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精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた  作者: アイイロモンペ
第1章 人間の街へ
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第5話 初めての友達 ②

 ソールさんに率いられて、わたし達は歩く。


黙っているのも気まずいので、


「わたしは、ティターニア、よろしくね。ターニャって呼んで。」


と出来るだけ、フレンドリーに自己紹介をしてみた。


「私は、ミーナって言います。よろしくお願いします。」


うーん、硬いな。よろしくお願いしますなんて畏まらなくてもいいのに。


「あれ、ミーナちゃん、足怪我してる。さっき転んだときかな?

ちょっと待っててね。」


(水のおチビちゃん、このマナを糧にミーナちゃんの怪我を癒して、癒しの水)


 わたしが、指先に集めたマナを受け取った水のおチビちゃんが作った癒しの水が薄くミーナちゃんの怪我を包み込む。

ほんの瞬きをするほどの間に水は消え去り、ミーナちゃんの怪我もきれいになくなっていた。


「え、魔法?私の怪我が治っている。

すごい、癒しの魔法なんて、お金持ちじゃないと使ってもらえないのに。

有り難うございます、ティターニア様。」


 ミーナちゃんが、驚いている。

人の世界では、癒しの水を使うのにお金を取るんだ。こんなのたいしたことないのに。


「ターニャ」


「えっ?」


「ティターニアではなくターニャって呼んで。それと、様もいらないよ。」


「でも、ティターニア様は貴族なんでしょう?それとも、癒しの魔法が使えるのだから聖女様?」


「わたしは、貴族でも聖女でもないから。それと、わたしは魔法は使えないよ。

わたしも、ミーナちゃんと同じ『色なし』だから、最初から見えてるでしょう。

『癒しの水』なら、ミーナちゃんが望むならすぐ使えると思うわよ。

水のおチビちゃんがミーナちゃんにまとわりついて離れないから。」


「私も使えるの?」


「うん、わたし達と一緒に来ればね。」



     **********



 ミーナちゃんとおしゃべりしている間に、目的地に着いたようだ。

結構大きな家だね。ここがミーナちゃんのお家なのかな?


 ソールさんは、いきなりその家の扉を開けると


「この家にいる不法占拠者出て来い、正当なこの家の所有者が貴様の立ち退きを求めているぞ。」


と隣近所に聞こえ亘るような大きな声で叫んだ。


しばらくすると柄の悪い男が出てきた。


「誰だ、人聞きの悪いこと大声で言いふらしている奴は!!」


 男は烈火のごとく怒っている。


「あなたですか。この家の正当な所有者であるミーナさんを追い出して、不当に占拠している犯罪者は。」


「何が犯罪者だ。兄貴が亡くなって、俺がこの家の正当な持ち主だ。」


「あなたは、どういう根拠で言っているんですか。

この国の法律では、死亡した人の財産は子に相続されるのであって、弟に行くのは子が一人もないときだけですよ。

ここに、ミーナさんという立派なお子さんがいるのですから、この家の持ち主はミーナさんです。」


「なに言ってやがんだ。そんな『色なし』の忌子にこの家を渡せって冗談じゃねえよ。

そんな『色なし』が継ぐくらいなら、俺が継いだほうがみんな喜ぶってもんだな。」


「この国の法律では、姿かたちで法的に人を区別はしていないはずですが。」


「法律?そんなことは知ったこっちゃねえよ。」


そのとき、ソールさんは、後ろを振り返り言った


「お疲れ様です、衛兵さん。

犯罪者は、このように言っていますけど、捕縛していただけるでしょうか?」


 気が付くと私たちの後ろに、シュケーさんに連れられた三人の衛兵さんがいた。

シュケーさんはいつの間に衛兵さんを呼びに行ったのだろう?


「ええ、はっきり自供しましたし。ここにいるご近所の方が皆、証人ですので十分です。

現時点で、所有者のミーナさんを追い出して、不法に占拠しているのは明白ですので現行犯逮捕ですね。」


と言う隊長さん?の指示で、二人の衛兵さんが目の前の男を捕縛した。


「姪っ子を不当に追い出した上での資産の横領ですから、軽くても鉱山で強制労働でしょうね。」


去り際にそう言って衛兵さんは、男を連行して行った。



     **********



 男を追い出すのに成功したわたしたちは、ミーナちゃんとお話をするために、ミーナちゃんの家に入った。


 居間のテーブルを挟んでわたしとミーナちゃんが対面で座る。

テーブルの横にソールさんが立っていて、他の三人は私の後ろに立っている。

何かこの配置、ミーナちゃんを威圧しているようで嫌だな。


「改めまして、私はソールと申します。ティターニア様の従者をしております。

この度は、ミーナさんにティターニア様のご友人になっていただこうと参上しました。

ティターニア様には友人と呼べるものが一人もおりませんのでなにとぞお願いします。」


やめて、まるでわたしがコミュ障で友達がいないみたいな言い方。


「どうして私なんですか?さっき、私を迎えに来た様なことを言っていましたけど?」


「そうですね。そこから説明しましょうか。おい、姿を見せて良いぞ。」


ソールさんがそう言うと、中位精霊がわらわらと姿を現した。いや、わたしは初めから見えてたけど。


「え、なにこれ?」


「それは、精霊です。我々の中では中位の精霊ですね。

我々精霊は二千年前に人間と決別し、人とは関わらない事にしたのです。

ティターニア様は二千年振りの精霊の愛し子として、精霊の森で育ちました。

今回、ティターニア様は、人間の社会を学ぶため初めて精霊の森から出てきたのです。

我々はティターニア様が人間社会の中で生きていく上で、従者じゃなく、対等の友人も必要だと考えました。

あなたの周りにいるその精霊たちはあなたを慕って集まってきたのです。

我々がこの街に来たとき、その精霊達が私に助けを求めたのです。あなたを助けて欲しいと。

精霊に慕われるような人ならば是非ともティターニア様の友人になって欲しいと思ったのです。」


「友達って、何をすればいいのですか?」


「いえ、従者じゃないんですから何をしろという義務はありませんよ。

友達と言うのは対等なもので、お互いに助け合って成長していくものでしょう。

あ、一つだけありました。

友達になっていただけるのでしたら、これから王都の学校に一緒に通っていただきます。

学費も、身の回りのものもこちらで用意しますので身一つで一緒に来ていただければいいです。」


ここで、もう一押し。私は言うよ。


「ミーナちゃん、わたしと友達になろう!!」


「私でよければ喜んで、ターニャちゃん。」



よし、友達ゲットだぜ!!

読んでいただき有り難うございます。


ブクマしてくださった方有り難うございます。

大変嬉しいです。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ソールのセリフは基本的に使用人を意識した敬語になってるのに、「~じゃない、~じゃなく」という口語表現が入ってるのが少し気になる。 「~ではない」のほうが自然な気がする。
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