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第63話 学園祭① 屋台で買い食い

 いつの間にか暑い日が少なくなったと思ったいたら少し肌寒い日が増えてきた。

学園の中には、キンモクセイの良い香りが漂っている、秋がきたって感じがするね。


 今日から王立学園は学園祭が始まる。

 高等部の研究発表会を中心に三日間、普段は関係者以外立ち入り禁止の王立学園も学園祭の期間は一般開放される。


 わたし達初等部の生徒は最終日の運動会以外にやることがないので、初日、二日目は自由行動だ。


 高等部の生徒の中で研究発表会で発表をしない生徒や中等部の生徒は、屋台やバザーに加え演劇や演奏会などをやって学園祭を盛り上げている。


 少しでも研究発表を見てくれる人が増えるといいね。



     **********



 学園祭初日の朝、わたしとミーナちゃんはソールさんから大銅貨二十枚と銀貨十枚の入った巾着を各々手渡された。

 屋台やバザーで好きに使いなさいということらしい。

そういえば、わたし自身でお金を使うのって初めてだ、いつもはお供のソールさんかフィアさんが支払いをしてくれるものね。


 実は、金貨以外のお金を見るのも初めて、知ってるよ貨幣は十進法に従っているって。

 銅貨十枚で大銅貨一枚、大銅貨十枚で銀貨一枚という決まりで、大銀貨、金貨、大金貨っていう順に価値が上がっていくんだよね。



 クラーラちゃんに事前に聞いた話では、屋台の食べ物は大銅貨一枚から大銅貨五枚くらいなんだって。

 素人が作るモノだし、利鞘も殆ど乗っていないので街の屋台で買うより相当安いらしい。

 しかも、王立学園は王国の各地から生徒が集まっているので、各地の珍しい料理の屋台が出店されるので人気があるんだって。


 ただし、生徒が作る素人料理なので、そこそこの出来にはなるがプロが作るような本格的な味は出せないとの事、当たり前だよね。


 でも、学園祭で出店された屋台の料理を食べて、それを工夫して王都で流行らせたプロの料理人もいるみたいだから馬鹿にはできないんだって。


 同じように、バザーでも高価なモノは出ない代わりに、各地の特産品などが出されて結構評判がいいらしい。



 ちなみに、学園祭で生徒が出店した屋台やバザーの売上金は、全額国が運営する孤児の育成基金に寄付されるとのこと。


 そうすると、元手の分だけ赤字になるけど、そこは生徒の大部分が貴族の子女である王立学園、『高貴な者の義務』なんだって、要は元手部分が貴族の人の寄付ということらしい。


 

 ということで、わたしとミーナちゃんは、入学式を行った講堂の前にある広場にやって来た。

ここが、屋台のメイン会場である。


 何を食べようかとキョロキョロしていると、知った顔に呼び止められた。

 北部の大領主の子女であるエルフリーデちゃんがわたし達を手招きしている。


「この一角は、北部に領地を持つ生徒が協力して出店しているスペースなの。

この屋台は、私の知り合いが出しているのよ。良かったら食べて行って。」


 エルフリーデちゃんに勧められたのは、北部地区の特産のトウキビを塩茹でしたものだ。

茹で加減と塩加減さえ間違えなければ素人でもできるし、素材の味の良さがはっきりわかるらしい。

 ちなみにエルフリーデちゃんも、出店のために幾らか寄付しているそうだ。


 勧められるまま一本買ってみる、大銅貨1枚だって、安いね。


「……、甘い!」


 先にかじったミーナちゃんが、驚きの声をあげた。

わたしも噛り付いてみた、確かに甘い、しかも絶妙な塩加減でトウキビの甘さを引き立てている。

 素材の味の良さがわかるというのは本当だ。




 トウキビを食べていると、隣の屋台から揚げ物を作る香ばしい匂いが漂ってきた。

 北部の漁港で取れる白身魚を塩味の付いた衣を付けて揚げたモノらしい。

 一緒にジャガイモの揚げたモノが添えられている。


 揚げた白身魚二切れと結構な量の揚げ芋がセットになって大銅貨五枚だった。

量が多いので一つ買ってミーナちゃんと半分こすることにした。

各々で買っていたら食べられる種類が減っちゃうもんね。


 これも食べて正解だった。サクッとした食感の衣は塩味が程よく聞いており、最後に少量振り掛けられたビネガーが、揚げ物のしつこさを和らげている。

 さくっとした衣の秘訣は、衣にする粉を溶くときに水ではなくエールを使うことなんだって。

 北部地区の家庭料理で、市民から貴族まで慣れ親しんだ料理だそうだ。屋台も多いらしい。



 この屋台は隣の焼き蟹の屋台と並んで、今回の北部地区の目玉屋台らしい。

王都から北部の港町まで約四十シュタット、馬車だと四十日もかかる距離だ。

足の速い魚介類を生のまま運ぶのは難しいため、王都で手に入る北部の魚介類は塩漬けか干物だそうだ。

 今回、北部の特産品をみんなに知ってもらうため、北部の生徒でお金を出し合って魔導車を手配したらしい。

 魔導車に水魔法の得意な人を乗せて、魔法で作った氷で冷やしながら生の魚介類を王都までもってきたらしい。


 魔導車を借りた代金と魔法要員の人件費だけでも、とても屋台の売り上げでは賄えないとのこと。

ただ、北部地方の特産品の知名度を上げるためということで父兄も快くお金を出してくれたそうだ。

 聞くところでは、北部地区では毎年幾つかの屋台で同じことをしているとのこと。



 王立学園の学園祭、侮りがたし……。


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