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精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第5章 冬休み、南部地方への旅
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第78話 ポルトの港を観に行こう ①

 ポルトに着いた翌日、わたし達は遅めの朝食をとり、全員でポルトの街を観光に行くことにした。

 逗留している別荘からポルトの街は結構な距離がある上に帰りはかなりきつめの上り坂になるため魔導車を使う。

 精霊神殿の前に停車しておけば良いとギューテさんが言っていたのでお言葉に甘えることにした。



 魔導車で丘を下りポルトの裏門から街中に入る。

裏門は王族専用で、王族が別荘に滞在している時しか開かないそうだ。


 ポルトの街は高い城壁に囲まれており、所々に望楼がある。

長いこと戦争をしたことがないオストマルク王国では一番厳重に守られた都市なんだって。

海の向こうにはどんな国があるかわからないので、一応の備えはしているみたいだ。


 ちなみに、今まで海の向こうから喧嘩を仕掛けてきた国はないらしい。

一方で、隣にある帝国以外では正式な外交関係を結んでいる国もないそうだ。

 なんでも、南の海は相当広大らしく近海は波が穏やかだけど、この大陸から離れると相当波の荒い海域があり定期的な交易をするだけの航海能力がないんだって。


 だから、南の大陸から交易船が来るのは年に数回程度なんだって。

この港に着かなくて、他の小さな港町に行っちゃう場合もあるって。

そういえば、クラスの男の子の領地にある港にも南大陸から交易船が着くことがあるって言っていたっけ。


 それでも稀に正式な外交関係を結びたいと港を訪れる外交使節はいるそうだ。

 基本、何処の国にも友好的にというこの国の方針から、丁重にもてなし、次の機会に正式な折衝を持ちましょうという親書を手渡すんだって。


 でも、いまだかつて正式な使節団を組んで戻ってきた国はないそうだ。

大陸間の航海は相当難しいらしいね。



 そんな話をミルトさんから聞かされているうちに車は精霊神殿に着いた。

王都の精霊神殿に比べずいぶんと控えめな建物だった。

 ミルトさんに言わせれば、神殿みたいなものを絢爛豪華に飾り立てても国民の反感をかうだけだって。

控えめなくらいでちょうど良いんだって。



 それはともかくとして、ここに魔導車を置いて徒歩で街中を散策するんだ。

車を降りてわかったけど、精霊神殿がある場所ってまだ丘の中腹だった。

隣にはポルトの行政機関を兼ねた公爵邸がある。こちらは広い敷地に立派な宮殿が建っている。


 ミルトさんの話では、大昔にこの港町を大きな波が飲み込んだらしい。

 港の近くに住んでいた人がたくさん亡くなったそうで、そのときの反省から領主館を高台に移したそうだ。

いざというときは公爵邸が住民の避難所になるらしいよ。



 ということで、みんな揃って坂道を下りていく。



     **********



 城壁の中を有効に利用するため建物は四階建とか五階建とかになっており、それが軒を揃えるように繋がっている。

 道はそれなりに広いけど、建物が迫って見えるせいか王都に比べて街が窮屈に感じる。

 ただ、白壁に赤い屋根と建物の色彩が統一されていて、逗留先の別荘から眺めた街並みは感動的にきれいだったよ。



 丘をだいぶ下ると港が見えてきた。これ帰りは結構きついんじゃないかな。

正面には、四本の帆を持つ大きな帆船が停泊している。

 精霊の森にある旧魔法王国の図書館で船の絵を見たことがあるけど、実物は想像していたのに比べ遥かに大きかった。


「こんなに大きいのに海を渡るのが難しいのですね。航海って本当に大変なんですね。」


 わたしが思っていたことを代弁するようにミーナちゃんが呟いた。


「本当に大きな船ですね。お屋敷が海に浮かんでいるようですわ。」


 ハイジさんも驚いている。


「これは南大陸からやって来た交易船ね。残念なことだけどこの大陸にこれだけの船を作る技術はないのよ。」


 ミルトさんが説明してくれたが、この国も帝国も大陸に沿って近海を航海する船でお互いの交易をしているとのことで、目の前の船に比べ二回り以上は小さな船を造るのがやっとなんだって。


 年に数回しか来ない南大陸の交易船が見られるなんてついてるね。



 しばらく、巨大な交易船を眺めていたが、中を見られる訳でもないので、交易船を離れ市場に足を向ける。


 岸壁に沿った大通り、岸壁の反対側に屋台が並び朝取れた魚介類を売っていた。

 海のない場所に住んでいるわたし達には川魚しか縁がなく、海の魚の種類の多さに驚かされた。

 中には、緑色の魚とか、真っ赤な魚とかがいて本当に吃驚したよ。


「あれ、なあに?うねうね動いて気持ち悪い!」


 何かを見つけたハンナちゃんが、気味悪そうに言った。

 ハンナちゃんが指差す方を見ると、たくさんある足と大きな頭しかないうねうねっとした生き物が売られている。



「おじさん、そこの足の多い生き物、それは何ですか?」


 フローラちゃんが興味津々にそれを売るおじさんに尋ねた。


「お貴族様が市場に足を運んでくださるとは珍しい。

 これかい、これはタコといってこんな形だけど、生で良し、煮て良し、焼いて良しという優れもんだ。

 お嬢ちゃんも、薄く削いでマリネにしたもんを食べたことないかい?

 一番のお勧めは、軽く茹でて砂糖と塩を入れた酢にしばらく漬けて食べるんだ。うまいぞ。」


 ええ、昨日いただきました、美味しかったです。

 公爵がニヤッと笑って「明日市場で見てきなさい。」っていった意味がわかったよ。

 口で説明するより自分の目で見て驚けってことだったのね。



 すると近くの屋台から良い匂いが漂ってきた。


「何かいい匂いがする!」


 ハンナちゃんが言うとおじさんが、


「おう、あれがタコの足を焼いたものだ。食っていけば良い、美味いぞ。」


と勧めてくれた。


 見るとタコの足を一本丸ごと串刺しにして焼いている。

この良い匂いは、いしりが焦げた匂いかな?


 お勧めならばとみんなで一本ずつ買って食べてみた。

おじさんの言葉に嘘はなくとても美味しかったよ。

 タコを見てあれだけ気持ち悪がっていたハンナちゃん、焼いたタコの足をかじったら良い笑顔で「美味しい!」って言っていた。

うねうね動いていなければ大丈夫なんだ。


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