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精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第5章 冬休み、南部地方への旅
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第93話 フローラちゃんは凄いと思った。

「「「キャャャー!!」」」


 耳をつんざくような破壊音にミーナちゃん達が悲鳴を上げる。


 石造りの塀が破壊された衝撃がここまで伝わってきたようで空気が振動した。


 壊された塀の後ろには石の破片が散乱し、その中に鉄の玉が転がっていた。

 あの場所にいたら全員助からなかった、危ないところだった…。



 この鉄の玉、あの船から飛んできたんだよね。

 あんな遠くから飛ばせるものなんだ…。


「ここは危険です!早く別荘の中にお戻りください!」


 護衛の騎士が慌ててわたし達を別荘に戻るように促した。


「ターニャちゃん、テーテュスさんが言ってた大砲ってあれのことかな?」


 早足でわたしの横を歩くミーナちゃんが怯えた表情で問いかけてきた。


「たぶん、そうなんだろうね…。」


 わたしもそう思うけど、見たこともないものなので断言はできない。


「あんな遠くからここまで鉄の玉を飛ばせるんだ。

 しかも、石を積んで作った丈夫な塀を一撃で壊していたし。

 怖いね…。」


 わたしもそう思う、あんな鉄の玉を易々と撃ち込まれたら堪らないよ。




 別荘のリビングルームに戻るとすかざずフローラちゃんが言った。


「どうやら、この別荘が標的にされているようです。

 あの玉がいつこの建物に当たるかわかりません、ここは危険です。

 ひとまず、私達は公爵邸に行きお母様たちと合流しましょう。」


 そして、フローラちゃんは騎士に別荘には最小限の警備だけを残し、他の者は速やかに公爵邸に退去するように指示を出した。


 さすがお姫様、こんなときに慌てずにきちんと指示を出せるんだね。

 騎士達に指示を出すフローラちゃんの姿を感心して眺めていると、


「ターニャちゃんもボーッとしていないで早く退去の準備をして!」


と怒られたしまった。あ、ゴメン、急いで支度するね。



     **********



 でもなんで、わたし達のいる別荘が標的にされたんだろう?

 大砲を持っている国とは今のところ交流がないはずなので、ここが王室の別荘だとは知らないはず。

 ましてや、今ここに王族が滞在しているなんて知っているはずもない。

 単に、沖合いから見て狙い易かったからだったりして…。



 公爵邸に着くと、そこは蜂の巣をつついたように混乱していた。

わたし達はすぐにミルトさんのもとに案内された。って、ここ会議室じゃない、しかも今、会議中。

会議が終わるまで別室で待つよと言おうとしたら、ミルトさんが駆け寄ってきた。


「フローラ!それからみんなも無事だったのね、よかった!

 別荘が攻撃されたと聞いたから心配だったのよ。」


 そう言ってミルトさんはフローラちゃんを抱きしめた。

 わたし達の無事を確認した後は別室で休んで良いのかと思ったら、何故かそのままテーブルに座らせられた。


 するといきなり公爵がフローラちゃんに、別荘が攻撃されたときの様子を報告しろと言った。

何故八歳の子供にさせる?その場にいた騎士や侍女がいるでしょう?


「今から約一時間前、遠くで衝撃音がした後別荘の敷地を囲む塀の海側の一部が飛来した鉄の玉に破壊されました。

 この時点で鉄の玉が何処より飛来したかを目撃したものはいません。

 わたし達が現場を見に行ったところ、沖合いに三隻の大型の船が停泊しているのが見えました。

 最初に塀が破壊されてから十五分程経過した頃、沖合いの船の一隻から白煙が上がり衝撃音がしました。

 それから間もなく海の方角から鉄の玉が飛来し再び塀が破壊されました。

 鉄の玉の飛来した方角や状況から、沖合いに停泊する船から撃ち出されたものと見て間違いないと思います。

 白煙と衝撃音を伴うのが先日試し撃ちをした鉄砲に似ていることから、話に聞く大砲というものではないかと思います。」


 フローラちゃんは大人たちの前でも臆せずに、しかも要点を漏らさずに話しきった。

 しかし、よく時間とか見ていたね。

 本当にわたしと同じ八歳児なのか?恐るべし、王族の教育…。



 フローラちゃんの報告を聞いていた公爵は、好々爺とした笑みを浮かべ満足げに言った。


「うむ、フローラ、報告の内容はよくわかった。

 要点をちゃんと押さえていて偉いぞ。

 わが孫ながらしっかりしている。これからも研鑽を積むのだぞ。」


 なんだ孫の自慢がしたかっただけか…。


 公爵は続けて言う。


「さて、フローラの報告から、沖合いに停泊する船がポルトに対し敵対行動をとったことは間違いないと思われる。

 問題は、あの船が何処の国のもので、何が目的かであるが…。

 おい、文官長、あの船に掲げられた国旗は何処のものかわかったか?」


 公爵に質問された文官長は険しい顔で答えた。


「遠すぎて肉眼で国旗の文様は確認できませんでした。

 遠眼鏡で見ても細部まではわかりません。

 ただ、文様の輪郭等はっきりと識別できる限りでも、今までポルトを訪れた国に該当するものはありませんでした。」


 何もわかっていないということだね。


 そのとき、部屋の外がなにやら騒がしくなった。


お読みいただき有り難うございます。

ブクマしてくださった方、有り難うございました。

とても嬉しいです。

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