警察に通報した未来をみても、拘束はされるが証拠不十分で捕まらないんだよ。だから殺すしかない。勿論、それが正しい事だとは思わない。でも誰かがやらなければ完全犯罪は成立してしまう」
『……なるほど。……わかった。……そうなると、爆破事件や銃乱射事件等も感知できないという事?』
ヨミ「……うん。同時に複数人を殺害する場合も1回での犯行なら感知できない。いや、正確には感知しづらい。例えば森を監視してる中で変わった枝の付いた木を探すのは簡単じゃない。」
ヨミ「完全犯罪の成立する犯罪を見つけ出すのはそれくらい大変という事。そして、未来を視るというのは誰かの目線から見るような視点じゃない。」
ヨミ「さっきみた動画のように衛星からみているような視点だから、外での犯罪で無いと犯人が確認できない場合も多い。いくら未来を見ていても全ての犯罪に対応できる訳ではない理由が解ったかい?」
『なるほど。最初の犯罪が事前に対応しにくいのは、その犯罪が起きた後、未来を視るしかないからか。そして未来を視て、そこで犯人が解れば警察に通報する。犯人が解らなければ連続殺人の可能性があるため情報を集めると。』
『だから2人目の犠牲者がでないと先回りして犯人を追い詰める事ができないんだな。その1つの事件だけ追っている訳にはいかないからか』
ヨミ「そうだね。私たちは全世界の完全犯罪を許さない。だが、完全犯罪になりうるだけの被害者が出てからで無いと動けない……」
そういうとヨミは少し悲しそうな顔をしたが、俺が見ている事にすぐ気づき表情を戻す。
しばらくの沈黙の後、ヨミが言った。
ヨミ「そういえば、長官が全ホルダーに会わせろと言っていたけど、それは当分無理そうだから、全員に会う前に訓練を始めましょう」
『そういえばホルダーって何?』
キーホルダーくらいしか知らないが。
ヨミ「まぁ早い話が、犯人を殺す部隊にいるメンバーの呼称だね。今は私を合わせて7人いる。私は、さっきみたように鎌を使うからサイズホルダーと呼ばれているね」
『かっこいい……のか?』
ヨミ「私的にはちょっと恥ずかしいけど」
そういうとヨミは目線を斜め下にさげる。テレてて可愛い。
『と、言う事は残り6人はみんな同じ武器じゃないのか。同じなら呼び名が被って誰のことか解らなくなりそうだしな』
ヨミ「だね。まぁ、会った時のお楽しみってやつで。まぁ1人面倒な人がいるんだけど、いや全員かな……」そういうと、ヨミは「ハハハ」と乾いた笑いをし、遠くを見つめていた。不安だ。いや、すごく不安だ。






