表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第5章 冬休み、南部地方への旅
85/508

第84話 港町でよく見る病気?

 ポルト滞在四日目、今日は精霊神殿の前庭に臨時診療所を開く初日だ。

 朝食をとった後、精霊神殿に行くと公爵の手配で既に天幕は用意されていた。

 ここにも、『外から帰ったら手を洗ってうがいをしましょう。』と書いた看板が置かれていたよ。

うーん、これが精霊神殿の一押しなんだろうか…?



 いつもと同じように、男性用の天幕と女性用の天幕に分けて治療を行うが、今日は珍しく始める前にミルトさんから注意があった。


「ここは港町なので少し勝手が違います。

 まず、女性患者ですが子供と四十過ぎのご婦人をフローラが、四十前の成人女性をわたくしが診療します。

 もし、わたくしの手が回らなくなったら、身形が派手な女性はわたくしが診ますので、それ以外をフローラが診て下さい。

 男性患者ですが、船乗りの方の中にターニャちゃんやミーナちゃんが診るのは好ましくない病気の方がいます。

 ソール様、フェイ様、その辺を気に掛けていただいてよろしいでしょうか。」


 今まで、こんなことを言われたことはなかったのにどうしたのだろうか?

なんか、船乗り特有の病気があるのかな?



     **********



 公爵がポルトに住民に前もって知らせてあったようで、天幕を開くと既に短い列ができていた。

 女性の列を見ると確かに化粧や服装が派手な女性が目立った。

胸元が大きく開いていたり、腰の辺りまでスリットが入っていたりと、幾ら暖かい気候だからって肌の露出が多すぎない?


 わたし達が受け持つ列を見るとミルトさんが警戒していた船乗りの人はいないようだった。

いつも通り、ミーナちゃんと手分けして患者さんを癒していく。

 ちょっとした怪我や食あたりなど症状の軽いものがほとんどで、途中で寄った街のように悪質な風邪の流行はないようだ。


 しばらくそういう患者さんが続いたあとに順番が回ってきた患者さんが尋ねてきた。


「俺は、この国の者ではないが、具合が悪いのを見てもらえるかい?」


 どうやら、この人はミルトさんが言っていた船乗りさんのようだ。

 体の具合を聞くと、倦怠感が強く節々が痛むことに加え、日常的に歯茎から血が出るようになり、ついには古傷が開いたそうだ。

 聞けば、船乗り特有の病気で最悪死に至ることもあるそうだ。なにそれ、怖い…。


 いつも通りの手順を踏もうとしたら、フェイさんから待ったがかかった。


「ミーナちゃん、そちらの患者さんには申し訳ないですが一旦手を止めて、こちらに来てください。」


 フェイさんは、わたし達二人を集めると患者さんにも聞こえるような声で言った。


「この方の病気は、あなた達に治すことはできません。

 あなた達は、『癒し』を用いて体の傷ついたところや弱ったところを治しかつ体力を回復させることができます。

 また、『浄化』を用いて体の中にある悪しきモノを消し去ることができます。

 でも、術で体の中にないものを作り出すことは出来ないのです。

 この方の病気は、体が必要としているものが足りないことからきています。」


 フェイさんは、そう言うとわたし達に応急措置としていつも通りの処置をするように指示した。

フェイさんによるとこの病気になると他の病気がうつりやすくなり、既に何かに感染している恐れがあるのでまず『浄化』をした方が良いと言われた。


 フェイさんの指示に従って、『浄化』を施した後、『癒し』を用いて歯茎や古傷を治し、体力の回復を図る。


 しばらくすると、船乗りさんは言った。


「こりゃ凄い!嘘のように体の調子がいいぜ。お嬢ちゃん、有り難うよ、もう駄目かと思ったたんだ。

 この国の治癒術って凄えな、俺の国には魔法なんてないからたまげたぜ。」


 そんな船乗りさんの喜びに水を差すようにフェイさんが言った。


「これは応急措置です。病気が治ったわけではありません。

 病気を完全に治したければ、この町に滞在中に生野菜と新鮮な果物をできる限り摂取してください。あなたの病気は、それらに含まれるものが不足して起こるものです。

 それと、帰りがどのくらいの航海になるか知りませんが、ちょうどこの辺りの特産品であるオレンジやレモンを持てるだけ持って船に乗り、毎日食べてください。

 そうすれば、ある程度はこの病気を防げるでしょう。」


「それは本当かい?というか、ここまで良くしてくれた人が嘘をつく道理もねえか。

 わかった、生野菜と果物だなじゃあ毎食それを食べるよ。仲間にも言っておくぜ。」


 そういうと、船乗りさんは足取りも軽く去っていった。



 わたしはフェイさんに今のような患者さんがミルトさんが注意しろって言った患者さんかと尋ねた。


「いいえ、確かに今の病気はわたし達の術では直すことができないという意味では注意が必要ですが、ミルトさんが注意しろっていうのは別かと思います。

 港町には、あなた方子供の教育によろしくない病気の方が船乗りを中心に多いのです。」


 さっきの病気と同じように船乗りに多い病気に『脚気』というのがあって、これもわたし達には治せないんだって。これは、この町滞在中に、精米していない米、玄米を食べさせておけって。


 でも、わたし達の教育に良くない病気って何だろう?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
https://www.alphapolis.co.jp/prize/vote/906044848
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ