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第69話 学園祭⑦ 運動会の最後を飾るのは?

 のっけからこうじゃない感が漂っていた運動会も最終種目の障害物競走を残すだけとなった。


 今度はわたしの出番だよ、走者は男子のリーダー格になっているリーンハルト君だ。

一応リーンハルト君にはわたしが何をやるかは言ってあるが、基本わたしにお任せとなっている。


 クラス対抗なので、第一レースが五組対四組、第二レースが三組対うちのクラス、第三レースが第一レースの勝利チーム対二組、決勝が第二レースと第三レースの勝者で行われる。



 最初のレース、五組の妨害役が四組のコース上に土魔法で凹凸を作り出している。

しかし、四組の走者はそれをものともせずに走り抜けていく。

 一方で、四組の妨害役は五組のコース上に落とし穴を作った。

そんな先に作ったらダメだよ、案の定、穴が見えている五組の走者は楽々と穴を飛び越えた。


 最初の障害が相手の足止めにならなかった双方の妨害役、今度は五組の妨害役は畑の畝くらいの高さの土壁でコースを塞いだが、四組の走者は易々と乗り越えていった。

 対する四組は五組のコースを柔らかく耕して足場を悪くしようとするが、五組の走者の足を止めることはできなかった。


 結局、双方の妨害役が作り出した障害物はさしたる障害にならず、走者の走力で勝った五組が勝ち抜けとなった。


 双方の妨害役がつたない魔法でまごつきながらも一生懸命に障害物を作り出している姿やそれを乗り越えていく走者の姿が微笑ましく、観客席の父兄からいい意味での笑いを取っている。


 魔法を使った競技もこの程度なら、笑いを取れていいと思うよ、わたしも。




 続いて、わたし達のクラスの番だ。


 スタートの合図と共に三組の妨害役が魔法を発動する。

 リーンハルト君の走るコース上に膝丈くらいの高さの土壁がコースを塞ぐように数十センチ間隔で並んだ。

 でも、リーンハルト君は土壁の上に足を掛け簡単に乗り越えて走っていく。

 さしたる足止めになっていないことに焦った妨害役は、今度は風の魔法で向かい風を作ってリーンハルト君の足を止めようとするが、風の魔法はリーンハルト君も得意なんだよね。

 リーンハルト君は、器用に自分に追い風となるように風を起こし向かい風を打ち消しながら走っている、さすが特別クラスにいるだけのことはあるね。



 で、わたし、スタートの合図と同時に土と水のおチビちゃんにお願いして、三組のコースを膝くらいの深さの泥沼に変えた。

 これだけだよ、でもちょっとやりすぎたかもしれない。

 だって、他のクラスがどの程度の事を仕掛けてくるのか知らなかったんだもん。


 いきなりコースが泥沼に変わったため踏ん張りが効かず、三組の走者は前のめりに倒れこんでしまった。

 この学園の生徒の大半は貴族の子女だ、今まで泥まみれになったことなどあるわけがない。


 あっ、泥まみれになって泣き出してしまった。罪悪感が半端じゃないです、ごめんなさい。

 結局、三組の走者はそのままリタイアになりました。本当に申し訳ない…。



 父兄席はシーンとしてしまった。


やっぱり、対戦相手を泣かせてしまうのは不味かったよね。決勝戦はどうしようかな?


「今の見ました?」


「ええ、一瞬でコースを泥沼に変えましたよね。」


「今年の一年生には凄い子がいるもんだ。」


「あの子、初日に広場で鉢植えに花を咲かせていた子じゃありません?」



父兄席からそんな声が聞こえてきた。え、そっち?

父兄席がシーンとしたのは、ヒンシュクをかったのではなく、コースを泥沼に変えたことで呆気にとられていたようだ。


 子供を泣かせちゃうようなえげつない術を使ったことは許されるの?



 クラスのみんなのところへ戻ると、


「ターニャちゃん、素晴らしかったですわ。決勝戦のその調子でお願いしますね。」


 フローラちゃんがねぎらいの声をかけてくれた。え、本当にこの調子でいいの?


「あの、少し加減した方が良くありませんか?

同級生を泣かせてしまうような作戦はあんまりだと思うのですが?」


 すると、エルフリーデちゃんから


「今度の対戦相手は二組ですわ。向こうも結構高度な魔法を使ってきますので手加減は要らないと思いますわ。」


と指摘された。どうも、当初の作戦通り行けということらしい。



 そして、決勝戦、相手はエルフリーデちゃんの予想通り二組だった。

ちなみに、五組は二組の前に手も足も出なかった。



 スタートの合図と共に、二組の妨害役の魔法が発動する。

 リーンハルト君の行く手を、腰より高い土壁が塞ぐ。

前のレースで三組の妨害役が作った土壁よりもかなり高いよ。

しかも、壁と壁の間のコース上は水の魔法を使って土をぬかるませている。

これは、走り難いね、しかも踏ん張れないから壁を越えるのが難しい。


 さすが、特別クラスに次ぐクラス、八歳児とは思えない巧みな魔法の使い方だよ。



 一方わたしの方はまだ妨害をしていない。仕込みに時間が掛かるんだ。

 わたしは、二組のコースのゴール手前十シュトラーセからゴールにかけて耕して、用意しておいた種を風のおチビちゃんに満遍なく蒔いてもらう。


 そして、木のおチビちゃんに『成長促進』をお願いし、本葉が出て、くるぶしくらいまで成長したら一旦ストップだ。『成長促進』は待機状態だよ。


 ぬかるみに足を取られて苦戦しているリーンハルト君を尻目に、二組の走者がリードを広げて走ってきた。


 ラスト十シュトラーセ、二組の走者がわたしが種を蒔いたゾーンに足を踏み入れた。

と同時にわたしは待機状態の『成長促進』を全力で発動した。


 ものすごい勢いで成長を始めた朝顔の蔓が二組の走者の足に巻きつく。

二組の走者も風の魔法を使って蔓を切るが、蔓の成長の方が早く切るそばから新たに巻きつく。

二組の走者は頑張って走ったが、ゴール前一シュトラーセくらいの距離で朝顔の蔓が走者の腰まで完全に覆いつくしてしまった。

 と同時に二組の走者の足は完全に止まった。

 でも、仕込みはまだ終わりじゃないよ。



 動けない二組の走者を抜かしてリーンハルト君がゴールテープを切ると同時に『成長促進』の効果で朝顔が色とりどりの花を咲かせ始める。

 あっという間にゴール前十シュトラーセの範囲が一面朝顔の花畑となった。

二組の走者に腰まで巻きついた朝顔ももちろん花をつけている。朝顔のオブジェのようだ。



「「「「「「「うわわわわ…!!!!」」」」」」」


 父兄席からこの運動会で一番の歓声が上がった。


 そう、先日の鉢植えの件で噂になっているらしいので、変に探られるよりこの場でお披露目しちゃおうということになったんだ。


 当初は、帝国で狼の魔物を捕まえたときみたいに芋の蔓を使おうと思っていたんだけど、花の方が見栄えが良いと言われたので朝顔になったんだよ。


 運動会の最後の種目の演出としては良いんじゃないかな?二組の走者には気の毒だけど…。

読んでいただき有り難うございます。

ブクマしてくださった方、有り難うございました。

凄く嬉しいです。

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