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精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第5章 冬休み、南部地方への旅
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第82話 海の向こうの国のこと

 精霊と人との関係についての話が一区切りついたとき、ミルトさんが部屋の片隅においてあるものを指差して言った。


「テーテュスさんから頂いたあれ、私達の手に負える物ではありませんのでお父様に任せようと思うのですがよろしいですか。」


 鉄砲と言う物らしい。火薬の爆発するときに発する圧力で鉄の玉を飛ばす武器なんだって。

ご丁寧なことに、鉄砲本体に火薬と鉄砲玉を一揃えでお土産だといって持たしてくれた。


 なんでも、この鉄砲というのは弓矢の倍くらいの距離の標的を撃ち抜くことができ、弓のような熟練の技術が要らないんだって。

 南大陸では、鉄砲が出来てから一般市民から兵を徴用するようになって、それまでの騎士中心の戦争に比べ争いの規模が大きくなってきてるらしい。

 また、鉄砲よりも遥かに大きな鉄の玉を飛ばす大砲というものあるらしい、こっちは城壁を破壊するくらいの力があるそうだ。



 帝国の辺りも物騒だが、南の大陸も物騒なんだね。この国だけがのどかなのかな?

 南の大陸には魔法もないし、魔導具もない。

 でも、その分工業技術が発達しているんだって。大きな炉を使って鉄を大量に作ったり、水車を利用して機織りをしたり木材の切削加工をしたりしているらしい。

 また、テーテュスさんの船を見れば分るように造船技術も進んでいるようだ。

 この国だと、鉄は鍛冶屋さんが個人で加工しているし、水車は揚水と粉挽きくらいにしか使っていないそうだ。船に至っては大陸間の往復なんて夢のまた夢みたいだ。



 それで、テーテュスさんが鉄砲をくれたのは何故なのか。

 どうも、テーテュスさんが南大陸に持ち込んでいる魔導具に目をつけた国があるようだ。

 魔法の存在しない南大陸では、灯火の魔導具は言うに及ばず給水や着火の魔導具などでも重宝するらしい。

 従来は、ごく稀に南大陸との往復に成功した交易船が少数の魔導具を持ち帰っただけなので量産できないものだと思われていたようだ。

 ところが、テーテュスさんが何度もそこそこの量の魔導具を持ち帰ったことから、北大陸に魔導具の量産技術があることが知られたらしい。

 どうも大量の魔導具を手に入れたい国があるようだ。

 ならば、平和的に交易をすれば良いじゃないと思うのが普通だろうが、そこでこの鉄砲が出てくる。



 鉄砲が作られてから、南大陸の国では大陸内で戦争をするだけでなく、大陸の外で力にものを言わせ略奪することも増えたらしい。

 今まで南大陸の支配が及んでいなかった島々を侵略して略奪をするのが流行なんだって。 嫌な流行だ…。


 増長したある国が、鉄砲と大砲を武器にあわよくば北大陸を支配下に置こうと考えているようだ。

最悪、支配下に置けなくても単発で略奪できれば御の字と言う事らしい。

 魔導具を奪うだけではなく、昔から北大陸の人間が魔法を使えることは知られており捕らえて奴隷にでもすれば一石二鳥と考えているみたいなことをテーテュスさんは言っていた。


 それって、もう海賊だよね…。



     **********



 テーテュスさんの意図は、鉄砲を一揃え譲るから対策を考えろということらしい。


 ミルトさんもヴィクトーリアさんも頭を抱えている。

 いや二人が頭を抱えているのは、南の大陸対策ではないよ。

そういう政治絡みの事は王様や皇太子様の領分だ。


 ミルトさんが考えているのは、鉄砲なんてものを作って戦争に使おうものなら殺生を嫌う精霊の機嫌を損ねるのではないかということ。

 せっかく精霊の力を借りられるようになったのに、こんなことで機嫌を損なうのは嫌だと思っているようだ。


 一方で、ヴィクトーリアさん、鉄砲なんてものを知ったら戦好きの皇帝が嬉々として生産に乗り出すに違いないと考えているみたいだ。わたしもそう思う。

 きっと、反乱の制圧に鉄砲を持ち出すだろうって。

 これ以上無駄な争いはやめて平和的に国を治め、国土の復興に努めたいと考えているヴィクトーリアさんには頭が痛いことだろう。



 幸いにして、テーテュスさんによれば、南大陸の国が艦隊を送ったとしても北大陸にたどり着く船はごく一部、しかも相当傷ついているだろうとのこと。

 はたして、北大陸までたどり着いたとき戦う能力が残っているだろうかってテーテュスさんは言っていた。

 実際、少し前に艦隊を北大陸に送ったある国では、航海の困難な海域を乗り越えられず一部の船を失った挙句に引き返してきたそうだ。



 それと、鉄砲の弱点も教えてくれた。火薬って水分に弱くて湿気ると使えないんだって。雨の日は使えないって。

ただ、船に積んである大砲は、水がかからないように甲板の下に設置されているそうだ。

 水の魔法で火薬を湿らすというのは、船の大砲には使えそうもないね。



 まあ、今日明日襲来してくるわけでもないし、このことは王様達が考えてくれるでしょう。


お読みいただき有り難うございます。


ブクマしてくださった方、有り難うございました。

とても嬉しいです。

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